計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
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熱画像(ねつがぞう)

非接触温度計のサーモグラフィカメラ(熱画像計測器)で、「被写体の表面温度分布を表わす映像、および出力された写真または図(日本アビオニクス株式会社の「赤外線や工業計測器に関する用語」より)」。

熱画像計測装置(ねつがぞうけいそくそうち)

非接触温度計のサーモグラフィのこと。温度の制御・計測を得意とする株式会社チノーは、非接触温度測定器で温度分布を画像表示するものを、この名称で呼んで、放射温度計とは区別している。放射温度計:1点測定の非接触温度計、熱画像計測装置:面で温度を計測して画像で記録する温度計測器、という定義。両者とも校正、トレーサビリティを保証していて、単なるカメラではなく計測器であるというのが、同社の主張である。産業用途のサーモグラフィで国内シェア30%と推定される同社は、2020年にコロナウイルスが蔓延する中で、高精度な体表面温度の監視装置を発売した。世の中に精度保証されていないサーマルカメラが多い中で、同社の新製品については記事「トレーサブルな体表面温度測定~チノーThermoview赤外線サーモグラフィカメラ」を参照されたい。

熱雑音(ねつざつおん)

(Thermal noise) 抵抗体内の電子の不規則な熱振動によって生じる雑音をいう。抵抗体内で発生する雑音電圧Vn[V]は、下式で与えられる。ここで、 k: ボルツマン定数 1.38x10-23 [J/K], T: 抵抗体の絶対温度[K] , B: 受信機の帯域幅[Hz], R: 抵抗値[Ω] である。 熱雑音は機器自体が発する雑音のもとになり、たとえば測定器が観測できる最低信号レベルであるノイズフロアは熱雑音に拠るところが大きい。

熱線吸収ガラス(ねっせんきゅうしゅうがらす)

非接触温度計(サーモグラフィ、放射温度計)に使われている。可視光を透過させ、赤外光を透過させない性質を持ったガラス。関連用語:コールドミラー 。(日本アビオニクス株式会社の「赤外線や工業計測器に関する用語」より)

熱中症指数計(ねっちゅうしょうしすうけい)

環境省が定めている「暑さ指数」(WBGT)を測定する温度計の名称。計測器メーカの製品説明には「WBGT(暑さ指数)を表示」や「熱中症指数(WBGT)、黒球温度、温度、相対湿度(RH)などを測定」など、暑さ指数(WBGT)が測定できることが記載されているが、メーカの品名は「熱中症指数計」や「熱中症指数モニタ」、「熱中症指数チェッカ」など「熱中症指数」で、WBGTや(環境省が呼称している)「暑さ指数」ではない。計測器メーカとしては、家庭用健康機器である体重計など「はかる」が得意のエー・アンド・デイや、ハンドヘルド計測器のラインアップが豊富なカスタムなどが、(黒い球がついた)黒球型モデルをつくっている。温度計が有名な佐藤計量器製作所やアナログ計器の鶴賀電機もラインアップがある。黒球型ではない、壁掛け・卓上型のような小型軽量モデルも通販サイトで複数メーカから販売されている。温度計の1種なので計測器だが、医療・家庭健康機器という側面が大きい機器といえる。放射温度計(サーモグラフィ、サーマルカメラ)と「ウイルス感染対策用の体表面温度測定器」のように、計測器以外の所管官庁や業界団体が関与する温度計である。 計測器情報:「熱中症指数」が品名につく製品例

熱電対(ねつでんつい)

(thermo couple)温度を検出するセンサの1種。構成材料(金属)の種類によって数十種類ある。英語のThermo Coupleを略して「TC」と表記されることも多い。測温抵抗体(RTD)とともに温度センサの代表である。メーカは山里産業や岡崎製作所がある。

熱電対温度計(ねつでんついおんどけい)

熱電対センサーを使用した温度計。

熱電対変換器(ねつでんついへんかんき)

