計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
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立ち上がりエッジ(たちあがりえっじ)

(rising edge、leading edge) デジタル信号の電位がLowレベルからHighレベルへ遷移することを言う。反対の用語としては立ち下がりエッジがある。(株式会社Sohwa&Sophia Technologiesの用語集より) 現在の電子回路はデジタル信号が多く使われている。0と1(HIGHとLOW)のパルス列(方形波)では、信号の立ち上がりや立ち下がりを捉えて処理を行うことは基本である。パルスの値が遷移する時間は短く、パルス波形の端(はじ)やふちなのでedge(エッジ)と呼ばれる。立ち上がりエッジや立ち下がりエッジは、電子機器が動作を行うときの電子回路の合図に使われる。

立ち下がりエッジ(たちさがりえっじ)

(falling edge、trailing edge) デジタル信号の電位がHighレベルからLowレベルへ遷移することをいう。反対の用語としては立ち上がりエッジがある。(株式会社Sohwa&Sophia Technologiesの用語集より) 現在の電子回路はデジタル信号が多く使われている。0と1(HIGHとLOW)のパルス列(方形波)では、信号の立ち上がりや立ち下がりを捉えて処理を行うことが多い。エッジはパルスの値が遷移する、波形の端(はじ)を意味している。

パターンジェネレータ(ぱたーんじぇねれーた)

(pattern generator) パルス波形とパルスパターン波形を作成して出力できる信号発生器。一般にパルスジェネレータは単純なパルス列(方形波)を1~2ch出力するが、より複雑なロジック・パターン(パルスパターン)を出力する特殊なパルス発生器をパターンジェネレータと呼ぶ。代表例はBERT(ビットエラーレート試験)に使う信号発生器であるPPG(パルスパターンジェネレータ)がある。テクトロニクスの冊子「信号発生器のすべて」の用語解説では「パターンジェネレータ:ロジック信号発生器の一種で、多数のチャンネルのデジタル・パターンを生成する」とある。ロジックアナライザ(ロジアナ)の機能(オプション)にはパターンジェネレータ(任意のロジック・パターンを多chで出力する)があり、ロジック回路の論理機能試験に使われる。 このようにロジアナ(テクトロニクスやキーサイト・テクノロジー)や、伝送路の品質評価に使うPPGなどの通信の測定器(アンリツやキーサイト・テクノロジーなど)にパターンジェネレータは使われている。パターンジェネレータをデータジェネレータと呼ぶメーカもある。また前述のテクトロニクスの用語解説でわかるように、同社はロジック信号発生器という呼称を好んで使っているが、キーサイト・テクノロジーやアンリツはパターンジェネレータやパルスパターン発生器のような表現が多い(「ロジック信号発生器」なる表現はしていない)。 また上記のテクトロニクスの説明では「パターンジェネレータは多ch」といっているが、通常、パターンジェネレータは1ch(または2ch)で、多チャンネルの場合はparBERT(パラバート、キーサイト・テクノロジーの多chのBERT、パラレルバート)などの製品になる。テクトロニクスの解説はロジアナについての解説で、一般的なパターンジェネレータは、アンリツやキーサイト・テクノロジーなど、BERTをラインアップするメーカのモデルを指していることが多い。メーカによって解説が異なる好例といえる。 TV信号には国別に違う方式があり(NTSCやPAL、ISDB-Tなどの規格)、それらのパターンの発生器をパターンジェネレータと呼称している。このようにロジアナや通信計測器、テレビ・映像測定器で使われる用語だが、それ以外の測定器にも使われているケースもある。

パルスパターン(ぱるすぱたーん)

(pulse pattern) デジタル信号はhigh/low(1/0)の組み合わせの特殊な方形波で、意味のあるデータを2進数にして伝送する。1と0がランダムに続く信号をパルス列やパルスパターンと呼ぶ。デジタル伝送の送信機器~伝送路~受信機器までのシステム全体の品質評価をする指標にBER(ビット誤り率)がある。この測定は任意のパルス列(パルスパターン)を出力できる特殊なパルス発生器であるPPG(パルスパターンジェネレータ)と、ED(エラーでテクタ)の組み合わせで行う(現在はPPGとEDが1筐体に収まった製品が多い)。

