計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
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アースリード(あーすりーど)

(earth lead) オシロスコープの電圧プローブの先端(プローブヘッド)についているグランド側の線材のこと。アースはグランドと同義のためグランドリード(表記はグランド・リードもある)とも呼ばれる。アースリードはプローブヘッドに抜き差しできる交換部品である。 メーカによってアースリードやグランドリードなどの呼称があり、同一メーカでも2つの表記をしていることも多く、統一されていない。ECサイト(amazonなど)ではアースリードの商品名で販売している。同軸ケーブルなどの高周波の電子部品メーカのスタック電子は、計測器用のアクセサリとして固定減衰器やアッテネータをつくっているが、FETプローブや絶縁型のパッシブプローブも標準品で販売している。アースリードの先端がワニ口クリップ(※)になっている「ねじ頭グリップ(※)式アースリード」がスタック電子にはある。プリント基板などの四隅にある固定用のネジは信号のグランドにつながっていることが多いので、ネジの頭をクリップで挟んでアースに確実につなぐことができる。電気機器に使われているプリント基板にはアース用の端子(GND端子)が無い場合も多く、このようなアースリードは便利で重宝する。 (※) クリップ(clip)は物を挟む道具や部品、グリップ(grip)は物の握る部分。紙を挟んで束ねるクリップのように、計測器でもテストリードなどのDUTに接触する箇所にクリップは多く使われる(マルチメータやLCRメータなど)。アースリードの先端(アースにつながる側)はワニ口やミノムシなどのクリップが多い。グリップは野球バットやゴルフクラブなどの握る箇所を指しているが、スタック電子の商品名は「ねじ頭を握ることができる」という意味でクリップ(挟む)ではなくグリップ(握る)と命名していると推測する。

I2S(あいすくうぇあえす)

(Inter-IC Sound) フィリップス社(※)が提唱した、デジタル音声を伝送するためのIC間通信の規格。I2Sバスには、LJ、RJ、TDMと呼ばれるバリエーションがある。主に電子基板上で半導体チップ(IC)間の音声データ伝送に用いられる。家電製品から半導体、医療機器まで手掛けていたオランダのフィリップスが1986年に策定し、業界標準として広く普及した。オーディオ機能を持つ電子機器内部で使われている。同期式シリアル通信であるI2Cと似た方式である。最近のオシロスコープはシリアル通信などの規格の解析にオプションで対応している。I2Sに対応したモデルもある。 (※)(Philips) 1891年にヘラルド・フィリップスがオランダで電球工場として設立。ヨーロッパの代表的な総合家電メーカになった。日本では電気かみそりや電動歯ブラシで知られるが、コンピュータ断層撮影(CT)、核磁気共鳴画像(MRI)、などの医療機器・ヘルスケア事業に注力している。以前は音響・映像(オーディオ・AV)分野の、レーザーディスク(LD)、コンパクトディスク(CD)、Blu-ray Discなどの開発や規格提唱をしたメーカの1社である。半導体の事業は、2006年にNXP Semiconductors(NXPセミコンダクターズ)として独立している。日本のソニーやパナソニックが半導体もつくっているのと同じ。

I2C(あいすくうぇあしー)

( Inter-Integrated Circuit) フィリップス社が提唱した周辺デバイスの通信方式。同一基板内で400 kbps程度を想定している。低速シリアル通信と総称されている規格の1つ。 500MHz程度の周波数帯域のミドルクラスのオシロスコープで、I2Cのバスモニタやデータ解析ができるオプションを持つモデルが多くなった。

アイパターン(あいぱたーん)

