計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
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アーステスタ(あーすてすた)

接地された導体と大地間の電気抵抗を接地抵抗という。接地(アース)抵抗を測定する機器がアーステスタ。別名:接地抵抗計 。 機器の(人が接触可能な)金属部が接地されているか確認する計測器に「アース導通試験器」がある(菊水電子工業などが安全規格の機種群としてつくっている)が、アーステスタ(接地抵抗計)とは異なる。 計測器情報:品名に「アーステスタ」が付く製品の例

RF I-V法(あーるえふあいぶいほう)

交流インピーダンス測定の手法の1つ。インピーダンスアナライザで測定周波数100MHz~3GHzあたりのモデルに採用されている方式。100MHz以下のLCRメータなどには自動平衡ブリッジ法が採用されている。参考記事:LCRメータの基礎と概要 (第1回)・・LCRメータの構造や測定原理、各社LCRメータの紹介など。

IRメータ(あいあーるめーた)

絶縁抵抗計、エレクトロメータの別名。IR(Insulation Resistance、絶縁抵抗)を測定するメータ。能動部品の生産現場でこの呼び方がされる。2019年1月にエーディーシーから「4000/IRメータ(形名/品名)」が発売された。IRメータという名称は、計測器の品名ではエーディーシーが初めて使用した。同社がエレクトロメータの老舗で、電子部品メーカに強いことを伺わせる。日置電機の絶縁抵抗計の現役モデルはIR4054など、形名の頭2文字はIRである。同社の形名は以前は数字4桁だったが、ある時期から新製品は、頭にアルファベット2文字をつけ機種群の区分を整備するようになった。以前の製品は「3355 Iorリークハイテスタ」などだが、最近は「IR3455 高電圧絶縁抵抗計」というような形名である。屋外で使用する可搬型のメガーなど、現場測定器のラインアップが多い日置電機(や共立電気計器)の品名は「絶縁抵抗計」で、SMUをラインアップして半導体デバイス顧客に強いエーデイーシー(やケースレー、キーサイト・テクノロジー)は「エレクトロメータ」である。両者は市場やアプリが違い、品名も異なるが、日置電機もエーデイーシーもIRは使っている。

ICT(あいしーてぃー)

2つの意味がある。1は計測器、2は通信の用語。 1 (In Circuit Test) 日本語で「インサーキット・テスト」と表記されることも多い。ICTという略記や記述も多い。電子部品が実装されたプリント基板で、電子部品(抵抗やコンデンサ)の定数、ダイオード特性などを測定して、電子部品と基板との接続信頼性を検査する。つまり多ピンのマルチメータ/LCRメータで、プリント基板の中の回路に入って行って(In-Circuit)、測定をする。 日本電気計測器工業会(JEMIMA)の技術解説では、「電気測定器/半導体・IC測定器・ボードテスタ&試験システム/ボードテスタ」の項目の冒頭に「1.インサーキットテスタ In-Circuit Tester」が解説されている(次は「2. ベアボードテスタ Bare Board Tester」で、「4.その他のテスタ」に「4.2 バウンダリスキャンテスト」がある)。つまり、インサーキットテスタとボードテスタはほぼ同義である。 ICTのメーカである協立テストシステムのホームページでは「インサーキットテスター」のことをICTと表記しているが、キーサイト・テクノロジーのホームページでは「インサーキット・テスト」のことをICTと略記している。つまり、ICTはテストとテスタの両方の略記である。また、「インサーキットテスタ」、「インサーキット・テスタ」、「インサーキット・テスター」など表記は統一されていない。 2 (Information and Communication Technology) 「情報通信技術」と訳される。ITとほぼ同じ意味だが、IT(Information Technology、情報技術)にCommunicationが入っている点が新しい。政府は2000年に「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」(通称「IT基本法」)を成立させた。ここからITという用語が広まったが、2004年頃からICTという表現に変えている(国際的にはICTが一般的なのでそれに合わせたと思われる)。そのため、2000年中期以降に各所でICTという表現が使われ始めた。現在ではITとICTの両方が場面によって使い分けられている。コンピュータや情報通信関連の機器を一般的にはIT機器、それらの業界をIT産業やIT市場と表現していて、ICTよりITのほうが散見される。もっとより広く情報通信の分野のことをいいたいときに(最先端であることをイメージさせる、今風のいいかたとして)ICTといっているようである。たとえば企業のビジョンやPRの表現に2000年代後半から使われている例がある。もっと時間が経過したらITにとってかわり、市民権を得た一般的な用語になるかもしれない。逆に、現在のJRの電車のことを一時期「E電」と呼んでいたが、今は誰も呼ばない死語になったように、ICTも消えて、別の用語が台頭するかもしれない。