PC接続型簡易測定器(ぴーしーせつぞくがたかんいそくていき)

スタンドアロンではなくPCにつないで操作するタイプの測定器(PC制御型)は以前からあった。外観は箱で、表示部や操作部はほとんどない。小型のものはPCのI/Fコネクタに直接、箱(計測器本体)を接続してまるで計測器の一部のような製品もあった。特にオンラインモニタ(プロトコルアナライザ)はデジタル通信をするコンピュータとの親和性が高いので、PCにつなぐ小型の簡易製品があった。日本データシステムはポケオシ、ポケロジの名称でオシロスコープやロジックアナライザ製品を販売した(現在はハギワラソリューションズが事業を継承)。ロジアナが時代を感じさせるが、以前はPCのI/Fの性能もあり、これらのPC接続型小型計測器は本格的な計測器とは認知されていなかった。海外では英国のPico Technology(ピコテクノロジー)が1991年設立のPC型オシロスコープメーカとして老舗。 USBが広く普及したことによって、現在はUSBインタフェースを使ったPC接続型のモデルが大手計測器メーカからも発売されている。そのため、従来の(I/FがUSB以前の)PC接続型簡易測定器はほとんど見かけなくなった。現在はUSB接続型PC制御測定器が計測器の1カテゴリーとして確立しつつある。

フォーティブ(ふぉーてぃぶ)

(Fortive) 大手計測器メーカのTektronix(テクトロニクス)とFluke(フルーク、グループ会社含む)の持ち株会社。経緯を書くと、両社は別々に米国の投資会社ダナハー・コーポレーションに売却され、その傘下となった。その後、ダナハー・コーポレーションは2つに分かれ(2016年に、ダナハーの25%を占めていた工業機械関連会社がフォーテイブとして独立し、ダナハーには化学・健康機器関連の企業が残った、という説明もできる)、その一方のフォーティブ・コーポレーションの傘下に株式会社フルークと株式会社テクトロニクスは入った。発足当初の日本の社名は「株式会社TFF」で、その下に両社があった。後にフルーク社とテクトロニクス社を内包した社内カンパニー制度をとる「株式会社テクトロニクス&フルーク」となった(2021年)。それ以前は「テクトロニクス社/ケースレー社」と名乗っていた時期もある(Tektronixは2012年に、同じくダナハー傘下のKEITHLEYを吸収している)。 TFFはあくまで日本での会社名で、日本以外ではTFFなる組織は存在しない。日本以外ではテクトロニクス、フルーク、フルーク・キャリブレーション、フルーク・ネットワークスはすべて別会社だが、日本だけTFFがあり、フルーク・キャリブレーションは「TFF社の校正器営業部」、フルーク・ネットワークスは「TFF社のフルーク・ネットワークス営業部」という組織となっている。現在はTFFとは言わないが、フルークグループの各社が、日本では営業部という組織であることは変わらない。全世界にフルークの現地法人があり、フルークジャパンのトップは「株式会社テクトロニクス&フルークの特約店営業部(あのオレンジ色のハンドヘルドの機種群を日本で販売する組織の名前は“特約店営業部”である。日本では直販をほぼしないで商社経由で売っている。)」の営業部長になる。フルークジャパンの社長ではなく、特約店営業部の部長である。 海外ではM&Aが盛んで、大手計測器メーカといえども、キーサイト・テクノロジーやローデ・シュワルツ以外はほとんどが買収・合併されている。テクトロニクとフルーク以外の主要な海外通信計測器メーカはEXFO(エクスフォ)とViavi Solutions(ヴィアヴィ)に集約されている。計測器に限らず、市場原理によって企業は整理統合される。それが当たりまえだが、日本では海外ほど淘汰が進まず、中規模以下の計測器メーカが健在である。これを日本的な風土と評価するか、産業の新陳代謝が進まず水が澱んでいるとするかは意見が分かれる。メーカは技術者が一攫千金を夢見て操業する(ソニーやホンダなど)が、計測器は市場規模が大きくないため、各計測器メーカは独自路線の中小企業になりがちで、同業他社との合弁がなかなか進まない(自社で独立する気概が高い、逆に言えば創業者の名前を大事にしていて、似た技術分野の競合と合弁する気はなくて、頑固に独立を維持する傾向が伺える)。そのため、海外のキーサイト・テクノロジーのような国産の総合計測器メーカが育っていない。 1960年頃までの横河電機はその有望株だったが、その後HP(現キーサイト・テクノロジー)とYHP(横河ヒューレットパッカード)をつくり、高周波の測定器は(YHPと競合するので)つくらない方針となった。ただし、3G(携帯電話のデジタル化)など無線測定器の市場拡大の中で、RF の測定器群に参入し、2000年頃には方針転換して計測の事業を拡大し、安藤電気を吸収した。ところが時すでに遅かったのか、10年やらずにほぼすべての計測関連事業から撤退してしまった。計測器の現在の後継会社である横河計測株式会社は、国内シェアは10%に届かず、光測定器以外は通信計測器がないので、総合計測器メーカではない。 過去に存在した国内外の計測器メーカの例: Wandel&Goltermann(ワンデル・ゴルターマン)、JDSファイテル、Acterna(アクテルナ)、安藤電気、三栄測器