(eye pattern) デジタル信号のハイ/ロー(1/0)の時間推移を重ね書きで表示した図形。デジタル通信(デジタル伝送)の伝送品質評価に使われる。図形が目(eye)のように見えることに由来する。別名:アイダイアグラム(eye diagram)。アイの開口度合いから視覚的に伝送品質を確認できる。重ね書きされた複数の波形が同じ位置なら信号の時間推移は同じで、(立ち上がりや立ち下がりの時間やタイミングが変動していない)波形はシャープな形になる。この波形は品質の良い信号で、「アイが開いている」、「アイの開口が広い」と表現される。反対に、波形が細くなくて塗りつぶしたようになっていたら、波形の位置(タイミングや電圧)がずれている、品質の悪い信号で、「ジッタが悪い」という評価になる。 アイが開いている(波形の軌跡が塗りつぶす範囲が狭い)ほど、ジッタ(信号の揺らぎ)が少ない、品質が良い状態である。アイパターンを目視すれば、波形の縦の高さや横の幅からタイミングや電圧のマージンを簡便に知ることができる。信号にはオーバーシュートやアンダーシュートが起こるが、アイパターンはアイの形状からジッタなどを知り、必要なら設計を見直すなどのデバッグに使われる。多くの電気・電子回路の設計技術者にとって、アイパターンは基礎用語である。 アイパターン測定器としてはサンプリングオシロスコープ(キーサイト・テクノロジーの86100シリーズなど)が代表モデルだったが、広帯域オシロスコープ(高速オシロスコープ)が2000年代から普及し、マスクパターンがオプションで用意されるようになり、規格ごとのアイパターン評価(適合性試験、コンフォーマンステスト)はオシロスコープで自動測定できるようになった。マスクパターンとは「アイの開口」が通信規格の範囲内にあることを、オシロの測定画面で図形で規定するもの。測定者が波形から伝送品質(ジッタなど)を確認するのではなく、測定器のオプションソフトウェアが規格に合格しているかを評価(判定)する。

アクイジション(あくいじしょん)

(acquisition)acquisitionを和訳すると「取得、獲得」。計測器ではデータロガーやメモリレコーダなどで「データアクイジション(計測器へのデータの取り込み)」やオシロスコープの「アクイジション・モード」というように使われる用語である。 データ集録を示す「DAQ(ダック)」は「Data AcQuisition」の略記である。 テクトロニクスの冊子「リアルタイム・スペクトラム解析のすべて(2009年9月発行)」ではスペクトラムアナライザの用語として「アクイジション:時間的に連続した整数個のサンプルあるいは信号の取込み」と解説されている。

アクイジション時間(あくいじしょんじかん)

アクイジション(Acquisition)はデータ集録機器(データロガーなど)やオシロスコープで使われる用語だが、テクトロニクスの冊子「リアルタイム・スペクトラム解析のすべて(2009年9月発行)」ではスペクトラムアナライザの用語として「アクイジション時間:1つのアクイジションで表される時間の長さ」と解説されている。

アクイジション・モード(あくいじしょんもーど)

オシロスコープの機能の1つ。「サンプル・ポイントからどのように波形ポイントを構成するかを決めるモード。サンプル、ピーク・ディテクト、ハイレゾ、エンベロープ、アベレージ、波形データベースなどがある。(テクトロニクスの「オシロスコープのすべて」(2017年4月発行)より)」。テクトロニクスはオシロ解説(使い方、入門)でアクイジション・モードを使い分けることを説明している。横河計測も正式な機能として「アクイジション・モード」と表記している。キーサイト・テクノロジーは「データのアクイジション(捕獲)には・・・」という解説をしている。

アクティブプローブ(あくてぃぶぷろーぶ)

