計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
計測・測定に関連する用語全般が収録されており、初めて計測器を扱う方でも分かりやすく解説しています。
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アクイジション(あくいじしょん)

(acquisition)acquisitionを和訳すると「取得、獲得」。計測器ではデータロガーやメモリレコーダなどで「データアクイジション(計測器へのデータの取り込み)」やオシロスコープの「アクイジション・モード」というように使われる用語である。 データ集録を示す「DAQ(ダック)」は「Data AcQuisition」の略記である。 テクトロニクスの冊子「リアルタイム・スペクトラム解析のすべて(2009年9月発行)」ではスペクトラムアナライザの用語として「アクイジション:時間的に連続した整数個のサンプルあるいは信号の取込み」と解説されている。

アクイジション時間(あくいじしょんじかん)

アクイジション(Acquisition)はデータ集録機器(データロガーなど)やオシロスコープで使われる用語だが、テクトロニクスの冊子「リアルタイム・スペクトラム解析のすべて(2009年9月発行)」ではスペクトラムアナライザの用語として「アクイジション時間:1つのアクイジションで表される時間の長さ」と解説されている。

アナライジングレコーダ(あならいじんぐれこーだ)

(analyzing recorder) 横河電機(現横河計測)が1980年代~1990年代につくっていたレコーダ(多チャンネルの波形測定器)。AR1100Aなど、形名の頭がARだった。シリーズ最後のモデルAR4000シリーズは2004年7月に販売終了し、後継モデルはスコープコーダDL950である(2022年7月、同社HPより)。 同社の製品説明には「AR4400/AR4800は波形測定に必要な測定、処理、表示、記録機能を1台に集約し、プラグイン入力ユニット、カラー表示、光磁気ディス クドライブなど最新技術を導入した多機能波形測定器」とある。同時期のオシログラフィックレコーダOR(またはORM)シリーズとともに、当時の横河電機のメモリレコーダの機種群である。 アナライジングレコーダ(現在のスコープコーダ)の源流は1976年発売のモデル3650(品名はサウンド・バイブレーション・モニタだったらしい)。後に3650(1980年発売、品名はウェーブメモライザ)、3655(1983年、このモデルからアナライジングレコーダ)、AR1100(1990年)と続き、DL708(1997年、デジタルレコーダ)、DL750(2002年、スコープコーダ)になる。 横河電機は記録計(いわゆるレコーダ)の老舗である。現在でもデータ収集(DAQ)は主要な製品群の1つで、計装分野のデータロガーやペーパーレスのレコーダなどを継続的にラインアップしている。横河電機の計測器事業部門が分社化した横河計測はレコーダではなくオシロスコープに注力し、看板商品のDLシリーズは、1980年~2000年代には国内のデジタルオシロスコープ(汎用オシロスコープ)でテクトロニクスとシェアを2分するトップブランドだった。 ただし、レコーダのようなオシロスコープとしてアナライジングレコーダをつくった。オシロスコープとレコーダの中間の仕様で、「両者のいいとこどりをしたオンリーワン製品」とメーカはPRしている。発売当時のコンセプトが「(レコーダのような)オシロ」のため、当サイトのカテゴリー(機種分類)はオシロスコープの中にレコーダオシロという分類をつくっている。ただし、現在のスコープコーダ(アナライジングレコーダの後継)は、横河計測ホームページでは「オシロスコープ/波形測定器」と「データロガー/データ集録(DAQ)」の両方のページに掲載している。つまりオシロと記録計の両方である)という主張になっている(2023年10月現在)。

胃カメラ(いかめら)

