検索用語一覧
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- Rx(あーるえっくす)
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有線・無線通信で受信データのこと。Received dataの略記(小文字のxはデータの意味)。受信機(レシーバ)のことをRxと記述している例もある。Rxと対になる送信データはTx(Transmission dataの略記)と記載される。Rx同様に送信機をTxと表記することもある。
- IEICE EXPO(あいいーあいしーいーえきすぽ)
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一般社団法人 電子情報通信学会は英語表記「The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers」の頭文字をとったIEICEを略称にしている。その名の通り「電子、情報、通信」の3分野を扱う学術団体。1911年(明治44年)に逓信省に設置された研究会が元になったといわれている。電気学会(IEEJ)、情報処理学会、照明学会、応用物理学会(JSAP)、映像情報メディア学会を含めて、電気系6学会と呼ばれる。 IEICEは3月に発表・講演会である総会(General Conference)を行うが、これを「総合大会」と呼んでいる(※)。他の学会同様に学会に参加する先生たちの所属する大学で行われる(都心と地方の大学を毎年、交互に設定しているようである)。イベントとして展示会が併設され、10~20社程度の企業展示がある。これがIEICE EXPOと呼ばれるイベントである。IEICEのホームページでは、たとえば「IEICE EXPO 2025 東京(企業展示)」のタイトルで出展社を掲載している(2025年3月現在)。 IEICEが主催し、毎年11月末頃にパシフィコ横浜で開催されるMWE(Microwave Workshop&Exhibition、マイクロウェーブ・ワークショップ)にもマイクロウェーブ展があり(以下に参考記事あり)、IEICE EXPOはそのミニ版といえる。計測器メーカとしては通信御三家のキーサイト・テクノロジー、ローデ・シュワルツ、アンリツに加えて、キャンドックスシステムズやテクノプローブなどが常連の参加社である。各企業とも馴染みの先生方との長年のお付き合いがある。 IEICE EXPO 2025(3/24~27開催)は東京都世田谷区の東京都市大学(旧 武蔵工業大学、通称「ムサコウ」)で催され、主な参加社と展示は以下である(製品やサービスを展示した17社の中の11社を概説)。常連の出展社から筆者が聞いた話では、2025年の出展社は通年よりも多いらしい。IEICEはMWEという大きなイベント(講演会&展示会)があるので、IEICE EXPOは大学で開催するミニ展示会である。NWEのような学会主催の展示会は他にはなく、IEICE EXPOと同じ3月に開催される応用物理学会のJSAP EXPOには約150社、電気学会の「電気学会 全国大会 附設展示会」には約40団体が出展し、中~大規模の展示会となっている。 ・キーサイト・テクノロジー:USB計測器のVNA、FieldFox(フィールドフォックス)。 ・ローデ・シュワルツ:スペクトラムアナライザ、高分解能オシロスコープ(最新の8chモデル、いわゆる多チャンネルオシロスコープ) ・アンリツ:人材採用展示コーナで、製品展示はしていない。人事総務部 人財開発チームが説明。 ・(株)キャンドックスシステムズ:カプラやアンテナ。 ・(株)テクノプローブ:RFのプローバ関連製品(RF Probe Headなど)。 ・丸文(株) アントレプレナ事業本部 イーリスカンパニー 情報通信課:EXFOのOLTSと「ファイバー検査スコープ」(光コネクタなどの端面を検査できるハンディモデル) ・有限会社ハイテクアンドファシリティ:RFの計測器を展示。中古計測器の販売と、計測器の修理を業務とし、2001年に設立(本社:千葉県市原市)。 ・リゴル:オシロスコープ、AWG。前週の3/17まで開催されたJSAP EXPOと同じ展示品を「電気学会 全国大会 附設展示会」、IEICE EXPOに順番に持ってきている。 ・T&Mコーポレーション(株):Siglent Technologies(シグレント、新興の中華系オシロスコープのメーカ)のオシロスコープやスペアナほか。令和7年が初参加の輸入商社。 ・ハイソル(株):半導体製造の後工程の機器(JSAP EXPOに出展した中から、ごく一部を展示)。理化学機器や計測器の輸入商社。今回が初参加だが、展示品はJSAPほどフィットしなかった様子。 ・テガラ(株):科学技術計算用のHPC(High Performance Computing)製品。本社は静岡県浜松市。 Ansys(アンシス)のサイバネットシステム(株)やComsol(コムソル)の計測エンジニアリングシステム(株)などシミュレーションソフトの取り扱いメーカも出展しているが、今回の目玉はFlexcomputeである。最近開発されたGPUベースのシミュレーションで、従来のCPUベースより格段に高性能で、スーパーコンピュータよりも計算速度が速いらしい。米国のボストンにプラットフォームがあり、依頼すると有料で計算ができる。製品(シミュレーションソフトウェア)の販売はしていない(ソフトを動かすためのハードウェア構築には億円単位の投資が必要になるため)。会社はエヌビディアのチップを使っているが、単にGPUを使えばできるということではなく、アーキテクチャにノウハウがあり、容易には真似できないらしい。電磁界解析のTidy 3Dや流量解析モデルがある。昨年、韓国のサムスンは副社長が「すべてFleccomputeに変える」ように指示した。TSMAも導入した。「日本の大学へも今日のようにPRしているが、日本企業は判断が遅いので世界の流れに取り残されないか危惧している。従来のCPUベースのシミュレーション製品は遠からず淘汰されてなくなるだろう。」という、大変自信に満ちた説明だった。 (※) 学会によって発表・講演会の名称は異なる。IEICEは「総合大会」だが、電気学会は「全国大会」、JSAP(応用物理学会)は「学術講演会」である。名称に規定はないので、各学会は自由に(先生方は好き勝手に)名称を決めている。また電気学会の全国大会には併設展示会(電気学会 全国大会 附設展示会)があり、JSAPの学術講演会にはJSAP EXPOが開催される。IEICE EXPO、附設展示会など、展示会名称も様々である。
- IOWN(あいおん)
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「Innovative Optical and Wireless Network」の略で、NTTが2019年に発表した次世代ネットワーク構想。光信号のままで(半導体レベルでも電気に変換しないで)伝送・交換処理を行うオールフォトニクス・ネットワークを実現しする。そのためのキーとなる新しい光半導体の試作にNTTは成功したといわれる。従来の電子技術(エレクトロニクス)が光技術(フォトニクス)に変わり、電子技術では解決できなかった低遅延、低消費電力、大容量・高品質のネットワークを構築できる(現在のインターネットの課題が改善できる)と期待される。 GAFA(ガーファ、米国の巨大IT企業Google、Apple、Facebook、Amazon)のような異業種が通信事業者(キャリア)になろうとしている。NTTは老舗の通信事業者として安泰ではない。IOWNの実現でゲームチェンジをはかり、NTTが世界をリードする通信事業者になるというビジョンを発表したのである。2019年にNTT、インテル、ソニーが発起人となって立ち上げた「IOWNグローバルフォーラム」には世界中の名だたる企業が参画した。2030年のIOWN実現に向け、2022年には第一弾としてオープン仕様に基づくAPN(All Photonics Network)(Open APNと呼ばれる)に対応した光伝送装置がNECや富士通から発売される。 参考用語:WDM、電電ファミリー
- IDテスタ(あいでぃーてすた)
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光ファイバの心線対照器の名称。光ファイバ心線を被覆の上から湾曲させ、漏洩した光を受光素子で検知して、心線を検出する測定器。「光ファイバIDテスタ」とも呼ばれる。計測器メーカだけでなく、光ファイバを作っている線材メーカである住友電気工業やフジクラなどが製品をラインアップしている。
- アイパターン(あいぱたーん)
