計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
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岩通計測(いわつうけいそく)

正式名称:岩通計測株式会社。2002年に岩崎通信機(岩通)の計測事業部門を分社化して設立(同年は超高輝度ストレージスコープTS-81000が発売された年である)。2010年代後半に親会社(岩通)に吸収されている(正確な年月は不明)。 横河電機は2010年に計測器部門(オシロスコープや電力計測器など)を子会社の横河メータ&インスツルメンツ株式会社(現横河計測株式会社)に統合している。つまり岩通とは反対に計測器部門を別会社として切り離している。横河電機はプロセス・オートメーション、計装分野に事業を集中する過程で、半導体テスタ、科学分析機器、フォトニクスデバイスなどを本体から分社化や、撤退させてきた。計測器の事業も横河電機の主力ではないので分社化された。岩通が事業再編の中で計測器を本体に戻したのは、計測器事業が単独で収益を出すことが難しい時代に、計測器が岩通にとって必要な技術・商材と認識しているためと理解される。 2018年発行の計測器総合カタログ「IWATSU 電子計測器ダイジェスト2018 Vol.2」には計測器の連絡先として「岩通計測・第二営業部・計測営業担当/アカウント営業担当/国際営業担当と、営業推進部 西日本支店」が明記されている。同社の第二営業部が計測器を販売していたことがわかる。 1990年頃(岩通計測のできる前)に、岩通の計測器の営業部門から計測器のレンタル会社である昭和ハイテクレントに複数人が転職している。岩通の開発部門からはアドシステムズ(ISDNの擬似交換機の草分け)などの計測器メーカがスピンアウトで生まれている。岩通は古くからNTTに電話機を納品してきた中堅の通信機メーカ(電電ファミリー)で、岩通計測はアナログオシロスコープの国内トップブランドという計測器の老舗(名門)である。 現在の岩崎通信機は、2009年に半導体評価用のカーブトレーサを発売し、パワーエレクトロニクス関連の計測器に傾注している。海外製の特殊なプローブも積極的に取り扱い、デジタルパワーメータの輸入販売など、同社ホームページには転売品が多く掲載されている。 2024年10月に岩通はあいホールディングスの傘下になった。あいホールディングスは小型データロガーのグラフテック株式会社(旧渡辺測器)の代表(会長と社長)が代表を兼務する持ち株会社で、情報機器(旧電話機)の株式会社ナカヨも傘下にある。オシロスコープと記録計という老舗計測器2社が1つの持ち株会社の傘下になった。ただし、会社概要を見る限りは、グラフテックが岩通を買収した形である。 岩崎通信機(京王線久我山駅下車、杉並区)、横河電機(JR中央線三鷹駅下車、武蔵野市)、日本無線(JR中央線三鷹下車、三鷹市)と、東京都の23区西端には計測器メーカが3社もある(日本無線は2000年頃までは計測器部門があり、アナログの無線機テスタをラインアップしていた)。付近の地元住民は、電話機の「ガンツウ」(岩通)、無線の「ジェイアールシー」(JRC:Japan Radio Co., Ltd. 日本無線)、計測器の「ワイイーダブリュ」(YEW:Yokogawa Electric Works、横河電機製作所)と呼んでいた。

カウンタ(かうんた)

(counter) 周波数 を測定してデジタル表示する計測器。いわゆる、周波数計のことを電気計測器業界では「カウンタ」と呼称している。ユニバーサルカウンタ、周波数カウンタ、マイクロ波周波数カウンタなどがあり、それらを総称して「カウンタ」と呼んでいる。マイクロ波周波数カウンタはRFカウンタとも呼ばれ、アンリツやキーサイト・テクノロジーなどの高周波測定器メーカがつくっている(アンリツ:マイクロ波フリケンシカウンタ MF2412C、キーサイト:RF周波数カウンター 53210A、2025年10月現在の各社HPより)。TechEyesOnlineの原理・基礎の記事には「ユニバーサルカウンタの基礎と概要」がある。 以前はアドバンテスト(現エーディーシー)や横河電機(現横河計測)などがつくっていたが、現在は国産メーカでは岩崎通信機くらいしかラインアップしていない(2022年現在)。昔ほど需要がないためと推測する。海外メーカのキーサイトやテクトロニクスはラインアップがある(キーサイト:ユニバーサル周波数カウンター/周波数タイマー 53220A/53230A、テクトロ:周波数カウンタ/アナライザ FCA3000/3100シリーズ、2025年10月現在の各社HPより)。 CDやDVDが普及した1990年頃にはカウンタの1種であるタイムインターバルアナライザやタイムインターバルジッタメータが活躍した。周波数の逆数は時間なので、カウンタは時間の測定器でもある。時間の標準になる発生器(発振器)は信号発生器に分類されている。 カウンタは「数を数えるもの」という意味なので、微粒子の数を測定するパーティクルカウンタや放射線測定器のガイガーカウンタなど、周波数(時間)の測定器以外のカウンタと呼ばれる製品群もある。 電気の周波数のように光通信では波長で評価される。スペクトラムアナライザは周波数ごとのパワーをグラフ表示するし、光スペクトラムアナライザは同じことを波長で表示する。簡便に波長の値だけをデジタル表示するのが光波長計である。ならば周波数をデジタル表示するのは「周波数計」と命名するのが自然である。ところが「周波数をカウント(数える)」という周波数カウンタまたは単にカウンタと呼んでしまったので始末が悪い。略さずに「周波数カウンタ」といい続けてくれれば、まだほかのカウンタと混同されないのに、電気計測器業界では「カウンタ」という表記で定着している。はじめから光波長計のように周波数計と命名しなかったことが悔やまれる(そうしておけば「計測器村の住人」以外の万人にもわかりやすかった)。

