計測関連用語集

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ISVM(あいえすぶいえむ)

(Current Source Voltage Measure)SMUの機能の1つ。電流を印加して電圧を測定する。参考記事:高精度な電子部品の評価に貢献するSMU〜エーディーシー6253直流電圧・電流源/モニタSMUの概要や、ISVMのアプリケーション例を解説。

I0r(あいぜろあーる)

「抵抗分漏れ電流」のことで、「有効漏洩(ろうえい)電流」と表記することもある。I0rとは「I0(漏れ電流、アイゼロ)のr(抵抗)成分」、という意味。漏れ電流測定器(漏れ電流計)のことをI0rと略記していることがある。「I0r測定器」とは漏れ電流計のことを指す。I0R(3文字目が大文字)やIor(2文字目のゼロが下付き小文字)の表記もある。 本来、零相電流(※)のことをIoと記述し、抵抗成分によるものなのでIorやIoRと記述するのが正しいと思われるが、ゼロを通常表記の「0」にしている場合も多い。これらの記述は間違いではないが、間違えて「アイオーアール」と発音すると、低周波の電力測定の基礎知識がないことが露見してしまう。2文字目が英字のO(オー)ではなく数字の0(ゼロ)であることに注意が必要。「or」と表記されているとつい「オーアール」と読みたくなる。 Io(漏れ電流)はIorとIoc(容量分漏れ電流)の合計になっている(cはcapacitor、静電容量)。Iocが大きいと高調波が多いということで、機器の誤動作を起こす原因になる。Iorは機器や配線の劣化により流れる漏れ電流で、感電や火災の原因となるため、正確にIorを測定することが電気機器の維持管理(定期点検などの保守)では求められ、漏れ電流測定器がIorを測定するのはそのためである。I0rは、電気回路上の機器や電線の損傷など、抵抗成分により流れ出る漏れ電流で、「対地絶縁抵抗漏洩電流」とも呼ばれる。経産省の法令で絶縁性能の判断基準に規定されている。 計測器メーカの名称や形名、仕様の記載例は次の通り。日置電機の「Iorリークハイテスタ3355」は「漏洩電流(Io)や有効漏洩電流(Ior)を測定」と記載されている。三和電気計器の「I0RロガーI0R700V」には「測定モード:Iorモード/モータモード」の記述がある。そのほか、共立電気計器の「Ior用リーク電流検出型クランプセンサKEW 8177」、マルチ計測器の「非接触Io/IorクランプリーカーMCL-500IRV」などがある。三和電気計器の形名は直球(そのものズバリ)である。 漏れ電流とリーク電流は同義。 (※)Io(アイゼロ、ゼロの電流)とは零相電流のこと。多相の不平衡交流回路で、各線に同相で流れる電流を「零相電流」という。零相電流は通常は存在しない(大きさが0である)。各相のバランスが失われていると零相電流が流れる。クランプメータ(クランプ電流計)で各線を一括して測定する(各相の線をすべて挟む)と測定値は0になる。ただし回路に漏電があると、零相電流が流れるので0以外の値になる。これを利用し漏電の有無を調べるのが漏れ電流計である。特に災害の原因になるIor(抵抗分漏れ電流)を測定している。

I0r測定器(あいぜろあーるそくていき)

R(抵抗)成分に起因する漏れ電流だけを正確に測定する漏れ電流計の呼称。漏れ電流には容量負荷に流れる高調波成分もあるが、それを除いた測定ができる。「リークカレント」や「リーク電流」を品名にするメーカもあり、I0r測定器の呼称は様々である。 2文字目のゼロを小さく書いたり、3文字目のアールを大文字にするという表記も見かける。メーカによって表記は違っている。「アイゼロアール」でなく「アイオーアール」と素人は間違いやすい(特に2文字目のゼロがこの表題のように大きな文字で書かれていると)。

I-Vチェッカ(あいぶいちぇっか)