熱電対の信号を電圧に変換する機器。別名:信号変換器。

熱伝導率計(ねつでんどうりつけい)

熱伝導率とは熱の伝わりやすさのことで、材料によって異なり固有の値がある。熱伝導率計は、国内メーカでは京都電子工業やリガクなどの科学分析機器、理化学機器メーカがつくっている。英弘精機は日射計などの気象関連機器メーカだが、物性・分析機器事業部では海外製の熱伝導率計を輸入販売している。

ネットアナ(ねっとあな)

ネットワークアナライザ(network analyzer)の略称。略記:NA。参考用語:VNA参考記事:アナライザあれこれ 第5回「ネットワークアナライザ」

ネットワークアドバイザ(ねっとわーくあどばいざ)

(Network Advisor) HP(ヒューレット・パッカード、現キーサイト・テクノロジー)の1990年代後半のプロトコルアナライザ(プロアナ)、J2300シリーズの名称(現在は生産中止)。外観は取っ手のある箱で、持ち運んで使う(ハンドキャリーできるポータブル)サイズだった。蓋を開けると、キーボードとモニタが現れた。この構造は当時のラップトップパソコンに似ている。普及しつつあったLANや(広域網の)WANなどに対応した。ラップトップの箱の下にユニットを付けて多種類のインタフェースに対応した(箱の厚さが増す)。ユニット(オプション)の構成によって仕様が異なり、たとえば以下のような解説の製品があった。 Hewlett Packard J2300C Internet Advisor(WANユニット付き):軽量で持ち運びに便利。ユニットを使用すると50bps~2Mbpsまでの主要なWAN通信プロトコルを監視できる。対応する規格はフレームリレー、ISDN、X.25、HDLC、SDLC、SNA、非同期PPP、およびWAN(ワイド エリア ネットワーク)上で実行されるカプセル化されたLANプロトコル。 当時のHPの形名は数字4桁(または5桁)がほとんどで、頭にアルファベット大文字を1文字つける形名は大変特殊だった。ATMアナライザなどの有線通信用の専用測定器には頭にEがついたモデルがあり、これはメインフレームとユニットで構成するモジュール型の製品が多かった。同社のプロトコルアナライザはこのJ23xxを筆頭に、1990年代以降は独特の形名になった。1980年代に安藤電気のAE-5100シリーズと競った、RS-232Cなどのプロアナ(4953Aなど)の次世代モデルがJ2300になる。4953AまではHPの従来製品だが、それ以降のプロアナはM&Aで吸収した機種が登場する。頭がEで始まる形名でユニットの構成によってWAN/LANアナライザとかWAN/WAN(わんわん、と呼称)アナライザなどと呼ぶモデルが1990年代前半にあり、J2300はその後でリリースされる。 ネットワークアドバイザは2002年のJ2300Eが最後のモデルで、2003年には次のモデルNetwork Analyzer J6800シリーズが発売されている。インターネットやIPの急速な普及によって広域網の通信規格は変遷し、イーサネット以外のプロアナはだんだん姿を消していった。2010年代にはギガビットLANなどの、より高速な規格に対応したプロアナ(データキャプチャ測定器)が残り、キーサイト・テクノロジーにはプロアナ製品はなくなった(バスアナライザは最後まで残っていた)。 2000年代以降はスマートビットなどの負荷試験機がプロアナに代わり活躍する。IP負荷試験装置としてSmartBitsと競ったIXIA(イクシアコミュニケーションズ)社を、キーサイト・テクノロジーは2018年に買収している(ただし計測器である負荷試験機ではなく、IXIAのネットワーク機器が魅力だったと推測する)。 どちらにせよ、1980年代のRS-232Cの時代に世界的なプロアナのブランドだったHPと安藤電気の両社は、通信速度の高速化に伴い2010年頃にはプロアナから撤退した(高速のプロアナは他社でもギガビットLANくらいしかなくなった)。現在のプロアナは、低速(RS-232Cなど)のオンラインモニタ(ラインアイ社など)と、Bluetoothなどのバスアナライザになっている。 Advisor(アドバイザ)は、HPが本格的なLANプロトコルアナライザをつくった製品の名前だが、LANのプロアナとしてはsuniffer(スニファー)のほうがシェアが高かった。 計測器情報:J2300E Advisor WAN