(gastroscope) 胃の内部状態を調べるカメラ。医療用の内視鏡。別名、「医用内視鏡」。内視鏡は細い管の中を検査する機器。胃カメラは計測器ではなく医療用の機器である。工業用内視鏡は配管などの内部劣化を検査する保守用の測定器として使われる。そのため、工業用内視鏡を取り扱っている計測器レンタル会社に胃カメラの問合せがあるが、医療機器のためほとんどの計測器レンタル会社は保有していない。日本のオリンパス(※)は医療用、工業用ともに内視鏡の世界的なトップメーカである。 オーディオ機器のブランドである国産のTEAC(ティアック)の事業は2つある。1つめは音響機器事(プレミアムオーディオ機器やハイエンドオーディオ機器、音楽制作・業務用オーディオ機器)、2つめは情報機器事業で、計測機器(データレコーダ、トランスデューサ)、航空機搭載用記録再生機器、医用画像記録再生機器 などである。オーディオ機器ではテープを使った録音・再生機器(いわゆるデッキ)が有名だが、それから派生して色々な記録媒体を使った記録機器をラインアップしている。計測器としてのデータレコーダではSONYの関連企業と市場を2分していたので、計測器業界では「TEACといえばデータレコーダ」であった。現在はSONYグループがテープおよびその関連機器から撤退したので、現存するデータレコーダはほぼTEAC1社となっている。航空機のひずみ・振動測定には多チャンネルのデータレコーダが好んで使われるため、TEACは航空機の本場である欧米でデータレコーダのビジネスをしている(新製品のデータレコーダWX-7000シリーズは日本より米国で先に発売されている)。もうひとつ医用画像記録再生機器は、同社ホームぺージでは「医療画像ファイリング製品」と書かれているが、実は「メディカルシステム」の専用サイトがあり、そこには内視鏡の関連製品がある(お待たせしました、ここまで読んでいただきありがとうございます、やっと医用内視鏡である胃カメラの話になります)。内視鏡の画像の記録をする「内視鏡イメージレコーダー」なる品名の製品群である。TEACは医療機器や内視鏡に関する製品までレコーダとしてラインアップしていたのである。これはコニカミノルタやエー・アンド・デイ同様に「計測器から医療分野の製品群までカバーしている」メーカということである。 (※)治療機器事業と内視鏡事業をしているオリンパスは、「医療分野と科学分野のそれぞれの事業特性に合った経営体制を確立する」、として工業用内視鏡を含む科学事業を2022年4月に分社化して株式会社エビデントを設立、さらに同年8月にはBain Capital Private Equity(ベインキャピタル)にエビデントを譲渡する契約を締結したと発表。なので、現在の国内最大手の医療用内視鏡メーカはオリンパスだが、工業用内視鏡メーカはエビデント。

ウエスチングハウス(うえすちんぐはうす)

(Westinghouse)1886年、米国で電機メーカのウェスチングハウス(またはウエスティングハウス)・エレクトリック&マニュファクチャリング・カンパニーが設立され、1945年にウェスチングハウス・エレクトリック・コーポレーション(Westinghouse Electric Corporation)に改名。19世紀(エジソンと同時代)の発明家ジョージ・ウェスチングハウスが発明を事業化した会社である。1920年には試験現場に持ち運べる携帯用電磁オシログラフを発売していた(つまり老舗の計測器メーカである)。 米国の総合電機メーカ「ウエスチングハウス・エレクトリック」は1999年まで存在し、その原子力事業部門は1950年代以降は加圧水型原子炉(PWR)の開発・製造で世界的なブランドとなっていた。1999年に英国の会社に売却され、2006年には沸騰水型原子炉(BWR)メーカである東芝が入札に勝ち、株主になった。ところが2017年には米連邦倒産法第11章(チャプターイレブン)の適用をニューヨーク州連邦裁判所に申請した(つまり倒産した)。原発のウエスチングハウス購入は東芝の経営不振の元凶になったのである。 世界No.1の原子力発電所メーカを目指した東芝は、潰れそうな不良会社をつかまされ、だまされて高額で購入してしまったのである。ウォール街の国際金融資本家に日本企業は食い物にされたという解説もあるが、これが国際社会の資本主義の原理(現実)である。東芝は半導体や防衛機器で重要な技術をもつため、会社が分社化などで解体されると日本の国益にとって好ましくない。東芝が再編案について、国内投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)に優先交渉権与えたことが2022年10月11日に報じられた。JIPは中部電力やオリックスなどの日本企業が出資する計画らしい。国産の大手老舗企業である東芝の経営が安定し、利益を生む健全な形になることが望まれる。 参考記事:日本の低周波波形測定器の起源から現在のメモリレコーダまでの100年の歴史 ・・・ウエスチングハウスの電磁オシログラフについて記述がある。

SSD(えすえすでぃー)

(Solid State Drive) コンピュータのメモリに使われるソリッド・ステート・ドライブのこと。SSDという表現(表記)が一般的に広く使われている。価格が安価になったことでPC用の外付けストレージとして小型の名刺サイズの製品が流通している。フロッピーディスク(FDD)、ハードディスク(HDD)に続き、2020年には出荷台数がHDDを抜き逆転している。 レコーダなどの計測器に長時間記録できる媒体として使われたテープが生産中止になり、データレコーダは一時期、ほとんどが生産終了した。HDDは信頼性の点で屋外で使うポータブルの計測器には向かなかった。SSDが安価になったことで、データレコーダの計測器メーカだったティアックは生産を復活(新製品を発売)した。 計測器情報:SSDを搭載したティアックの製品例(WX-7000シリーズ)