I-V法(あいぶいほう)

交流インピーダンス測定の手法の1つ。ロックインアンプ、周波数特性分析器(FRA)、電力計などを使用して、発振器の電圧と負荷に流れる電流の測定を、位相差を含めた正確な測定を行う。I-V法はLCRメータでは測定しにくい大型のリアクトル(コイル)のインダクタンス測定に使われたり、負荷装置などと組み合わせて測定する電気化学分野で使われている。参考記事:LCRメータの基礎と概要 (第1回)の2ページ目・・I-V法による燃料電池のインピーダンス測定が紹介されている。交流インピーダンス測定の各手法を概説。

アデックス(あでっくす)

1980~2010年頃にあった回路素子測定器メーカ。正式名称はアデックス株式会社、本社は京都市伏見区。略記:ADEX。インピーダンス測定器の世界的なデファクト、ヒューレット・パッカード(当時は日本ではYHP。現キーサイト・テクノロジー)などの海外メーカから遅れて、1970年代に国産計測器メーカはLCRメータをつくり始めた。カーブトレーサなどの電子部品測定器の國洋電機工業、FRA(周波数特性分析器)で電子部品評価の要素技術があるエヌエフ回路設計ブロック(エヌエフ)、tanδ(タンデルタ、誘電体損測定器)などで材料・回路素子の評価をしてきた安藤電気などである。 アデックスはこれら計測器メーカよりも安価なLCRメータをつくり、1980年代の月刊トランジスタ技術に頻繁に広告掲載していた。高周波の製品は無く、2005年頃のラインアップはLCRメータ(1kHz)、Cメータ(静電容量計、キャパシタンスチェッカ)、抵抗計、ミリオームメータ、ハンディDMMなど。現在は「アデックスエール」社がベンチトップの製品群(LCRメータやCメータ、抵抗計など)約45機種をHPに掲載している(2022年4月現在)。 アデックスの計測器はアデックスエールで現在も現役だが、國洋電機工業や安藤電気は会社自体がもうない。エヌエフは、英国のLCRメータ老舗Wayne Kerr Electronics(ウエインカー)社と提携してLCRメータを継続しているが、自社製品ではFRA関連製品を充実している(最大15MHzで測定ができるZGA5920インピーダンス/ゲイン・フェーズ アナライザなど)。日置電機は生産ライン用LCRメータで多くの電子部品メーカに採用され、2000年にはZハイテスタなどをラインアップし、MHz帯域モデルも揃えで国産LCRメータのトップブランドになった。LCRメータ/インピーダンスアナライザは、日置とキーサイトが現在の2強。そんな中、アデックスエールは周波数1kHz固定のLCRメータ2機種を販売している。ローデ&シュワルツは2010年に汎用オシロスコープ(500M~2GHz)に参入するなど、無線通信以外の機種群にラインアップを広げていて、2022年3月にはLCXシリーズLCRメータ「クラス最高確度で、最高10MHzをカバー」を発売し、高周波LCRメータをラインアップした。同社のコンペチタはキーサイト・テクノロジーや日置電機で、アデックスエールでないことはいうまでもない。

アドミッタンス(あどみったんす)

(admittance) 電流の流れやすさを表し、インピーダンスの逆数として示される基本量。単位は[S](ジーメンス)。アドミッタンス(y)は下式のように複素数の形で表される。 ここで、g: コンダクタンス, b: サセプタンス と呼ばれる。

アノード(あのーど)

