計測関連用語集

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RS-232C(あーるえすにーさんにーしー)

Recommended Standard 232 version C の略。米国電子工業会(EIA)によって標準化されたシリアル通信の規格の一つ。

RS-232Cアナライザ(あーるえすにーさんにーしーあならいざ)

(RS-232C analyzer) RS-232C回線の情報のやり取りを観測する測定器。別名、RS-232Cラインモニタ、さらに略してラインモニタとも呼ばれる。 1980年頃から2000年代前半頃までPCのインタフェースはRS-232Cが標準だった。端末間のデータ通信にRS-232Cが広く使われ(モデムとの接続もRS-232C)、ラインモニタといえばRS-232Cの通信ラインをモニタするもの、という意味で「RS-232Cラインモニタ」や「RS-232Cアナライザ」という表現が良く使われた(ラインモニタはRS-232C以外の規格も観測できる)。アナライザとは、プロトコルアナライザのことである。 プロトコルアナライザはRS-232Cなどで通信している端末の代わりになって送受信することができる(擬似端末になる)。そのようなエミュレーション機能ではなく、回線に流れているデータを観測する機能がラインモニタ(正式にはオンラインモニタ。オフラインではなくオンラインでリアルタイムにモニタできる)である。つまり、ラインモニタは限定された機能のプロトコルアナライザ。プロトコルアナライザのモニタ機能を指してオンラインモニタ(やラインモニタ)と呼ぶが、ラインモニタと呼称するモデルでも擬似端末になる機能がある場合があり、具体的な名称(品名)からは判別が難しい。 PCのインタフェースはRS-232CではなくUSBになり、アナログ電話回線の時代に活躍したモデムも過去の物となったが、RS-232Cは低速の通信規格としていまでも現役である。「データリンク / RS232Cアナライザ」や「RS232C RS422 RS485アナライザー / シリアル通信モニタ」、「ラインモニタ Analyze232C」などの名称の製品が販売されている(2024年にインターネットで検索)。 形状は、タブレット型のハンドヘルドなサイズから、変換アダプタのような2~3cm程度の小箱だったり、PC上で動くソフトウェアだったりする製品も多い。1980年代にhp(現キーサイト・テクノロジー)や安藤電気がラップトップ型計測器のRS-232Cアナライザをつくっていた時代とは違い、いまはデジタル機器のベンチャー企業が主なメーカである。形状もハードウェア(計測器という外観)ではなく、小箱やソフトウェアになっている。

RS-232Cラインモニタ(あーるえすにーさんにーしーらいんもにた)

(RS-232C line monitor) 低速のシリアル通信規格であるRS-232Cの、通信データをモニタするプロトコルアナライザ。正式には「RS-232Cのオンラインモニタ」(オフラインではなくオンラインでリアルタイムにモニタできる)だが、ラインモニタという呼称が良く使われている。 RS-232Cアナライザともいわれる(プロトコルアナライザの1種なので)。 パソコンの標準インタフェースがRS-232Cで、モデムにRS-232Cで接続して、アナログ電話回線でデータ通信をした時代(1980~1990年頃)とは異なり、いまのPCはUSBが標準で、Wi-Fiや光回線を使いインターネットにつながるのでRS-232Cは使わないが、低速の安価な規格としてRS-232Cはいまでも現役である。「RS-232cラインモニタ / シリアル通信用アナライザ」や「ラインモニタ Analyze232C」、「RS232C RS422 RS485 シリアル通信用ラインモニター」などの名称の製品が販売されている(2024年にインターネットで検索)。 ただしこれらは、1980年代のhp(現キーサイト・テクノロジー)や安藤電気がつくっていたラップトップ型計測器のRS-232Cラインモニタとは大きく異なる。現在のメーカはほとんどがデジタル機器のベンチャー企業で、形状もハードウェア(計測器という外観)ではなく、2~3cm程度の小箱やソフトウェアが多い。つまり計測器というよりIT商品に近い。通信計測器の1カテゴリーであるプロトコルアナライザには違いないので、本稿でも取り上げているが、計測器メーカはつくっていないし、計測器の範疇でも流通していない。通信機器、PC周辺機器、デジタル商品、という範疇でECサイトなどが販売している。 プロトコルアナライザだけでなくロジックアナライザ(※)やICE(マイコン開発支援装置、デバッガ。アイスと呼称)などのデジタル系の計測器はアナログの物理現象を測定しないので、校正の必要がない。PCのようにソフトウェアで動作するデジタル系計測器は計測器メーカだけではなく、デジタル機器をつくれるメーカが元から多い。 (※) ロジックアナライザは電圧を測定するが、表示はHigh/Low(1か0)で、電圧値ではない。値を表示しないのでマルチメータのように測定精度(誤差)の概念がない。つまり校正対象外である。

