計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
計測・測定に関連する用語全般が収録されており、初めて計測器を扱う方でも分かりやすく解説しています。
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ワープロ(わーぷろ)

「ワード プロセッサ」(word processor)の略。日本語の文書を作成するための機械。仮名(ローマ字)を漢字に変換したり、文章の追加・削除を簡便にしたり、作成した文章を印刷できる。1980年後半から1990年代に販売していた。外観は当時普及していたラップトップPCとほぼ同じ(ラップトップとは膝上に置けるという形状のこと)。ポータブル(ハンドキャリーできる可搬型)のタイプライターにサイズや外観が似ていた。ワープロには印刷機能(プリンタ)が標準装備されているので、重量はそれなりにあって決して軽量ではなかったと記憶する。 パソコンで表計算や文章作成をするアプリケーションソフトウェアがまだなかった頃(1990年頃)に、家電メーカがつくっていたが、現在はマイクロソフトのWORD(ワード)が広く普及しているので、ほぼ生産中止で、過去の遺物になった。富士通のOASYS(オアシス)、シャープの書院、NECの文豪、東芝のRupo(ルポ)などの製品があった。各メーカで特長があり、自分に合う製品を使用したが、反対に使い慣れない他社メーカの製品は、慣れるまで使いづらかった。筆者は家ではシャープの書院を使っていたが、会社にはOASYSがあり、文章作成の機能(やり方や段取り)が2社で異なる(OSがメーカ別に独自で、統一されていない)ため、大変苦労した。会社設備のOASYSはラップトップの画面よりも大きいモニタが付いていて、手でモニタを回転させると縦型から横型に変えることができた。そんなサイズなので、ほぼデスクトップ(据え置き型)として使用し、ハンドキャリー(場所の移動)はしなかった。 PCの普及とともに、四国の国産ソフトウェアメーカであるジャストシステムはワープロソフト「一太郎」を開発した。大変よく売れたが、世界的な独占企業となったマイクロソフトには対抗できず、2005年に販売を中止している。TRON(トロン)などのOSと同じく、アプリケーションソフトウェアでも、国産はシェアを取れず、海外の巨大企業が標準となり、世界中を支配する構図が完成している。2000年頃までの多くの日本の情報家電メーカは携帯電話をつくっていたが、AppleのiPhone(iOS)に席巻されて、2010年代にはほとんどが撤退している。これも日本メーカが世界標準にはなれなかった例である。 欧米の言語のようにタイプライターができなかった日本語を、コンピュータによってタイプライター化した画期的な機械がワープロだった。1980年~1990年代には文筆家だけでなくビジネスマンも、(請求書などの色々な)書類の作成にワープロを使用した。1990年代の後半には、一太郎やワードによってその役割はPCに移った。企業にPCが普及した1990年代後半には、ワードなどの文章作成ソフトウェアを使い、内勤営業が顧客に提出する見積書を作成する例などが増えていった。 コンビニエンスストアのイートインコーナで、書院(シャープ)を使い建築関係の種類を作成している人を筆者は発見した(2022年12月)。もうメンテナンスは終了しているので、記録紙の補充はできないと思われる。

ワールドワイド入力電圧対応(わーるどわいどにゅうりょくでんあつたいおう)

およそ各国で使用される商用電源の電圧に自動で対応する入力仕様の方式。100Vでも115V、120V、220V、230V、240Vでも切替や仕様変更しなくても対応する。ただしワールドワイド対応機種でも、国内向け仕様で、添付の入力ケーブルなどが100V専用の場合やコンセント形状が異なる場合があり、注意が必要。日本国内だけで使う場合でも、工場や実験現場など、複数の電圧が混在した環境では便利な機能である。(株式会社高砂製作所の用語集より)

YIG(わいあいじー)

(Yttrium Iron Garnet)イットリウム、鉄、ガーネットによる素子は、広範なRF周波数レンジで共振するため、スペアナ、シグナルアナライザの内部でフィルタとして使用されている。

YEW(わいいーだぶりゅ)