(anode)電子部品で、外部回路から電流が流れ込む電極のこと。反対の電極をカソードという。電池や真空管、ダイオードなどにはアノードとカソードがある。電圧の高低に着目して、アノードとカソードを陽極と陰極といったり、正極・負極といったりする。アノードは、真空管では正極、電池では負極。ダイオードに2つある端子はアノードからカソードに電流が流れる。電力用のスイッチに使われる半導体素子のサイリスタにもアノードとカソードがある。

安藤電気(あんどうでんき)

1933年~2004年に存在した老舗計測器メーカ。正式名称:安藤電気株式会社。「ANDO」のブランドで通信計測器や半導体テスタをつくっていた。大株主はNECで、アンリツ同様にNEC系の計測器メーカだが、安藤電気はNECの持ち株比率が高く、NEC出身者が複数人、社長になっている。有線通信の計測器ではキーサイト・テクノロジーやアンリツと伍していた。1933年に安藤氏が創業。電電公社(現NTT)から通信計測器の開発を任された電電ファミリーの1社。光通信測定器はアンリツと安藤電気の2社がNTTに納めた。1980~2000年頃につくっていたのは基幹通信網の伝送装置向けの測定器である、SDH/SONETアナライザ、 MTDMアナライザ、モデムテスタなど。有線通信には強かったが無線ではアンリツに遠く及ばなかった(ラインアップには無線機テスタはあるが、SGやスペクトラムアナライザはない)。NTTなどに最先端の計測器を納入した。単発の波形しか捉えられないが、パルススコープとでもいうオシロスコープの原子版のような測定器をつくったという話がある。インピーダンス測定も早くから行い、「横河電機(LCRメータの特許などの要素技術があり、後のYHPに移管)の製品より高精度な測定結果だった」と発言した大学教授もいた。 1980年代の通信測定器以外のラインアップは、ICE、ROMライタ、LCRメータ、tanδ測定器など。ICEはインテル80386などの最先端のCPUに果敢に挑戦したが、特定顧客にしか販路が広がらなかった。ROMライタはNECから情報を得るなど、幅広いチップに対応したが、協力関係にあった浜松東亜電機(現東亜エレクトロニクスのフラッシュサポートグループ)に技術移管し、製品は現在も続いている。LCRメータはシリーズ化でシェアを伸ばしたが、業界標準のYHP(現キーサイト・テクノロジー)のような高周波モデルが開発できず撤退した。 2000年の光海底ケーブルバブルで屋台骨の光計測器が落ち込むと経営が傾いた。大株主のNECが半導体ビジネスから撤退するのに伴い、子会社にATE製品(半導体検査装置)は不要となり、NECに変わる株主が必要となった。横河電機が資本参加し、安藤電気の全事業を受け入れた(2001年にNEC保有株式が横河電機に売却された)。2002年に安藤電気は横河電機の100%出資子会社になり、2004年には事業再編で解体している。 プロトコルアナライザや光通信測定器では当時世界No.1のHPと競い、モデルによってはHPより売れた製品もあった。光通信測定器は現在の横河計測株式会社に引き継がれ、光スペクトラムアナライザは世界No.1である(2022年現在)。 参考用語:タケダ理研工業、YEW、Acterna

インサーキットテスタ(いんさーきっとてすた)

(In Circuit Tester) 電子部品が実装されたプリント基板に多ピンの治具(コンタクト、フィクスチャ)で接続して、電子部品とプリント基板の接続状態を評価する試験器。別名:ボードテスタ。略記のICTも、表記として良く使われる。 国産メーカでは日置電機や協立テストシステム、海外ではキーサイト・テクノロジーやTERADYNE(テラダイン)などがある。キーサイト・テクノロジーは半導体テスタは別会社に売却したが、インサーキットテタはラインアップに残っている(計測器という位置づけ)。テラダインは1970年代に世界初の半導体テスタをつくったが、ラインアップにはインサーキットテスタもある。

インダクタ(いんだくた)

(Inductor)電磁エネルギーを蓄える受動素子。電子部品としては「コイル」がある。別名、インダクタンス(Inductance)、単位:H(ヘンリー)、回路記号は「L」。 回路上のふるまいは、直流は通すが交流は通しにくい。また、電流の位相は電圧に対して90°遅れる。この性質はC(静電容量、キャパシタ)と全く反対である。 参考記事:LCRメータの基礎と概要 (第1回) ・・・集中回路定数としての抵抗、コンデンサ、インダクタを解説。