(active probe) オシロスコープのプローブにはパッシブプローブ(受動プローブ)とアクティブプローブ(能動プローブ)がある。受動素子(LCR:コイル、コンデンサ、抵抗器)で構成されたのが受動プローブ、トランジスタのように電源供給が必要な能動素子を使っているのが能動プローブ。 広義のアクティブプローブは上記だが、狭義には(通常は)「電圧プローブでシングルエンド(差動ではない)プローブ」を指している。別名、FETプローブやシングルエンドプローブ。メーカによっては「シングルエンドプアクティブローブ」と呼称している場合もある。 アクティブプローブはパッシブプローブよりも入力容量が小さいため(約1pF)、高い周波数を測定できる(パッシブプローブの周波数帯域は500MHz程度)。2005年に広帯域オシロスコープの走りであるキーサイト・テクノロジーの54855A(周波数帯域6GHz)が発売されたとき、シングルエンドか差動のどちらかのアクティブプローブを選択した。つまり、G帯域のモデルではアクティブプローブを選択して使用することになり、ミドルクラスの500MHz(~1GHz程度)までのモデルのように標準プローブは添付されていない。測定対象や条件によって使用者が適切なプローブを選択する。 2000年代以降に広帯域オシロスコープの周波数帯域が数十GHzに性能アップしたので、アクティブプローブも進化して、数十GHzに対応するモデルが発売されている。特に差動プローブは高速なシリアル通信だけでなくパワーエレクトロニクス分野でも需要があるり、高速オシロスコープのメーカ(テクトロニクス、キーサイト・テクノロジー、テレダイン・レクロイなど)は、注力してラインアップを増やしている。(以下の参考記事、「プローブの種類」が詳しい) 電源が必要なため、別筐体の電源ユニット(ACコンセントにつないで、プローブにDC電圧を供給する)、内蔵電池、オシロスコープからの電源供給、のどれかで電源供給を行っている。最近のオシロスコープは高機能化していて、プローブとの勘合が単なるBNCコネクタではなく、メーカ独自の規格(プローブ・インタフェース)になっていることが多い。そのため、アクティブプローブやAC/DCプローブはオシロスコープとプローブを同一メーカで揃えることが多い。プローブ・インタフェースによってオシロスコープ本体がプローブを認識するので、補正や表示など、同一メーカだと使い勝手が良くなる。

アッテネータプローブ(あってねーたぷろーぶ)

(attenuator probe) 一般的にオシロスコープに標準添付している電圧測定用のプローブ(電圧プローブ)は、パッシブプローブの分圧プローブである。プローブをオシロスコープに勘合すると、プローブとオシロスコープ入力部が減衰器となり、測定対象の信号を1/10に分圧するので10:1プローブの呼称がある(減衰比は1:1~1000:1まで様々なモデルがあり、減衰比が大きいのが高電圧プローブ)。減衰器はアッテネータなので、分圧プローブをアッテネータプローブとも呼ぶ。 回路図などの原理は、以下の参考記事が詳しい。

アナログオシロスコープ(あなろぐおしろすこーぷ)

(analog oscilloscope) オスロスコープ(オシロ)は、電気信号の波形を映し出し、周波数や電圧を観測する測定器。アナログオシロはブラウン管に当てる電子線を水平方向と垂直方向に制御することで波形として表示する。測定データを保存できないため、ポラロイドカメラを表示画面を覆うように取り付けて撮影して保存する(カメラやカメラフードが、波形撮影用として、オシロのオプションで販売されていた)。略称:アナログオシロ。元々オシロはアナログだったが、その後開発されたデジタルオシロスコープと区別してアナログオシロというようになった。現在ではオシロの主流はデジタルオシロで、アナログオシロはほとんど見かけない。オシロは1931年に米国で強制同期式オシロが開発され、日本でも第二次世界大戦前に東京電気(現東芝)や松下無線(現パナソニック)などが製造・販売した(まず、オシロはアナログ式で登場した)。アナログオシロのNo1メーカは海外ではテクトロニクス、国産では岩崎通信機だった。 アナログオシロは2000年初頭まで販売されたが、デジタルオシロの低価格化と画面更新レートの高速化などで優位性が失われた。現在は生産中止で、市場でもほとんど使用されていない。安価であるという利点から、家電製品の生産ラインで導入される例があったが、新興国製の激安デジタルオシロによってそのような例は駆逐されてしまった。 テクトロニクスの冊子「オシロスコープのすべて」(2017年4月発行)には以下の説明がある。アナログ・オシロスコープ:波形を表示する機器で、入力信号は調節、増幅された後に電子ビームの垂直軸へ印加され、その垂直軸がCRT上を左から右へと移動して波形を表示する。化学的蛍光体がCRT上(陰極線管の表示画面の部分)にコーティングされていて、そこにビームが当たると、明るく輝く波形が表示される。