(Yokogawa Electric Works) 横河電機製作所(現横河電機)の略号。1986年頃まではYEWがCI(コーポレート・アイデンティティ)だった。 横河電機は1915年に電気計器の研究所として設立し、1920年に「株式会社横河電機製作所」になった。1986年に横河電機株式会社に社名変更し現在に至る(同社ホームページより)。1983年頃までは「YEW」が企業ロゴとして表記されている製品が多かった。同社の指示計器(針が振れるアナログ式の電圧計、電流計、電力計)は黒い箱型で、弁当箱の愛称があった。最上部には接続端子、その下の約半分くらいが(針が振れる)表示窓で、下半分の何もない黒い箇所に大きく「YEW」と刻印してあった。大学・専門学校などの工学系の学生は黒いYEWを使い実験を行ったので、YEWは電気測定器の代表と広く認識された。 YEWは1963年(昭和38年)9月にhp(ヒューレット・パッカード、現キーサイト・テクノロジー)との合弁企業、YHP(横河ヒューレット・パッカード株式会社)を設立するなど、日本の計測器のトップブランドであった。ただし1975年に世界初のDCS(分散形制御システム/総合計装制御システム「CENTUM」)を発表するなど、横河電機はFA/IA/PAメーカ(工業計器の会社)である。1988年にはYHPから資本を引き上げ、高周波測定器(移動体通信など)に参入し、2002年には(NTTに測定器を納入する)大手通信計測器メーカの安藤電気を100%出資のグループ会社とし、有線通信計測器や半導体テスタをラインアップに加えるなど電気計測分野を拡充したが、現在はそれら全部から撤退している。2010年には測定器ビジネスを分社化し、横河メータ&インスツルメンツ(現横河計測)に統合するなど、今の横河電機のコアコンピタンスに従来の「電気計測」は感じられない。 余談だが、現在の計測器としての記録計の主流であるメモリレコーダではなく、計装の記録計としてのデータロガーは横河電機の主力機種の1つである。ただしこれは電気計測器というより工業計器の一部である(電気計測器の総覧などにはこのデータロガーも掲載されているが、メモリレーダとは用途や顧客が全く異なる計装の記録計である)。計測器の記録計か、計装の記録計かは素人には判別が難しいので、やっかいである。 計装の国内トップベンダーとなったYEWは、同業の北辰電機製作所を1983年に吸収して会社名を横河北辰電機とし、1986年には現在の横河電機株式会社(Yokogawa Electric Corporation)になり、YOKOGAWAを新しいCIとし、YEW時代は終わった。現在の横河電機は、工業計器・プロセス制御システム専業の国内大手電機メーカである。この分野では世界6大メーカ(グローバル・ビッグ6)の一つといわれ、売上の70%が海外事業、従業員の70%が外国籍のグローバル企業である。メーンバンクはみずほで、芙蓉クループの代表企業といえる。 一方で、横河の計測器を継承する子会社の横河計測は、電気計測器の日本市場シェアとしては10%以下(推定)。横河計測は大手計測器メーカの1社ではあるが、「横河」は現在では計測器のトップブランドではなくなった。「横河」と聞いて一目置くのは、YEWを知っている高齢の電気技術者だけである。 計測器情報:YEWの指示計器(電圧計、電流計)の製品例

YHP(わいえっちぴー)