ネットワークアナライザ(ねっとわーくあならいざ)

(network analyzer) 電子部品の伝送特性を測定する機器。略称:ネットアナ。ネットワークといっても、LANやクラウドのような通信網のことではなく、回路網のことをネットワークと呼んでいる。高周波の回路網に使用される各種の部品や回路システムの特性を評価する総合試験なのでアナライザの名称がある。 信号源を内蔵し、DUTに与えた高周波信号の反射波や透過波からSパラメータを求めることによって、DUTのインピーダンスや減衰量などを測定する。測定結果は伝送特性や位相特性などの周波数特性(f特)以外に、スミスチャートによる「複素インピーダンスの周波数による変化の推移」が表示できる(現在主流のVNAの話。スカラネットワークアナライザは振幅と位相の内、振幅しか測定できない)。DUTはアンプなどのアクティブデバイスやアンテナ、フィルタなど(パッシブデバイス)、様々な高周波部品である。DUTとの接続は各種の治具(テストフィクスチャなど)が使われる。DUTを接続する前に校正キット(ECalなど)を使用する。マイクロ波やミリ波などの「高周波の伝送理論」、たとえば特性インピーダンス、分布定数回路、定在波などを理解していないとネットワークアナライザは使いこなせない。 カテゴリーは回路素子測定器(LCRメータ、インピーダンスアナライザなど)やFRA(Frequency Response Analyzer、周波数特性分析器)に近い機種群である。扱う周波数はMHzからGHzの高周波になるので、RFの基本測定器であるスペクトラムアナライザやSGをつくっている計測器メーカが手掛けている。世界的にトップシェアはキーサイト・テクノロジーで、ローデ・シュワルツやアンリツもラインアップしている。最近はスタンドアロンではなくPC接続型のモデルも増え、USB計測器をキーサイト・テクノロジーなどが発売している。リアルタイムスペクトラムアナライザでRF分野に本格参入したテクトロニクスも小型のネットアナを発売し、MWE2017(2017年12月開催のマイクロウェーブ展)に出展している。 (計測器だけでなく)一般には「ネットワーク」というと通信やコンピュータが連想される。実際にプロトコルアナライザ(回線に通信されているデータ内容を見る測定器)で「ネットワークアナライザ」という品名の製品が、フルーク(現フルークネットワークス社)に以前あり(現在は廃止品)、大変誤解と混乱を招く名称だった。現在、通信の測定器で「ネットワーク関連測定器」というような表現をしている製品群があり、各種の通信規格を評価するが、このネットワークとネットアナは計測器の初心者には混同されやすい。 参考用語 ネットアナの用語一覧

Network Analyzer J6800シリーズ(ねっとわーくあならいざじぇいろくはちぜろぜろしりーず)