クロノメータ(くろのめーた)

(chronometer) スイスの公的機関であるCOSC(クロノメータ検定協会、The Contrôle officiel suisse des Chronomètres、読み方:コスク)によって認定された、高精度の機械式時計に与えられる称号。日差-4~+6秒の厳しい基準を満たす必要があり、機械式時計の精度と品質を保証するもの。認定された時計はダイヤルに「Chronometer」と表示でき、高精度なムーブメントを搭載していることの証明になる。現在では高級腕時計にCHRONOMETERと表記されるモデルがいくつもある。 1735年に英国の木工職人の制作に始まり、18世紀に「船の揺れや温度変化に影響されない、高精度な携帯用ぜんまい時計」としてクロノメータは開発された。大航海時代(15世紀中旬~17世紀中旬)に多かった海難事故の削減にクロノメータは役立った。 chronoはギリシャ語で「時間」(ギリシャ神話の時間神はクロノス)、英語のメータ(metry)は「測定法」で、クロノメータは「時間測定法」。 似たことばの「クロノグラフ(chronograph)」は、ストップウォッチ機能のある時計(または時計についているストップウォッチ機能)。クロノメータは精度に関する「規格」や「称号」で、クロノグラフは時間を計測する「機能」を指している。 meterがメータとメーターがあるように、クロノメーターという表記もある。 ドイツのひずみ測定メーカ、imcの多chひずみデータロガーにCRONOS(クロノス)がある。名称の由来は不明だがcrono(時間)が由来かもしれない。

ジッタ測定器(じったそくていき)

ジッタ(パルス信号の時間方向のゆらぎ)を測定する機器。CD・DVDなどオーディオ・映像機器の評価に使うジッタメータが代表例。アイパターン測定はジッタ測定ともいえる。伝送品質の評価をするエラーレート測定もジッタ測定の1種といえる。オシロスコープ(ジッタ解析ソフトが必要)やタイムインターバルアナライザは広義にはジッタ測定器である。ジッタメータとタイムインターバルアナライザは同じ要素技術を元にしている(菊水電子工業にはタイムインターバルジッタメータ、という品名のモデルがあった)。このようにジッタ測定器の意味は広い。

ジッタメータ(じっためーた)

レコードプレーヤの回転ムラを検査するためのワウフラッタメータが原点で、その後、テープレコーダや光ディスクドライブの生産で時間の揺らぎ(ジッタ)を測る専用測定器(検査機器)となった。現在ではほかの方法で検査されるためジッタメータはあまり使われなくなってきている。横河電機(現横河計測)には光ディスクドライブ用ジッタメータのTA120Fというモデルがあった。計測器の分類としては、時間測定器の内のエレクトリック・カウンタ(略してカウンタ)の1種だが、用途は上記のようにオーディオ・映像機器である。ジッタメータはジッタ測定器の1種ともいえるが、「ジッタ測定器」というとより意味が広くなり、カテゴリー「カウンタ」の範疇には収まらない。たとえば「アイパターン測定の機能があるオシロスコープ」はジッタ測定器といえる。

周波数カウンタ(しゅうはすうかうんた)

(frequency counter) 周波数をデジタル表示する測定器。計測器の分類としては、時間測定器の内のエレクトリック・カウンタ(略してカウンタ)の1種。周波数の逆数が時間なので、時間の表示もできる。ここでいう時間とは周期(秒)のことである。Hewlett Packard(HP、ヒューレット・パッカード、現キーサイト・テクノロジー)が1952年に最初の周波数カウンタHP 524A(10MHz)を発売してから、多くの周波数カウンタがつくられた。日本ではタケダ理研工業(現アドバンテスト)が1957年に国産初のTR-124Bを発売している。現在は国産では岩崎通信機がラインアップしている。横河電機やアドバンテストは生産中止になり、現存(後継)会社の横河計測やエーディーシーはカウンタをつくっていない。周波数カウンタは周波数・時間の正確な測定器であるが、近年は需要が低く撤退したメーカが多い。 時間(周波数)測定器であるカウンタ(エレクトリック・カウンタ)の名称(品名)は、現在は周波数カウンタとユニバーサルカウンタのどちらかが多い(メーカによって異なる)。キーサイト・テクノロジーHPの製品ページ「RF&ユニバーサル周波数カウンター」では、「周波数カウンターの製品ラインアップ」と題して以下の3モデル(形名 / 品名 / 仕様)が掲載されている(2026年1月)。 53210A / RF周波数カウンター / 350 MHz 、10桁/秒 53220A / ユニバーサル周波数カウンター・タイマー / 350 MHz、12桁/秒 、100ps 53230A / ユニバーサル周波数カウンター・タイマー / 350 MHz、12桁/秒 、20ps 周波数カウンタとユニバーサルカウンタの違い(定義)は不明瞭だが、周波数に特化した周波数カウンタが多機能になりパルス幅、デューティ比、位相、時間差など、周波数以外に時間も位相も測定できる万能 周波数時間測定器になり、ユニバーサルカウンタと呼ばれるようになったといわれる(正確な定義はない)。ただし上記のキーサイト・テクノロジーは周波数カウンタをカウンタの総称、ユニバーサルカウンタを具体的な製品名称にしているようにも感じられる。つまり、メーカによって名称は様々で、統一見解(きちんとした定義)はない。