RJ45(あーるじぇーよんじゅうご)

LANケーブルに使われているコネクタのこと。FCC (米連邦通信委員会)が定めたRegistered Jack 45の略記。8ピンすべてが信号線に繋がれた8極8芯のモジュラー式コネクタ。ANSI(米国国家規格協会)/TIAで規定された8P8Cコネクタとほぼ同じ。8P8Cはeight positions, eight conductorsの略で、プラグ部とジャック部を総称して8P8Cモジュラーコネクタとも呼ぶ。電話機のコネクタRJ11と外観が似ているがサイズやピン数が異なる。RJ11は6つの位置(ピン)のうち2つを利用する6P2C(6位置2導体、つまり信号線は2本)である。RJ45はコンピュータなどネットワーク機器の接続用(RS-232CやISDNで使用)、RJ11は電話機、ADSL、モデムなどのケーブルで使われる。

IETF(あいいーてぃーえふ)

(Internet Engineering Task Force) インターネット技術の標準化を推進する任意団体(NPO法人)。ネットワークにつながる機器の相互接続のための技術仕様を議論するグループから発展したといわれる。企業ではなく個人で登録し、WG(ワーキンググループ)に参加して議論することができる。 インターネットの円滑な運営を支えるための組織である、一般社団法人 日本ネットワークインフォメーションセンターのHPには「1992年に組織化された、インターネットガバナンスの頂点に立つ学会機関であるISOC(Interet SOCiety)の下にIETFが属している」旨が明記されている(2024年11月現在)。IETFがインターネットの技術的な側面の議論検討を行うのに対して、社会学的側面や経済的側面からインターネットに関する課題や問題の解決を行うためのISTF(Internet Societal Task Forse)という組織もISOCにはある。 VoIP(Voice over IP、インターネットを使った音声通信技術)で使われるシグナリングのSIP(Session Initiation Protocol)はIETFが標準化した。

ISDN(あいえすでぃーえぬ)

(Integrated Services Digital Network) 電話、FAX、データ通信を統合して扱うデジタル通信網で、NTTが1988年からサービスを開始した。日本語では「統合デジタル通信網」と呼ばれる。直訳すると「Integrated Services(統合サービス) Digital Network(デジタル通信網)」。音声(アナログ)とデータ(デジタル)をデジタル方式で伝送する通信技術。それまでのアナログ回線では、1本の電話線で1つの通話しかできなかったが、ISDNでは1本の電話線で複数の通話や高速なデータ通信を同時に行える。2つの形式(BRI:Basic Rate Interface、PRI:Primary Rate Interface)がある。ISDNはアナログ方式の固定電話網からデジタル方式への移行を促進するために開発されたといえる。 人の声を送る電話網から始まった通信回線は、データや画像なども扱うようになっていた。1980年代までは、音声は電話網、データ通信はデータ通信網で行われ、通信方式もアナログだった(コンピュータなどのデジタルデータはモデムによって変復調され、アナログで送られた)。デジタル技術の進歩で、デジタル化した音声・データ・画像を同一伝送路(アナログの電話回線である加入者線)で通信するISDNが実用化した。 1972年にISDNの基本概念がCCITT(国際電信電話諮問委員会。現ITU-T、電気通信標準化部門総会)で発表され、1977年からITU(国際電気通信連合)で検討され、1988年に本勧告が承認される。日本では日本電信電話公社(現NTT)が1970年代から独自の研究を行い、高度情報通信システム(INS:Information Network System)と呼んだ。1984年に東京都の三鷹市と武蔵野市で実用化試験を行い(Yインタフェース)、1988年4月に「INSネット64」(通信速度64kbpsで、当時の56kbpsモデムより高速)、「INSネット1500」(最大通信速度1.5Mbps)と呼ばれるISDNサービスが商用開始する(Iインタフェース)。商用開始に合わせIインタフェースを装備する擬似交換機やプロトコルアナライザなどの、ISDN端末を評価する計測器が登場する。 従来のアナログの電話機などをISDNで利用するための変換器(ターミナルアダプタ)が1996年には低価格になり、個人や中小企業のISDN加入が進み、2000年の年末に契約数は1,000万回線を超えた。ただし2021年度末には160万回線まで減少し、1999年のNTT再編で「INSネット」サービスを継承したNTT東日本・西日本は、2024年にはISDNを終了する予定(光回線やIP網への変更が提案されている)。