(Yokogawa Hewlett Packard) hp(ヒューレット・パッカード)が日本につくった合弁会社(1963年~1998年)。YHP設立以前は、無線機器を取り扱う商社のセキテクノトロン株式会社(旧関商事株式会社)がhp製品を輸入販売していた。 1939年に、ウィリアム・ヒューレットとデビッド・パッカードは米国カリフォルニア州でhp(Hewlett-Packard Company、エイチピーと呼称)を創業し、世界No.1の電子計測器メーカとなった。日本のYEW(横河電機製作所)は1963年にhpと合弁でYHP(横河ヒューレット・パッカード)を設立した。YEWは国産初の電磁オシログラフをつくるなど、日本を代表する老舗計測器メーカだった。高周波(RF)測定器はYHPがつくり、YEWはDC~低周波の記録計などをつくるという棲み分けをした(競合しないように機種群の分担を決めた)。当時のYEWはブリッジをラインアップし、回路素子測定器の要素技術を持っていたが、それらはすべて技術者とともにYHPに移ったと推測される。YHPはhpの日本法人(販売会社)でhp製品を販売したが、国内に開発拠点を持ちYHPとして計測器の開発も行った。回路素子・材料の測定器(LCRメータやネットワークアナライザなど)の開発拠点が神戸にあったと筆者は記憶している。1980年代に筆者は国内大手計測器メーカの技術部門にいたが、各計測器メーカの特許出願情報が回覧された。そこには「横河HP」という会社名でインピーダンス測定の多くの特許が掲載されていた。YEWのブリッジは生産終了し、後継機種となるLCRメータなどはつくられていない。インピーダンス計測器は、YEWではなくYHPが開発を行った。 高周波計測器を手掛けるYHPと、「レコーダ、低周波の電力計(デジタルパワーメータ)、ミドルクラスのオシロスコープ」をつくる横河電機(1986年に社名変更)との差は30年間で大きく開いた(YHPは計測器のトップメーカになっていた)。1995年に横河電機はYHPへの出資比率を下げ、高周波測定器の開発に着手した。時は携帯電話の3Gが商用開始する前夜で、1998年にはYHPから完全に資本を引き揚げ、携帯電話評価用の信号発生器を中心に、次々と通信計測器を発表した。 YHPは会社名を日本HPに変更していたが、2000年にhpがIT機器以外の事業(計測器と科学分析機器、ライフサイエンス事業)を分社し、Agilent Technologiesを設立したので、日本HPもアジレント・テクノロジーとなる。さらに2014年にはAgilent Technologiesは科学分析機器のみとなり、計測器はKeysight Technologies(キーサイト・テクノロジー)となり、現在に至る。 世界No.1の総合計測器メーカhpは日本では、高度経済成長期に設立したYHPに始まり、1998年以降に日本ヒューレット・パッカード、アジレント・テクノロジー、キーサイト・テクノロジーと社名が変わった。横河電機は2002年に幸運にも通信計測器大手の安藤電気を吸収し、安藤電気がアジレント・テクノロジーとシェアを競った光通信測定器をラインアップに加え、高周波測定器を強化した。ただし、2000年代後半には光通信以外の通信計測器はすべて中止し、2010年には横河メータ&インスツルメンツ(現横河計測)に計測器部門を移管した。これによって横河電機は(計測器をつくらない)計装(工業計器)のメーカに名実ともになり、(メモリレコーダなどの計測器ではない)計装ユースのDAQ(データロガーなど)をラインアップしている(計測器の記録計か、計装の記録計かは素人には判断が難しい)。 マイクロウェーブ展2022(2022年11/30~12/2、パシフィコ横浜)に、キーサイト・テクノロジーはPXIネットワークアナライザM983xA(新製品)を出展した。「Keysight TechnologiesのR&D拠点の1つであるキーサイトの事業所(兵庫・神戸市)で開発した製品である」ことが、展示会を取材した日経誌で報じられている。

Wi-SUN FAN(わいさんふぁん)

(Wireless Smart Utility Network for Field Area Network profile)次世代スマートメーター、流通オートメーション、家庭用エネルギー管理などのアプリケーションに使われる無線規格。Wi-SUNは日本のNICT(情報通信研究機構、ニクトと呼称)が開発した無線通信技術で、すでにWi-SUNデバイスは世界で約1億個出荷されたといわれる。Wi-SUNの通信速度と通信距離はLPWA(Low Power Wide Area)の1種だが、FANはフィールドエリアネットワークなので、広い屋外の通信である。Wi-SUN FANはLPWAを使って広域で通信する仕組み。日本発の広域IoT無線規格として、2.4Mbpsの仕様策定が進んでいる(2021年3月現在)。

ワイドレンジ電源(わいどれんじでんげん)

(wide output DC power supply) 規定している定格電力内で、電圧/電流を任意に設定可能な直流安定化電源 。従来の電源は電圧と電流の最大値で規定しているが、この種類の電源は電力(容量)で規定している。電圧(または電流)を最大に設定したときは、規定されている電力の値から電流(または電圧)の値が決まる。ズーム電源とも呼ばれる。 DC電源の種類としては、従来の単一レンジ(電圧/電流で仕様を規定)ではなくワイドレンジ(定格出力電圧で仕様を規定)で、新しい機種群として2010年代に確立した。安定化の方式でいうとドロッパ方式ではなくスイッチング方式の1種である。菊水電子工業や高砂製作所、テクシオ・テクノロジー などの計測用DC電源の大手メーカでは、現在の直流安定化電源の主力製品となっている。 1991年に高砂製作所が「ワイド入力・ズーム出力」のコンセプトで発売した。そのため高砂製作所は「ズーム電源」といっている。その後、各社が同様の製品群を「ワイドレンジ電源」の名称でラインアップして、DC電源の主力機種群になった。キーサイト・テクノロジーは「オードレンジ」と呼称している。

Wi-Fi(わいふぁい)