太陽電池の性能を評価するために、電流-電圧特性(I-Vカーブ)を測定する測定器。PV(太陽光発電)用のI-V特性の測定器。英弘精機には品名「I-Vチェッカー」という製品がある。同社は日射計が有名だが、PV関連の計測器にも早くから参入し、MP-11、MP-170などの形名のモデルがある。 参考用語:カーブトレーサ 参考記事(会員専用):【展示会レポート】スマートエネルギーWeek春展(FC EXPO/二次電池展/スマートグリッドEXPO)の3ページ目・・英弘精機の太陽光発電関連の測定器を取材。今後の再生可能エネルギーの動向も解説。 計測器情報:英弘精機の製品の例

I-V特性(あいぶいとくせい)

(current–voltage characteristic) 半導体デバイスの電流(I)-電圧(V)特性(※)。「横軸が印加した電圧、縦軸がそれによって流れる電流」のグラフで視覚的に特性を示す。半導体の評価に使われるもっとも基本的な仕様。半導体デバイスのデータブック(仕様書)にはI-V特性が記載されている。I-Vカーブ、I-Vグラフとも呼ばれる。半導体関連測定器のカーブトレーサの品名はここに由来する。太陽電池の変換効率測定にも使われるため、太陽光発電関連測定器にIVカーブトレーサ、I-Vチェッカなどの品名の製品がある。菊水電子工業の総合カタログの用語集によれば、「電池などの電気化学関係ではターヘルプロットとも呼ばれる」。カーブトレーサや半導体パラメータアナライザなどの高額な測定器を使わないでも、高性能なSMUでもI-V特性を測定することができる。 (※)電気の世界では電流は「I」で略記される。Cはcapacitor(キャパシタ、コンデンサ、静電容量)の略号として使われている。I(大文字)やi(小文字)が電流を表すので、複素数の虚数部(Imaginaly Part)は、通常は数学ではi(小文字)だが、電流と混同されるため、電気ではj(小文字)で表記する。

アナログ・フィルタ(あなろぐ・ふぃるた)

DMMに内蔵されている、高い周波数成分をカットするローパス・フィルタ。図はアナログ・フィルタの回路と周波数特性(キーサイト・テクノロジー8505A/8506Aの例)。

アナログ電圧計(あなろぐでんあつけい)

電圧を電気信号に変換し、さらに測定値をアナログ表示する機器。交流電圧計と直流電圧計に大別される。

アナログ電流計(あなろぐでんりゅうけい)

電流を電気信号に変換し、さらに測定値をアナログ表示する機器。交流電流計と直流電流計に大別される。

アナログメータ(あなろぐめーた)

(analog meter) 指針や帯の長さなどが目盛りを指し示して数値を表示する(指示値)計器。計器の構造がアナログということではなく、表示方法がアナログ式のメータ(計器)。電圧や電流、電力などのメータ(電圧計、電流計、電力計など)は従来アナログ式である。計測器の主流はデジタル式になったが、精密計測器(0.5級、1.0級など)は現在もアナログ式(つまりアナログメータ)である。デジタル式(デジタルメータ)は「パネルメータ」と呼ばれることが多い。 アナログメータは数字表示のデジタルメータに比べて、表示量の割合や変化の度合いを直感的に把握しやすいことが特長。たとえば現場測定器の代表であるメガー(絶縁抵抗計)は(計測器の主流がデジタル表示になった現在でも)アナログ式の方が多い。なぜなら、針が振れる(動く)範囲(針の挙動)を瞬時に把握して、絶縁状態を確認できるためである。絶縁状態の確認は数値を測定して判定するよりも、アナログメータの針の挙動で判断する方が効率的で早く済む。ただし、最近は音によって絶縁状態を示したり、LEDのバー表示でアナログ的な確認ができるモデル(デジタル式のモデル)も増えて、徐々にデジタル式の割合が増えている。 アナログメータやパネルメータを総称して指示計器と呼ぶが、主にアナログメータを指していることが多い。

アンメータ(あんめーた)