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(eye pattern) デジタル信号のハイ/ロー(1/0)の時間推移を重ね書きで表示した図形。デジタル通信(デジタル伝送)の伝送品質評価に使われる。図形が目(eye)のように見えることに由来する。別名:アイダイアグラム(eye diagram)。アイの開口度合いから視覚的に伝送品質を確認できる。重ね書きされた複数の波形が同じ位置なら信号の時間推移は同じで、(立ち上がりや立ち下がりの時間やタイミングが変動していない)波形はシャープな形になる。この波形は品質の良い信号で、「アイが開いている」、「アイの開口が広い」と表現される。反対に、波形が細くなくて塗りつぶしたようになっていたら、波形の位置(タイミングや電圧)がずれている、品質の悪い信号で、「ジッタが悪い」という評価になる。 アイが開いている(波形の軌跡が塗りつぶす範囲が狭い)ほど、ジッタ(信号の揺らぎ)が少ない、品質が良い状態である。アイパターンを目視すれば、波形の縦の高さや横の幅からタイミングや電圧のマージンを簡便に知ることができる。信号にはオーバーシュートやアンダーシュートが起こるが、アイパターンはアイの形状からジッタなどを知り、必要なら設計を見直すなどのデバッグに使われる。多くの電気・電子回路の設計技術者にとって、アイパターンは基礎用語である。 アイパターン測定器としてはサンプリングオシロスコープ(キーサイト・テクノロジーの86100シリーズなど)が代表モデルだったが、広帯域オシロスコープ(高速オシロスコープ)が2000年代から普及し、マスクパターンがオプションで用意されるようになり、規格ごとのアイパターン評価(適合性試験、コンフォーマンステスト)はオシロスコープで自動測定できるようになった。マスクパターンとは「アイの開口」が通信規格の範囲内にあることを、オシロの測定画面で図形で規定するもの。測定者が波形から伝送品質(ジッタなど)を確認するのではなく、測定器のオプションソフトウェアが規格に合格しているかを評価(判定)する。
- アクセス網(あくせすもう)
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従来はNTTの電話局の交換機と加入者(各家庭や事業所の電話機)を結ぶネットワークを指した。現在は電話機がPCやスマホになり、交換機はルータに変わりインターネットの世界となったが、NTT以外の通信事業者(キャリア)が増えても、いまだにアクセス網はNTTが強く、他の通信事業者はNTTのアクセス網を借りて通信をしている場合が多い。NTTもアクセス網をFTTH(Fiber To The Home、家まで光ファイバを届かせる)の掛け声で光ファイバ化し、フレッツ光などのサービスを展開している。アクセス網を光ファイバにして高速にしたのがPON(Passive Optical Network、ポンと呼称)である。アクセス網の先にあるネットワークの中枢(基幹通信網)をアクセス網と区別してコアネットワークと呼んでいる。
- アクテルナ(あくてるな)
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(Acterna)通信計測器の老舗ワンデル・ゴルターマンや、米国の老舗計測器メーカのウエーブテックを継承し、2000年に設立した、主に通信計測器をつくったメーカ。2005年に光ファイバ用計測器のJDSユニフェーズ(JDSU、旧JDSファイテル)に買収されて会社は無くなった。数年しか存在しなかったため、今では実態が良くわからない、幻の通信計測器メーカ。「アクテルナ」または「アクターナ」と呼ばれた。参考用語:Acterna
- Acterna(あくてるな)
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2000~2005年に存在した通信計測器メーカ。短期間で無くなったので、今となっては実態が良くわからず「謎の通信計測器メーカ」である。ただしネット上にはActerna製の製品カタログも検索でき、(日本だけでなく世界の)通信計測器業界に爪痕を残した。WWG(Wavetek Wandel Goltermann)は米国の計測器メーカWAVETEK(ウエーブテック)とドイツの通信計測器メーカWandel&Goltermann (ワンデル・ゴルターマン)が1998年に合弁した会社だが、さらにハンドヘルドの計測器メーカTTCが2000年にWWCに合併してActerna(アクテルナ、またはアクターナと呼称)が設立された。当時の日本はCATVの普及期で、Acternaはケーブルテレビ用の計測器をInterBEE(インタービー、映像関連の大きな展示会)などに出展していたが、当時の日本での正式な企業名は今となっては不明。 2001年に有線通信測定器の老舗、安藤電気が大株主をNECから横河電機に変更(つまり横河電機に身売り)することに造反して、安藤電気の計測器事業部門の技術マネージャ以下複数の技術者がActernaに転職している。