X-Yレコーダ(えっくすわいれこーだ)

X軸とY軸の2つに電圧信号を入力し、その相互関係の波形を記録するレコーダ。二次元で表現すると判りやすい現象を記録するのに適していて、1950年代に登場した。現在はレコーダをラインアップする主要な計測器メーカは生産していない。

塩素酸カリウム(えんそさんかりうむ)

塩素酸カリウムの中の原子の共鳴吸収周波数(NQR周波数)は温度に依存するため、極めて精密な温度センサになる。横河電機には1970年代にNQR標準温度計 2571という製品があった。参考記事:記録計・データロガーの基礎と概要 (第3回)・・・さまざまな温度センサを概説している。モデル2571の写真が載っている。

オシログラフ(おしろぐらふ)

(oscillograph) 電気信号の波形を観測・記録する装置として、米国のウエスチングハウスは1920年に携帯型の電磁オシログラフを発売していた。1924年に横河電機は日本初の電磁オシログラフを国産化している(電磁型オッシログラフ)。オシログラフは記録計(レコーダ)の昔の名称といえる。波形観測の機器としてオシロスコープ(アナログオシロスコープ)が登場するが、これを「ブラウン管(CRT、陰極線管)を使ったオシログラフ」と解説してる文献がある。oscillographとは「oscillation(発振)やoscilator(オシレータ、発振器)のgraph(図、形状)」という意味で、「発信している波形」のことから「信号の波形を観測・記録する」機器のことを指すようになったと推測される。 電磁オシログラフは、長い周期の波形を紙に記録する機器で現在のカテゴリー(機種分類)では記録計(レコーダ)である。オシロスコープは短い周期の波形を観測・記録することに優れている(記録計とは別の、波形観測機器であるオシロスコープというカテゴリーになっている)。レコーダは長時間の記録ができる(たとえば紙を補充すればいつまででも記録できる)。反対にオシロスコープは変化が速い(周波数が高い)信号を観測できるが、記録できる時間は短い。現在でも記録計(メモリレコーダなど)とオシロスコープは、基本の仕様の項目は同じだがその数値は異なり、使い方(アプリケーション)がまったく違っている。それは電磁オシログラフとアナログオシロスコープの時と変わらない。 横河電機は日本初の電磁オシロフラフを開発したことが、後の計測器部門(現在の横河計測)に影響したかはわからないが、1990年頃に「オシログラフィックレコーダ」という品名の記録計(メモリレコーダ)をつくっていた。またメモリレコーダのことをメモリオシログラフと呼称する人が当時の横河電機の計測器部門にいた(当サイトのメモリレコーダのカテゴリー名が「メモリオシログラフ」なのはそれが理由である)。三栄測器や渡辺測器(現グラフテック)という「わが社こそ記録計の老舗、王道メーカなり」と自負している2社はオシログラフに特別な愛着はないが、横河電機にはオシログラフは特別であるようだ。上記の3社よりも後の1980年代にメモリレコーダに参入し、現在ではメモリレコーダのトップシェアとなった日置電機に、オシログラフ製品がないことはいうまでもない。

オシログラフィックレコーダ(おしろぐらふぃっくれこーだ)