(ammeter) 電流計の別称(略称)。「アンペア(電流の単位)を測定するメータ(計器)」の意味で、英語では電流計をampere meter(アンペアメータ)という。アンペアはアンと略されることが多い。たとえば微少電流計はpA(ピコアンペア)の小さな電流を測定するのでピコアンペアメータ(pico ampere meter)だが、ピコアンメータとも呼ばれる。 アンメータ(電流計)は、電流の磁気作用や熱作用を応用して電流を測定する。直流用(DC電流計)と交流用(AC電流計)の2種類がある。 計測器情報:電流計や電圧計の製品例

1.0級(いってんぜろきゅう)

アナログ表示の計測器(電圧計、電流計、電力計)の精度は5つ(0.2級、0.5級、1.0級、1.5級、2.5級)に分類されている(JIS、日本工業規格)。アナログ表示とは指針型のことで、白い板に黒字で目盛りが記載された上を針が動き、針が止まった数値を読んで測定値とする計測器のこと。0.2級が一番精度が良く標準器に使われている。計測器は1.0級と0.5級が多く、1.0級は準精密測定用、小型携帯用。1.0級とは±1.0%の誤差ということ。定格電圧100V(目盛りのフルスケールが100V)のアナログ電圧計で針が指す値が100Vだったら、±1.0Vの誤差がある。誤差はフルスケールの値に対して規定されているので、1.0級は一番良い精度が1.0%で、ほとんどの測定値は1.0%以上の誤差になることに注意が必要。参考用語:0.5級

岩通計測(いわつうけいそく)

正式名称:岩通計測株式会社。2002年に岩崎通信機(岩通)の計測事業部門を分社化(同年は超高輝度ストレージスコープTS-81000が発売された年である)。2010年代後半に親会社(岩通)に吸収された。横河電機は2010年に計測器部門(オシロスコープや電力計測器など)を子会社の横河メータ&インスツルメンツ株式会社(現横河計測株式会社)に統合している。つまり岩通とは反対に計測器部門を別会社として切り離している。横河電機はプロセス・オートメーション、計装分野に事業を集中する過程で、半導体テスタ、科学分析機器、フォトニクスデバイスなどを本体から分社化や、撤退させてきた。計測器の事業も横河電機の主力ではないので分社化された。岩通が事業再編の中で計測器を本体に戻したのは、計測器事業が単独で収益を出すことが難しい時代に、計測器が岩通にとって必要な技術・商材と認識しているためと理解される。 2018年発行の計測器総合カタログ「IWATSU 電子計測器ダイジェスト2018 Vol.2」には計測器の連絡先として「岩通計測・第二営業部・計測系業担当/アカウント営業担当/国際営業担当と営業推進部 西日本支店」が明記されている。同社の第二営業部が計測器を販売していたことがわかる。時期は1990年頃と記憶しているので岩通計測のできる前だが、岩通の計測器の営業部門から計測器のレンタル会社である昭和ハイテクレントに複数人が転職している。 岩通の開発部門からはアドシステムズ(ISDNの擬似交換機の草分け)などの計測器メーカがスピンアウトで生まれている。岩通は古くからNTTに電話機を納品してきた中堅の通信機メーカ(電電ファミリー)だし、岩通計測はアナログオシロスコープの国内トップブランドという計測器の老舗(名門)である。 現在の岩崎通信機は、2009年に半導体評価用のカーブトレーサを発売し、パワーエレクトロニクス関連の計測器に傾注している。海外製の特殊なプローブも積極的に取り扱い、デジタルパワーメータの輸入販売など、同社ホームページには転売品が多く掲載されている。 岩崎通信機(京王線久我山、杉並区)、横河電機(JR中央線三鷹、武蔵野市)、日本無線(JR中央線三鷹、三鷹市)と、東京都の23区西端には計測器メーカが3社もある(日本無線は2000年頃までは計測器部門があり、アナログの無線機テスタをラインアップしていた)。付近の地元住民には、電話機の岩通(がんつう)、無線のJRC(Japan Radio Co., Ltd.日本無線)、計測器のYEW(Yokogawa Electric Works、横河電機製作所)と呼ばれていた。