無線LANの規格名称。語源はWireless FidelityやHi-Fi(High Fidelity)という説がある。無線LAN、IEEE802.11規格とほぼ同義に使われている。正確にはWi-Fi Allianceに認定されたIEEE802.11規格で、無線LANの1種。

Wi-Fiルータ(わいふぁいるーた)

(Wi-Fi router) PCやスマホなどの端末をWi-Fi経由でネットワークにつなぐ通信機器。各家庭へのWi-Fi環境の普及率は2020年代に約90%に達した(つまりその数だけWi-Fiルータが各家庭にある)。Wi-Fiは2000年代初頭から普及が始まり、通信速度は2009年に600Mbps、2013年には1Gbps以上になった。 ONU(やモデム※など)のデータをWi-Fiルータは受取り、パソコンやタブレット、携帯電話などの複数の端末に割り振って、同時にインターネットに接続している(各端末との通信は無線)。つまり、1つの回線で複数の端末を同時接続している。 ※ モデム(modem)は電話回線(アナログ信号)を使ってインターネットに接続する機器。 ルータ(router)は元来、ネットワークを経由して2つのコンピュータでデータを送受信するためのルート(通信経路)を制御する機器(異なるネットワークを中継する機器)を指した。インターネットの普及と共にルータも普及した。コアネットワークに設置される基幹ルータから、アクセス網のエッジルータまであり、Wi-Fiルータは後者の1つ。ルータと似ているが、ハブは複数のケーブルを集約して接続し、接続できる機器を増やす機器で、ネットワークを経由して端末(デバイス)をつなぐことはしない。ルータは複数の端末をインターネットに接続するために使われる。 各家庭(宅内)だけでなく、屋外にもWi-Fiルータは設置されるようになった。イベント会場や喫茶店にあるWi-Fiルータは通信範囲が広い場合は屋外でも携帯電話とつながる。Wi-Fiルータが非常用の電池を常備すれば、大規模な震災で停電になっても止まらない。各人が持っている携帯電話も電池がある限りは通信できる。そこで、基幹網(インターネットなど)がダウンしてWi-Fiルータはネットワークに繋がらない状態でも、ピアツーピアで携帯電話同士を通信することはできる。Wi-Fiルータが密に設置されているエリアなら、Wi-Fiルータによる広範囲なネットワークができる(※)。 (※) Wi-Fiの電波が届く距離は50m~100mといわれるが、屋外で障害物がなければ500m。場合によってはそれ以上も可能。 iPhoneに無料のアプリ(コグニティブ・フォートトーク)を入れて、携帯電話同士で通信する仕組み(レスキューリンク)を、コグニティブリサーチラボ株式会社(代表取締役CEO苫米地英人、とまべちひでと)が発表した(2024年3月25日 AI緊急通信網機能「レスキューリンク」の無償提供を開始)。2024年1月1日に「令和6年能登半島地震」が発生し、被災者の迅速な救助への利用を想定し、レスキューリンクをユーザ(携帯電話の使用者)向けに無償提供することを決めたという。

Wireshark(わいやーしゃーく)

イーサネットのパケット収集やプロトコル解析ができるフリーソフトウェア。PC上でオンラインモニタができるため、計測器としてのLANのプロトコルアナライザは現在はなくなった(※)。 車載Eherenet(車載イーサネット)もWireshrkでモニタできるため、計測器としてのオンラインモニタは存在しないが、パケットの送信やスクリプトによるテストの自動化、ECU動作の擬似などはできない。そのため、ドイツTechnica Engineering社の解析ソフトウェアANDi(Automotive Network Diagnoser、アンディ)などが販売されている。 Wiresharkはフリーのパケットキャプチャソフトウェアで、汎用PCにインストールしてパケットキャプチャツールとして使用できるので重宝されている。無償のソフトウェアで、汎用PC上で動作するので広く使われている。しかしながら搭載されるPCのOSの制限を受けることもあり、高速・大容量のトラフィックのキャプチャに対応することが困難な場合もある。 Sharkは鮫(さめ)なので、Wiresharkは「(通信)線の鮫」という意味。ワイヤに嚙みついて、中を流れるデータをモニタするイメージ。 (※) ただし、高速の規格に対応したLANプロトコルアナライザ(LANプロアナ)の計測器はある(以下の参考記事でギガビットLAN製品を取材)。 LANプロアナは2000年代にすでにソフトウェアが主流で計測器(ハードウェア)ではなくなっている。LANプロアナで有名なsnifferも実態はソフトウェアで、その時代に主流の高機能な可搬型のPCに搭載されて提供されたが、最後はCDなどの媒体になり、ユーザ保有のPCにインストールして使用された。つまり、LANプロアナとは、ハードウェアではなくソフトウェアだったのである。 計測器情報: Technica Engineering社の解析ソフトウェアANDi