ISDN測定器(あいえすでぃーえぬそくていき)

(ISDN measuring instrument) 1988年にNTTがサービスを開始したISDN(Integrated Services Digital Network、統合デジタル通信網)に対応した、有線通信計測器には以下の種類がある。 1. 擬似交換機、2. ハンディテスタ(回線の開通工事など、屋外で使用する可搬型モデル)、3. レイヤ1テスタ(Iインタフェース試験器)、4. プロトコルアナライザ、5. コールシミュレータ(擬似呼)。 番号順に主なメーカとモデル名称(品名)、モデル番号(形名)を述べる。 1. ISDN擬似交換機 アドシステムズ:ISDN疑似交換機(PRI / BRI) J-9144A、J-9124Aなど。 安藤電気:AE-7300シリーズ(ISDNネットワークシミュレータ AE7311、ISDNシミュレーションBOX AE7303、各種モジュール AE79xx) 大井電気:ISDN多回線アナライザ TMP-9701 NTTエレクトロニクス株式会社(1997年頃の会社名、現NTTイノベーティブデバイス株式会社):ネットワークエミュレータ NE3000AE 2. ハンドヘルドのテスタ(ISDN端末の接続試験など、ISDN回線の開通時に使用する現場測定器) 安藤電気:ISDNテスタ AE5301 アドバンテスト:ISDNバス配線チェッカー D5612 大井電気:ISDN回線試験器 DNT-302B アンリツ:ISDN擬似端末 EQ612A(端末ではなく交換機、の発着信試験を行う。障害発生時には障害解析に使用。) 3. レイヤ1テスタ(Iインタフェース試験器) 安藤電気:Iインタフェーステスタ AP-9503 アンリツ:ISDNベーシックインタフェース試験器 MP5201B アドバンテスト:ISDNテスタ D5312B 4. ISDNプロトコルアナライザ アンリツ:ISDNプロトコルアナライザ EF201/211 アドバンテスト:ISDNプロトコル・アナライザ D5110シリーズ 安藤電気:データコニュニケーションアナライザ AE-5105i(モニタのみ ※1) キーサイト・テクノロジー(当時はhpやYHP):Advisor(※2)用T1プライマリレートISDNモジュール J4649A、ISDN BRI S/TおよびUインターフェイスモジュール J2905B、プロトコルアナライザ 4954i(モニタのみ) 5. コールシミュレータ(疑似呼) アンリツ:ISDNコールシミュレータ EF202/203/204 ISDNに限らずコールシミュレータは国産ではアンリツ1社しかつくっていない(※3)。 (※1) 安藤電気には「ISDNプロアナ」と銘打ったモデルがない。2000年代にAE5131(256kbps)、AE5135(2Mbps)という、前身のAE-5105(72kbps)より高速のモデルを発売しISDNも対応したが、他社より発売がかなり遅く、ISDNの旬の時期を逃している。反対に独立系で通信系の資本(NTTや日本電気など)が入っていないアドバンテストが時代の要請にマッチするタイミングでISDNプロアナを開発したことは、同社のマーケテイングと要素技術の力を示している。2010年頃に同社はそれまでの計測器からすべて撤退したが、その後、持っている要素技術を使いテラヘルツ波などの新規計測器に参入している。アンリツのISDNプロアナは形名の頭がMでないことでわかる通り、電話機や擬似呼を開発した情報機器の事業部門の製品で、計測器事業部門はつくっていない。同社が、無線機や電話機をつくれる要素技術を持つ計測器メーカであることがわかる。アンリツは、高速通信の品質評価をするBERT(ビット誤り率測定器、バート)や移動体通信の呼制御を行う疑似基地局(基地局シミュレータ、シグナリングテスタ)では、キーサイト・テクノロジーと競っている世界トップベンダである。 (※2) Advisor(アドバイザー)とは、1990年代後半にJ2300などの形名でラップトップ型計測器が登場し、ATMやLAN、ISDNなどの各種インタフェースに対応した、2000年頃のキーサイト・テクノロジーのデータ通信計測器の通称(愛称)。本体とモジュールの構成によって名称が変わり、形名などの実態が良くわからない(現在はすべて生産終了し、断片的な資料しか残っていない)。形名が似ていてLAN AdvisorやInternet Advisorと称するモデルもあった。往年のプロアナ495xシリーズまでは従来の数字形名だが、4953A以降の1990年代の同社のデータ通信計測器はM&Aでラインアップが増え、シリーズや形名に継続性(一貫性やシリーズの明確さ)がなくなる。Jシリーズは4953A以降のプロアナの形名として登場し、2000年頃の同社のプロアナはネットワークアドバイザと称していた。2003年頃には Network Analyzer J6800シリーズというプロアナもあった(プロアナなのにネットワークアナライザ(NA)とは、NAの世界的なトップベンダの同社がこのような品名の製品を発売するとは、「にわかには信じられない、目と耳を疑う、驚きの命名」である。2000年頃の同社の「プロアナのラインアップの複雑さ」を象徴している)。 (※3) アンリツと並ぶ電電ファミリーで、多くの電話機用測定器をつくった安藤電気は擬似呼の製品化ができなかった、という話を筆者は1980年代に同社の古参営業マンから聞いた。安藤電気に擬似呼がないために電話関連の評価試験器の案件(引合い)が自社だけでクローズできず、どうしてもアンリツに知られてしまう。優秀な営業マンの彼は、海外のコールシミュレータで品質の良いモデルが取り扱えないかを気にかけて調べていたが、なかなかアンリツ同等の良い物がなかった。国産でオンリーワン製品を開発したアンリツの技術力を物語るエピソードである。

ISDNプロトコルアナライザ(あいえすでぃーえぬぷろとこるあならいざ)

(ISDN protocol analyzer) 日本電信電話公社(現NTT)は1988年に世界初でISDNサービスを運用開始した。各計測器メーカはこれに対応する製品を商品化した。まず、ISDN端末の開発のためにISDN対応の擬似交換機がリリースされた。1988年以前にNTTアドンバンステクノロジとアドシステムズが、1990年代に安藤電気や岩崎通信機がリリースした。次に需要があるのがプロトコルアナライザ(プロアナ)で、アンリツはEF201A/B、EF211Aという2モデルを、アドバンテストはD5110シリーズ(D5111~D5115)のISDNプロアナを発売した(この2社のリリースが早かった)。当時普及したPHSの基地局にはISDNの規格(Iインタフェース)が採用されていて、ISDNプロアナはその試験に重宝された。アドバンテストは当時、スペクトラムアナライザや光通信測定器を数多くラインアップして、アンリツや安藤電気に並ぶ、多くの通信測定器のモデルを開発していた。D5111は同社の初めてのプロアナで、アンリツと1990年代に競合した。 RS-232Cプロアナではキーサイト・テクノロジーと伍して、国内シェアNo.1の名門 安藤電気は同時期にISDNプロアナを発売していない。同社はISDNから他社プロアナにシェアを奪われたといえる。同社の名器、AE-5105にはオプションでISDN機能があったが、EF201/211やD5110シリーズのように「ISDNプロアナ」と銘打ったモデルはリリースしていない。2Mbps(最高6Mbps)までのスピードに対応した高速WANプロアナとして2000年頃にリリースされたAE5135は当然ISDNにも対応しているが、アンリツやアドバンテストのISDNプロアナよりだいぶ後発で、ISDNの旬の時期を逃した(ISDN回線の建設・保守用のハンドヘルドのISDNテスタAE5301は1996年頃に発売されている)。