アナログストレージオシロスコープ(あなろぐすとれーじおしろすこーぷ)

(analog storage oscilloscope) アナログオシロスコープにはメモリ(記録装置)がないので、観測した(画面に表示している)波形を保存できない(※)。蓄積管と呼ばれるCRTが開発され、それをブラウン管に採用すると、通常では約1秒で消えてしまう波形をある程度長く管面上に輝かせておけるようになった。蓄積(ストレージ)機能があるので、ストレージオシロスコープと呼ばれた。1980年代にデジタルオシロスコープが登場し、デジタルではないそれまでのオシロスコープはアナログオシロスコープという名称で区別され、アナログストレージオシロスコープという呼び名になった。 (※) アナログオシロスコープのオプションにカメラやカメラフードがある。画面にフードを取り付け、シャッターを開放したカメラを使って波形を写真で撮って保存した。単発現象(1回だけの波形)をフィルムに記録できるので、暗闇でも画面の目盛りが見えるように、オシロスコープには照明機能もあった。トリガに連動してポラロイドカメラのシャッターを押して撮影することもあった。 ストレージ型でも品名に「ストレージ」とある場合とない場合があり、いつ頃にどんなモデルがあったか定かではないが、デジタルが普及していく1990年代には、各メーカはストレージ型のアナログオシロスコープをラインアップした。テクトロニクスが1999年に発売したデジタルオシロスコープTDS3000シリーズは「画像処理DSPとデジタルフォスファ(DPX)技術によってほとんどアナログオシロスコープと遜色ない表示を実現した」と同社はPRした(以降、同社のデジタルオシロスコープはDSO(デジタルストレージオシロスコープ)ではなくDPOになっていく)。 ただし実際の測定現場では、アプリケーションによってはデジタルオシロスコープでは観測できず、アナログオシロスコープでないと捉えられない現象(信号)もあった。岩崎通信機はアナログオシロスコープの草分けで、シンクロスコープで日本のオシロスコープをリードした老舗である。1980年にアナログストレージモデルの初号機TS-8121を発売している(1980年の岩通技報に「高速単発現象を捉えるストレージスコープTS-8121」という記事がある)。以降、2013年に生産終了するまで、6モデルをつくった。以下が形名と品名、()内は発売期間。品名は現存する製品カタログの表記を転載した。「ストレージ・スコープ」という呼称もしている。 TS-8121/8123ストレージオシロスコープ:100MHz、2ch(1980年~1993年) TS-8421/8422スーパー・ストレージ・オシロスコープ:400MHz、4ch(1992年~2000年) TS-8500超高輝度ストレージ・オシロスコープ:500MHz、4ch(1997年~2003年) TS-80600/81000超高輝度アナログ・ストレージ・スコープ:600MHz/1GHz、4ch(2002年~2013年) 同社の形名TS-xxxx(xは数字)はアナログストレージオシロスコープだが、品名は必ずしもそうではない。最後のTS-80000シリーズはカラーLCDを採用し、周波数帯域1GHzを実現したモデルで、高速ストレージなどの性能を独自技術で実現した最高峰のアナログオシロスコープだった。

ENOB(いーえぬおーびー)