ワイヤード(わいやーど)

(wired)有線通信のこと。無線通信はwireless(ワイヤレス)。無線測定器の雄、アンリツで良く使われている用語。アンリツで無線以外の有線通信の機種群である「光測定器や、伝送・交換・IPなどのネットワーク関連測定器」をワイヤードと呼称している。「無線はワイヤレスだから、有線はワイヤードだ」というのは無線・有線の両方に精通し、海外の販売比率が高い、同社ならではの表現といえる。つまりはっきり言うと「アンリツの社内用語(方言)」とみなされる。日本の通信計測器メーカでは「光通信」や「有線(通信)」という表現が一般的で、ワイヤードというのはアンリツ以外には聞いたことが無い。

ワイヤーハーネス(わいやーはーねす)

(wire harness)「自動車用組電線」と説明しているメーカもある。一般には機械の内部の配線に使われる通信や電力供給のためのケーブルのことだが、自動車内部のケーブル部品を指していることが多い。1000本以上の電線を束にした自動車の主要部品。配線の種類やコネクタ形状など、自動車によって違うため完全なカスタム品である。メーカは、電線メーカの住友電工や、静岡県に工場がある矢崎総業が有名。ワイヤーハーネスは自動車の重量に影響する(配線は軽量化の鍵)。また現在進行している電動化でも重要な部品の1つといえる。

ワイヤレス(わいやれす)

(wireless) 日本語では「無線」。ただしワイヤレスはすでに日本語になっていて「ワイヤレスLAN」、「ワイヤレスイヤホン」など多くの無線機器の名称で使われている。計測器でもワイヤレスは基本用語である。 ワイヤレスとは「ワイヤ(wier)がない(less)」ということで、通信するための電線(や光ファイバ)などの線材がないという意味である。ワイヤレスを無線と翻訳したので、線を使った通信は有線といわれる。有線のことを英語ではwired(ワイヤード、ワイヤがある、線でつながっている)と表現するようで、通信計測器の世界的なベンダであるアンリツでは、光ファイバ通信などの有線通信(無線でない通信)を「ワイヤード」と呼称している。同社では製品群を大きくワイヤレスとワイヤードの2つに分類している(同社以外では「有線(通信)」や「光通信」という表現が一般的で、ワイヤードとはいわない)。ただし、一般には同社は通信の中でも特に「ワイヤレスの会社」と認識されている(※)。 株式会社リックテレコムが主催する展示会に「ワイヤレス・ジャパン」があり、毎年5月に東京ビッグサイトで開催されている。2023年は5G/ローカル5G、LPWA/IoT、ミリ波、産業DX、スペースICT、Beyond 5G/6Gなどがテーマだった。広く無線機器(計測器も含む)が出展するイベントである。同じく無線の展示会にマイクロウェーブ展(MWE)がある。こちらは学会が主催するワークショップに併設する展示会である。 ワイヤレスに近いことばに「モバイル」がある。Mobile(可動性の、移動可能な、という意味)は携帯電話やノート型パソコンで使われる移動体通信や、移動体通信の機器そのものを指す。モビリティ(Mobility:「体の動きやすさ、機動性」が元の意味で、「人やものを空間的に移動させる能力や機構」に使われる)は自動車を指すことばに使われ、自動車はこれからのワイヤレス通信の大きな市場になろうとしている。Automotive(オートモーティブ)は「自動車の、自動車に関する」という意味である。ワイヤレス(無線)、モバイル(移動体)、オートモーティブ(自動車)はそれぞれ関連していることばといえる。 (※)「アンリツの旧社名“安立電気株式会社”は1931年(昭和6年)の共立電機と安中電機の合併で設立。安中電機の36式無線電信機は、1905年(明治38年)の日本海海戦(日露戦争)で「敵艦見ゆ」の信号を発信。(アンリツのホームページ、沿革より)」 つまりアンリツは100年以上前から無線機をつくっていた会社が祖となっている、日本のワイヤレスのインフラと共に歩んだ会社である。NTTやNTTドコモが構築してきた日本の通信インフラを計測器の面で支え、インフラ構築と共に発展してきた通信専業の計測器メーカといえる。通信の中でも特にワイヤレスに注力し、キーサイト・テクノロジーやローデ・シュワルツという世界的な高周波(無線通信)の計測器メーカと伍している国産企業である。同社の無線機テスタやシグナリングテスタ、送信機テスタなどが、次々と登場する最先端の無線通信方式を試験・評価することで、日本の無線通信インフラは開発・製造から施工・保守までが行われてきたし、今後も続いていくといっても過言ではない。