IEEE1588(あいとりぷるいーいちごーはちはち)

イーサネット用の時刻同期プロトコル。IEEEは2002年にバージョン1、2008年にバージョン2(IEEE1588v2)を策定し、映像・音声や電力、通信、FAなどの広範なシステムの同期通信で使われている。同期精度は1μs〜100μs。レイヤ2(データリンク層)のMAC(Media Access Control)フレーム上、またはUDP(User Datagram Protocol)にPTP(Precision Time Protocol)がある。そのため、IEEE 1588が規定する時刻同期機能をPTPと呼称していることが多い。2017年の国際画像機器展(産業用カメラと画像処理の展示会。テーマ:マシンビジョン)では、複数のカメラをμ秒オーダで同期させるデモをソニーが行っている(以下の記事が詳しい)。 ケーブルメーカの平河ヒューテック株式会社にはデバイス事業部があり、放送のネットワーク機器をつくっている。放送業界のIPネットワークではマスタ装置からサブ装置に映像・音声を分配するが、PTPで同期情報を送っている。同社の「PTP L2スイッチ」はOCXOを内蔵し、SEIKOなどのグランドマスタから基準時刻をもらって動作できることが特長になっている。これは放送ネットワークで映像・音声にIEEE1588が使われる例である。

IEEE1394(あいとりぷるいーいちさんきゅうよん)

オーディオ・ビデオ機器のストレージ用の規格として、SCSI(スカジー)の後継としてAppleが設計したFireWire(ファイヤ-ワイヤー)が、1995年にソニー、IBMなどと共同でIEEE 1394-1995として標準化され、IEEE1394と呼称されている。IEEE1394(4ピン)、IEEE1394(6ピン)、IEEE1394bなどがある。SCSIと同じ数珠繋ぎ(デイジーチェイン)やスター型の接続、ツリー接続ができる。最大転送速度800Mbps。 IEEE1394はデジタルビデオカメラの外部出力端子(DV端子)に採用されているほか、ソニーは「i.Link(アイリンク)」の名称で自社製品に採用している。つまり、IEEE1394、i.Limk、DV端子、FireWireはすべて同じ規格である。 新しい通信規格の黎明期には、その規格を採用する機器の開発・検証のためにプロトコルアナライザ(プロアナ)が必須となる。1990年代に横河電機は、計測器部門であるT&M事業部にコミュニケーション部門を新設し、通信計測器に参入した。3G向けの信号発生器を自社開発し、海外製フェージングシミュレータを取り扱った。CATVなどの有線通信にも積極的で、IEEE1394のプロアナは海外製品の転売から初めて、自社モデルも開発した。2000年代までのIEEE1394の普及期には横河電機のIEEE1394プロアナは代表機種だった。その後、横河電機は2010年頃にこれら通信計測器からすべて撤退している。通信から撤退はしたが、後継会社である横河計測には(安藤電気から継承した)光通信測定器があり、光スペクトラムアナライザなど世界No.1の光測定器をラインアップしている。 参考用語:IEEE(あいとりぷるいー) 計測器情報:IEEE1394プロアナの製品の例