横河電機(現横河計測)のOR1400やORM1300などの品名。 オシロスコープが半導体メモリを備えサンプリングによるデジタル式(デジタルオシロスコープ)になったように、アナログのメータで表示していたレコーダもデジタル式のメモリレコーダとなった。記録計の主流がメモリレコーダになっていく1980年代~1990年代に、計測用レコーダの老舗である同社がデジタル式のレコーダとして世に問うた製品群だった。現在の横河計測にはこの品名の製品は無いが、DL708からDL950、DL350へと続くスコープコーダ(同社のオシロの通称である「DL」を冠したレコーダ。同社オシロの形名はDL1600やDLM3000のように数字4桁だが、レコーダであるスコープコーダは数字3桁)にそのDNAは継承している。 日置電機のメモリハイコーダや、三栄測器(旧NECアビオニクス、現エー・アンド・デイの工業計測機器部門)のオムニエースのように、横河計測のメモリレコーダの1種である。OR1400は2001年4月1日に販売終了し、後継機種はDL950やDL350(2021年3月現在)。 ORM1200/1300の製品カタログの表紙には「高速ユニバーサルレコーダ」と記載されている。カタログには「ORMシリーズは高速ユニバーサルレコーダの最新の進歩である。複数の絶縁アナログチャネルを装備し、ロジックチャネルもオプションで追加できる」旨が記載されていた。 オシログラフィックレコーダと同時期に発売されていたAR(アナライジングレコーダ)の正式な後継がスコープコーダである(参考記事を参照)。オシログラフィックレコーダもARも「レコーダのようなオシロ」という位置づけで登場したが、両者の正確な違いは、今ではわからない。オシログラフックレコーダの設計コンセプトを知ることができるような文献はほとんどない(国立国会図書館によれば、所蔵の1992発行の横河技報36(2) 85~88ページにはOR2300の解説がある)。

オムニエース(おむにえーす)

(omniace) エー・アンド・デイ社(の工業計測機器部門)のメモリレコーダの通称。ペーパレスが記録計の主流となり、メモリレコーダの主要メーカである日置電機や横河計測のモデルは紙に印刷する機能を主眼にしていない。グラフテックのレコーダも印字できる機種が廃止になっている中で、オムニエースは唯一、印刷機能にこだわっている。鉄道などの業種が主なユーザで、その意向を強く反映していると推定される。 omniは「すべての」、「あらゆる」の意味。aceは第一人者の意味(野球の主戦投手など)。omniaceは「あらゆるもののエース」。オムニというと、OmniBER(オムニバー)、「すべてのBER(誤り率)測定器」という名前のモデルが1990年代にhp(現キーサイト・テクノロジー)にあった。 オムニエースは記録計(レコーダ)の老舗計測器メーカの三栄測器がつくった。三栄測器はNECが資本参加して、非接触温度計(サーモグラフィ)メーカのアビオニクスと統合しNECアビオニクス(日本アビオニクス)になり、レコーダやアンプなどの計測器(元の三栄測器の機種群)は分離されて、エー・アンド・デイ(体重計などの家庭用健康機器や天びんなどの計量機器、自動車検査用の試験機などのメーカ)に吸収され、現在は同社の工業計測機器部門が設計・製造・販売している。

カレントモニタ(かれんともにた)

クランプセンサと組み合わせてレコーダやオシロスコープに接続し、電流波形を記録・観測する機器。

感熱記録方式記録計(かんねつきろくほうしききろくけい)

(thermal recorder)サーマルヘッドの発熱で、感熱記録紙に記録するタイプの記録計。2000年代にはレコーダの種類の1つとして「感熱記録方式記録計(サーマルレコーダ)」があった。サーマルレコーダはサーマルプリンタを採用したレコーダという意味で、こちらの呼び方のほうが一般的だった。周波数応答性能が高く、数十kHz程度までの高速記録ができた。マイコンの採用で大容量メモリを搭載し、電磁オシロやペンレコーダなどのアナログ方式から、機能性が優れたメモリレコーダであるサーマルレコーダに記録計の主力は移ったが、その後にペーパーレス(印刷機能が無い)モデルが主流になり、今はほとんど生産されていない(2020年現在)。

基準接点温度補償(きじゅんせってんおんどほしょう)

温度計などに使われる温度センサである熱電対は、測温接点と基準接点との温度差で熱起電力が決定される。そのため測温点の温度を知るためには基準接点の温度も測る必要がある。その温度に相当する電圧を熱電対の起電力に加算し補正すること。(日本アビオニクス株式会社の「赤外線や工業計測器に関する用語」より)参考記事:記録計・データロガーの基礎と概要 (第2回)・・記録計/データロガーを利用する上での留意点として、基準接点補償について図解している。

記録計(きろくけい)