Acternaは光ファイバ用計測器をラインアップするJDSU(旧JDSファイテル)に2005年に買収され、さらに2015年に計測器部門が分割されて現在はViavi Solutions(ヴィアヴィソリューションズ)になっている。 2000年当時は、ドイツのワンデル・ゴルターマンと米国ウエーブテックという老舗計測器メーカが合体したWWGは、キーサイト・テクノロジーに対抗する通信計測器の1極であったが、それを継承したActernaはJDSUに吸収され、数年間で消滅した。JDSUがWWGを飲み込んだのは、従来のデータ通信や伝送・交換装置用測定器という機種群は、光通信を主体にしたモデルに移行していったという背景がうかがえる。光通信測定器と無線測定器を継承したViavi Solutions以外の海外の通信測定器メーカとしては、EXFO(エクスフォ)が光通信の基本測定器(光パワーメータや光スペクトラムアナライザなど)とネットワーク用測定器(伝送装置などの評価)をラインアップしている。国内の光通信の測定器は横河計測(旧安藤電気の光通信の製品群)が健在。LANやOTDR(光パルス測定器)などの可搬型のケーブルテスタではFlukeNetworks(フルークネットワークス)が専業メーカとして有名。 参考用語:伝送交換
- 安定化光源(あんていかこうげん)
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波長が固定で、高安定出力の光源。光通信用の測定器。種類はLEDとLDがある。波長を可変できる光源もある。
- 安藤電気(あんどうでんき)
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(Ando Electric Co., Ltd.) 1933年~2004年に存在した老舗計測器メーカ。正式名称:安藤電気株式会社。東京証券取引所第二部に上場。通信計測器や半導体テスタをつくっていた。大株主はNECで、アンリツ同様にNEC系の計測器メーカだが、安藤電気はNECの持ち株比率が高く、NEC出身者が複数人、社長になっている。有線通信の計測器ではYHP(現キーサイト・テクノロジー)やアンリツと競っていた。独立系ではなくNECが大株主だが、「通信と半導体」という時代の先端を担ったハイテク企業である(1977年にNECはコンピュータ&コミュニケーションを標榜する「C&C」をCIにしていた。通信とコンピュータである)。 1933年に安藤氏が創業。電電公社(現NTT)から通信計測器の開発を任された電電ファミリーの1社。光通信測定器はアンリツと安藤電気の2社がNTTに納めた。1980~2000年頃につくっていたのは基幹通信網の伝送装置向けの測定器である、SDH/SONETアナライザ、 MTDMアナライザ、モデムテスタなど。有線通信には強かったが無線ではアンリツに遠く及ばなかった(ラインアップには無線機テスタはあるが、SGやスペクトラムアナライザはない)。NTTなどに最先端の計測器を納入した。単発の波形しか捉えられないが、パルススコープとでもいうオシロスコープの原子版のような測定器をつくったという話がある。インピーダンス測定も早くから行い、「ブリッジなどの回路素子測定器をつくっていた横河電機の製品よりも、安藤電気のインピーダンス測定器は高精度な測定結果」と評価した大学教授もいた。 1980年頃の同社の計測器事業部は、第一技術部がNTT向け製品と光通信測定器、第二技術部が民需向け製品を開発していた。1980年代の通信測定器以外の主なラインアップは、ICE、ROMライタ、LCRメータ、tanδ測定器など。ICEはインテル80386などの最先端のCPUに果敢に挑戦したが、特定顧客にしか販路が広がらなかった。ROMライタはNECから情報を得るなど、幅広いチップに対応したが、協力関係にあった浜松東亜電機(現東亜エレクトロニクスのフラッシュサポートグループ)に技術移管し、製品は現在も続いている(AF-9700シリーズ)。LCRメータは1980年頃に初号器 AG-4301を発売し、シリーズ化でシェアを伸ばしたが、業界標準のHP(現キーサイト・テクノロジー)のような高周波モデルが開発できず撤退した。 2000年の光海底ケーブルバブルで屋台骨の光計測器が落ち込むと経営が傾いた。大株主のNECが半導体ビジネスから撤退するのに伴い、子会社にATE製品(半導体検査装置)は不要となり、NECに変わる株主が必要となった。