周波数測定器(しゅうはすうそくていき)

周波数を測定する機器の総称。オシロスコープやカウンタなどがある。

ストップウォッチ(すとっぷうぉっち)

(stopwatch) 時間を測定する機器。計測器ではないが、ノギスやマイクロメータなどの寸法計測器(精密長さ測定器)とともに原子力発電所(原発)などのプラントの施工・保守で定期的に使用される。そのため、計測器レンタル会社は(ストップウォッチは計測器ではないが、他の多くの計測器と共に定検で使用されるため)保有している場合がある。 時間の計測器の機種分類(カテゴリー)は「カウンタ」なので、ストップウォッチもカウンタに分類される。

タイムインターバルアナライザ(たいむいんたーぱるあならいざ)

(time interval analyzer)周波数の時間的な変化を観測する機器。ディスプレイには横軸:時間、縦軸:周波数の波形が表示され、信号源のジッタ観測や、PLL(Phase Locked Loop)の応答時間の観測などに使用される。計測器の分類としては、時間測定器の内のエレクトリック・カウンタ(略してカウンタ)の1種。連続する波形の時間情報の測定と記録を行い、統計処理をした結果やトレンドを本体画面に表示することができるため、通信、レーダ、光ディスク、レーザプリンタの開発に使われていたが、現在では高性能なユニバーサルカウンタの一部の機能となっている。1990年代から2000年代にDVDが進化した時代に、カウンタをラインアップしていた横河電機はタイムインターバルアナライザTAシリーズ(TA220、TA520、TA720など)を販売していた。菊水電子工業にはDVDに加えCDジッタ 測定もできるタイムインターバルジッタメータKJM6765Sがあった。

タケダ理研工業(たけだりけんこうぎょう)

(Takeda Riken Industry Co., Ltd.) 現アドバンテストの旧会社名。1954~1985年に存在した老舗計測器メーカ。1954年に武田郁夫(当時30歳)が「タケダ理研工業株式会社」を創業。通信省電気試験所に勤務していた武田氏は、大手電機メーカが出がけない計測の分野に着目し、研究開発型ベンチャー企業を設立した。1960年代までに周波数カウンタやデジタルマルチメータ(DMM)など、現在では基本測定器と呼ばれる製品を開発した。同社の企業ロゴはタケダのTと理研のRをデザインした「TR」で、計測器の形名の頭もTRだった。TR5211、TR5151などのカウンタの中古品はいまだにネットに出展されている(つまり多く売れたモデルで市場に出回った)。同社のDC~低周波のラインアップはブリッジなどを早くから手掛けたYEW(現横河計測)と競合している。汎用計測器(基本測定器)ではタケダ理研と横河電機はコンペチタだった(※1)。 1970年代にはRF分野のスペクトラムアナライザ(スペアナ)や、半導体製造装置のメモリ・テスト・システム、光通信測定器を開発した。日本のデバイスメーカがメモリ(DRAM)で世界シェアを独占するのに伴い、同社のメモリテスタは世界一になっていった。1976年に富士通の資本参加があり、1985年に社名をアドバンテストに変更(※2)。創業からのタケダの名前は消えた。 1990年代の携帯電話の普及期にはローデ&シュワルツの代理店としてCMUシリーズ無線機テスタなどを販売した。アンリツや安藤電気のような電電ファミリー(NTTに光通信計測器を納めるメーカ)ではないが、光ファイバの評価測定器を開発してOPMなどの光通信計測器に参入し、「光の3A(スリーエー、アンリツ、安藤電気、アドバンテストの頭文字がいずれもAのため)」と呼ばれた。2003年にはRF(高周波)以外の機種群を株式会社エーディーシーに移管し、後に高周波のモデル(スペアナやネットワークアナライザ)もやめて計測器から撤退した。 1970年頃から埼玉県行田に主力工場があり、東京都大田区蒲田に本社があるNEC系列の半導体テスタメーカの安藤電気とは、1980年頃には競合だった。1982年に安藤電気に入社した営業マンで、タケダ理研に入社希望で訪問したが、「文系の学生は応募していない(つまり営業職も全員、理工系で採用する)」と断られ、競合を聞いて安藤電気に入社した人がいる。 アドバンテストはタケダ理研創業の計測器から撤退したが、2015年に無線式の温度ロガー(AirLogger)を発売するなど、新規事業としてあらたな計測器や分析器を模索している。小野測器は2021年にAirLoggerとほぼ同等の競合品「無線温度計測システム WC-1000/WT-1100」を発売し、その後シリーズを増やしているので、アドバンテストの温度ロガーは(他社が真似するほど)販売好調だったと推測される(※3)。 タケダ理研は、戦後の1950年代に創業したベンチャー計測器メーカが、計測器を別会社に移管して成長した例である。横河電機もコアビジネスではなくなった計測器を別会社(横河計測株式会社)に分離している。アドバンテストは半導体テスタの、横河電機は計装(プロセス)の世界的なメーカである。 同社の製品カタログにはデジボル、DVM、VIGなどの表記がある。これらは低周波の計測器の用語だが、タケダ理研(アドバンテスト)のつくったことば(方言)である。2021年時点のエーディーシーの技術の部署名にVIGが使われている。 (※1) 1987年に横河電機は計測器レンタル業の横河レンタ・リース(YRL)を設立した。YRLの購買部長はアドバンテストに「購入する適切なモデルの見積書」を依頼した。ところがアドバンテストの営業は「競合である横河電機レンタル(YRLのこと)に自社の売れ筋モデルを教えるなんてできない」と思い、真面目に答えなかったらしい。当時の横河電機はレコーダの日置電機やオシロスコープのテクトロニクスとも競合なので、YRLは「横河」の冠が計測器ユーザには有利だったが、仕入れ先の計測器メーカには大きなハンデを持っていた、と筆者は思う。 (※2) 1990年頃にアドバンテストの半導体テスタの営業マネージャに、社名の語源を筆者は尋ねたことがある。「当社の半導体テスタに、いつ頃からか“Advanced Tester”というサブタイトル(キャッチ?)が書かれていた。役員などの幹部がそれを見て“社名はこれが良い”と提案したかもしれない」、と彼は冗談交じりに答えた。単なる面白い想像の話だったのか(筆者をからかったのか)、噓のような本当の話だったのかは不明。タケダ理研がアドンテストとは渡辺測器がグラフテックよりも大胆な社名変更に思える。とにかく、タケダ理研は1980年代に電子計測器ではなく半導体テスタに舵を切り、世界有数の優良株に成長する。advance(前進)、advanced(高度な)の例としては、横河電機がスタンドアロンのICE(In Circuit Emulator、デバッガ、読み方:アイス)を1990年に子会社に技術移管して、新規開発を始めたadvice(アドバイス)も「ADVanced ICE(前進する、高度なICE)」が由来、という話がある(これも真偽は不明)。 (※3) 同社は2004年からテラヘルツ研究に着手し、新企画商品開発室は2014年にテラヘルツシステム事業部になった。アドバンテスト仙台事業所は複数のテラヘルツ分光・解析装置を製品化した。ただし、前述の無線データロガーを含む2000年代に新規参入した計測器/分析機器は、2025年9月30日にすべて生産終了した。理由は公表されていないが、半導体テスタに資源を集中する方針と思われる。同社はDC計測から始まり、高周波(RFや光通信)の計測器で1990年代にアンリツやキーサイト・テクノロジーに互した。優秀な技術者と要素技術を持っているので、高周波の計測器・分析機器から撤退することは惜しまれる(筆者感想)。横河電機の通信計測器は1990年代から2000年代に参入から撤退まで約10年だったが、アドバンテストの高周波計測も約20年しか続かなかった。国産の高周波計測はアンリツの1社頼みである。

