プロトコルアナライザ
(protocol analyzer)
プロトコルを解析する機器やプログラムのこと。コンピュータや電機機器など、通信する装置間に流れているデータを解析するハードウェア(計測器)やソフトウェア(プログラム)。データ通信の測定器(解析機器)。略称:プロアナ。
LANやインターネットなど様々なプロトコルに対応したモデルがある。データ通信の主流が公衆回線(モデムを使ったアナログ通信)だった時代からLANが発達したため、従来のプロアナをWANアナライザ(Wide Area Network、ワン。LANのLocalに対比させた「LANではない」という造語)と呼称した。用途によってLANアナライザ、バスアナライザなどが登場した。2000年以降はWANアナライザは比較的低速のハンドヘルドのオンラインモニタが、LANアナライザはPC上で動くソフトウェアが主流となった。計測器ハードウェアとしてはギガビットLANなどに対応した高速LAN用アナライザやシリアル通信のバス解析に特化したシリアルバスのアナライザがある。(WANという表現は2020年現在、ほとんど死語となっている)
2000年以前にはプロアナは通信計測器の1カテゴリー(機種群)として確立していた。計測器メーカやIT企業が多彩なモデルをつくり、デジタル系の計測器の代表だった。ICE(マイコン開発支援装置)やロジックアナライザと併用されることも多かった。ただし通信規格に対応するため、規格の流行に計測器は左右される。新しい通信方式(通信規格、プロトコル)が策定されて、規格の普及時には高機能な解析機能があるプロアナは必須だが、規格の普及に伴いニーズは解析よりもモニタになり、場合によっては計測器自体が不要になる。規格によって残るモデルと廃止になり消えていくモデルがある(プロアナは寿命が短い、現役期間が短命なモデルが多い)。
現在のプロアナは、低速のRS-232Cなどのラインモニタ(安価なハンドヘルドモデル)と、特定の通信規格や最先端の高速通信用の高額モデル(バスアナライザを含む)に2極化している。市場規模(売上)は2000年以前よりも縮小していると推測される(以下のJEMIMA統計データより筆者が推測)。また大手計測器メーカはほぼ撤退し、現在のプロアナ、バスアナはIT機器メーカ(ベンチャー企業)がつくっている。
1980年代のRS-232C、1990年代のLANやISDNなどに対応したプロアナは、キーサイト・テクノロジー、安藤電気、ビッツ、ラインアイ、アドバンテスト、アンリツ、sniffer(東陽テクニカ)などの、多くの主要な計測器メーカが多彩なモデルを販売していたが、2020年代にプロアナをラインアップするのはラインアイ(低速のラインモニタ)と東陽テクニカ(高速のアナライザ)の2社で、他はすべて撤退した(※)。計測器メーカではない海外のIT機器メーカがバスアナライザをつくっていて、プロアナは計測器メーカの主要機種群ではなくなった。「電気計測器の中期見通し(JEMIMA、2022年12月)では、光通信測定器、ネットワーク負荷試験機、SDH/SONETアナライザなどの有線通信測定器の中にプロアナは含まれて、単独の機種群としての統計データ(売上実績や今後の予想)は示されていない(単独では示せない額になったと思われる)。
(※) キーサイト・テクノロジーのラインアップに、2010年代にはほぼプロアナはなくなり、ロジアナでMIPI規格などの解析に対応していた。ところが2023年頃に、インテルが主導する高速通信インタフェースであるPCI Expressの最新規格(GEN5)に対応したプロアナE55xxAシリーズを発売した。外観はボードで、バックプレーン(マザーボード)の上に垂直にボード型のプロアナを装着して使用する(以下の「Keysight World 2023」に展示写真がある)。E55xxAシリーズは一般のスタンドアロンの計測器とは外観が大きく異なる。
エイビットのエアプロトコルアナライザに代表されるように、無線通信規格に対応したプロアナは、移動体通信が活況なために多くがつくられている。たとえばBluetoothやWi-Fiに対応したFrontline(フロントライン、現テレダイン・レクロイ、販売:コーンズテクノロジー)やELLISYS(エリシス、販売:ガイロジック)などがある。Wi-Fiは数年ごとに規格が更新されるため、Wi-Fiプロアナは常にアップグレードされて最新の新製品がリリースされて、現役モデルが続いている(Wi-Fiの最新規格は以下の「R&S Technology Symposiumが詳しい)。Bluetoothプロアナは現在の代表的なプロアナの1つである。
映像系の規格であるHDMIやDisplayPortのプロアナをテレダイン・ジャパンがInterBEE(国際法則機器展)に出展している(2024年10月、幕張メッセ)。また、コンピュータ系のインタフェースであるUSBの規格試験をしているグラナイトリーバー(GRL)は、USB PDなどの多くのプロアナをラインアップしている(以下の参考記事「キーサイト・ワールド 2018 」が詳しい)。これら、無線系、映像系、コンピュータ系の規格に対応した海外メーカのプロアナの販売状況は、上記のJEMIMA統計データには反映されていないと思われる。
参考用語
参考記事
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アナライザあれこれ 第7回「通信アナライザ (有線通信) 」
プロトコルアナライザの概要。
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東陽テクニカ自社開発の大容量パケットキャプチャ/解析システム「Synesis」100GbE回線対応モデル
高速通信用途の最新プロアナ。
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会員専用【イベントレポート】Keysight World 2023~Tech Days Tokyo 3ページ目
E55xxAシリーズの展示写真あり。
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会員専用【イベントレポート】Rohde & Schwarz Technology Symposium 2024 ~ 創立90周年記念企画
Wi-Fi7について冒頭で触れる。
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会員専用【イベントレポート】キーサイト・ワールド 2018 /会場:JP TOWER Part2 3ページ目
GRLのUSB PDプロアナ。