ワイヤレス給電(わいやれすきゅうでん)

(Wireless Power Transmission) 有線ではなく無線によって電力供給する方式のこと。ワイヤレス電力伝送。小型の携帯機器から大型の自動車まで、各種の方式が研究されている。自動車の電動化に欠かせない要素技術の1つ。電力はmWからkWまで、用途はIoTからドローンまで、電力と距離によって、各種の方式がある。主な方式は、電磁誘導方式(従来型と磁界共鳴型)、電界結合方式、電磁波方式(マイクロ波を使用)、電磁波方式(レーザーを使用)がある。別名:無線給電。略記:WPT。

ワイヤレスコネクティビティテストセット(わいやれすこねくてぃびてぃてすとせっと)

(wireless connectivity test set) 通信計測器(特に無線通信)の世界的トップベンダであるアンリツの無線LANのテスタ(無線LANアナライザ)MT8862Aの名称(品名)。 同社ホームページの電子計測器製品カテゴリーは以下の8分類(2023年11月)。 1. 光計測器 2. BERT 3. トランスポート/イーサネット関連計測器(IPやOTN/SONETなど) 4. モバイル/ワイヤレス通信⽤測定器(シグナリングテスタ、ワンボックステスタ、エリアテスタなど) 5. シグナルアナライザ/スペクトラムアナライザ 6. ベクトルネットワークアナライザ 7. 信号発生器 8. RF/マイクロ波⽤測定器(マイクロ波周波数カウンタ、RFパワーメータ、アンテナなど) 上記の1~3は光通信測定器や伝送交換・IP関連の有線通信測定器、4は無線/移動体測定器、5~7は無線(RF)の基本測定器であるSA、VNA、SG。1.~8.は有線通信、移動体通信(専用器)、無線通信(基本測定器)の順に並んでいる。 「モバイル/ワイヤレス通信⽤測定器」はその下の項目数が一番多く、「Bluetooth/WLAN用測定器」にMT8862Aは掲載されている。この項目はBluetooth(ブルーツゥース)や無線LAN用のワンボックステスタ(無線機器の総合試験器)である。WLANとは無線LAN(ワイヤレスLAN)の略記(※)。BluetoothテストセットMT8852BやユニバーサルワイヤレステストセットMT8870Aと並んでMT8862Aが掲載されている。MT8870Aは品名の後に(スマートフォン、IoT端末、通信モジュール用測定器)、MT8862Aは(WLAN用測定器)と但し書きがされている。つまり何を対象とした測定器かを補記している。「ワイヤレステストセット」はワンボックステスタ(無線機テスタ)の1種であるが、「無線通信機器/デバイスの生産ラインで、複数個のデバイスの検査に対応し、大量生産に貢献するためのモデル」、とメーカは説明している。そのため、MT8862Aの品名も「無線LAN用ワンボックステスタ」ではなく、ワイヤレスやテストセットということばを使ったと思われる。 MT8862Aは、IEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax/be(2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯)搭載機器のRF送受信特性測定器で、標準WLANプロトコルメッセージング(WLANシグナリング)を使用してDUTと接続し、送受信測定が可能となるネットワークモードを搭載している。 2023年12月に無線LANは新しい規格のWi-Fi 7((IEEE 802.11be)が策定された。MT8826は発売以来、無線LANの規格のVerがアップするのに追従して機能を喧嘩させてきた。2024年5月のワイヤレスジャパン(東京ビッグサイト)のアンリツブースにはWi-Fi 7に対応したMT8826が展示された(Wi-Fi 7については、以下の参考記事 R&S Technology Symposium 2024で取材している)。 MT8862Aの品名は、「無線(wireless)のつながりやすさ・接続性(connectivity)を試験(test)する」というネーミングで、tester(テスタ)ではなく最後にsetとあるのは「単純な機能ではなく総合評価ができる」という主張のように伺える(品名の命名意図はメーカの自由で、その真意は社外には知らされないのであくまで推測)。この名称は測定器の概要を正しく表現しているが、品名だけを読んでも何の測定器か、瞬時には想像できない。まるで安藤電気の「データコニュニケーションアナライザ」がプロトコルアナライザであることがわかりにくいことと似ている。プロトコルアナライザは「データ通信(data communication)の分析・解析装置(analyzer)」である。 (※) 1990年頃にLANが登場すると従来の通信網を広域通信網としてWANと呼称したので、「WLANとはWAN&LAN、つまり基幹通信網~狭いLANまで全通信規格に対応する」ことだと勘違いしそうな略記である。アンリツでは無線LANが登場した2000年頃からW-LANという表記(略記)で無線LANを表現している資料が残っている。2023年現在、WLANは無線LANである、という説明は広く浸透している。 通信規格の表現は毎年のように更新され、猫の目のように新しいことばが生まれる。まるでJKの流行りことばのようである。通信の世界は新しい規格が次々と登場する日進月歩の世界で、通信計測器は時代と共にある専用器で、汎用計測器(基本計測器)とは根本的に異なる機種群(カテゴリー)である。