DVD評価用測定器(でぃーぶいでぃーひょうかようそくていき)

DVD(Digital Versatile Disc)を翻訳すると「デジタル多用途(多目的)ディスク」。デジタルデータの記録媒体である第2世代光ディスクの1つだが、2000年代以降に映像記録の主要メディアになり、2020年現在も使われている。VHS(家庭でTV録画に普及したテープ)や1980年代に流行ったレーザーディスク(LD)を置き換える形で普及した。 形状や記録・読取方式はCD(コンパクトディスク)とほぼ同じだが記録容量がCDの約6倍になるため、CDでは不可能だった長時間映像の記録が可能になった。CDと同じく細かい溝の彫られた樹脂製の円盤をドライブ装置内で高速回転し、溝に沿ってレーザー光を照射してデータの読み取り/書き込みを行う。規格策定は業界団体のDVDフォーラムが行なっている。コンピュータなどのIT機器(情報機器)でもデータ記録メディアとして利用されている。 DVDが普及する時期には、ジッタを評価するジッタメータやタイムインターバルアナライザなどのオーディオ・ビデオ測定器が活躍した。菊水電子工業や横河電機(現横河計測)がつくっていた。2004年秋に電波新聞社が刊行した電子計測器&システム[ガイドブック]2005の「オーディオ・映像機器用測定器&システム」の冒頭では「DVDなどの光ディスクに関する規格とその評価測定器」について菊水電子工業が解説している(もちろん計測器としては同社のタイムインターバルジッタアナライザKJM6775が写真付きで紹介されている)。静岡県浜松市にあるパルステック工業には光ディスク評価装置があり、現在も現役である。 青色LEDの発明によって、2003年頃からBlu-ray Disc(ブルーレイディスク)の生産が始まり、DVD評価用の測定器は活況になった。アドバンテストからエーディーシーに移管された計測器群の中には光パワーメータがあるが、光通信で使う波長ではなくBlu-rayのようなより短波長の領域をカバーしたセンサをラインアップしている。同社HPの光測定器ページには「光ディスクの開発や生産ラインに最適」や「ブルーレイ対応まで選べる9品種のセンサ」などのうたい文句が書いてある(2022年12月)。つまり同社のOPMはアンリツや横河計測(旧安藤電気)のような光通信(光ファイバ通信)向けではなく、DVDなどの家電製品をターゲットにしていることが明白である(同社の光計測器はOPMだけで光源や光スペクトラムアナライザ、OTDRなどの光通信測定器はない)。