インピーダンス(いんぴーだんす)

(impedance) 直流におけるオームの法則の「抵抗」の概念を交流(あるいは高周波)領域に適用し、電圧と電流の比として表現される基本量である。単位としてはオーム[Ω]が用いられる。インピーダンス(z)は下式のように複素数の形で表され、周波数に依存しない抵抗成分を実数(r: 抵抗分と呼ぶ)で、周波数に依存する成分を虚数(x: リアクタンス分と呼ぶ)で表し、その両者の和の形で表される。 通常、数学では複素数の虚数(imaginary number)は記号「i」(アルファベットの小文字のi)で表記されるが、電気工学ではiは電流の略記に使われるため、混同を避ける理由で、「j」(アルファベットの小文字のj)を使用する。

インピーダンスアナライザ(いんぴーだんすあならいざ)

回路部品のインダクタンス・静電容量・抵抗などのインピーダンス等を測定する機器。周波数を変えて測定できる。直流成分の重畳機能もある。等価回路によるインピーダンス成分の測定が可能。インピーダンス計測はキーサイト・テクノロジーが高シェアで、世界的に業界標準(低周波~高周波まであり、ネットワークアナライザはほぼ独占状態)。測定周波数がKHz帯域のものはLCRメータと呼ばれることが多い。MHz帯域を境に品名がインピーダンスアナライザになる(メーカによって不統一)。

Wayne Kerr(うえいんかー)

英国で1946年創業の計測器メーカWayne Kerr Electronicsは、LCRメータやインピーダンスアナライザの老舗で、現在でもラインアンプしている。日本ではこの分野の機種群は圧倒的にhp(現キーサイト・テクノロジー)のシェアが高く、高精度の機種は今でもデファクトである。また近年は電子部品メーカの生産ラインを中心にシェアを伸ばした日置電機が、高い周波数のインピーダンスアナライザまで製品化し、今の日本市場はキーサイト(主に高周波・高性能なフラグシップモデル)と日置(生産ライン用~高周波モデルまで)の2社が主になった。 Wayne Kerr製品は東陽テクニカの理化学計測部(※)が長年取り扱ってきたが、2020年3月に代理店業務を桑木エレクトロニクス(Wayne Kerrとエヌエフ回路設計ブロックが2014年に設立したジョイントカンパニー)に移管した。エヌエフ回路設計ブロック(エヌエフ)はFRAが有名で、その関連でインピーダンス計測器のラインアップを増やしている。またLCRメータも継続してつくり続け、大手計測器メーカがあまり対応しない測定治具(テストフィクスチャなど)の相談に答えているため、定期開催の「インピーダンス計測」セミナーは活況である。桑木エレクトロニクスは同社のインピーダンス計測の戦略の1つである。余談だがWayne Kerrの企業ロゴはWEを図案化している。エヌエフの企業ロゴもNFを図案化したものである(2022年現在)。 Wayne KerrやGenRad(米国GenRad,Inc.同じくLCRメータのメーカ、現在はIET Labs,Inc.)から遅れて1970年代に国産計測器メーカはLCRメータに参入した。カーブトレーサなどの電子部品測定器の國洋電機工業(会社は現存しない)、エヌエフ、tanδ(タンデルタ、誘電体損測定器)やブリッジなどで材料・回路素子の評価をしてきた安藤電気(会社は2000年頃に横河電機に吸収されている)、安価なテスタをラインアップする京都のアデックスなどである。1980年頃に安藤電気がリリースしたLCRメータ初号器AG-4301Bは、当時のGenRad製品によく似ている。 キーサイト・テクノロジー、アンリツと並ぶ世界3大無線測定器メーカであるローデ・シュワルツは、2010年にミドルクラスのオシロスコープに参入し、いまでは広帯域オシロスコープもラインアップしているが(2023年現在)、(無線ではない低周波の)基本測定器にも注力していて、2021年にSMUを、2022年にLCRメータ(DC,4Hz~10mMHz)をリリースしている。またスイスのZurich Instruments AG(チューリッヒ・インスツルメンツ)は2020年頃から国内の展示会にLCRメータなどのインピーダンス測定器を出品しているが、日本の事務所はローデ・シュワルツ本社内にある(2023年3月、同社ホームぺージより)。 (※)次の3つの計測分野を担当している部署。エレクトロメータなどの材料物性を評価する物理計測、電圧電流発生器やFRAなどを組み合わせて材料物性を評価する化学計測、PV用のパワーコンディショナやEV充電器などを評価する電源計測。LCRメータやインピーダンスアナライザなどのインピーダンス計測を担当している。2022年にはナノテクノロジー部門を吸収して、自動車や情報通信と並ぶ、同社の大きな計測部の1つである。