ワイヤレスジャパン(わいやれすじゃぱん)

(wireless japan) 日本最大級の無線通信の専門展示会。2024年は5月29日(水)~5月31日(金)に東京ビッグサイト 西3・4ホール(4階)で、「ワイヤレスジャパン×ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP) 2024」として、運輸安全・物流DX EXPOと併設で開催された。初開催はワイヤレスジャパン 1996年、WTP 2006年で、2013年から共同開催がスタートしている。主催・企画運営は株式会社リックテレコム(情報通信分野のビジネス専門誌、月刊テレコニュニケーションを発行)。 2024年に出展した計測器メーカはアンリツ(高砂製作所を併設)、ローデ・シュワルツ、キーサイト・テクノロジー、東洋計測器(NetAlly)、東陽テクニカ、コーンズテクノロジー(テレダイン・レクロイが買収した旧FrontlineのBluetoothプロアナ、Viavi Solutionsの無線測定器など)。通信規格のWi-SUNアライアンスやZETAアライアンス、NICTのプロジェクトなどもブースを構えた。アンリツは無線LANテスタ MT8862Aが、2023年12月に規格が更新されたWi-Fi 7(IEEE 802.11be)に対応したことを展示。東陽テクニカはオープンRANのソリューションを提案。 2024年は同時期に東ホールでJECA FAIR(ジェカフェア)が開催され、日置電機や共立電気計器、三和電気計器、マルチ計測器、FLIR(日本法人:フリアーシステムズ)、ラインアイ、グッドマンなどの現場測定器(TDRやラインモニタなどの通信計測器を含む)や、双興電機製作所、エヌエフ回路設計ブロックなどのリレー試験器、戸上電機製作所、ミドリ安全、佐鳥電機などの電力監視機器が展示された。つまり、2024年5月29~31の東京ビッグサイトは、幅広い範囲の多くの計測器が出展された。

ワイヤレスLAN(わいやれすらん)

(wireless LAN) ワイヤレス(無線)通信でデータの送受信をするLAN。別名、無線LAN。Ethernet規格の一部である「IEEE 802.11b」規格のことを指す場合が多い。2010年頃からは一般家庭に普及したWi-FiがワイヤレスLANの最も普及した規格である。 元々、英語のwireless(有線の線材であるワイヤがない)を訳したことばが「無線」だが、英語をカタカナにした「ワイヤレス」もすでに日本語になっている。無線LANが普及する際に、従来のLAN(wired LAN、線でつながったLAN)ではないという意味で「ワイヤレスLAN」という表現がされたと思われる。ただし、前述のように無線LANやワイヤレスLANよりもWi-Fiという表現の方が大変良く使われている(2020年現在)。 ワイヤレスLANが登場したため、従来のLANを区別して有線LANと呼称することがあるが、通常はLAN、Wi-Fiといって、比較するときにしか有線LANという表現は使われない。英語でも無線(wireless)に対することばとして有線(wired、ワイヤード、ワイヤでつながった)ということばがある。wiredが先で、wirelessが生まれたわけではない。

渡辺測器(わたなべそっき)

