計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
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ナイキスト周波数(ないきすとしゅうはすう)

(nyquist frequency) サンプリング周波数の1/2の周波数のこと。標本化(サンプリング)したい信号がナイキスト周波数よりも大きい周波数のとき(ナイキスト周波数よりも高い周波数成分を含んでいるとき)は、サンプリングした信号には折り返しひずみ(エリアシング)が生じる。また、サンプリングしたデータから元の信号を再生しようとしても(ナイキスト周波数より高い周波数が欠落しているので)正確な元の信号には戻らない(再現に限界がある)。 測定器にはサンプリング周波数が規定されている(サンプリング周波数は無限大に大きくはない)。また、測定した信号に含まれる周波数成分は未知である。そのため、測定器に信号を入力する前にフィルタ(LPS:ローパスフィルタ)で帯域制限(高い周波数をカット)して、エリアシングを防止(回避)する。 サンプリング(標本化)とは連続した信号(アナログ値)をある時間間隔で間引いて瞬間の値(デジタルデータ)にすることで、AD(アナログ・デジタル)変換である(表記:ADコンバータ、ADC、A/D変換器、アナログ/デジタル変換器)。AD変換器は計測器に限らず、電子回路を搭載した電気機器に多く使われている。自然界の現象はアナログだが、デジタルデータに変換して取り扱うと、コンピュータで処理を行うことができるので、AD変換器は数多く使われる。たとえばスマホで歩数を計測できるのは振動センサ(加速度ピックアップ)が検知したアナログ値をADCで変換して画面に表示している。 AD変換器の性能(分解能、ビット数)によってサンプリング周波数は決まる。電子部品であるAD変換器のメーカ(Analog Devices アナログ・デバイセズやTexas Instruments テキサス・インスツルメンツなどの半導体デバイスメーカ)の製品データブックにはナイキスト周波数が記載されている。電子回路の設計技術者は、信号周波数から適切なADコンバータを選定してエリアシングが起こらないように機器設計を行う。 1928年にハリー・ナイキストはサンプリングの再現限界について発表し、サンプリング定理(標本化定理)の元となったことが、この用語の由来。サンプリング周波数はオシロスコープ(もちろんデジタルオシロスコープ)ではサンプリングレートやサンプルレートと呼称され、ナイキスト周波数ということばは使われない。FFTアナライザではナイキスト周波数やナイキスト線図という用語は良く使われる。

ナイキスト線図(ないきすとせんず)

(nyquist diagram) 周波数応答関数(伝達関数)の実数部を横軸に、虚数部を縦軸にとり、周波数に関して描かれたものをナイキスト線図といい、主に制御系の安定性の判別に利用する。他にゲイン(利得)と位相で示したものにニコルス線図がある。(小野測器の「FFT解析に関する基礎用語集」より)

nite(ないと)

(National Institute of Technology and Evaluation)製品評価技術基盤機構の略称。同機構のロゴがNITEではなくniteなのでタイトルを小文字にした。正式名称ではなくniteやナイトと呼称されることが多い。日本電気計測器工業会が通常は略称のJEMIMA(ジェミマ)と呼ばれることが多いのと同じ。正式名称よりも略称を(業界)関係者は使いたがる。

内部発生歪み(ないぶはっせいひずみ)

スペクトラムアナライザ等の受信機において、周波数変換するためにミキサが使われる。このミキサに加えられる局部発振器の信号レベルが高過ぎると、この信号の2次高調波および3次高調波が発生することがある。これらの高調波を「内部発生歪み」といい、測定誤差の原因となる。

ナセル(なせる)

風車の駆動部分の名称。風力発電の装置で、風で回転する羽の後方にあり、風力発電装置の重要な部位。風力発電はeuで導入が進んでいるが、日本では遅れていた。ただし2020年には促進する方針が政府から発表されている。発電所の建設、保守には計測器が必須である。風力発電の新設は計測器の需要増に(規模は不明だが)貢献すると期待される。