ディップメータ(でぃっぷめーた)

(dip meter) 共振回路やアンテナの共振周波数を測定する計測器。発振回路に真空管が使われていたころ、共振したことを真空管のグリッド電流の減少によって検出したため、グリッドディップメータ(GDM)と呼ばれたことが語源。dipは「下がる」、「探る」の意味。当時はアナログの指示計器で、メータの針が共振周波数で小さい値を指示(指し示)した。メーカによっては「デップメータ」と呼称。 三田無線研究所のDELICA DMC-230S2/DIGITAL DIP METERや、大松電気(現リーダー電子)のLDM-810/グリッド デップメータやLDM-811/TRデップメータなどがあった(形名/品名を記述)。品名のTRはトランジスタの略記である。LDM-811の製品説明には「トランジスタとダイオードを使った高感度の超小型デップメータ、屋上や野外で活用できる」とある。LDM-810の広告には「ニュービスター(※)を使い、極めて安定な発振回路を有する超小型デップメータ。アマチュア無線用として設計」とあり、価格はLDM-811の半額以下である(1964年9月発売のトランジスタ技術創刊号の表3広告)。 (※)米国のRCA社が考案した真空管。

標準器(ひょうじゅんき)

(calibration standard) 計測器で標準器というと、標準抵抗器と呼ばれる「基準抵抗となる測定器」や、セシウム周波数標準器などの周波数標準器、ブロックゲージなどの長さの標準器がある。 電圧・電流・電力の標準器としては、フルーク(フルーク・キャリブレーション)に6100A電力標準器や732B直流電圧標準器などの、品名に「標準器」と付く機種があったが、現在は電圧電流発生器(いわゆるSMU)が主流である。同社のマルチプロダクト校正器は、マルチメータやクランプの校正をする校正器である(オプションには「オシロスコープ校正」もある)。校正器と標準器はほぼ同義である。 エヌエフ回路設計ブロックのRX4763三相標準電圧発生器はメータやトランスデューサなどの校正・点検用途に使われる、特定用途向けの標準器といえる。同社は創業当初の1960年代から増幅器や交流電源を開発し、電力関連の機器向けの電圧電流発生器をラインアップしている。応用製品として1980年代に保護リレー試験器を発売し、国内トップシェアである。 計測器の校正に使う精度の高い計測器を「標準器」や「校正用標準器」と呼んでいるが、品名に「標準」が付かない場合も多い。たとえば「8.5桁 高精度/高確度デジタルマルチメータ」(高精度DMM)は校正用途では標準器として使用される。通常のデジタルマルチメータは4~6桁なので、8桁表示できる精度の良い計測器を標準器(校正用の標準器)として使用する。 標準器を設備している施設を標準器室や標準室と呼ぶ。校正をするための部屋なので、標準室は校正室とも呼ばれる。 時間の標準器であるルビジウム発振器は標準時刻に使われる計測器で、TechEyesOnlineでは信号発生器のカテゴリー(機種群)に分類している。光周波数コムは光の標準周波数として使われる(光コム)。インターネットが普及し、ネットワークを経由してコンピュータ、サーバ、ルータなどの機器の内蔵時計を、正確な日本標準時(UTC)へ同期させるNTPタイムサーバが導入されている。NTP(Network Time Protocol)というプロトコルを使用し、ミリ秒〜数十ミリ秒単位の精度で時刻を補正・管理する。時間の標準器の1種といえるが、名称に「標準」はない。 放送インフラもインターネット利用(IP化)が普及し、通信事業者や放送局などはナノ秒・マイクロ秒単位の超高精度な時刻同期が必要になった。IEEE1588 PTP(Precision Time Protocol)に対応した「PTPグランドマスター(高精度な標準時刻発生器)」を国産のセイコーソリューションズが販売している。原田産業は海外製品を輸入している。これらはネットワーク機器、通信基地局などへ正確な時刻を配信する時間の標準器で、映像測定器の老舗 リーダー電子も「シンクジェネレータ」の名称でリリースしている。グランドマスターやシンクジェネレータという名称からは標準器は想像しにくい。InterBEEの展示品の代表といえる(2025年現在)。 標準器として一番もとの基準となるものを1次標準と呼び、その写しで基準となるものを2次標準という。1次標準は各国の政府が管理しているので国家計量基準とも呼ばれる。たとえば重さの1次標準であるキログラム原器(※)は産総研に保管されている。2次標準は校正の認定事業者などが使っている。計測器を実際に使用している各メーカの標準室の標準器は3次標準が多い。そのため3次標準は実用標準とも呼ばれる。おもりの校正事業者は、上位の認定事業者の2次標準器で校正された分銅を常用参照標準器と呼び、自社の標準器(最上位の分銅)にしている。 (※) 以下の記事にキログラム原器の写真がある。 【編集後記】130年ぶり質量単位キログラム定義改定!