小形のデータロガーをラインアップしているグラフテック株式会社の以前の社名が渡辺測器株式会社。通称「ナベソク」。1949年設立の老舗計測器メーカである。横河電機(現横河計測株式会社)や三栄測器(現株式会社エー・アンド・デイの工業計測機器)と並ぶ主要なレコーダ(記録計)メーカだが、2社とは違いレコーダとともにプロッタに注力し、プリンタ(印字ではなく印刷する出力機器)のラインアップが充実していた。グラフテックとして、計測器(データロガー)だけでなく情報関連機器(イメージング入出力機器など)をつくる会社として存続している。1958年に日本初のX-Yレコーダ、1961年に日本初のX-Yプロッタを開発。1979年10月に「レコーダひとすじ三十年:渡辺測器三十年史(渡辺測器30年史編集委員会編)」という本を出版している。1983にグラフテックに社名変更。2004年に発売開始したデータロガー「GLシリーズ」は、キーエンスの小型データロガーのシェアを取ったと噂され、現在もラインアップは健在である。現在のレコーダの主流であるメモリレコーダからは撤退してしまったが、1980年~1990年代のメモリレコーダの3強はメモリハイコーダ(日置電機)、オムニエース(NEC三栄)、サーマルアレイレコーダ(グラフテック)だった(横河電機は計装向けのレコーダにも注力していて、計測器としてのレコーダは当時はオシログラフィックレコーダやアナライジングレコーダで、上記3社とは若干、設計ポリシーが異なる)。

ワット(わっと)

(watt) 電力や仕事量をあらわす単位。記号は[W]。国際単位系のSI組立単位。電力の英語はelectric power(またはpower)のため、電力の量記号はPが良く使われる。電力の測定器は電力計、デジタルパワーメータなど多く、それらは測定値をワットで表示する、ワットの測定器(ワットメータ)である。指示計器であるアナログ式の電力計には、指示板に「W」と印刷されている(針がワットを指示していることが一目でわかる)。高周波の電力測定器(RFパワーメータや光パワーメータなど)は相対表示(dBやdBmなど)でW(ワット)ではない。 電力は「電気が仕事をする力」で、電力P[W] = 電圧V[V(ボルト)] × 電流I[A(アンペア)]。電力の単位をVA(ボルトアンペア)と表記する場合がある。WとVAの違いはVA:皮相電力(有効電力+無効電力)、W:有効電力である。つまり無効電力まで考慮した電力の単位がVA。 ワットの語源は、蒸気機関の発明で知られる英国(スコットランド人)のジェームズ・ワット(James Watt)。

ワットメータ(わっとめーた)

(watt meter) アナログ式の電力計の別称。針が振れて測定値を示す指示計器の1種。アナログ式の電流計は文字盤に電流の単位であるA(アンペア)が表記されていて、電流計は英語ではampere meter(アンペア メータ、「アンペアの計測器」という意味)と呼ばれる。電力計の指示板にも電力の単位W(ワット)が表記されていて、「ワットを測定する」のがワットメータである(※)。 (※) 電力の単位にはVA(ボルトアンペア)もある。VA:皮相電力(有効電力+無効電力)、W:有効電力。 電力の英語はelectric power(またはpower)で、電力の測定器は「パワーメータ」と呼ばれる。計測器としては、商用周波数などの低周波の電力測定器はデジタルパワーメータやパワーアナライザ、クランプメータになる。高周波では、無線ならRFパワーメータ(高周波パワーメータ)、有線なら光パワーメータ(OPM:Optical Power Mete)がある。 このように電力を測定する計測器は日本語では一般にパワーメータと呼ばれ、電力計という総称はあるが、品名にはあまり使われない(クランプメータをクランプ電力計、RFパワーメータを高周波電力計、と呼ぶことはある)。そのため電力計(ワットメータ)とは、広義には「電力(パワー)の測定器(メータ)」だが、具体的な製品としては(狭義には)「アナログ式の箱型の電力計」を指している。電力測定器について説明するときは、総称である「電力計」という名称を使い、種類などを解説するが(たとえば「ベンチトップ電力計」など)、これは概念を説明している名称で、具体的な計測器には「○○電力計」というような品名はあまりない(以下の「電力計の基礎と概要」を参照)。 電力測定器を総称して「ワット」と呼称している場合がある。デジタルパワーメータを海外へ販売している計測器メーカである横河計測は、電力測定器(デジタルパワーメータなど)を「ワット」と呼称している(※※)。 (※※) 横河計測のデジタルパワーメータやパワーアナライザの形名(や通称)はWTが多い(WT300、WT1800、WT5000など)。WTはwattが語源(由来)かは定かではない。 計測器情報:ワットメータ(電力計)の製品例