アジレント・テクノロジー(現キーサイト・テクノロジー)の2003年頃のプロトコルアナライザ(プロアナ)の品名/形名がネットワークアナライザ/J6800A。1990年代のモデル、J2300C Internet Advisor(WANに対応したモデルをネットワークアドバイザと呼んでいた)の後継モデル。外観はJ2300を踏襲し、ハンドキャリー可能な形状で、キーボードとモニタはラップトップPCのような構造だった。ただし、J6800シリーズはJ6800A以外のモデル(J6801AやJ6802Aなど)はキーボードやモニタがないただの箱で、PCなどとつながないと使えない。 J6800シリーズはすでに生産終了で、同社HPにその旨が掲載されている(2022年12月現在)。1990年代以降に普及したインターネットやLANに対応したプロアナだったが、LANプロトコルアナライザとしては他社製品(sniffer、スニファー)の方が有名である。J6800シリーズの後にJ7332Aなどのモデルがあったが、現在は同社はプロアナからはほぼ撤退している。 現在のプロアナはRS-232Cなどの低速のオンラインモニタと、ギガビットLANなどの高速のパケットキャプチャ機器やBluetoothなどのバスアナライザに2極化され、両者とも計測器専業のメーカ以外がつくっている。 この製品の品名は大変迷惑な名称である。計測器でネットワークアナライザ(ネットアナ)といえばネットワーク(回路網)の評価用測定器である。この製品の名前のネットワークとはインターネットなどの通信網のことである。ネットワークというワードを品名に使いたいなら、なぜNetwork Protocol Analyzerと命名していただけなかったのだろうか。計測器ユーザを大いに困惑させる、迷惑な名称である。プロトコルアナライザという名前が古臭くて、「今どきのインターネットなどのネットワークに対応したアナライザ」といいたかったのかもしれない。前身のJ2300の品名、「ネットワークアドバイザ」はまだ許容範囲内であるが、こともあろうに世界的なネットアナ(回路網評価機器)のメーカであるキーサイト・テクノロジーが、同じ名前のプロアナを発表したことは大変な驚きである(同社のネットアナの開発部門など、関連部署は何の反対もしなかったのだろうか?)。すでに生産中止なので、過去の製品となり、いまは被害が広がらないことが幸いである。 製品カタログ(会員専用):Network Analyzerファミリー 技術概要

ネットワーク・タップ(ねっとわーくたっぷ)

ネットワークの通信の状態のタッピング(通信を邪魔しないモニタ)をする機器。車載Eherenetで製品化されている。通信しているリンクからデータを引っ張ってきて、データロガーやPCで解析するなどの用途で使われる。車載Ethernet製品で先進のラインアップがあるTechnica Engineering社はCANやLINのラインからデータを取るモジュールも用意している。参考記事(会員専用):【展示会レポート】人とくるまのテクノロジー展 2022 横浜 ・・ガイロジック株式会社が取り扱っている車載Ethernet製品を取材。

ネットワークパケットブローカー(ねっとわーくぱけっとぶろーかー)

企業が持つセキュリティ製品やネットワーク解析装置にパケットを最適化して送信する機器、ソリューション。

ネットワーク負荷試験機(ねっとわーくふかしけんき)