7セグメントLED(ななせぐめんとえるいーでぃー)

(seven segment LED)アラビア数字の0~9を表示するために、7個のLEDを8の字の位置に配置した表示装置のこと。表示装置なので7セグメント・ディスプレイとも呼ばれる。マイクロコンピュータ(MPU/CPU)の普及で電卓が作られるようになると、数字を何桁も表するために、初期は真空管に白熱フィラメントを数個配置して発光させ、数字を表した。LEDを使うことによって、表示部が小型の部品になり、プリント基板に実装されて、現在のような小型のデジタル表示機器になった。数字だけではなくアルファベットも7つの表示箇所を上手に使って表現している。7セグメントLEDに数字を表示させるためのドライバICもあり、数字を表示させるためのソフトウェアやハードウェアは使い勝手が良くなっている。

ナノインデンテーション(なのいんでんてーしょん)

(nanoindentation) indentationは圧入、凹み。対象物を数nmからμmオーダで押し込んで、硬さや弾性率などの機械的特性を評価する分析機器(試験装置)をナノインデンターと呼ぶ。最大荷重印加時の押込み深さや以外に、計算によって硬度・ヤング率、塑性変形と弾性変形との仕事率などを求められるため、多くの物性を評価できる。メーカによって製品名はナノインデンテーションシステムやインデンテーションテスタ。ISO 14577で試験方法(ナノインデンテーション法)が規定されている。 メーカは海外のBRUKER(ブルカー)のナノ表面計測事業部やAnton Paar(アントンパール)がある。科学分析計を幅広くラインアップする島津製作所もつくっている。日本では国産の(株)エリオニクスのシェアが高いといわれている。東陽テクニカも以前からナノイメージングの製品群の1つとして取り扱っている(同社のナノイメージング部門は2022年から理化学計測器になった)。 ヤング率は引張試験の測定機でも計測することができる(参考記事の「繊維物性測定システム」)。

ns(なのせっく)

(nano second) 時間の単位「ナノ秒」の表記。n(ナノ)は10のマイナス9乗の接頭辞。0.000000001 秒に相当。秒は「セック」と発音(呼称)することが多い。オシロスコープや信号発生器などの計測器で設定や表示に良く出てくる。 参考用語:ms(ミリセック)、μs(マイクロセック)

nanoVNA(なのぶいえぬえー)