インステック ジャパン(いんすてっくじゃぱん)

(Instek Japan) 2006年~2014年に存在した、台湾のGOODWILL INSTRUMENT CO.,LTD.(通称Goodwill、グッドウィル)が設立した日本法人(販売会社)。計測器のブランドはGW Instekである。正式会社名は「株式会社インステック ジャパン」。 GW Instek製品は日本に輸入されると、秋葉原の計測器ショップに陳列され、激安のオシロスコープは、アナログオシロスコープ時代からの老舗、日立電子(日立国際電気)や松下通信工業(パナソニックモバイルコミュニケーションズ)が計測器から撤退する遠因になった。それまで国内市場のミドルクラスのモデル(周波数帯域150MHz~500MHz)として売れていた、横河電機(現横河計測)のDLシリーズ(DL1600、DL1700など)も売上を落とした。GW InstekやRIGOL(リゴル)という中華系オシロスコープの上陸による価格破壊は、国産計測器メーカの退場にとどまらず、テクトロニクスやキーサイト・テクノロジーなどのオシロスコープのトップベンダーが安価なモデルをラインアップする契機となった。 インステック ジャパンは2007年に東京で開催された計測器の展示会、計測展に出展している。営業部にパワーサプライグループがあり、当時からオシロスコープだけでなく直流電源にも注力していたことが伺える。翌2008年の「計測展 2008 OSAKA」では日本電計ブースに出展している。当時の代表取締役 専務は鄧 宗輝氏(Tsung-Huei Teng)だが、社長は日立電子の出身だった。「周波数帯域25MHz~100MHzのモデルが全オシロスコープの販売台数の50%と推定している」(電子計測グループのマネージャー談)と、展示会場で筆者は聞いた。つまりオシロスコープのヴォリュームゾーンは350MHzや500MHzなどではなく100MHz以下であり、GW Instek製品はその周波数帯域でリーズナブルな価格のモデルを揃えている、ということであった。ちなみに当時の横河電機(現横河計測)の主力モデルはDL1600シリーズ(200MHz)、DL1700シリーズ(500MHz)で、1GHz帯域のDL9000シリーズが新製品だった。 2014年1月1日に(Goodwillの資本が入り傘下となった)テクシオ・テクノロジーがインステック ジャパンを吸収し、以降は日本での「GW Instekブランドのオシロスコープ、スペクトラムアナライザ、直流電源、マルチメータなどの販売・修理・校正の事業」はテクシオ・テクノロジーが継続した(同社ホームページより)。

インピーダンス測定器(いんぴーだんすそくていき)

(impedance measuring instrument) 交流インピーダンスの測定器を指していることが多い。 1. 回路素子測定器 1)LCRメータ、ブリッジ、Qメータ、Cメータなど。この内、現在はLCRメータが最も使われている。L(コイル)、C(コンデンサ)、R(抵抗器)という素子(電子部品)の値を測定する。メーカはキーサイト・テクノロジーと日置電機のラインアップが豊富。形状はベンチトップ(またはポータブル)が多く、周波数が固定のものと可変のモデルがある(100Hz~1MHz)。ハンドヘルドのモデルもある(三和電気計器、LCR700など)。 2)インピーダンスアナライザ。周波数を掃引(スイープ)して、L、C、Rの値を求め、グラフ表示する機能がある。周波数が高いモデルを中心にキーサイト・テクノロジーが世界的なデファクトだったが、最近は日置電機が日本ではシェアを伸ばしている。同社の3570インピーダンスアナライザなどは2つのモード(LCR/ANALYZER)があり、LCRメータにもなる。LCRメータとインピーダンスアナライザは似た製品なので、日置が両者を1台にしたのはリーズナブルである。 2.回路素子測定器でない物の代表例 1)FRA(周波数応答アナライザ)。電池、生体、腐食などの電気化学の分野で周波数特性を測定する。基本的にはインピーダンスアナライザと同等の機能がある。FRAはエヌエフ回路設計ブロックが有名でラインアップが多い。そのため同社は古くからLCRメータも(モデルは少ないが)継続してラインアップしている。最近はFRAのシリーズでインピーダンスアナライザを品名にするモデルもある(ZA57630、ZGA5920など)。 電気化学の測定には交流インピーダンス法が良く使われる。電気化学測定に必要な測定器として、ガルバノスタット/ポテンショスタットと、FRAが紹介されている(東陽テクニカの物性/エネルギーの製品ページ)。 2)ロックインアンプ。ゲイン(利得)と位相から物性などのインピーダンスを求める。 3)各種の抵抗測定器はインピーダンスの実数部(抵抗成分)を求めることができる。ミリオームメータ、接地抵抗計、ガウスメータ、ひずみ計測器、一部の温度計などである。テスタ(回路計)の付加機能でも交流インピーダンスを測定できる場合がある。