IPアドレス(あいぴーあどれす)

(Internet Protocol address)IPプロトコルで使用するための32ビットのアドレス情報。IPプロトコルで通信するノードは、世界中で単一のこのIPアドレスを割り当てておかなければならない。(株式会社Sohwa&Sophia Technologiesの用語集より)

i.Link(あいりんく)

IEEE1394規格のソニーの商標。オーディオ・ビデオ関連のストレージ用の規格として、SCSI(スカジー)の後継としてAppleが設計したFireWire(ファイヤーワイヤー)が、1995年にソニー、IBMなどと共同でIEEE 1394として標準化された。ソニーは1995年以前から、自社のビデオカメラ製品などに搭載したIEEE 1394端子をi.Linkの商標で発売していたため、現在もIEEE1394ではなくi.Linkと呼んでいる。計測器としては1990年代後半のIEEE1394普及期に、横河電機(現横河計測)はIEEE1394用のプロトコルアナライザをラインアップしていた。新しい通信規格の黎明期には必ずプロトコルアナライザが必要だが、その製品需要は長くはない。ATMアナライザ、ISDNプロアナなどとともにIEEE1394プロトコルアナライザも現在はほぼ生産中止。

アクセス網(あくせすもう)

従来はNTTの電話局の交換機と加入者(各家庭や事業所の電話機)を結ぶネットワークを指した。現在は電話機がPCやスマホになり、交換機はルータに変わりインターネットの世界となったが、NTT以外の通信事業者(キャリア)が増えても、いまだにアクセス網はNTTが強く、他の通信事業者はNTTのアクセス網を借りて通信をしている場合が多い。NTTもアクセス網をFTTH(Fiber To The Home、家まで光ファイバを届かせる)の掛け声で光ファイバ化し、フレッツ光などのサービスを展開している。アクセス網を光ファイバにして高速にしたのがPON(Passive Optical Network、ポンと呼称)である。アクセス網の先にあるネットワークの中枢(基幹通信網)をアクセス網と区別してコアネットワークと呼んでいる。

ATAPI(あたぴ)

AT Attachment Packet Interface の略。IDEコントローラにCD-ROMドライブなどハードディスク以外の機器を接続するために考案されたデータ転送方式の規格。ATAとATAPIは当初は別の規格であったが、ATA-4で「ATA/ATAPI-4」として統一された。

ACK(あっく)

(psositive ACKnowledgement) データ通信の制御手法で、「肯定応答」のこと。受信側が正しく受信したことを送信側に知らせるために送る受信確認情報。データ通信では、データが届いたかどうかを送信側・受信側で確認をし合う。ACKはデータパケットがうまく受信されたことを示し、他方、NACK(Negative ACKnowledgement、否定応答)はデータパケットがうまく受信できなかったことを示す。acknowledgementは「受領確認」の意味。「ACKが送られてこなければ失敗」、「NACKが送られてこなければ成功」のようにACKかNACKのどちらか1つで運用されることも多い。

安藤電気(あんどうでんき)