(Effective Number Of Bits) ADコンバータの有効ビット数のこと。ADコンバータの性能は分解能(ビット数)だが、もう1つの指標にENOBがある。分解能のビット数とENOBは異なる。ENOBは実測したSN比から計算式によって算出される。ADC(AD変換器)はノイズやひずみを含むため、ENOBが実質的な分解能を示しているといわれる。 2018年頃からオシロスコープ各社が高分解能モデルを発売し始めた。従来、オシロスコープのADコンバータは8ビットだったが、テレダイン・レクロイが2012年に10ビットモデルを発売し、2018年以降に同業2社が追随した(2021年5月現在の8chモデルを比較すると、8ビット以上が主流になっている。以下の参考記事「大手5社の8chモデル紹介」が詳しい。※)。オシロスコープの最も大事な性能は周波数帯域で、時間軸の分解能にあたるのがサンプリングレート(S/s、単位:時間)である。つまりオシロスコープは時間(周波数)の波形測定器(時間波形の観測器)で、2005年から2018年にかけて周波数帯域を上に伸ばし、広帯域オシロスコープが盛んに開発された。広帯域の高額なモデルもAD変換器は8ビットと決まっていて、縦軸(電圧)は安価なDMMよりも精度が劣るので、テスタ(計測器)というより観測器(スコープ)だった。高分解能モデルの出現で、オシロスコープ(観測器)はやっと計測器(オシロテスタ)になったといえる。 キーサイト・テクノロジーは高分解能オシロスコープの仕様にENOBを積極的に明記し、「分解能では不十分で、ENOBが重要である」という見解である。他社はあまりPRしていない(現状はあまり重要視していないように筆者は感じる)。「ENOBはメーカにとっては大切だが、ユーザは気にする必要はない」という見解もある。ADCの代表的なデバイスメーカであるアナログ・デバイセズ(Analog Devices)には「これほど年月を経てもENOBと分解能の関係は不透明」という技術資料がある。 キーサイト・テクノロジーは2024年9月に、InfiniiVision 3000G Xシリーズ(8ビット、ハイレゾ設定で12ビット)の上位モデル、InfiniiVision HD3シリーズ(14ビット)を発売した。2018年に発売した周波数帯域110GHzの世界最高速の広帯域オシロスコープ、UXRシリーズ(以下の参考記事、「キーサイト・ワールド」で世界初公開を取材)の技術を取り入れ、ノイズフロアを低減したといわれている(高周波が売りの同社ならではの改良である)。当然、ENOBがどれだけ向上したかを、他のモデルと比較してPRしている。 ※ 横河計測は2023年6月にDLM5000シリーズを12ビットのDLM5000HDシリーズに更新。2023年11月にはローデ・シュワルツも12ビットの8chモデル、MXO5シリーズを発売し、主要なオシロスコープメーカは高分解能モデルが主流の時代になった。中華系オシロスコープメーカ(リゴルやSIGLENT)は安価な12ビットモデルを2023年頃から積極的にラインアップしている。

EtherCAT(いーさきゃっと)

(Ethernet for Control Automation Technology) ドイツのベッコフオートメーション(Beckhoff Automation GmbH)が開発したリアルタイム性のある産業イーサネット技術。産業用ネットワークのフィールドバス規格。プロトコルがIEC 61158規格で公開され、オートメーション技術、試験・計測で活用されている。最近のオシロスコープはシリアル通信などの規格の解析ができ、EtherCATに対応したモデルもある。

移動平均(いどうへいきん)

デジタルオシロスコープのアベレージング(平均化)機能で、平均値の計算方法の1つ。指定個数の平均をウインドを移動しながら行う。新しいデータを取り込む毎に、平均化対象範囲内の一番古いデータを捨てて、同じデータ個数の平均値を計算し直す。手動で停止させるまで、平均化動作を続ける。

イベント(いべんと)