2020年頃からECサイトなどで販売され始めた小型RF測定器の1種(tinySAやnanoVNAなど)。マイクロコンピュータやFPGAなどで内部のアナログ回路を簡素化し、低価格(約1万円)で小型(ポケットサイズ)ながら高い性能を実現したネットワークアナライザ。表示画面2.8インチのエントリーモデル(最高周波数1.5GHz)から、最高周波数6.3GHzモデルまである(2023年6月現在)。メーカは従来のRF計測器メーカ(キーサイト・テクノロジーやローデ・シュワルツなど)ではなく、開発者も日本ではなく中国が多い。nano(10憶分の1の単位、非常に小さいことをあらわす表現)VNA(Vector Network Analyzer)というネーミング。つまり「大変小さなサイズのVNA」ということ。 nanoVNAの説明は「超小型のネットワークアナライザ」、「コンパクトでハンドヘルドなベクトルネットワークアナライザ」、「個人で入手可能になった低価格ネットワークアナライザ」などで、明確な(定量的な)定義は難しい。「nanoVNA系格安ネットアナの操作方法(コマンド体系)」などの表記が雑誌やネットに見られる。モデルや仕様、使い方などは解説があるが、そもそもnanoVNAとは何か、は(毎年のように進化しているので)解説が困難である。 nanoVNAは日本人の高橋知宏氏が始めたプロジェクトである。オープンソースのため海外に広がり、複数メーカが製品をリリースするようになった。高橋氏は2016年頃にオリジナルを発表したが、回路図やファームウェアを公開していたので、中国のハッカーが改良し製品化したといわれる。2019年には中国の通販サイトに登場している。現在はnanoVNA-H、nanoVNA-H4、LiteVNA、LibreVNAなどのモデルが日本で購入できるが(2023年6月現在)、各モデルは開発者が異なる(tinySAの設計者である中国のHugen氏も開発者の1人である)。 日本では2022年頃から趣味のアマチュア電子工作の月刊誌、トランジスタ技術(CQ出版社)にnanoVNAの記事が掲載されるようになった。高額な計測器だったネットワークアナライザが激安価格になったので、電子工作マニア、アマチュア無線愛好家などが購入して使うようになり、トランジスタ技術 2023年8月号ではnanoVNAだけで約26ページの特集が組まれている(マニアがnanoVNAで測定した評価結果のグラフや操作方法が掲載されている)。 5万円以下の格安オシロスコープ(ポケットサイズからポータブルまで)がリゴルやOWON(オウオン)などの中華系オシロスコープメーカがつくっているように、nanoVNA、tinySAなどの小型/格安RF測定器も中国を抜きには語れない。中国発の計測器は2000年以降に数が増え、5~10年位かけて製品の品質を安定させ、従来の計測器メーカと遜色ないラインアップに成長しつつある。Siglent Technologies(シグレント)は2023年7月のTECHNO-FRONTIERに、日本で初めて出展した。テクトロニクスやキーサイト・テクノロジーのミドルクラスのベンチトップモデルと遜色ない仕様の製品を、上記2社よりも安価でリリースしている。Good Will Instrument (GW Instek)(日本での販売はテクシオ・テクノロジー)やリゴルに次いで、OWONやSiglent Technologiesなどの中華系格安計測器の露出が2023年から加速している。 エントリーからミドルクラスのオシロスコープのように、今後は(個人ユースではなく企業で技術者が使う)格安RF測定器(当然、中華系)が発売される時代が近づいているかもしれない。ハンドヘルド・スペアナは中華系格安メーカが主流で、キーサイト・テクノロジーやローデ・シュワルツ、アンリツは上位の高額モデル(ベンチトップ)にラインアップをシフトする、という図式である。計測器メーカはハンドヘルドでも高性能(安価ではない)モデルをラインアップしているので(Streamlineなど)、現在は中華系計測器メーカの参入はあまりないが、Good WillがEMCに特化したスペアナ(GSP-9330など)でシェアを伸ばすなど、今後のRF測定器メーカの展開(勢力図)はわからない。

(なみ)

時間の経過と共に繰返されるパターン。一般的な波には、正弦波、方形波、矩形波、のこぎり波、三角波、ステップ波、パルス波、周期波、非周期波、同期波、非同期波などがある。(テクトロニクス「オシロスコープのすべて」(2017年4月発行)より)

NAND(なんど)

NAND型フラッシュメモリを略してNANDと呼称することがある。NANDは日本語では否定論理積といい、論理演算の1種。「論理積(AND)ではない(not)」という意味で、「Not AND」を略記したもの。 東亜エレクトロニクス 株式会社(フラッシュサポートグループカンパニー)の「書込みやプログラマに関する用語集」では以下の説明がある。NANDはFLASHメモリの一種。FLASHメモリはNAND型とNOR型に分けられるが、NAND型はNOR型と比較して回路規模が小さいこともあるため、安価に大容量化を行うことができる。また、データの書込みや消去の際の速度も高速であるという特徴もある。USBやFlashSSDなどに使用され、以前は フロッピーディスクを使用していたものからNAND型のFLASHメモリに変更することによって、サイズダウンを行うことも可能となった。 東亜エレクトロニクス フラッシュサポートグループカンパニーは安藤電気のROMライタAF-9700シリーズの製品を移管されて、現在も新製品を発売し続けている(国産ROMライタメーカ2社の内の1社)。同社にはFLASHプログラマという名称の製品があった。他社のROMライタでも「フラッシュプログラマ」という名称があるが、同社はフラッシュではなくFLASHという表記を好んで使っていることが上記の解説でわかる。一般にはNAND型フラッシュメモリなど、フラッシュという表記の方が多い。