マイクロ波周波数カウンタ(まいくろはしゅうはすうかうんた)

(microwave frequency counter) 時間測定器の内のエレクトリック・カウンタ(略してカウンタ)は周波数を表示する。種類は周波数カウンタ、ユニバーサルカウンタなどがあるが、マイクロ波帯の周波数(数十MHz~数十GHz程度)を測定するカウンタをマイクロ波周波数カウンタ(またはマイクロ波カウンタ、マイクロ波フリケンシカウンタ)と呼び、無線通信分野で使用される。電力測定器のパワーメータで、高周波に対応したものをRFパワーメータというが、マイクロ波周波数カウンタはRFカウンタといえる。RF測定器メーカであるアンリツ、キーサイト・テクノロジーなどがラインアップしている。最近のユニバーサルカウンタには高い周波数まで測定できる入力があり、マイクロ波周波数カウンタの機能が包含されている機種もある。

ユニバーサルカウンタ(ゆにばーさるかうんた)

(universal counter) 周波数や周期(秒)、2チャンネル入力で時間差の測定や周波数比の測定など、多くの時間パラメータが測定できるカウンタ。計測器の分類としては、時間測定器の内のエレクトリック・カウンタ(略してカウンタ)の1種。 1952年にHP(現キーサイト・テクノロジー)が周波数を測定できる最初の周波数カウンタを発売したが、その後に機能を拡張して周波数だけではなく、周期、タイムインターバル、パルス幅など時間に関するさまざまな測定が1台で行えるようになったため、ユニバーサル(普遍的な、幅広い)カウンタと呼ばれるようになったといわれている。現在のカウンタの主流の機種群である。現在のカウンタはほとんどが多機能で、いわゆるユニバーサルカウンタといえる。ただし、各メーカの名称はユニバーサルカウンタではないモデルも多い(メーカの命名する品名は好き勝手で統一されていない。なのでユニバーサルカウンタの定義は各メーカによって同じではない ※)。 海外メーカではキーサイト・テクノロジーやテクトロニクスにラインアップがあるが、国産では岩崎通信機が唯一のベンチトップモデルのメーカとなった(横河計測やエーディーシーは生産終了した)。 Pendulum Instruments (ペンデュラム)は周波数カウンタ ・アナライザやGPS・ルビジウム発振器などの高精度な周波数の計測器(カウンタと発生器)のメーカで、計測器の校正・修理事業社のオルティカが取り扱っていたが、現在は丸文(イーリスカンパニー 測位タイミング課)が販売店をしている。現在の現役モデル CNT-9xシリーズの品名は「タイマー / カウンター / アナライザ」だが、実態はユニバーサルカウンタといえる(筆者の見解)。 (※) ユニバーサルカウンタの定義について キーサイト・ブログやアドバンテストの製品マニュアルには「自社のユニバーサルカウンタでは○○が測定できる」という記述はあるが、「○○が測定できる計測器をユニバーサルカウンタという」という説明はない。

ラリアント(らりあんと)