(ivent) iventには出来事、行事、事象などの意味がある。 1. 行事 計測器メーカのホームページにはイベントのページがある。展示会への出展やセミナー開催情報が掲載されている。自社イベント(プライベート・ショー、個展)も含めた、展示会やフォーラム、カンファレンスなどの行事をイベントと称している。 2. 事象 計測器では、「信号の電圧が増加していき○○ボルトに達した」、「アドレス○○をアクセス(リードまたはライト、つまり読み書き)した」などの特定の事象をイベントという。オシロスコープの標準機能であるトリガは、使用者が補足したいイベントを設定して、対象とするイベントの信号波形を画面に表示させることである。「BイベントでBトリガをかける」などの表現がされる。ICEの機能であるイベント/ブレークポイントは、使用者がイベントを設定して、イベントが発生したプログラムの箇所(ポイント)でプログラムの実行を止める(ブレーク)ことである。信号発生器にはイベント入力という機能がある。このように計測器ではイベント関連の用語が頻繁に使われている。名称に「○○イベント」や「イベント△△」という表示がある計測器も少なからずある(以下の計測器情報を参照)。

岩通計測(いわつうけいそく)

正式名称:岩通計測株式会社。2002年に岩崎通信機(岩通)の計測事業部門を分社化(同年は超高輝度ストレージスコープTS-81000が発売された年である)。2010年代後半に親会社(岩通)に吸収された。横河電機は2010年に計測器部門(オシロスコープや電力計測器など)を子会社の横河メータ&インスツルメンツ株式会社(現横河計測株式会社)に統合している。つまり岩通とは反対に計測器部門を別会社として切り離している。横河電機はプロセス・オートメーション、計装分野に事業を集中する過程で、半導体テスタ、科学分析機器、フォトニクスデバイスなどを本体から分社化や、撤退させてきた。計測器の事業も横河電機の主力ではないので分社化された。岩通が事業再編の中で計測器を本体に戻したのは、計測器事業が単独で収益を出すことが難しい時代に、計測器が岩通にとって必要な技術・商材と認識しているためと理解される。 2018年発行の計測器総合カタログ「IWATSU 電子計測器ダイジェスト2018 Vol.2」には計測器の連絡先として「岩通計測・第二営業部・計測系業担当/アカウント営業担当/国際営業担当と営業推進部 西日本支店」が明記されている。同社の第二営業部が計測器を販売していたことがわかる。時期は1990年頃と記憶しているので岩通計測のできる前だが、岩通の計測器の営業部門から計測器のレンタル会社である昭和ハイテクレントに複数人が転職している。 岩通の開発部門からはアドシステムズ(ISDNの擬似交換機の草分け)などの計測器メーカがスピンアウトで生まれている。岩通は古くからNTTに電話機を納品してきた中堅の通信機メーカ(電電ファミリー)だし、岩通計測はアナログオシロスコープの国内トップブランドという計測器の老舗(名門)である。 現在の岩崎通信機は、2009年に半導体評価用のカーブトレーサを発売し、パワーエレクトロニクス関連の計測器に傾注している。海外製の特殊なプローブも積極的に取り扱い、デジタルパワーメータの輸入販売など、同社ホームページには転売品が多く掲載されている。 岩崎通信機(京王線久我山、杉並区)、横河電機(JR中央線三鷹、武蔵野市)、日本無線(JR中央線三鷹、三鷹市)と、東京都の23区西端には計測器メーカが3社もある(日本無線は2000年頃までは計測器部門があり、アナログの無線機テスタをラインアップしていた)。付近の地元住民には、電話機の岩通(がんつう)、無線のJRC(Japan Radio Co., Ltd.日本無線)、計測器のYEW(Yokogawa Electric Works、横河電機製作所)と呼ばれていた。

インステック ジャパン(いんすてっくじゃぱん)