(recorder) 電圧信号の変化を紙やメモリに記録する測定器。別名:レコーダ。記録計には大きく2種類ある。オシロスコープがデジタル化してメモリに記録できるデジタルオシロスコープになったように、記録計もデジタル化、メモリ化して、メモリレコーダになった。日置電機は1983年にメモリレコーダの初号機8801メモリハイコーダを発売している。三栄測器(現エー・アンド・デイの工業計測機器)もオムニエース の通称でRAシリーズを作っている(最新モデルRA3100は2020年に発売)。横河計測はDL750/850/950/350というスコープコーダシリーズがある。 これらメモリレコーダとは別に、IA(インダストリーオートメーション)メーカがつくる記録計がある。DCSやPLC などの計装機器のメーカである横河電機は、温度、流量、圧力などをセンシングして制御するために、センサからの信号を記録する各種の製品をラインアップしている。ペーパーレス、小型、遠隔操作・遠隔へのデータ送信などが特長である。工業用の記録計、チャートレコーダμR10000/μR20000やペーパレスレコーダ GX10/GX20、GP10/GP20、表示が無くユニットをスタックしてチャンネルを増やせるデータロガーのSMARTDAC+™データアクイジション システム GMなどがある。これらは計測器というより、計装用のセンサなので、操作部や表示部は極力無くし、印刷機能も無く、イーサネットなどでデータを中央に送る機能に優れている。 温度の計測・制御に特化したIAメーカであるチノーも、横河電機と同じような計装ユースの記録計をつくっている。日置電機、三栄測器、横河計測は、いわゆる電気計測器メーカだが、横河電機やチノーは計装(IA)メーカである(チノーは計測器である温度計もつくっている)。 計測器としてのメモリレコーダと、計装ユースの工業用記録計は用途やニーズ、仕様が違う。横河には2系統の記録計があり、知らない人は、そのモデルの記録計は(計装の会社である横河電機か、計測器メーカの横河計測の)どちらの会社がつくっているのかわかりにくい。

サーマルアレイコーダ(さーまるあれいこーだ)

グラフテックのメモリレコーダの品名。WR300などの感熱記録できるモデルがあったが、すべて生産終了している。WR300は4ch~16chまで5モデルあり、最大200mm幅 8ドット/mmのサーマルプリンタが標準装備だった。サーマルとは感熱記録のことで、横一列に取り付けらサーマルヘッドを発熱して感熱記録紙を発色させ、測定した波形を記録する。品名のThermal Arraycorderは、サーマル・アレイ(サーマルプリンタ)で印刷できるレコーダという意味を込めたネーミングと推定される。横河電機、日置電機に続き、グラフテックがチャートレコーダ(印字できる記録計)から撤退したため、現存するのはエー・アンド・デイの工業計測機器(旧三栄測器)のオムニエースだけとなった。グラフテックは1949年に株式会社渡辺研究所として設立、1958年に日本初のX-Yレコーダを開発した老舗の記録計メーカである。渡辺測器株式会社の社名でX-Yプロッタなどの印刷機器で有名だったが、計測器がペーパーレスになり、現在は小形のデータロガーでシェアが高い。キーエンスより後発でシェアを取り、日置電機が追いかけている。

サーマルレコーダ(さーまるれこーだ)

(thermal recorder) 感熱記録紙に印刷するサーマルプリンタを搭載した記録計(レコーダ)。Thermalとは「熱の」という形容詞。より正確にはthermal recording method recorder(熱で記録する方式の記録計)である。2000年頃のメモリレコーダの代表的なタイプで、汎用性が高く、多機能で、高速な現象が捉えられたが、多機能は操作が複雑になるという欠点もあった。グラフテックにはThermal Arraycorder(サーマルアレイコーダ)という品名の製品群があり、発電所、鉄工所、鉄道などで利用された。ただし記録計のペーパーレス化(印刷機能を無くすこと)が普及し、WR300を最後に生産終了した。ほとんどの計測器メーカが現在はサーマルレコーダをつくっていない。2005年頃には複数のメーカが生産していた。当時の機種の例としては、日置電機の8807メモリハイコーダ、横河電機のOR300Eオシログラフィックレコーダ、グラフテックのWR1000、WR8500サーマルアレイコーダなどがある。サーマルレコーダは「サーマルドットアレイ方式記録計」や「サーマルドットレコーダ」という表記もされていた。

サーミスタ(さーみすた)

(thermistor) 温度によって抵抗値が変化する半導体センサ。温度測定にはNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタが使われる。サーミスタは小型であるため、電子機器の温度監視や電子体温計などに使われる温度センサの1つである。

三栄測器(さんえいそっき)