横河電機が資本参加し、安藤電気の全事業を受け入れた(2001年にNEC保有株式が横河電機に売却された)。2002年に安藤電気は横河電機の100%出資子会社になり、2004年には事業再編で解体している。 プロトコルアナライザや光通信測定器では当時世界No.1のHPと競い、モデルによってはHPより売れた製品もあった。光通信測定器は現在の横河計測株式会社に引き継がれ、光スペクトラムアナライザは世界No.1を維持し続けている(2022年現在)。 前述のようにNECが半導体デバイスビジネスをするために、グループ内の計測器メーカに半導体テスタをつくらせた。そのため安藤電気の半導体テスタは同業のアドバンテスト(旧タケダ理研工業)などに比べるとNEC以外にはあまり売れなかった。1970年代から2000年頃の半導体テスタは最先端の検査機器(花形製品)として、複数の計測器メーカがつくっていた。安藤電気は半導体テスタ事業が赤字でも、通信計測器(プロトコルアナライザや光計測器など)が補填した。ところが光計測器が赤字になったときに半導体テスタはそれを補填することはなく、会社は立ち行かなくなった。 軽率なことはいえないが、安藤電気がもし半導体テスタをやっていなかったら、光通信などの有線通信計測器の世界トップメーカとして存続していたかもしれない。2002年の社長である本橋氏は同社の計測器事業部出身の技術者で、何代も続いたNECからの天下りではなく生え抜きだった。キーサイト・テクノロジー(当時はアジレント・テクノロジー)が光測定器を縮小したので、安藤電気は光測定器で世界No.1になる目前だった。計測出身のプロパー社長のもとで躍進することなく、横河電機に身売りすることになったのは残念である。 計測器情報:安藤電気の光測定器、安藤電気のプロトコルアナライザ
- E/O変換器(いーおーへんかんき)
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(Electrical signal / Optical signal converter) 電気信号を光信号に変換する機器。光ファイバ通信システムは、電気信号をE/O変換器で光信号に変換して光ファイバで遠方に伝送し、受信側ではO/E変換器で元の電気信号に戻す。E/OとO/Eは光通信には欠かせない装置である。 光測定器にもE/OやO/Eがある。2000年頃まではアンリツや安藤電気などがラインアップしていた(アンリツのE/O・O/E変換器MP9659B、2.4GHzのMP9502A、10GB/sのMP9677Bなど)。日本の基幹通信網(コアネットワーク)に光ファイバが導入されていった1970年代~1980年代にアンリツと安藤電気は光パワーメータ、光源、OTDR、E/O、O/E、光減衰器、光チャンネルセレクタなど数多くの光通信測定器を開発したが、現在は両社ともラインアップを当時よりも絞っている。安藤電気は2000年代に横河電機に吸収され、現在は横河グループで測定機事業を担当する横河計測が旧安藤電気の光計測器を引き継ぎ、光スペクトラムアナライザAQ6300シリーズは世界No.1である。 現在の有線通信の主力である光ファイバ通信は、すべて光信号ではなく、長距離伝送では中継所で「O/Eと電気のアンプとE/O」によって、減衰した光信号を電気信号で増幅する(光海底ケーブルは、電気に変換せずに増幅する光ファイバアンプなどが使われる)。光半導体を使い、光電融合の技術によって(電気に変換しないで)光だけで通信する仕組み(オールフォトニクスネットワーク、APN)をNTTが構想している(IOWN)。
- InGaAs(いんじうむがりうむひそ)
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化合物半導体のヒ化インジウムガリウム(インジウム・ガリウム・ヒ素)。「3元の素子」と呼ばれ、光電素子にInGaAs を用いたフォトダイオード は、900~1700nmの波長帯でフラットな特性があるため、光通信や近赤外波長のセンサなどに採用されている。光パワーメータのセンサ(通信の波長帯)で高感度モデルはInGaAsを使って約-130dBmの仕様を実現している(一般のセンサは-90dBmくらい)。高価なのが難点。 InGaAsの読み方は「インガス」もある。
- InterOpto(いんたーおぷと)