WaveMeter(うえーぶめーた)

ソニー・テクトロニクが1990年代に発売したハンドヘルドのデジタルマルチメータ「ウエーブメータSTA55シリーズ」のこと(すでに生産終了)。ハンドヘルドのオシロスコープのような、簡易な波形表示ができるDMM。製品カタログには「ハンディタイプとしては初の波形表示機能を備え、サンプルレート 16MS/s、周波数帯域 5MHzの波形表示ができる」とある。STamigo商品でもある。 一般にwavemeterは光測定器の波長計のこと(例:キーサイト・テクノロジーの8905A。生産中止)。光通信で使われる信号の波長(wavelength)の計測器(mater、メータ)である光波長計(optical wavelength meter)を指す。辞書によっては「wavemeter:周波計」という解説もある。 現在、ハンディDMMで波形表示できる(オシロスコープ機能がある)製品は、ハンディDMMの世界No.1メーカのフルークを筆頭に、主要計測器メーカはつくっていない(フルークにはサーモグラフィ機能があるハンディDMMの279というモデルはある)。「オールインワンハンディオシロスコープ 品番SSMT-700」(サンプリング:最大25MS/S、周波数帯域:5MHz)というハンディDMMを販売している商社があり、製品写真や主要性能はWaveMeter STA55に良く類似している。ただしメーカ名は不明(商社ホームページに未記載で、インターネットでこの品番を検索してもヒットしない)。つまり、STA55は生産中止となり、他社(主要計測器メーカ)も含めて、後継(類似)モデルはつくられていない。ハンドヘルド製品としてのDMMとオシロスコープは使用用途が異なり、DMMに波形表示機能は必要ない(需要がない)。波形を見るならハンディのオシロスコープを使用する(こちらは需要があり、フルークやキーサイト・テクノロジーがラインアップしている)。 DMMでもベンチトップモデルは表示画面が大型化していて、波形表示もできるが(Truevoltなど)、これはオシロスコープ機能ではなく測定値の統計表示(ヒストグラムなど)である。ケースレーインスツルメンツ(現 株式会社テクトロニクス&フルーク)が2018年に発売したベンチトップの「DMM6500型 6.5桁グラフィカル・サンプリング・マルチメータ」はデジタイザを内蔵していて、オシロスコープのような時間軸波形を表示できる。ベンチトップは多機能なモデルの需要があるが、ハンドヘルドは安価なので、違う機種群(カテゴリー)の機能を盛り込むことが少ない。 STA55の下位モデルにSTA36があった。こちらはオシロスコープ機能がない、単なるDMMである(2021年12月のネットオークションで2100円で落札した記録が残っている)。 STA55シリーズの製品カタログ(会員専用)

SAR ADC(えすえーあーるえーでぃーしー)

(Successive Approximation Register Analog Digital Converter) 逐次比較型ADコンバータ。ADコンバータの方式は複数あり、一般的にデジタルマルチメータ(DMM)は積分型が多い。高ダイナミックレンジ、高精度に適した方式としてSARやデルタシグマ(ΔΣ)型がある。

SMU(えすえむゆー)

