計測関連用語集

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ICE(あいす)

In-Circuit Emulatorの略。マイクロプロセッサー(マイコン、MPU、CPU)を使った組込み機器の開発・デバッグを行なう測定器。開発支援装置、デバッガー、インサーキットエミュレータとも呼ばれる。今や安価な家電製品から高度な通信装置まであらゆる電気機器にマイコンが搭載されている。それはハードウェアとソフトウェアの両方が一体となって動作する。半導体素子で構成された電子回路が作りだす信号波形と、動作を制御するプログラムの両方が正確に連携しないと、製品は仕様通りに機能しない。そのための作り込みに欠かせない測定器。機器のマイコンが実装される基板上からケーブルをICEに伸ばすのでIn-Circuitになる。1971年にインテルが世界初のマイコン4004(4ビット)を発売し、以降ザイログやフェアチャイルドも8ビット製品を次々と世に出した。そのため80年代には各計測器メーカはICEに参入した。当時のICEは(後年の分類で)スタンドアロン型(またはフルエミュレータ)で、HP(現キーサイト・テクノロジー)はユニークなモデルを長く発売していた。80年代後半には横河電機や安藤電気、アンリツなどの大手計測器メーカがICEを作っていたが、ソフィアシステムズなどのICE専業メーカがシェアを伸ばし、横河電機は分社化してAdvice(アドバイス)というブランドを作り、90年代にソフィアシステムズと市場を2分した(現在もDTSインサイト社が後継機種を継続している)。日本に携帯電話メーカが複数ある時代は、高額なICEを大量に使い開発にしのぎを削ったので、レンタル商材としても2000年代までは花形だった。現在は安藤電気やアンリツなど計測器メーカや、ソフィアシステムズなどの専業メーカもほとんど撤退した。理由は、基板検査のための規格として登場したJTAG(ジェイタグ)が拡張して「総合デバッグインタフェース」となり、高額なICE(フルエミュレータ)を使う必要がなくなったためである。現在のICEはJTAGやROMエミュレータなどのオンチップ・エミュレータが主流となった。従来のフルエミュレータに比べて安価なため、ICEの市場規模は激減して、乱立していた計測器メーカや専業メーカは一掃された。マイコンの黎明期から普及に伴い活躍したICEは、マイコンの成熟とともに計測器の主流ではなくなった。

インサーキットエミュレータ(いんさーきっとえみゅれーた)

(In-Circuit Emulator) マイクロプロセッサー(マイコン、MPU、CPU)を使った組込み機器の開発・デバッグを行なう測定器。略して「ICE(アイス)」と記載される。別名「(マイコン)開発支援装置」、「デバッガー」。マイコンはプリント基板上に実装され、同様に基板上にあるメモリーICに格納されたプログラムに従って、ハードウェアを制御して機器を動作させる。試作品の段階では、ハード(回路)、ソフト(プログラム)の両方とも不完全で、必ずバグ(間違い)がある。そこで、マイコンの代りになって疑似マイコンとして動作するのがインサーキットエミュレータ(ICE)である。試作品のプリント基板上のマイコンが実装される箇所からフレキシブルケーブルでICEに信号を取り出す。実際の動作時にはマイコンが高速で処理するプログラムを、特定の箇所だけ実行させて、設計通りに機器が動作するかを確認していく。動作しないときは、どこが悪いのか、プログラムに間違いがあるのか、ハードウェアに設計ミスがあるのか、具体的につぶしていく。プログラムの間違いはパッチで修正し、ハードウェアの変更はプリント基板上にリード線(ジャンパ線)をはんだ付けして回路の変更を行う。こうして、仕様を満足する状態が完成したら、パッチとジャンパ線で仮の修正をしたプログラムとプリント基板をあらたに作り直して試作2号機をつくり、同じようにICEでデバッグを続ける。このようなデバッグ作業を通じてマイコンを搭載した電気機器は完成品となる。そのためデバッガー、(マイコン搭載機器の)開発支援装置、という名称がある。プリント基板のマイコン実装箇所からハードウェア(回路)に入って、疑似マイコンとして試験するので、In-Circuit Emulatorである。ただしIn-Circuitには弱点もある。シールドされたフレキシブルケーブルで信号を取り出しているとはいえ、あまりケーブルが長いと、外部からの電磁的な影響を受けたり、回路そのものの設計能力を超えてしまい、動作が不安定になることがある。そのため、「ICEが上手く動かない」という問合せはユーザのデバッグ現場からメーカのCSに頻繁にあった。原因究明、解決のために各ICEメーカはサービスマンをユーザに派遣することもあった。

オンチップデバッグツール(おんちっぷでばっぐつーる)

ICEの1種。JTAGなどを、フルエミュレータと区別して呼ぶ。現在のICEの主流の方式。

開発支援装置(かいはつしえんそうち)

マイコン(CPU)を使った組込み機器の開発・デバッグを行なう測定器。ICE、デバッガーなどとも呼ばれる。

JTAG(じぇいたぐ)