MIPI(みぴー)

(Mobile Industry Processor Interface) モバイルデバイス(やモバイル機器)向けのインタフェース規格。カメラやディスプレイに採用されている。日本語に訳すと「モバイル業界のプロセッサのインタフェース」。つまり、「モバイル機器に内蔵されるプロセッサのインタフェースを規定した規格」である。ただし2020年にA-PHY(後述)を発表したことで当初の家電・コンピュータ製品の範疇を越える規格にMIPIはなった。 Intel(インテル)、Motorola(モトローラ)、Nokia(ノキア)、Samsung(サムスン)、TI(テキサス・インスツルメンツ)、ST(STマイクロエレクトロニクス)などのモバイル業界のリーディングカンパニーによって2003年にMIPI Allianceが設立され、2008年に規格が策定された。規格化によって設計を簡素化し、普及を促進することを目的にしている。USBやLVDS(エルブィディーエス)、SATA(サタ)などの、他の高速なシリアル通信の規格に比べて知名度は低い(機器内部のデータ転送規格のためと思われる)。 通信方式は平衡(差動)。物理層(レイヤ1)に複数の規格があり、PHY(ファイ)シリーズと呼ばれている。たとえばD-PHY(ディーファイ、最大1.0Gbps/1レーン)、M-PHY(エムファイ、最大6Gbps/1レーン)。PHYはphysical layer(物理層)の略記で、頭のアルファベット1文字で種類を区分。当初はアルファベットの後の方が高性能な規格になっていたようである。シリアルI/Fの1種だが、HDMIやDisplayPortと同類の映像規格ともいえる。読み方は「ミッピー」と表記している例をみかけるが、会話では「ミピー」と発音されている(聞こえる)。 MIPI用の計測器としてはバスアナライザなどのプロトコルアナライザがあるが、オシロスコープのオプションで解析ソフトウエアがあるモデルもある。キーサイト・テクノロジーは2010年頃にはロジックアナライザでMIPI信号の解析をしていたので、広義にはロジックアナライザの用語でもある。 2024年現在は以下の4つの物理層の規格がある。 ・M-PHY:高性能カメラやメモリ、チップ間アプリケーションの、性能重視の双方向パケット通信やネットワークで使われる。 ・D-PHY:カメラやディスプレイ側に適用され、低速の単方向ストリーミングに使われる(2008年当初はそうだったが、後にアップグレードしている、後述のC-PHYを参照)。 ・C-PHY:D-PHYと同様にカメラやディスプレイ側に適用されるが、クロック方式や送信振幅がD-PHYと異なる。D-PHYは当初の1Gbpsから4.5Gbpsにアップグレードされ(Ver2.0)、C-PHYと似た仕様になっていて、用途の使い分けがはっきりしない。2024年現在、イメージセンサ(CMOS)のトップベンダであるSONYが両方を採用しているため、C-PHYとD-PHYが併存している。 ・A-PHY(エーファイ):ADAS(エーダス、先進運転支援システム)やADS(自動運転システム)、カーナビ、カメラなど、幅広い自動車アプリケーションへの適用が期待される規格(範囲は車載には限らない)。高速単方向データや埋め込み双方向制御データなど、電力供給を1本のケーブルで提供できる。他のMIPI規格に比べて最近(2020年9月)、規格ができた。