(source measure unit) ソース・メジャー・ユニット。電圧電流発生(ソース)機能と測定(メジャー)機能の両方がある計測器。電流と電圧を供給し、同時に高速・高確度で電流、電圧、抵抗を測定する。電子部品や半導体デバイスのI-V特性などの評価に使われる。 ISVM(電流を印加して電圧を測定)やVSIM(電圧印加電流測定)の機能がある。電源(電流源、電圧源)とデジタルマルチメータ(DMM)だけでなく、オプションでファンクションジェネレータ、オシロスコープ、電子負荷、パルスジェネレータなどが揃うモデルもある。キーサイト・テクノロジーやケースレーは半導体パラメータアナライザというSMUを装着して使える測定器があり、高精度の測定器群を同期して使える。SMUは電圧電流源&メータなので、カテゴリーはDMMと同じ「電圧・電流・電力測定器 」に区分されるが、アプリケーションは電子部品や半導体デバイス評価である。一般にSMUというと、外観は据え置き型のDMMで、筐体にSMUを装着して使うモデルと、分離できない一体型のモデルがある。一体型モデルは「直流電圧電流発生器(/モニタ)」の品名が多い(エーディーシーや横河計測)。ケースレーは「ソースメータ」や「ソース・メジャー・ユニット(SMU)」と表現している。キーサイト・テクノロジーは「ソース/メジャー・ユニット」や「ソース/メジャメント・ユニット」と品名を表記している。 参考記事:高精度な電子部品の評価に貢献するSMU〜エーディーシー6253直流電圧・電流源/モニタ

STamigo(えすたみーご)

米国の大手計測器メーカTektronixの日本法人であるソニー・テクトロニクスが、1990年代に行ったイベント(販売施策)の名称。「STamigo™ エスタミーゴ」と表示(印刷)されたデジタルオシロスコープTDS300/Pシリーズのカタログ(1998年8月発行)が残っている。鳥のキャラクターデザインを使っている。1990年代初頭まで同社は直販が主で、営業マンを「フィールド・エンジニア」(顧客に製品の説明を行う技術者)と位置づけていたが、間接販売に大きく転換し、1993年頃から始めた「販売チャネルの開拓」がSTamigoと思われる(30年前のため実態は不明)。 呼称はSTamigo(スタミーゴ)ではなく、「S(エス)Tamigo(タミーゴ)」。amigoはスペイン語で「友達」だがTamigoの意味は不明。「ST(ソニー・テクトロニクス)amigo(友達)」の略記かもしれない(あくまで推測)。STamigoは1994年に商標出願され、1996年に登録されている。 ハンドヘルドのデジタルマルチメータ、WaveMeter STA55(STA55G型、STA55H型)の製品カタログ(1994年発行)のトップページには、メーカ名の「ソニー・テクトロニクス」とSTamigoの表記があり、最後のページの一番下に小さな字で、次の但し書きがある。「STamigo(エスタミーゴ)は、記載されているソニー・テクトロニクス(株)製品の販売店の総称です。」 中古販売サイトに出品されたWaveMeter STA55Gの写真には、型名(※)の近くにSTamigoと印刷されている。製品には当時のソニー・テクトロニクスの企業ロゴである「SONY tektronix」の表示があり、表示部の下には「計測器ランド」とある。計測器ランドは秋葉原にある大手計測器販売会社の「東洋計測器」の店頭販売(ショップ)の名称である。 (※) ソニー・テクトロニクスは製品のモデル番号を形名ではなく型名と表記している。「MSO4104型」というような表現がホームページや資料にされていることがある。つまり、モデル番号を「○○型」(○○は形名)と表現する。この表記方法がソニー由来かは不明。たとえば横河電機はモデル番号を形名というので、横河関連会社は自然とそれに倣っている。たとえば横河電機が計測器を分社化した横河計測は、モデル番号を形名と表記している。形名と型名は、どちらが正しいということはない(以下の参考記事「計測器の形名」が詳しい)。 1990年代にテクトロニクスが発売したハンディDMMのSTA55シリーズを中心に、販売会社の名前を印刷したモデルをつくり、販売店が売るという、ソニー・テクトロニクスの「新規販売店募集キャンペーン」がSTamigoだったと推測される。STA55シリーズは販売店専用のモデルだったかは不明(型名がSTamigoと類似している)。2019年10月に当サイトに「STA55GとSTA55Hのカタログを探している」という問い合わせがあった。つまり、STA55シリーズはそれなりに販売実績があったと思われる。STamigoの対象モデルや、計測器ランド以外の販売実績などは不明。 上記の中古販売サイトとは別のECサイトには「製造元:SONY Tektronix、商品名:STA55G STamigo WaveMeter」と表記された商品がある。製品に印刷された表記を忠実に(余すところなく)転記して、メーカ名と形名を表記している。この商品には販売店の会社名が印刷されていない(つまり販売店経由でなく販売された物もあることを意味する)。計測器を収納するソフトケースには「STamigo」と書かれて、まるでSTA55Gの通称のようである。 また「TDS380P STamigo TWO CHANNEL DIGITAL REAL-TIME OSCILLOSCOPE 400MHz 2ch 2GS/s」と表記された商品もある。これも現品の表記を忠実に再現して、「メーカ名・形名・品名・仕様」の順番に並べたことが写真からわかる。つまり、TDS380PにはSTamigoの表記があるが、販売店名が印刷されていないモデルが流通している。TDS340APやTDS360PもSTamigoと表記された商品が中古計測器販売サイトにあるので、TDS300/PシリーズのSTamigoはそれなりに売れたモデルと思われる。中古サイトの製品写真を見る限りは、TDS300/Pシリーズには販売店名の表示はない。 「希少 STamigo STA36 DMM」という商品の情報がネットにある(オークション開始日2021年12月、落札価格2100円)。製品の写真から推測すると、STA55の下位モデルと思われる。製品にはSTamigoとSTA36はあるが、販売店の表記はない。 オークションサイトに「工具セット(ツールセット 電工)ソニーテクトロニクス レア 珍品」なる商品の公開履歴がある。アタッシュケース状の黒いソフトケースを開くと工具セットになっていて、ドライバーなどに「STamigo by SONY/TEKTRONIX」と印刷されている。STamigoの粗品(キャンペーンの賞品?)であろうか。 断片的ではあるがSTamigo商品(施策? イベント? キャンペーン?)の実態が、当時の製品カタログやネット商品の製品写真(2024年1月現在)から推測される。