ICEの1種で、オンチップデバッグツールの代表機種。1990年代にICEの主流となった。JTAG以前のICEを概してフルICE、フルエミュレータと呼んでいる。RISCマイコンの多くがCPU内部にデバッグ機能を搭載している事から、この内蔵デバッグ回路を利用したICEとしてJTAGエミュレータは生まれた。JTAGがICEの主流になり、それまでのスタンドアロン型のモデル(JTAGに対比してフルICEと呼ばれる)はほとんど生産中止になった。

デバッグ(でばっぐ)

debug。バグ(虫。間違いの意味)を修正して正常な動作をするように直すこと。主に組込みソフトウエアの開発で使われる用語。そのため、ICEのことをデバッガー(デバッグすること、する機器)と呼ぶ。

デバッグステーション(でばっぐすてーしょん)

安藤電気のICE(開発支援装置)の品名。形名AE-4132B、AE-4133がある。マイクロプロセッサ(MPU/CPU)が普及しはじめた1980年初頭から、同社は早くからマイコンテスタなどのICE関連製品に注力していた。当時NECや日立製作所などの大手家電・情報通信メーカは半導体デバイスメーカでもあり、安藤電気はNECのグループ会社として、NECが発売する新しいCPUチップに対応したROMライタなどを製品化している。当時の日本の基幹通信網(NTT)は従来のアナログの電話網(銅線のケーブル)を流用し、一部基幹部分を光通信にしていたが、交換機は重要な装置であった(インターネット時代のルータはまだない)。交換機は膨大なソフトウェア、ファームウェアによっていて、新しいCPUが導入されると、そのデバッグのために(そのCPUに対応した)たくさんのICEが使用された。AE-4132B/4133はNECの交換機事業部門向けに大きな売上があった。後年フルICEと呼ばれるスタンドアロン型で、本体(外観はデスクトップPC)からフレキシブルケーブルでCPU専用のオプション(ポッドと呼ばれる箱)につなぎ、その先をターゲット(デバッグしたい装置のCPU基板)につないだ。ポッドとターゲットの距離は長さ制限があり、ポッドはなるべくターゲットの近距離にあることが必要だった。交換機は大型の装置のため、ポッドに紐を付けて、適当な箇所に括り付けて、ICE本体につなぎ、デバッグ作業が行われた。安藤電気と同じく、NECの資本が入っているアンリツもV40、V50、V60などのNECのマイクロプロセッサに対応したICEを発売していた。汎用CPUとしてはインテルの80系(8080,8085、80286,80386など)とモトローラの68系(68000シリーズ)などの海外製品が有名だが、NECはそれらのサードパーティーではなく独自のCPU製品群を開発し、販売していた。現在は大手家電・情報通信機器メーカはCPUからは撤退し、国産のCPUはない。安藤電気など計測器メーカもICEから撤退している。

TRON(とろん)

(The Real-time Operating system Nucleus)東京大学の坂村健教授が提唱したリアルタイムOS仕様のコンピュータ・アーキテクチャ。1980年代からプロジェクトが始まり、いくつかの商品(CPUなど)が製造され、国内の機器に採用された。日本独自のOS、CPUだったが、OSがマイクロソフトのWindowsに独占され、一太郎や花子がexcelやwordに凌駕されたように、市場に広まることはなく過去のものとなった。インテルやマイクロソフトに対抗できる国産品としてプロジェクトは注目されたが、世界的な標準にはなれなかった。

バス(ばす)

(Bus) コンピュータ用語で、情報や信号の通り道、周辺機器とのインタフェースをさすことば。バスとは英語で乗合自動車のことで、いわゆる「路線バス」のバスだが、プリント基板内の複数本で構成される信号線路や、複数の機器が信号線を共有してデータを交換する構造を「バス」と呼んでいる。そのため、自動車のバスと語源は同じ。半導体内部や、外部のチップ間の伝送線路をバスということが多い。具体的には半導体チップ内部の回路間を結ぶ内部バス、マイクロプロセッサ(MPU)とRAMなどの周辺回路を結ぶ外部バス、拡張スロットに接続された拡張カードとコンピュータ本体を結ぶ拡張バスなどがある。ネットワークトポロジーで機器を数珠繋ぎにする配線構造はバス型といわれる。

パッチ(ぱっち)

Patch(着物のはぎれ、小さな布)。コンピュータのプログラムの一部を修正してバグを取り除くこと。根本的なプログラム変更ではなく、発見されたバグを直すためだけのつぎはぎの修正。「パッチを当てる」という言い方をする。不具合のある箇所(着物のほつれや穴など)を小さな布で隠して、とりあえず正常に機能するようにしたたとえ。

フルエミュレータ(ふるえみゅれーた)

ICEの1種で、JTAGなどのオンチップデバッグツールが1990年代に標準化されたため、それ以前のICEを高性能CPU用としてフルエミュレータやフルICEと呼ぶ。

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