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光産業技術振興協会(※)が開催している展示会の「インターオプト」のロゴはInterOptoである。2024年からは(株)オプトロニクス社が毎年秋に開催している「光とレーザーの科学技術フェア」と合体し、「インターオプト2024-光とレーザーの科学技術フェア-」として共同主催することになった。InterOpto2024は10月29(火)~31(木)にパシフィコ横浜 展示ホールCで169社が出展した。事務局はオプトロニクス社。 InterOptoといえば1980~1990年代には光産業の国際的な技術展で、レーザー、光デバイスから通信、計測まで幅広くカバーし、光測定器メーカでは安藤電気やアンリツなどが出展していた。光通信技術に関する国際展示会として光通信技術展(FOE:Fiber Optics EXPO)が2001年より開催されると光通信測定器はFOEが主流になったと筆者は感じていたが、InterOpto2024には多彩な光計測器が出品された。 事務局のオプトロニクス社は1982年設立で、1981年に創刊した「月刊オプトロニクス」は光学の技術専門誌としてレーザーやレンズなどの技術者に約40年以上、購読されている。 InterOpto2024の出展社について述べる。展示会は7つのフェアで構成される。レーザー科学技術フェア、赤外線フェア、オプティクスフェアの出展社が多い。計測器は、横河計測(旧安藤電気の光計測器)が光スペクトラムアナライザなどの新製品を展示。島津製作所のデバイス部も2022年発売のOSAを出展(自社の科学分析機器に使っている自社製の回折格子を使った応用商品)。ソーラボ(Thorlabs)は2023年発売のハンディOPMやテクスチャ商品を展示。スペクトラ・クエスト・ラボ株式会社は研究用途の短波長の波長可変光源(ASE-Free、モードホップフリー光源)を展示。santec(サンテック)は通信用途の長波長の波長可変光源やSLM(空間光変調器)などを展示。株式会社アルネアは計測器ではなくデバイスを展示。株式会社オフィールジャパンはMKS Instruments Ophir Productsの日本法人でレンズを展示(MKS OphirはOPMなどの光計測器もつくっている)。MSHシステムズは分光フェアで、白色光の光源とフィルタによる特定波長のレーザー光のソリューションを展示。同じく分光フェアには株式会社オプトサイエンスもいるが、計測器は展示していない。株式会社オプトロンサイエンスはSLMの輸入を始めた。紫外線フェアではUV商社のラドデバイス株式会社が照度分布計やLED校正用の照度計を出展。レーザーを中心とした輸入商社のオーテックス株式会社も波長分布をグラフ表示するハンドヘルド照度計や膜厚計を展示。 計測器ではないが可視化技術フェアで、コニカミノルタジャパンが最近M&Aした海外製ハイパースペクトルカメラを展示。同フェアには、近赤外カメラなどをラインアップする株式会社アバールデータもハイパースペクトルカメラを展示。赤外線フェアで株式会社アイ・アール・システムも生産ライン向けの英国製ハイパースペクトルカメラを展示。蛍光分光光強計などの光計測器を輸入している株式会社東京インスツルメンツは赤外線フェアで分光器を展示(※※)。堀場製作所は分光フェアで分光器を展示しているが、カメラと組み合わせるとハイパースペクトルカメラにできる、ハイパースペクトルカメラ用分光器を出展。ハイパースペクトルカメラを多くのメーカが取り扱うようになり、光学・画像などの分野の流行であると筆者は感じる。同じく計測器ではないが、カメラ向けの光源メーカである壷坂電機株式会社はオプティクスフェアで、太陽光のようにIRから可視光、UVを再現するLED照明を展示(波長特性を示していた)。オプティクスフェアにはシナジーオプトシステムズもカメラや光学系を展示。 (※) 一般財団法人光産業技術振興協会(OITDA:Optoelectronics Industry and Technology Association)。1980年設立。インターオプトは1979年開催の前身「レーザ技術展」を第1回としていて、開催しなかった年もあるが、約40年続いている。 (※※) InterOpto2024と同日時に幕張メッセでは「第24回 光・レーザー技術展 Photonix」が開催されている。RX Japan株式会社(旧リード)主催で、InterOptoよりも規模が大きい(来場者数はInterOptoが4,833人、Photonixは併設展も含めて約40,000人)。Photonixは光計測・分析機器を出展品目にしているため、東京インスツルメンツはこちらに蛍光の分析機器などを出展している。光計測に関係する展示会が重なることは展示会レポートを掲載しているTechEyesOnlineにとっては好ましくないが、各メーカは2つの展示会を選別している。たとえば横河計測やsantecはPhotonixではなくInterOptoを選んで出展している。 オプトロニクス社はOPIEの展示事務局をしているので、OPIEのHPはInterOptoにリンクしている。 InterOptoの語源は不明。Optoは光を指すことばだが、Interは不明。接頭辞としてのinter-は「~の間、~の中で、相互に」という意味。