MIPIはA-PHYによって、モバイルではなく自動車に用途が広がった。スマートフォン搭載カメラの高解像度要求に応えてきたMIPIは、高解像度対応センサの種類が豊富である。近年、モバイル用途以外の組み込みカメラシステムでも高解像度化要求が高まってきたことで、MIPIは車載を主要な用途としてA-PHYを策定した。ただし車載の映像I/FにはGMSLやGVIFなど先行する規格があり、A-PHYがどれだけ普及するかはこれから(未知数)である。 MIPIは2008年にM-PHY(最高伝送速度6Gbps)とD-PHY(1Gbps)を発表したが、デバイスの進歩にD-PHYの性能が劣るようになり、後にC-PHY(6Gbps)を発表する。しかし、D-PHYもアップグレードされD-PHY ver3.0(9Gbps)になった。当初の発番法則はD、Mとアルファベットが後になるほど高性能だった。規格の名称は後ろのアルファベットから発番していて、A-PHYが2020年に作成され、モバイルから自動車まで対応する規格になった。Aを使ってしまったので、今後の新規格の名称が何になるかわからない。 小さな数字ほど性能が高く、大きな数字の製品から発売開始したのがNECのコンピュータである。PC9800シリーズは1980年代から国内トップシェアだったパソコン(Windows以前のMS-DOS時代まで)だが、1990年頃にはEWS4800シリーズ(エンジニアリング・ワークステーション)が発売される。また1990年代にExpressサーバ5800シリ―ズ(PCサーバ)が発売される。PC、サーバ、ワークステーションの順番に高性能で、名称の番号は9800、5800、4800と小さな数字になっている。性能(コンピュータ製品の中での位置づけ、ポートフォリオ)と通称の数字の順番(大きさ)に法則性があり、統一感のある美しい発番である。PC9800とEWS4800の後にExpress5800が発売されたときに、メーカ側から何の説明を受けなくても「Expressサーバ5800はPCよりも高性能だがワークステーションほどの性能は無い」、というポートフォリオがその番号から瞬時に理解できる。筆者はこのような発番体系を美しいと感じる。MIPI A-PHYの次の規格が大変気になるところである。

ロジアナ(ろじあな)

ロジックアナライザ(logic analyzer)の略称。ロジアナはマイクロプロセッサ(マイコン、MPU、CPU)の普及により、多チャンネルの信号のロジック(0か1)を波形表示して、ハードウェア・ソフトウェア開発やデバッグに使われた。多チャンネルの電圧測定器だが、表示は0か1の2値表示で電圧値は表示しないので、プロトコルアナライザ同様に校正対象外の計測器である。タイミング表示やステート表示など、プログラム(ソフトウェア)表示もできる。多くの信号線のタイミング(波形のON/OFFのタイミングなど)を1台で検証できる計測器として登場した。チャンネル数は128や256だった。1980年代には国産計測器メーカだけでなくIT関連の異業種もロジアナを発売していたが、ICEの縮小とともにほとんど撤退した。キーサイト・テクノロジーとテクトロニクスが高シェアで最後まで製品を作っていた。ロジアナの技術は、ミックスドシグナルオシロスコープ(MSO)に継承されている。計測器のガイドブックの中には、ロジアナを「オシロスコープ/ロジックアナライザ/マイクロプロセッサ開発関連機器」という項目に分類している例もある。