(Ando Electric Co., Ltd.) 1933年~2004年に存在した老舗計測器メーカ。正式名称:安藤電気株式会社。東京証券取引所第二部に上場。通信計測器や半導体テスタをつくっていた。大株主はNECで、アンリツ同様にNEC系の計測器メーカだが、安藤電気はNECの持ち株比率が高く、NEC出身者が複数人、社長になっている。有線通信の計測器ではYHP(現キーサイト・テクノロジー)やアンリツと競っていた。独立系ではなくNECが大株主だが、「通信と半導体」という時代の先端を担ったハイテク企業である(1977年にNECはコンピュータ&コミュニケーションを標榜する「C&C」をCIにしていた。通信とコンピュータである)。 1933年に安藤氏が創業。電電公社(現NTT)から通信計測器の開発を任された電電ファミリーの1社。光通信測定器はアンリツと安藤電気の2社がNTTに納めた。1980~2000年頃につくっていたのは基幹通信網の伝送装置向けの測定器である、SDH/SONETアナライザ、 MTDMアナライザ、モデムテスタなど。有線通信には強かったが無線ではアンリツに遠く及ばなかった(ラインアップには無線機テスタはあるが、SGやスペクトラムアナライザはない)。NTTなどに最先端の計測器を納入した。単発の波形しか捉えられないが、パルススコープとでもいうオシロスコープの原子版のような測定器をつくったという話がある。インピーダンス測定も早くから行い、「ブリッジなどの回路素子測定器をつくっていた横河電機の製品よりも、安藤電気のインピーダンス測定器は高精度な測定結果」と評価した大学教授もいた。 1980年頃の同社の計測器事業部は、第一技術部がNTT向け製品と光通信測定器、第二技術部が民需向け製品を開発していた。1980年代の通信測定器以外の主なラインアップは、ICE、ROMライタ、LCRメータ、tanδ測定器など。ICEはインテル80386などの最先端のCPUに果敢に挑戦したが、特定顧客にしか販路が広がらなかった。ROMライタはNECから情報を得るなど、幅広いチップに対応したが、協力関係にあった浜松東亜電機(現東亜エレクトロニクスのフラッシュサポートグループ)に技術移管し、製品は現在も続いている(AF-9700シリーズ)。LCRメータは1980年頃に初号器 AG-4301を発売し、シリーズ化でシェアを伸ばしたが、業界標準のHP(現キーサイト・テクノロジー)のような高周波モデルが開発できず撤退した。 2000年の光海底ケーブルバブルで屋台骨の光計測器が落ち込むと経営が傾いた。大株主のNECが半導体ビジネスから撤退するのに伴い、子会社にATE製品(半導体検査装置)は不要となり、NECに変わる株主が必要となった。横河電機が資本参加し、安藤電気の全事業を受け入れた(2001年にNEC保有株式が横河電機に売却された)。2002年に安藤電気は横河電機の100%出資子会社になり、2004年には事業再編で解体している。 プロトコルアナライザや光通信測定器では当時世界No.1のHPと競い、モデルによってはHPより売れた製品もあった。光通信測定器は現在の横河計測株式会社に引き継がれ、光スペクトラムアナライザは世界No.1を維持し続けている(2022年現在)。 前述のようにNECが半導体デバイスビジネスをするために、グループ内の計測器メーカに半導体テスタをつくらせた。そのため安藤電気の半導体テスタは同業のアドバンテスト(旧タケダ理研工業)などに比べるとNEC以外にはあまり売れなかった。1970年代から2000年頃の半導体テスタは最先端の検査機器(花形製品)として、複数の計測器メーカがつくっていた。安藤電気は半導体テスタ事業が赤字でも、通信計測器(プロトコルアナライザや光計測器など)が補填した。ところが光計測器が赤字になったときに半導体テスタはそれを補填することはなく、会社は立ち行かなくなった。 軽率なことはいえないが、安藤電気がもし半導体テスタをやっていなかったら、光通信などの有線通信計測器の世界トップメーカとして存続していたかもしれない。2002年の社長である本橋氏は同社の計測器事業部出身の技術者で、何代も続いたNECからの天下りではなく生え抜きだった。キーサイト・テクノロジー(当時はアジレント・テクノロジー)が光測定器を縮小したので、安藤電気は光測定器で世界No.1になる目前だった。計測出身のプロパー社長のもとで躍進することなく、横河電機に身売りすることになったのは残念である。 計測器情報:安藤電気の光測定器、安藤電気のプロトコルアナライザ

Ethernet(いーさねっと)

コンピューターネットワークの規格の1つ。オフィス・家庭で普及している有線のLAN (規格名:IEEE 802.3)に最も使用されている(最近普及した無線LANは別の規格:IEEE 802.11)。「空間には目に見えないエーテル(Ether)という物質が充満していて、それを伝搬して情報が伝わる」という概念が20世紀初頭まであり、それが語源。つまりエーテル・ネットワークがイーサネットになった。