NAND型フラッシュメモリ(なんどがたふらっしゅめもり)

(NAND flash memory) 半導体メモリの代表的な1つ。略して「NANDフラッシュ」や「NAND」と呼称され、SSD(Solid State Drive)に多く採用されている。もう1つの代表であるDRAMと比較されて語られることが多い。 フラッシュメモリは不揮発性メモリの代表で、NAND(ナンド)型とNOR(ノア)型がある。NANDはデジタル回路の論理演算で「Not AND(ANDでない)」のこと。シリコン基板上にP型やN形の半導体を作り込んで1ビットの回路になるので、DRAMよりも複雑な構造になるが、電源OFFしても記憶が保持される。用途によってDRAMと使い分けされる。PCの外部記憶装置などに使われるストレージの出荷台数は、2020年にSSDがHDD(Hard Disk Drive)を上回った。NAND型フラッシュメモリの需要が増えている所以である。 DRAMのデバイスメーカは韓国のSamsung(サムスン)とSK Hynix(ハイニックス)、米国のMicron(マイクロン)の3社で、寡占状態である。NAND型フラッシュメモリは、この3社に日本のKIOXIA(キオクシア、2017年に東芝の半導体メモリ事業が分社、フラッシュメモリの専業)、米国のWestern Digital(ウエスタンデジタル、HDDのトップメーカ、2015年にサンディスクを買収しメモリに参入)を加えた5社で寡占している。 Western Digitalは東芝の半導体製造拠点である四日市工場で生産を行っている。2021年8月にWestern Digitalによる東芝メモリホールディングス(現KIOXIA)との合併交渉が報じられたが、実現しなかった。半導体メーカが減る(寡占が進む)ことは、ユーザよりもメーカが市場を有利にリードできることになり、メーカとしては半導体メモリ市況の悪化による経営難を回避したいという思いが伺える(DRAMメーカの1社だった日本のエルピーダメモリは2012年に赤字から経営破綻しMicronに買収されている)。 東芝はメモリを分社したが、東芝ストレージ&デバイス株式会社は半導体デバイス(SiCなどのパワー半導体から無線、高周波ICまで)とストレージ(HDD)をラインアップしている。つまり東芝はメモリ以外の半導体をまだ抱えているが、この事業も東芝の経営再建で切り離される可能性がゼロではない。東芝の高周波ICは防衛関係にも使われている。東芝から分離したことで小規模になり外国資本(たとえば中国など)に買収されると、(日本だけでなく米国も含めた)防衛上のリスク(先端技術の流失)が懸念される。2023年4月現在、国内ファンド(日本産業パートナーズ、JIP)による東芝の経営再建が実現する方向で進んでいる。 パナソニックは2020年に、半導体事業(100%子会社のパナソニック セミコンダクターソリューションズ)を台湾Winbond Electronics傘下のNuvoton Technology(ヌヴォトン テクノロジー)へ売却した。売却が発表されたとき、先端技術に詳しい識者は「パナソニックの半導体は5G(第五世代移動通信システム)に使われているものがある。5Gは単に通信の話ではなく防衛能力を左右する。そんな技術が中華系に流失したら日米の安全保障に関わる。経済産業省などの政府関係者は認識しているのか?」と発言したが遅かった。正鵠を射た発言だったことは、その後米国が半導体サプライチェーンから中国を締め出す方策を鮮明にしていることからも明らかである。 2023年10月、「Western Digitalが半導体メモリ事業を分離し、日本のKIOXIAと経営統合する方向で調整している」ことが報じられた。NAND型フラッシュメモリの世界シェアはサムスン電子34%、SKハイニックス19%、KIOXIA19%、Western Digital13%(2022年金額比)のため、統合によってKIOXIAは2位(32%相当)になる。スマホなどの販売不振で半導体メモリ市況が悪化していることもあるが、日米で半導体の安定供給を確保する意図が感じられる。

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