SMD(えすえむでぃー)

(Surface Mount Device)日本語では「表面実装部品」。DIPやSOPのように端子がピンのパッケージ形状ではなく、端子面を直に基板に実装するタイプの部品のこと。一般の電子部品は基板に空いた穴に部品の端子(ピン)を入れてはんだ付けするが、SMDはピンの端子が無い。チップ部品を指していることが多い。

エナメル線(えなめるせん)

金属導体の上にワニス(絶縁皮膜)を焼き付けた線材。電気・電子部品等に使用される。半田付けが可能。主に磁力を発生させる目的で鉄芯に巻いて電磁石にする。コイルやトランスにもなるため、インダクタともいえる。

MLCC(えむえるしーしー)

(Multi Layered Ceramic Capacitor)積層セラミックコンデンサ。誘電体と電極を多層にして小型化している。高周波での特性が良いので、近年多くの電子回路に使われる。電動化が進む電動車(EVやHEVなど)にも導入が進む。特性改善や小型化が今後も期待される。村田製作所や太陽誘電などの電子部品メーカがつくっている。

LCRメータ(えるしーあーるめーた)

(LCR meter) 回路部品のインダクタ(L)、キャパシタ・静電容量(C)、抵抗(R)を測定する測定器。交流を印加し、部品の複素インピーダンスを等価回路で表示する、交流インピーダンス測定器の最も基本的なモデル。おおよそ数百kHzまでをLCRメータといい、MHz以上の周波数になるとインピーダンスアナライザと呼ばれる(メーカによって決まりはない)。LCRメータは測定周波数が固定(モデルによっては複数から選択)、インピーダンスアナライザは周波数を掃引してf特(周波数特性)を表示する、という違いがある。 通常、集中定数回路では周波数に無関係なR(抵抗)と、周波数に影響されるリアクタンス(キャパシタンスCとインダクタンスL)の3つが定義されている。順番はRが最初でCかLと続き、説明される。なのでRCL(またはRLC)が略称だが、逆の順番でLCとRとしたのがLCRの由来と思われる。低周波の発振器であるRC発振器などとは違い、RよりもLを最初にしている。hp(現キーサイト・テクノロジー )やWayne Kerr (ウエインカー)、GenRad(ジェンラッド、現IET Labs)などの海外メーカがLCRメータの走りだが、命名の由来は不明(知っている方には教えを乞います)。 LCRメータの世界No.1メーカはキーサイト・テクノロジー。インピーダンス計測のラインアップが多く、低周波から高周波まである(インピーダンスアナライザやネットワークアナライザでは業界標準)。国産メーカでは國洋電機工業や桑野電機、安藤電気がラインアップしてきたが撤退した。エヌエフ回路設計ブロックは長らく1モデルを続けていたが、最近ラインアップを増やした(同社にはFRAがありその分野からのアプローチも大きい)。日置電機はLCR部品メーカの生産ライン向けのモデルでシェアを高め、MHz帯域の汎用モデルも開発し、現在の国内シェアではトップクラス。国内のLCRメータ、インピーダンスアナライザ市場は日置電機とキーサイト・テクノロジーにほぼ収斂されたといえる(つくっているメーカは多いがシェアは日置電機とキーサイト・テクノロジーが寡占している)。 LCRメータの外観はベンチトップが主流だが、現場測定器の三和電気計器、マルチ計測器はハンドヘルドのモデルをつくっている(キーサイト・テクノロジーも形名の頭がUで始まるハンドヘルドモデルを最近、リリースしている)。台湾のGW Instek(GOOD WILL INSTRUMENT)の日本法人(販売会社)であるテクシオ・テクノロジー や、無線通信測定器のローデ・シュワルツ も最近、ベンチトップ型のLCRメータを発売している。スイスのチューリッヒが本社のテストおよび測定の会社、Zurich Instruments AG(チューリッヒ・インスツルメンツ)は2020年頃から国内の展示会にインピーダンス測定器を出品している(ローデ・シュワルツ本社内に日本の事務所があることが2023年3月現在、ホームぺージに記載されている)。 LCRメータに限らず、インピーダンス測定器はDUT(測定対象)とのセンシング(接続)にノウハウがある。標準の測定治具としてはテストリードやテストフィクスチャを各社ともアクセサリとして用意している。