イーサネット(いーさねっと)

(Ethernet) コンピューターネットワークの規格の1つ。オフィス・家庭で普及している有線のLAN (10Mbps)に最も使用されている技術規格のため、ほぼLAN(ラン)と同義語になっている。有線LANは、OSI参照モデルの下位2層に相当するイーサネットとその上層の「TCP/IPプロトコル」の組み合わせで使われるため、「TCP/IPプロトコルのネットワークインタフェース層に対応する有線の規格」とも説明される。 高速イーサネット(高速LAN)としてGbpsの速度の規格(ギガビットLAN)があるが、イーサネットの根幹であるCSMA/CD技術を採用していなかったり、LAN向けとWAN向けの2種類の仕様があったり、厳密にはイーサネットでもLANでもない。 イーサネットの語源は「エーテル(Ether)」。20世紀始めまで物理学者は「空間には目に見えないエーテルという物質が充満していてそれが光を伝搬する」と考えていた。

EtherNet/IP(いーさねっとあいぴー)

産業用のネットワークプロトコルの名称。標準的なイーサネット規格のTCP/IPはCIP(Common Industrial Protocol)と呼ばれるプロトコルを使用する。 CIPはDeviceNet、ControlNet、CompoNetなどで使用され、ODVA(Open DeviceNet Vendor Association)が管理し、多様な産業用機器に採用されている。

岩通計測(いわつうけいそく)

正式名称:岩通計測株式会社。2002年に岩崎通信機(岩通)の計測事業部門を分社化(同年は超高輝度ストレージスコープTS-81000が発売された年である)。2010年代後半に親会社(岩通)に吸収された。横河電機は2010年に計測器部門(オシロスコープや電力計測器など)を子会社の横河メータ&インスツルメンツ株式会社(現横河計測株式会社)に統合している。つまり岩通とは反対に計測器部門を別会社として切り離している。横河電機はプロセス・オートメーション、計装分野に事業を集中する過程で、半導体テスタ、科学分析機器、フォトニクスデバイスなどを本体から分社化や、撤退させてきた。計測器の事業も横河電機の主力ではないので分社化された。岩通が事業再編の中で計測器を本体に戻したのは、計測器事業が単独で収益を出すことが難しい時代に、計測器が岩通にとって必要な技術・商材と認識しているためと理解される。 2018年発行の計測器総合カタログ「IWATSU 電子計測器ダイジェスト2018 Vol.2」には計測器の連絡先として「岩通計測・第二営業部・計測系業担当/アカウント営業担当/国際営業担当と営業推進部 西日本支店」が明記されている。同社の第二営業部が計測器を販売していたことがわかる。時期は1990年頃と記憶しているので岩通計測のできる前だが、岩通の計測器の営業部門から計測器のレンタル会社である昭和ハイテクレントに複数人が転職している。 岩通の開発部門からはアドシステムズ(ISDNの擬似交換機の草分け)などの計測器メーカがスピンアウトで生まれている。岩通は古くからNTTに電話機を納品してきた中堅の通信機メーカ(電電ファミリー)だし、岩通計測はアナログオシロスコープの国内トップブランドという計測器の老舗(名門)である。 現在の岩崎通信機は、2009年に半導体評価用のカーブトレーサを発売し、パワーエレクトロニクス関連の計測器に傾注している。海外製の特殊なプローブも積極的に取り扱い、デジタルパワーメータの輸入販売など、同社ホームページには転売品が多く掲載されている。 岩崎通信機(京王線久我山、杉並区)、横河電機(JR中央線三鷹、武蔵野市)、日本無線(JR中央線三鷹、三鷹市)と、東京都の23区西端には計測器メーカが3社もある(日本無線は2000年頃までは計測器部門があり、アナログの無線機テスタをラインアップしていた)。付近の地元住民には、電話機の岩通(がんつう)、無線のJRC(Japan Radio Co., Ltd.日本無線)、計測器のYEW(Yokogawa Electric Works、横河電機製作所)と呼ばれていた。