(Instek Japan) 2006年~2014年に存在した、台湾のGOODWILL INSTRUMENT CO.,LTD.(通称Goodwill、グッドウィル)が設立した日本法人(販売会社)。計測器のブランドはGW Instekである。正式会社名は「株式会社インステック ジャパン」。 GW Instek製品は日本に輸入されると、秋葉原の計測器ショップに陳列され、激安のオシロスコープは、アナログオシロスコープ時代からの老舗、日立電子(日立国際電気)や松下通信工業(パナソニックモバイルコミュニケーションズ)が計測器から撤退する遠因になった。それまで国内市場のミドルクラスのモデル(周波数帯域150MHz~500MHz)として売れていた、横河電機(現横河計測)のDLシリーズ(DL1600、DL1700など)も売上を落とした。GW InstekやRIGOL(リゴル)という中華系オシロスコープの上陸による価格破壊は、国産計測器メーカの退場にとどまらず、テクトロニクスやキーサイト・テクノロジーなどのオシロスコープのトップベンダーが安価なモデルをラインアップする契機となった。 インステック ジャパンは2007年に東京で開催された計測器の展示会、計測展に出展している。営業部にパワーサプライグループがあり、当時からオシロスコープだけでなく直流電源にも注力していたことが伺える。翌2008年の「計測展 2008 OSAKA」では日本電計ブースに出展している。当時の代表取締役 専務は鄧 宗輝氏(Tsung-Huei Teng)だが、社長は日立電子の出身だった。「周波数帯域25MHz~100MHzのモデルが全オシロスコープの販売台数の50%と推定している」(電子計測グループのマネージャー談)と、展示会場で筆者は聞いた。つまりオシロスコープのヴォリュームゾーンは350MHzや500MHzなどではなく100MHz以下であり、GW Instek製品はその周波数帯域でリーズナブルな価格のモデルを揃えている、ということであった。ちなみに当時の横河電機(現横河計測)の主力モデルはDL1600シリーズ(200MHz)、DL1700シリーズ(500MHz)で、1GHz帯域のDL9000シリーズが新製品だった。 2014年1月1日に(Goodwillの資本が入り傘下となった)テクシオ・テクノロジーがインステック ジャパンを吸収し、以降は日本での「GW Instekブランドのオシロスコープ、スペクトラムアナライザ、直流電源、マルチメータなどの販売・修理・校正の事業」はテクシオ・テクノロジーが継続した(同社ホームページより)。

インターリーブ(いんたーりーぶ)

オシロスコープで、サンプリングレートを高速化する手法。たとえば500MS/sのA/Dコンバータ(A/D)を2個使い、1GS/sのサンプリングレートを実現する技術。2個のA/Dを使用し、片方のA/Dには逆位相のクロックを入力し、2個のA/Dを交互に動作させ、2倍のサンプリングレートを可能にする。元来はコンピュータ、IT、メモリなどの分野の用語である。オシロスコープで導入されている例はまだ少ない。

Infiniium(いんふぃにうむ)

キーサイト・テクノロジーのGHz帯域のオシロスコープの通称(愛称)。Sシリーズ(500MHz~8GHz)からUXRシリーズ(10GHz~110GHz)まで6シリーズがある。UXRシリーズは2018年に発売され、110GHzモデルは世界最高(価格も最高の約1億円/台)のオシロである(2020年12月現在)。正確な定義は同社HPにも無いが、大まかにいうと同社の高速オシロ(周波数帯域がGHzで、解析機能が特徴の広帯域・高額のアナライザ)のニックネームといえる。Infinity(無限大)から作った造語という説があるが定かではない。同社の汎用オシロ(GHz帯域以下の従来のオシロ)には同様にInfiniiVision(インフィニヴィジョン)というニックネームがついている。

InfiniiVision(いんふぃにびぃじょん)

キーサイト・テクノロジーの汎用オシロスコープ(GHz帯域以下の従来の一般的なオシロ)の通称(愛称)。1000Xシリーズ(50MHz~200MHz)から6000Xシリーズ(1 GHz~6GHz)まで5シリーズがある(2020年12月現在)。正確な定義は同社HPなどにも記載が無い。Infinity(無限大)から作った造語という説があるが定かではない。同社の高速オシロ(周波数帯域がGHzで、解析機能が特徴の広帯域・高額のアナライザ)には同様にInfiniium(インフィニウム)というニックネームがついている。