LC共振(えるしーきょうしん)

(LC resonance)L(コイル、インダクタンス)とC(コンデンサ、静電容量)で構成された電気回路は特定の共振周波数をもつ。そのため、特定の周波数の信号の生成や、特定の周波数の抽出ができる。チューナーや周波数混合器、発振やフィルタ回路などの電気回路、電気機器に使われる。共振は物理の重要な現象で、地震で建物が揺れる振動数が建物に固有の値である(固有振動数)ために、その建物に特有の揺れ方をすることは知られている。電気回路の共振とは、LとCを直列(や並列)にした回路がLとCの値で規定される特定の周波数で特異な現象になる(電流や電圧やインピーダンスが特長的な値になる)ことをいう。LとCの単位はL[H(ヘンリー)]、C[F(ファラッド)]。参考用語:リアクタンス、ファブリペロー共振器

エレクトロメータ(えれくとろめーた)

電荷や電流などの小さな電気量を精度良く測定できる測定器。ピコアンペア(pA)程度の微小電流を測定する機器(=ピコアンペアメータ、ピコアンメータ、pAメータ)とほぼ同じ測定器。電荷に注目したか、微小電流に注目したかで命名されている。海外メーカのケースレーがこの分野で有名。日本の老舗はエーディーシー(旧アドバンテスト)で、同社HPの「エレクトロメータ」製品ページに、「エレクトロメータ」「超高抵抗/微少電流計」という品名の製品が並ぶ。ケースレーには「6517B エレクトロメータ/絶縁抵抗計」という製品がある。エレクトロメータと絶縁抵抗計の主な仕様は似ている製品もあり、明確な違いの定義は難しい。微少電流=高抵抗(絶縁抵抗)。エーディーシーはエレクトロメータで、「絶縁抵抗計」と名の付く製品は無い。日置電機や共立電気計器は絶縁抵抗計で「エレクトロメータ」という品名は無い。可搬型の現場用の小型製品は絶縁抵抗計(メガー)で、エレクトロメータはベンチトップ。絶縁抵抗計は「絶縁を検査するために」高抵抗を測定するので、高抵抗計であるエレクトロメータと同じだがアプリが違うともいえる。日置電機HPの製品ページでは「DMM・テスタ・現場測定器」の分類に絶縁抵抗計を掲載し、「LCRメータ・抵抗計 」の中の「超絶縁計/高抵抗計/ピコアンメータ/エレクトロメータ」という表題にSM7xxx、SM-82xxなどの超絶縁計を掲載している。同社は現場測定器(テスタ)メーカとして有名だが、最近はLCRメータも注力して機種群を増やした(超絶縁抵抗計は東亜DKKから製品移管してラインアップに加わった)。エレクトロメータ、高抵抗測定器は「現場測定器の絶縁抵抗計ではなく、LCRメータのような部品評価用途のベンチトップ製品」という考え方がHPの掲載からうかがえる。部品メーカでは絶縁抵抗(Insulation Resistance)を測定する測定器を「IRメータ」と呼称している。エーディーシーは2019年1月にモデル4000、IRメータを発売した。日置電機の絶縁抵抗計の現役モデルの形名はIR4000シリーズである。今後は「IR」がエレクトロメータ、絶縁抵抗計の主流な呼称になる気配が感じられる。品名がエレクトロメータなのはケースレーやキーサイト・テクノロジー、エーデイーシーというSMUのメーカともいえる。