ロジックアナライザ(ろじっくあならいざ)

(logic analyzer)デジタル回路の動作を調べる測定器。基本性能は多チャンネルの電圧計。電圧を検出するが、アナログの値ではなく1か0のデジタル値でしか認識しない。また表示はソフトウェアコードや言語で電圧値ではない。各チャンネルの1/0(high/low)の時間推移(タイミング)を表示する機能は現在のミックスドシグナルオシロスコープのロジック入力機能の元となった。 マイクロプロセッサ (MPU、CPU、マイコン)が普及した1970年代後半に出現し、組込みシステムの開発・デバッグに威力を発揮した。2000年代以降はICEのJTAG化と歩調を同じくしてその役割をほぼ終えた。バスアナライザ(プロトコルアナライザの1種)として延命している機種もある。略称: ロジアナ。マイコン黎明〜普及期には、岩崎通信機、タケダ理研工業(現アドバンテスト)、安藤電気、松下通信工業(パナソニックモバイルコミュニケーションズ)などの大手計測器メーカがこぞって参入したが、すべて撤退した(海外メーカに駆逐された)。HP(現キーサイト・テクノロジー)とテクトロニクスの2社が最後に残った。ロジアナといえばHPというくらい、ラインアップが多く、2023年現在も、1650シリーズや16500シリーズから継承する16800、16850、16900シリーズなどが健在。テクトロニクスはTLAシリーズがあったが、生産中止(2023年現在、同社ホームページには製品の資料はまだ掲載されている)。 4ビットから始まったCPUチップが16ビット、32ビットと進化すると、バスも増え、処理速度も高速化した。キーサイト・テクノロジーはロジアナ内部に高速処理をするFPGAなどを搭載して、モデルを増やした(国産計測器メーカはこのような対応ができなかった)。テクトロニクスのモデルもファンがいた。テクトロニクスの冊子「オシロスコープのすべて」(2017年4月発行)では「ロジック・アナライザ:多数のデジタル信号の論理ステートを時間軸に対する変化で表示する機器。デジタル・データを解析し、リアルタイムなソフトウェア実行、データ・フロー、ステート・シーケンスなどが表示できる」とある。 余談だが、ある大手通信機器メーカは交換機の開発などで高額なロジアナを3桁の台数で使用した。ロジアナは電圧測定器だから、このメーカは校正の対象にしていた。これは大きな間違いである。ロジアナは電圧を測定しても1か0の表示しかしない。アナログの電圧計ではなく、プロトコルアナライザのようなデジタル測定器である。精度がはずれてきて1を0に表示したら故障(修理)で、校正ではない。ただし社内規定で校正対象だから、校正周期(通常1年)ごとに校正を実施し、校正証明書などの必要書類を更新しないといけない(そのようにISOに準拠した社内規定を制定している)。レンタルで運用している機材は、毎月のように校正の対応が発生し、現場は大いに無駄な作業を続け、無用な経費を出費した、という笑えない話である。マイクロプロセッサの普及によって登場した新しい測定器であるロジアナを正しく理解できる人材が、大手でも校正部門にはいなかった、というお寒い話である(メーカは優秀な人材は開発や企画、営業部門に配置するが、校正などの品質管理には回らないという実例かもしれない)。

ロジック信号発生器(ろじっくしんごうはっせいき)

パルスジェネレータ(PG)のような単純なパルス列ではなく、より複雑なロジック・パターン(パルス・パターン)を多chで出力する信号発生器。デジタル・パターンを出力して、ロジックアナライザ(ロジアナ)と併用してロジック回路の論理機能試験に使われる。そのため(ロジアナをラインアップしている)テクトロニクスはロジック信号発生器と呼称しているが、同じくロジアナのメーカであるキーサイト・テクノロジーの品名は「パターンジェネレータ」である。一般にはパターンジェネレータと呼ばれることが多い。 「ロジック信号発生器:テクトロニクスのパターンジェネレータ(ロジアナと併用する多チャンネルのタイプ)の名称」と解説することもできる(つまり、ロジック信号発生器、なる呼称は同社以外ではほとんどされていない)。