- Interop(いんたーろっぷ)
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インターネットテクノロジーの国内最大のイベント。ネットワークにつながるモノのInteroperability(相互接続性)を検証する場として、日本では1994年から毎年開催されている。 幕張メッセで2024年6月5日~7日に開催されたInterop 2024には光伝送の関連メーカ(通信キャリア、光部品、伝送装置、計測器メーカなど)が出展した(会場の約35%の空間はデジタルサイネージ)。 計測器メーカとしてはViaviソリューションズ(OTN関連の光伝送の通信計測器、光パワーメータなど)、メインテクノロジー(VeEXの現場測定器の光測定器、OPMや数値表示の簡易OTDRなど)、原田産業(EXFOの販売店、ただしEXFO製品は展示していない)、東陽テクニカ(Spirentの負荷試験機など)、キーサイト・テクノロジー(IXIAの負荷試験機など)、データコントロールズ(製造ライン向けの負荷試験機など)。独立行政法人 情報処理通信機構(IPA)のブースでは、通信機器を使ったデモをしていたが、負荷試験機はTestCenter(スパイレント)ではなくIXIAが使われていた。データコントロールズはメディアコンバータなどの通信機器のメーカだが、生産向けの負荷試験機(30万円~100万円代)もラインアップし、SpilentやIXIAのようなR&D向けの高額・高性能モデルとは違う市場で実績を出している。 このようにInteropは計測器としては光測定器と光伝送測定器、負荷試験機が出展される展示会である。海外の通信計測器がメインでアンリツやラインアイなどの国産計測器メーカは出展していない(2024年の実績)。EXFOの出展ブースはないが、Shownetで原田産業の関連会社として計測器を提供している。つまり、ViaviとEXFO、VeEXのOTN測定器、光測定器と、Spirent(東陽テクニカ)、IXIA(キーサイト・テクノロジー)の負荷試験機が競う展示会といえる。アンリツのOTN測定器、光測定器やラインアイのRS-232C系プロトコルアナライザ(オンラインモニタ)は、少なくとも2024年には出展していない。 Interopではメディア(プレス)に対してプレゼンテーションや会場ツアーを行っている。プレスルームのテーブル席は(2024年には)20席程度で、部屋は広くはないが、冷蔵庫には各種飲料が並び、ホットコーヒーやお菓子の無料提供がされ、プレスに対するサービスが充実している。最近は大規模な展示会でもプレスルームに無料の飲食物の提供がない場合が多いが、Interopは報道機関を巻き込んだ華やかな大型イベントである。 旧電設工業展のJECA FAIRは毎年5月頃に東京ビッグサイトで開催される大きなイベントで、来場者も多く賑わっているが、プレスルームはなく、会場は撮影禁止である。つまり報道機関に取材してもらうことを拒絶している。そのためほとんどメディアでは取り上げられないが、それでも来場者は多い。2024年は5/29~31に東ホールで開催されたが、同時期に西ホール(4F)で開催のワイヤレス展よりも出展社が多い。 InteropとJECA FAIRはプレス(報道機関)に対するスタンスが180度違っている。
- APC研磨(えーぴーしーけんま)
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APCはAngled Physical Contactの略で、光ファイバをコネクタ接続する際の、コネクタ端面(接触面)の研磨の種類の1つ。研磨方法にはPC、SPC、UPC、APCなどがある。表記は「APC」、「Angled PC」など。表記がFC/APCだとFCコネクタではなく「FC/APC」、または「APC」という新しい名称のコネクタと誤解されるので「FC/Angled PC」(APC研磨のFCコネクタ)と表記しているメーカもある(光コネクタは時代と共に多くの種類がつくられては消滅していき、現在はFCやSCが主流だが、新しい名称のコネクタは今後も出現していく)。