(network performance tester/IP network traffic generator) 通信回線(ネットワーク)の機器(交換機やルータ、サーバなど)に大量の情報を送る(大量のトラフィックを流す)ことを負荷試験という。一般に計測器で負荷試験というと、高い電圧を印加して耐久性を試験する耐電圧試験(耐圧試験、高電圧試験)もあるので、通信の負荷試験の場合はIP負荷試験装置やネットワーク負荷試験機など、頭に通信であることを追記する(通信の負荷試験でも、単に負荷試験機と呼称している場合もある)。 インターネットが普及した2000年頃にネットワーク負荷試験機の代名詞であるSmartBits(スマートビット、略称:スマビ)をつくった米国スパイレント(SPIRENT Communications Inc、販売は東陽テクニカ)は、現在はホワイトハッカーを率いるセキュリティ会社だが、計測器ではSpirent TestCenter(テストセンター)が現役である。名称は「ネットワーク・パフォーマンステスタ―」や「トラフックジェネレータ」などで、製品カタログのサブタイトルは「次世代IP負荷/擬似エミュレータ」である。つまり、トラフック(情報、情報量)の発生器(ジェネレータ)で、ネットワーク装置やネットワーク全体のスループット/遅延/ジッタなどを測定して性能・処理能力(パフォーマンス)を評価し、大量のネットワーク装置を擬似できて(エミュレータ)、次世代のIPなどの広い通信規格に対応している、といっている。東陽テクニカのホームページには「負荷試験」ということばは出てこないが、まさにネットワーク負荷試験機である。 負荷試験を英訳するとload testである。loadでは英語としては通じない。ここでいう負荷を掛ける、というのは日本語であって、英語では「traffic generator」や「performance tester」のように、トラフィックやパフォーマンスと表記しているので、東陽テクニカも負荷試験と表現していないと推測される。また、ネットワーク機器や回線の代わりをするエミュレータで、擬似ネットワーク機器(及びネットワーク)なので、「擬似エミュレータ」という表現もしているが、これは品名ではない。交換機に負荷を掛けて(多くの電話機からの発信・着信などの呼を与えて)性能を評価したり、回線にトラフィックを流す計測器をコールシミュレータ(呼をシミュレーションするもの)というが、電話機ではなくインターネット時代のシミュレータがネットワーク負荷試験機(ネットワーク・パフォーマンステスタ、トラフィック・ジェネレータ)といえる。 通信計測器の雄、アンリツのIPネットワークアナライザ MD1231A1は、「IPネットワーク負荷試験機能とモニタリング機能を一体化したポータブルIP測定器。小型・軽量で、ネットワーク敷設/保守での性能試験やモニタリングに最適」とうたっていた(すでに製造中止)。後継のデータ クオリティ アナライザ MD1230Bの特長は「・10Mbit/s~10Gbit/sまでのイーサネットインタフェースに対応、・1台あたり最大60ポートまでのポート拡張性(10/100/1000 M)、・フルワイヤレートのトラフィック発生と、ネットワークのリアルタイムモニタリング」である。これらの特長はSpirentのTestCenterの競合品であることが明白である。TestCenterと同様に品名には「負荷試験」はない(ネットワークアナライザ、データ・クオリティ・アナライザ、つまりネットワーク解析器、データ品質アナライザである)。 余談だが、計測器(測定器)は機ではなく器なので、負荷試験機ではなく負荷試験器が適切だが、ほとんどの計測器メーカの品名は負荷試験器でなく負荷試験機である(理由は不明)。試験器の場合もあるので、負荷試験装置と表現すると無難だが、多くのメーカに倣い「負荷試験機」という表記を採用した。

ネットワークマスタ プロ(ねっとわーくますたぷろ)