YHP(わいえっちぴー)

(Yokogawa Hewlett Packard) hp(ヒューレット・パッカード)が日本につくった合弁会社(1963年~1998年)。YHP設立以前は、無線機器を取り扱う商社のセキテクノトロン株式会社(旧関商事株式会社)がhp製品を輸入販売していた。 1939年に、ウィリアム・ヒューレットとデビッド・パッカードは米国カリフォルニア州でhp(Hewlett-Packard Company、エイチピーと呼称)を創業し、世界No.1の電子計測器メーカとなった。日本のYEW(横河電機製作所)は1963年にhpと合弁でYHP(横河ヒューレット・パッカード)を設立した。YEWは国産初の電磁オシログラフをつくるなど、日本を代表する老舗計測器メーカだった。高周波(RF)測定器はYHPがつくり、YEWはDC~低周波の記録計などをつくるという棲み分けをした(競合しないように機種群の分担を決めた)。当時のYEWはブリッジをラインアップし、回路素子測定器の要素技術を持っていたが、それらはすべて技術者とともにYHPに移ったと推測される。YHPはhpの日本法人(販売会社)でhp製品を販売したが、国内に開発拠点を持ちYHPとして計測器の開発も行った。回路素子・材料の測定器(LCRメータやネットワークアナライザなど)の開発拠点が神戸にあったと筆者は記憶している。1980年代に筆者は国内大手計測器メーカの技術部門にいたが、各計測器メーカの特許出願情報が回覧された。そこには「横河HP」という会社名でインピーダンス測定の多くの特許が掲載されていた。YEWのブリッジは生産終了し、後継機種となるLCRメータなどはつくられていない。インピーダンス計測器は、YEWではなくYHPが開発を行った。 高周波計測器を手掛けるYHPと、「レコーダ、低周波の電力計(デジタルパワーメータ)、ミドルクラスのオシロスコープ」をつくる横河電機(1986年に社名変更)との差は30年間で大きく開いた(YHPは計測器のトップメーカになっていた)。1995年に横河電機はYHPへの出資比率を下げ、高周波測定器の開発に着手した。時は携帯電話の3Gが商用開始する前夜で、1998年にはYHPから完全に資本を引き揚げ、携帯電話評価用の信号発生器を中心に、次々と通信計測器を発表した。 YHPは会社名を日本HPに変更していたが、2000年にhpがIT機器以外の事業(計測器と科学分析機器、ライフサイエンス事業)を分社し、Agilent Technologiesを設立したので、日本HPもアジレント・テクノロジーとなる。さらに2014年にはAgilent Technologiesは科学分析機器のみとなり、計測器はKeysight Technologies(キーサイト・テクノロジー)となり、現在に至る。 世界No.1の総合計測器メーカhpは日本では、高度経済成長期に設立したYHPに始まり、1998年以降に日本ヒューレット・パッカード、アジレント・テクノロジー、キーサイト・テクノロジーと社名が変わった。横河電機は2002年に幸運にも通信計測器大手の安藤電気を吸収し、安藤電気がアジレント・テクノロジーとシェアを競った光通信測定器をラインアップに加え、高周波測定器を強化した。ただし、2000年代後半には光通信以外の通信計測器はすべて中止し、2010年には横河メータ&インスツルメンツ(現横河計測)に計測器部門を移管した。これによって横河電機は(計測器をつくらない)計装(工業計器)のメーカに名実ともになり、(メモリレコーダなどの計測器ではない)計装ユースのDAQ(データロガーなど)をラインアップしている(計測器の記録計か、計装の記録計かは素人には判断が難しい)。 マイクロウェーブ展2022(2022年11/30~12/2、パシフィコ横浜)に、キーサイト・テクノロジーはPXIネットワークアナライザM983xA(新製品)を出展した。「Keysight TechnologiesのR&D拠点の1つであるキーサイトの事業所(兵庫・神戸市)で開発した製品である」ことが、展示会を取材した日経誌で報じられている。

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