(Ralliant Corporation) フォーティブ(Fortive)の精密技術部門が、2025年6月30日に独立(スピンオフ)した企業体の名称。 オシロスコープの世界的ベンダであるテクトロニクスはラリアントに含まれる。 フォーティブ傘下の計測器メーカであるテクトロニクスとフルークはラリアント設立によって親会社が別になった。計測器はprecision(プレシジョン、「精密」、「精度」)と呼称されることが多い。フォーティブ経営陣は「テクトロニクスはプレシジョン(精密機器)」で、「フルークはオペレーティング(運用、操作)」とした。つまりフルークの現場測定器(マルチメータやクランプなど)は工場やビルなどの電気設備の運用(保守・点検)のための機材(パーツ)と認識されたので、フルークはラリアントではなく新生フォーティブに留まることになった。フォーティブ経営陣にとってフルーク製品は計測器ではなく「運用のための機器(重要なパーツ、ハードウェア)」である。 日本ではテクトロニクスとフルークは1つの持ち株会社の下の組織(社内カンパニー)になっている。会社名は株式会社テクトロニクス&フルークである。株式会社テクトロニクス&フルーク フルーク社にはフルーク、フルーク・キャリブレーション、フルーク・ネットワークスなどの4社の日本組織(営業部)があるが、2025年4月1日から「フルーク・ジャパン」に社名変更し、4社は各営業部門となった(株式会社テクトロニクス&フルークではなくなった)。米国のフルーク本社はフォーティブのインテリジェント・オペレーティング・ソリューションに所属している。TechEyesOnlineの記事「ハンドヘルド・デジタル・マルチメータの基礎と概要 (第3回)」(2025年12月公開)の巻末で、フルーク・ジャパン社長が今後の戦略について語っている。 ラリアント傘下のテクトロニクスはパワーエレクトロニクスに注力すると発表している(米国 ラリアントのプレスリリース)。TechEyesOnlineの【イベントレポート】テクトロニクス イノベーション カンファレンス(TIC) 2025(2025年8月公開)ではパワエレ関連製品が紹介されている。また、同社は2025年9月に新しい広帯域オシロスコープ 7シリーズDPOを発表し、従来のソリューション(高速デジタルなど)も強化している。 ラリアントはテクトロニクスを中心とした「プレシジョン(計測器)の会社」と説明されているが、実態や戦略はまだ不透明である(筆者の感想)。2024年にフォーティブ傘下になった直流電源のEAエレクトロニクス社(EA-Elektro-Automatik)はテクトロニクスのファミリー企業で、主力製品に回生電源があるので「テクトロはパワエレのラインアップが充実した」といわれている(回生電源はインバータやバッテリなどの評価に使われる)。ただし回生電源は競合が多くレッドオーシャンである。以前からDC電源をラインアップするキーサイト・テクノロジーでも回生電源の販売には苦戦している。パワー半導体の評価に使う光絶縁プローブはテクトロニクスの顔であるオシロスコープとの相乗効果があるが、回生電源はそうではない。ラリアントになったテクトロニクスはフォーティブの縛りから放たれ、発展が期待される。 ダナハーはフルーク買収後に、2007年にテクトロニクスを、2010年にケースレー・インスツルメンツを傘下に収めた。Keithley(ケースレー)はブランドとしては残っているが会社はなくなりテクトロニクスに吸収された。2016年にこれら3社を含む産業計測機器部門は分離されフォーティブができた。テクトロニクスとフルークは製品群がほとんど重複しないので「株式会社テクトロニクス&フルーク」は広いラインアップのある強力な計測器メーカになった。これは第2のキーサイトのような総合電気計測器メーカを彷彿させた(筆者の感想)。日本ではテクトロニクスの本社(品川インターシティ)の同じフロア(6階)にフルークは転居し、総務部門などのスタッフ系インフラは2社で共有された(着々と確実な統合が進んだ)。ただし、2社の新製品開発や販売戦略は融合することはなかった。フルークの現場測定器(ハンドヘルドのデジタルマルチメータなど)とテクトロニクスのオシロスコープや高周波の製品は顧客や販売方法が違うので、融合する素地はなかったらしい。テクトロニクスの技術マネージャが「フルークの校正機器はテクトロと合体してほしかった」とこぼしたのを筆者は耳にした(2025年5月)。つまり現場測定器はいらないが、高額な標準器はほしい。その心は「キーサイト・テクノロジーの高周波製品と競いたいから」と筆者は推測する。 フォーティブには従来、3つの戦略的セグメント「インテリジェント・オペレーティング・ソリューション」「精密技術」「先進ヘルスケア・ソリューション」があった。2024年9月に精密技術部門を分離・独立し、新会社「ラリアント」の設立を発表。2025年6月末に分離が完了し、ニューヨーク証券取引所でシンボル「RAL」で取引を開始。 ラリアントは、試験・測定機器、センサ、安全システムなどの精密技術製品を事業とする。他方の新生フォーティブは、インテリジェント・オペレーティング・ソリューションと先進ヘルスケア・ソリューションの2つのセグメントに注力する。フルークはオペレーティング・ソリューションを受注する際の重要な部材(現場測定器というハードウェア)に位置付けられている。 ただし筆者には疑問がある。フルークには現場測定器ではない研究開発向けのモデルもある。フルーク・ネットワークスの製品群はケーブルテスタのような現場作業用途が多く、研究開発用のモデルが少ないと筆者は感じるが、校正室で使われるフルーク・キャリブレーションの標準器は世界トップブランドである。校正室や実験室で使われるフルーク製品を、フォーティブ経営陣はどう認識しているのだろうか。「良くわからない製品群」と思っているならば、テクトロニクスのビデオ事業部を「コア事業ではない(良くわからない)」と、いとも簡単に売却したように、フルーク・キャリブレーションも売られてしまうかもしれない。そんなことはない、運用のための重要パーツであるDMMを管理するための機材(校正用の標準器)も重要である、ということかもしれない。

YEW(わいいーだぶりゅ)

(Yokogawa Electric Works) 横河電機製作所(現横河電機)の略号。1986年頃まではYEWがCI(コーポレート・アイデンティティ)だった。 横河電機は1915年に電気計器の研究所として設立し、1920年に「株式会社横河電機製作所」になった。1986年に横河電機株式会社に社名変更し現在に至る(同社ホームページより)。1983年頃までは「YEW」が企業ロゴとして表記されている製品が多かった。同社の指示計器(針が振れるアナログ式の電圧計、電流計、電力計)は黒い箱型で、弁当箱の愛称があった。最上部には接続端子、その下の約半分くらいが(針が振れる)表示窓で、下半分の何もない黒い箇所に大きく「YEW」と刻印してあった。大学・専門学校などの工学系の学生は黒いYEWを使い実験を行ったので、YEWは電気測定器の代表と広く認識された。 YEWは1963年(昭和38年)9月にhp(ヒューレット・パッカード、現キーサイト・テクノロジー)との合弁企業、YHP(横河ヒューレット・パッカード株式会社)を設立するなど、日本の計測器のトップブランドであった。ただし1975年に世界初のDCS(分散形制御システム/総合計装制御システム「CENTUM」)を発表するなど、横河電機はFA/IA/PAメーカ(工業計器の会社)である。1988年にはYHPから資本を引き上げ、高周波測定器(移動体通信など)に参入し、2002年には(NTTに測定器を納入する)大手通信計測器メーカの安藤電気を100%出資のグループ会社とし、有線通信計測器や半導体テスタをラインアップに加えるなど電気計測分野を拡充したが、現在はそれら全部から撤退している。2010年には測定器ビジネスを分社化し、横河メータ&インスツルメンツ(現横河計測)に統合するなど、今の横河電機のコアコンピタンスに従来の「電気計測」は感じられない。 余談だが、現在の計測器としての記録計の主流であるメモリレコーダではなく、計装の記録計としてのデータロガーは横河電機の主力機種の1つである。ただしこれは電気計測器というより工業計器の一部である(電気計測器の総覧などにはこのデータロガーも掲載されているが、メモリレーダとは用途や顧客が全く異なる計装の記録計である)。計測器の記録計か、計装の記録計かは素人には判別が難しいので、やっかいである。 計装の国内トップベンダーとなったYEWは、同業の北辰電機製作所を1983年に吸収して会社名を横河北辰電機とし、1986年には現在の横河電機株式会社(Yokogawa Electric Corporation)になり、YOKOGAWAを新しいCIとし、YEW時代は終わった。現在の横河電機は、工業計器・プロセス制御システム専業の国内大手電機メーカである。この分野では世界6大メーカ(グローバル・ビッグ6)の一つといわれ、売上の70%が海外事業、従業員の70%が外国籍のグローバル企業である。メーンバンクはみずほで、芙蓉クループの代表企業といえる。 一方で、横河の計測器を継承する子会社の横河計測は、電気計測器の日本市場シェアとしては10%以下(推定)。横河計測は大手計測器メーカの1社ではあるが、「横河」は現在では計測器のトップブランドではなくなった。「横河」と聞いて一目置くのは、YEWを知っている高齢の電気技術者だけである。 計測器情報:YEWの指示計器(電圧計、電流計)の製品例