(network master pro) アンリツのOTN/SDH/SONET関連測定器(OTN、SDH/SONET、PDH/DSnインタフェースを持つネットワーク装置やデバイスの評価測定器、古くは1990年代の SDH/SONETアナライザなど)の現役モデルMT1000A、MT1040Aの名称(品名)。 MT1000Aは通信速度1.5M~100Gbps(bit/s)に対応し、名称のサブタイトルに「イーサネット/CPRI/OTDRテスタ」とある。MT1040Aは10M~400Gbpsに対応し「400Gテスタ」と表記されている(2023年同社ホームページより)。本体はメインフレームで、測定モジュールを実装して各種の通信方式に対応するモジュール式計測器である。10GマルチレートモジュールMU100010Aを使うと、1.5M~10Gbpsの通信ネットワークの開通・保守に必要な機能・性能になる。つまりフィールドでの使用を想定していて、OTDRモジュールもある。ネットワークマスタ プロは、さまざまなネットワークの開通保守に対応するアンリツのプラットフォームの名称といえる。MT1040Aは400Gイーサネット(400GbE)の物理レイヤを測定する小型(B5サイズ)の測定器で、同社は「業界最小サイズ」とPRしている。400Gイーサネットはデータセンタ内の通信で導入が進んでいる。 NTT(旧電電公社)は日本の基幹通信網を整備してきたが、時代と共に新しい伝送交換の装置が開発・導入されてきた。NTTは研究・開発を行い、実際の機器の設計・製造は電電ファミリー各社が行って、NTTに納品した。伝送交換の通信機器は日本電気、富士通、沖電気、日立製作所(いわゆる「NFOH」と呼称される交換4社)がつくり、装置を試験する計測器はアンリツや安藤電気などが設計・製造した。たとえばITU-Tが規定した世界的な共通規格「SDH/SONET」に対応する伝送装置(1990年から導入開始された新同期網)を試験するのがSDH/SONETアナライザである。インターネットが普及しネットワークのキー装置としてルータが登場し、交換機が主要な通信装置でなくなるまで、アンリツと安藤電気は伝送/交換装置用測定器をつくり続けた(形名はアンリツがMPxxxxA、安藤電気はAP-xxxxが多い。x:数字4文字)。 アンリツの1990年代のSONET/SDH/PDH/ATMアナライザMP1570Aは、小型・可搬型、モジュール式で、当時の多くの通信規格に対応したヒット製品だった。後継品はネットワークパフォーマンステスタMP1590A/Bで、その後継がMT1000A、MT1040Aになる。1990年頃の「SDH/SONETアナライザ」が、IPの普及によって、規格名称を品名にすることがなくなり「ネットワークパフォーマンステスタ」、「ネットワークマスタ プロ」と変遷したことがわかる。また、従来この分野の測定器(伝送/交換装置用測定器)は形名の頭がMPだったが、アンリツの現役モデルはBERTしかなくなった(MP1900AとMP2110A。2033年11月現在)。 形名MTは同社のtester(テスタ)を意味し、ワンボックステスのような総合試験器である。その意味では通信計測器の主力(大きな売上を占めた)伝送/交換装置用測定器はほとんど縮小し、ギガビットAN(GbE)などの高速通信規格に対応する総合評価ツールが有線通信の主力測定器になったといえる。ただし、SDH/SONETは装置としては現役なので、同社のネットワークマスタ プロの機種群(カテゴリー)のタイトルは「OTN/SDH/SONET関連測定器」である。通信網や通信規格の変遷(歴史)を知らないと、通信計測器の品名から何の測定器(どのカテゴリー)か、正しく理解することはできない。通信計測器は知識のある人達だけのニッチな村社会である。

熱流計(ねつりゅうけい)

熱流の流速と量を測定する機器。

NEMA規格(ねまきかく)

アメリカ電機工業会(National Electrical Manufacturers Association)、通称「NEMA」(ネマ)が標準化した規格。商用電源のコンセントに接続する電源ケーブルのプラグなどを規定している。NEMAの規格番号は、プラグ形状、定格電圧、定格電流などを示す。たとえばL5-15PはL:プラグ形状が引掛型(無記載は平刃型)、定格:5V/15A、P:Plug(オス、ケーブルの先端にあり、突起があり、差し込む側のコネクタ。RだとReceptacleで、メス、コンセント側の穴の開いたコネクタ)。 NEMA規格準拠のプラグ、コンセントや電源タップなどの配線器具をサンワサプライなどが製造販売している。「NEMA規格準拠のプラグ」を略してNEMAプラグ と呼称することもある。

NEMAプラグ(ねまぷらぐ)

(NEMA plug) 「NEMA規格準拠のプラグ」を略して呼称したもの。計測器の電源入力は3P(3極、3穴)が多いので、当然電源ケーブルも(コンセントに差し込む側は)3Pである。ただし日本の商用電源コンセントは2Pなので、3Pを2Pに変換するアダプタが日本で販売される計測器にはほとんど標準添付されている。 1990年頃、HP(現キーサイト・テクノロジー)の付属品リストには、この3P-2P変換アダプタを「NEMAプラグ」と記載していた。そこで、HP製品に親しんでいる人達は3P-2P変換アダプタのことをNEMAプラグと呼んでいた。つまり、NEMAプラグとは3P-2P変換アダプタの別称という解説もできる。