エッジ(えっじ)

(edge) エッジには多くの意味がある。端(はじ)。きわ。ふち。へり。図形の辺(線分)。先端的。表記は「エッヂ」もあるが、筆者は「エッジ」が多いと感じる。 1. 計測器では、デジタル信号が立ち上がる(または立ち下がる)、波形のスロープのこと。オシロスコープの基本機能であるトリガで、一番使用頻度が高いのはエッジトリガである。フルーク(フルーク・キャリブレーション)はマルチプロダクト校正器の「オシロスコープ校正用の出力信号」のことをエッジと呼称している。デジタル信号の電圧がlow(0、ゼロ)からhigh(1)レベルへ遷移することを立ち上がりエッジというが、オシロスコープの周波数帯域の確認(校正)のためには、校正用の信号の立ち上がり時間が短い(立ち上がりが速い)ことが重要であるため、同社は校正用の信号をエッジと呼んでいると思われる(以下の参考記事が詳しい)。 論理回路の設計用言語(プログラム)では、立ち上がりエッジをposedge(ポスエッジ)、立ち下がりエッジをnegedge(ネグエッジ)と呼んでいる。pos negは「正負」を意味する接頭辞として使われている。Rhの血液型が「陽性」、「+」だとpositiveを略記してPOS、「陰性」、「-」はnegativeでNEGとなる。 デジタル無線通信の計測器で使われる規格(方式)名称にEDGE(読み方:エッジ)がある。カタカナのエッジではなくEDGEだと、2G(携帯電話の第2世代移動通信システム)で使われるデータ通信規を指す(Enhanced Data Rates for GSM Evolution)。GSMは世界で最も利用されているデジタル携帯電話の通信方式。欧米や、日本/韓国以外のアジアで100以上の国と地域で利用されているため、事実上の世界標準といえる。EDGEは「GSMの後継方式で、GSM384、UWC-136とも呼称される」ので、3Gである。日本ではNTTが2001年に世界初の3G(W-CDMA)を運用開始したが、EDGEはそれと同じ位置づけの欧米(や中国など)の規格である。欧米と日本では3Gまでの携帯電話の規格が異なり、3Gへの移行も同じではないので、素人が正確に理解することは難しい。 2. ITや通信業界では、クラウドとの対比でエッジが使われる。クラウドはネットワークの基幹部分(コアネットワーク)に相当し、ネットワークにつながる多くの端末に近い箇所をエッジ(ネットワークの端、ふち、という意味)と呼ぶ。IoT(モノのインターネット)は多くの端末(エッジデバイス)がネットワークにつながることである。計測器メーカもエッジデバイスをつくっている(以下の渡辺電機工業の記事が詳しい)。最近ではエッジAIやエッジコンピューティングということばもある。Microsoft Edge(マイクロソフト エッジ)といえば、インターネットで検索するときに使うウェブブラウザ(PCや携帯電話をWebサーバに接続するためのソフトウェア)で、Google Chrome(クローム)やInternet Explorer(IE)と共に有名である(「エッジ」をブラウザで検索すると上位にMicrosoft Edgeが表示される)。 DCSなどの工業計器のトップベンダである横河電機には多くの製品群があり、レコーダ(メモリレコーダなどの計測器のレコーダではなく、計装用の温度などのセンサの役目をするデータ集録機器)やプログラマブルコントローラ(PLC)、小規模計装機器(温調計、信号変換器、電力モニタなど)などの製品群をエッジソリューション統括部にまとめて、「エッジプロダクトニュース」と題したDMを2021年5月から配信している。初回配信では、“エッジ製品に特化したお役立ち情報を届けるため、従来の「ITプロダクトニュース」を「エッジプロダクトニュース」にリニューアルした”、と冒頭に述べている。前述の渡辺電機工業は横河電機と同じ計装の機器をつくっているが、信号変換器は(エッジデバイスではなく)センサーデバイスと表現している(以下の記事参照)。エッジが示す製品の範疇(エッジデバイス、エッジプロダクトなど)はメーカによって異なるので、あくまでエッジとは概念であり、具体的な製品は各メーカの解釈に任されている。とにかく、ネットワークの進歩に伴って、ITだけでなく計装の世界でもエッジが流行りである。 一般には、エッジは「先端的、尖っている」という意味で使われている。「エッジが効いている」とは「切り口が鋭い」、「際立っている」、「気が利いている」という、秀でていることの褒めことばである。ファッション業界で使われ、一般に広がったといわれる。TechEyesOnlineも、ここでしか知ることができないオンリーワンのコンテンツを満載した、「エッジの効いた、尖がった(とんがった)専門サイト」を目指している。

エネルギーマネージメントシステム(えねるぎーまねーじめんとしすてむ)

(Energy Management System) 工場やビルなどの、施設のエネルギー使用状況を把握して、最適なエネルギー利用を実現する活動を支援するシステム。「電力監視」や「エネルギーの見える化」とも呼ばれる。略記:EMS。 日本は省エネが進んでいる。2010年代にはデマンド(電力使用量の可視化)が産業界に広まったが、カーボンニュートラルとも相まって、2020年代は各工場にエネルギーマネージメントシステム(EMS)の導入が進んでいる。以下の記事で業界動向を取材。 表記は「エネルギーマネジメントシステム」のほうがやや多い。管理職を示す「マネージャ」は、会社によっては名刺の表記が「マネジャ」の場合がたまにある。 manageの日本語(カタカナ表記)に「ー」を入れるか否かは難しい。マネージャは「ー」が入ることが多く、マネジメントは「ー」が入らないことが多いようである(この使い分けはどのような基準なのか。。)