光計測器のコネクタの記述もFC/PCやSC/APCなど研磨も記述するケースが増えている(1980年頃はほとんど記述されなかったが、2020年には主要な光計測器の仕様に明記されるようになっている)。 光ファイバの端にコネクタを取り付けると反射などで損失が発生する。反射光は入力側の光源に向かってファイバ(コア)に反射される。後方反射は光源の損傷や信号品質の悪化の原因になるので、コネクタのフェルールの研磨方法によって対策している。UPC(Ultra Physical Contact)はファイバの端面が垂直(角度をつけずに研磨)だが、APCは8度の角度で研磨している(angled:角度を付けた、斜め、という意味)。そうすると反射光はまっすぐにコア内に入射せず斜めにクラッドに反射して、光源への戻り光を減らすことができる。 RFなどの高周波の(電気の)コネクタにもAPCがある。たとえばAPC-7は「Amphenol Precision Connector(7mm)」である。電気(高周波)のAPCコネクタは1960年代に開発されているので、コネクタでAPCといえばこちらの方が大先輩である。そのため、光計測器のコネクタにはAPCよりもAngled PCと記載する方が親切といえるかもしれない。
- SRS(えすあーるえす)
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(Stimulated Raman Scattering)誘導ラマン散乱。非線形光学効果の1つで、この応用例にはラマン増幅器などがあるが、加工用の高出力レーザーでは機能を阻害する要因となる。
- SCコネクタ(えすしーこねくた)
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光通信に使われる代表的な光コネクタ。単芯で、コネクタ外観は角形。青色をよく見かける。差し込んでクリック音とともに嵌合する。1980年にNTTが基幹通信網に光を導入した際の主流はFCコネクタだった(シングルモード、波長1310/1550 nmを中心に)。現在もそれは続いているが後に開発されたSCコネクタを標準にしている機器も現在は多い。たとえば光通信用の計測器も標準をSCコネクタにしている。
- NFP(えぬえふぴー)
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(Near Field Pattern)半導体レーザーの出力光はビーム断面が楕円錐状に拡がっていく。ビーム形状は出力端近傍と数cm離れた場所で異なり、近傍をNFP、離れた場所をFFP(Far Field Pattern)と呼ぶ。
- FFP(えふえふぴー)
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(Far Field Pattern)半導体レーザーの出力光はビーム断面が楕円錐状に拡がっていく。ビーム形状は出力端近傍と数cm離れた場所で異なり、近傍をNFP(Near Field Pattern)、離れた場所をFFPと呼ぶ。
- FOE(えふおーいー)
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(Fiber Optics EXPO) 光通信技術に関する国際見本展示会。日本語では「光通信技術展」だが、ファイバーオプティクスEXPOの略称であるFOEの方が良く使われることばになっている。2001年より毎年1回開催されてきたので、20年の歴史ある展示会だが、2000年代の光海底ケーブルバブルなどを経て、2020年頃には出展する会社が少なくなり、寂しい展示会になっていた。2023年にRXジャパン株式会社(旧リード)が、5Gや6Gなどの移動体通信の展示会を併設したCOMNEXT(コムネクスト)を開催し(旧「通信・放送Week」を名称変更)、2023年からは出展社も増えた。過去には幕張メッセで盛況に開催されたが、やっと2023年からは主要な有線通信のベンダが出展するようになった。有線通信(光伝送)の需要が増えてきたことを示している。 1980~1990年代にInterOpto(インターオプト)という名称の展示会には多くの光計測器(光通信計測)メーカが出展したが、最近はあまり出展していない。InterOptoは2024年秋から「光とレーザーの科学技術フェア」と一体となりCOMNEXT(旧FOE)同様に盛り返す気配がある。開催が待ち遠しい(2024年7月現在)。