YHP(わいえっちぴー)

(Yokogawa Hewlett Packard) hp(ヒューレット・パッカード)が日本につくった合弁会社(1963年~1998年)。YHP設立以前は、高周波機器を取り扱う商社のセキテクノトロン株式会社(旧関商事株式会社)がhp製品を輸入販売していた。 1939年に、ウィリアム・ヒューレットとデビッド・パッカードは米国カリフォルニア州でhp(Hewlett-Packard Company、エイチピーと呼称)を創業し、世界No.1の電子計測器メーカとなった。日本のYEW(横河電機製作所)は1963年にhpと合弁でYHP(横河ヒューレット・パッカード)を設立した。YEWは国産初の電磁オシログラフをつくるなど、日本を代表する老舗計測器メーカだった。高周波(RF)測定器はYHPがつくり、YEWはDC~低周波の記録計などをつくるという棲み分けをした(競合しないように機種群の分担を決めた)。当時のYEWはブリッジをラインアップし、回路素子測定器の要素技術を持っていたが、それらはすべて技術者とともにYHPに移ったと推測される。YHPはhpの日本法人(販売会社)でhp製品を販売したが、国内に開発拠点を持ちYHPとして計測器の開発も行った。回路素子・材料の測定器(LCRメータやネットワークアナライザなど)の開発拠点が神戸にあったと筆者は記憶している。1980年代に筆者は国内大手計測器メーカの技術部門にいたが、各計測器メーカの特許出願情報が回覧された。そこには「横河HP」という会社名でインピーダンス測定の多くの特許が掲載されていた。YEWのブリッジは生産終了し、後継機種となるLCRメータなどはつくられていない。インピーダンス計測器は、YEWではなくYHPが開発を行った。 高周波計測器を手掛けるYHPと、「レコーダ、低周波の電力計(デジタルパワーメータ)、ミドルクラスのオシロスコープ」をつくる横河電機(1986年に社名変更)との差は30年間で大きく開いた(YHPは計測器のトップメーカになっていた)。1995年に横河電機はYHPへの出資比率を下げ、高周波測定器の開発に着手した。時は携帯電話の3Gが商用開始する前夜で、1998年にはYHPから完全に資本を引き揚げ、携帯電話評価用の信号発生器を中心に、次々と通信計測器を発表した。 YHPは会社名を日本HPに変更していたが、2000年にhpがIT機器以外の事業(計測器と科学分析機器、ライフサイエンス事業)を分社し、Agilent Technologiesを設立したので、日本HPもアジレント・テクノロジーとなる。さらに2014年にはAgilent Technologiesは科学分析機器のみとなり、計測器はKeysight Technologies(キーサイト・テクノロジー)となり、現在に至る。 世界No.1の総合計測器メーカhpは日本では、高度経済成長期に設立したYHPに始まり、1998年以降に日本ヒューレット・パッカード、アジレント・テクノロジー、キーサイト・テクノロジーと社名が変わった。横河電機は2002年に幸運にも通信計測器大手の安藤電気を吸収し、安藤電気がアジレント・テクノロジーとシェアを競った光通信測定器をラインアップに加え、高周波測定器を強化した。ただし、2000年代後半には光通信以外の通信計測器はすべて中止し、2010年には横河メータ&インスツルメンツ(現横河計測)に計測器部門を移管した。これによって横河電機は(計測器をつくらない)計装(工業計器)のメーカに名実ともになり、(メモリレコーダなどの計測器ではない)計装ユースのDAQ(データロガーなど)をラインアップしている(計測器の記録計か、計装の記録計かは素人には判断が難しい)。 マイクロウェーブ展2022(2022年11/30~12/2、パシフィコ横浜)に、キーサイト・テクノロジーはPXIネットワークアナライザM983xA(新製品)を出展した。「Keysight TechnologiesのR&D拠点の1つであるキーサイトの事業所(兵庫・神戸市)で開発した製品である」ことが、展示会を取材した日経誌で報じられている。

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