1948年に創業し、1983年まであった老舗の計測器メーカ。正式な会社名は三栄測器株式会社。「レコーダのサンエイ」として有名で、東京都小平市(天神町など)に工場があった。計測器(記録計など)とME機器(医療機器)の事業をしていた。計測器はレコーダとアンプ(絶縁アンプやひずみアンプ、シグナルコンディショナ)があり、横河電機製作所(YEW)の計測器と似たラインアップである。計測器の代表的な機種群である記録計の主要なメーカは、1970年代までは横河電機、三栄測器、渡辺測器(現グラフテック)の3社である(日置電機がメモリハイコーダの初号器8801を発表したのは1983年)。3社のレコーダには各社特長があるが、3社ともに「レコーダの老舗で、わが社の歴史がレコーダの王道(当時としてはオシロスコープと並ぶ計測器の主要機種)」という自負が伺える。三栄測器のレコーダはオムニエースの通称(形名RT1000~RT3000、RA1000など)で普及した。鉄道関係に強く、たとえばひずみアンプAS1803Rは対ノイズ性能が高く、新幹線の応力測定で採用されている。 自動車メーカが多く採用していたDEWETRON(デュートロン)社のデータロガーの販売代理店を1990年代にしている。2007年頃に販売契約は無くなり、三栄測器(当時はNECが資本参加して社名は「NEC三栄」)はDEWETRONと競合するモデルを開発している。NEC三栄でDEWETRONを販売していた部署(特販部)は独立してデユートロン・ジャパンになった(現在はデュージャパン株式会社で、DEWETRONから分離したDEWEsoftを取り扱っている)。 NEC三栄は非接触温度計(サーモグラフィ)もラインアップしていた。同じくNEC系列でサーモグラフィをつくっているNECアビオニクスに、NEC三栄の計測器部門は吸収された(同社のME機器はNECの医療部門に統合吸収されている)。後にサーモグラフィ以外の計測器(レコーダやアンプ)は株式会社エー・アンド・デイ(秤などの計量器のメーカ)に譲渡された。結果だけ見れば、NECの事業再編によって、サーモグラフィをNECグループ内に強化し、それ以外の三栄測器の創業からの計測器は売却された。レコーダやアンプはエー・アンド・デイの工業計測機器として現在もラインアップが健在で、2020年3月にはデータアクイジション装置RA3100を発売している。 三栄測器の計測器は社名変更が多いので、以下に概要を述べる。1971年11月にNECが資本参加。1983年4月にNEC三栄株式会社に社名変更。2006年6月に日本アビオニクスがNEC三栄を子会社化。2008年4月に社名をNEC Avio赤外線テクノロジー株式会社に変更(計測の老舗である三栄の名前は消滅)。2012年10月に日本アビオニクスがNEC Avio赤外線テクノロジーを吸収合併。2013年4月に三栄インスツルメンツ株式会社設立(旧三栄測器の営業マンが日本アビオニクスから独立)。2015年7月に株式会社エー・アンド・デイに計測事業(レコーダやアンプ)を譲渡。2021年4月にエー・アンド・デイは三栄インスツルメンツを吸収合併。こうして、三栄測器の計測器はエー・アンド・デイの工業計測機器として存続している。 参考用語:動ひずみ測定器、 計測器情報:レコーダ(オムニエース)の製品例、ACストレインアンプASシリーズ、チャージアンプAG3103

自記温湿度計(じきおんしつどけい)

(thermo hygrorecorder) 温湿度計で、機器が自動で記録をするもの。温湿度の記録計の1種で、記録期間などの設定をした後は、測定器が自動でチャート(記録紙)に温湿度の変化を記録して残す。自記は「自動で記録」や「(機器が)自分で記録」の意味だが、英語ではthermo hygrorecorder(温湿度記録計)で、自記は日本語特有の言い方である(温度計:thermometer、湿度計:hygrometer、記録計:recorder)。自記記録計と呼称されることも多い。湿度は測定できず温度だけの製品は自記温度計と呼ばれている。以下のようなモデルがある。 【メーカ名、品名 形名など】 ・佐藤計量器製作所、温湿度記録計 シグマⅡ型。製品カテゴリーは「自記記録計(温湿度)」。 ・日本計量機工業株式会社、自記温度計 NWR-9901、自記温湿度計 NWR-9903。 ・いすゞ製作所、自記温湿度計 TH-27R-MN7(2022年生産中止、2023年11月現在は在庫あり)。 TH-27Rは7モデルあり、TH-27R-MN1は記録速度が12.1mm/時で記録日数は1日間、-MN365は0.80mm/日で365日。記録速度によって記録できる日数が1日、1週間、1か月、2か月、3か月、6か月、1年の7モデルが用意されている。単二乾電池2本でクオーツ円筒時計を駆動している。