エリアシング
(aliasing)
アナログ値(連続した信号)である物理現象を測定した後で、コンピュータ処理に適したデジタル値(離散データ)にする手法にサンプリング(標本化)があり、計測器を含む多くのデジタル電子機器で使われている。サンプリング周波数(fs)(※)は測定する信号の周波数(fm)の2倍以上である必要がある(サンプリング定理)。つまりfs>fm x 2(fsはfmの2倍以上)。fs/2(サンプリング周波数の1/2の周波数)よりも高い周波数成分は周波数fs/2を中心にして、低周波側に折り返したように見える。この現象をエリアシングという。エリアシングは「折り返し雑音(folding noise)」や「エリアシングノイズ」とも呼ばれる(表記は「エイリアシング」もある)。つまりサンプリング周波数が低いと、ノイズによって正確な結果が得られない(サンプリングで得られたデータは正しくない)。
サンプリングとは連続して変化している値を一定間隔(時間)で間引いて、デジタルデータをつくること。間引く間隔が長い(ゆっくりした間隔でサンプリングする=サンプリング周波数が低い)と、急な変化には対応できないので、できたデジタルデータは不正確で、元のアナログデータ(測定信号)を正確に反映できない。元の信号が急な変化をしているのは高い周波数成分を含んでいるからで、その周波数の2倍の周波数でサンプリングする、という目安がサンプリング定理である。
エリアシングはFFTアナライザなどのFFT解析で使われる用語だが、オシロスコープ(もちろんデジタルオシロスコープ)の使い方として、測定したい信号の周波数成分からエリアシングを考慮してサンプリングレートを設定することがあげられる。エリアシングを防止するには、fs/2の周波数以上をカットするLPF(Low Pass Filter、低域通過フィルタ)を使用する。 そのため、このLPFをアンチエリアシング・フィルタという(LPFについては用語「フィルタ」に図解がある)。fs/2は「ナイキスト周波数」と呼ばれる。
実際の測定信号にはどれだけ高い周波数成分が含まれているかわからない。そこでLPFによって高い周波数をカットすれば、最大周波数からサンプリング周波数を決められるのでエリアシングを防止できる、ということである。
(※)周波数は英語のfrequencyから「f」で略記される。何の周波数かを区別するためfの後に略記を続ける。サンプリング周波数は、英語samplingのsをとって「fs」と表記している(あくまで一例であり、必ずfsでないといけないというわけではない)。数学(物理)では、このような表記を良く使う。fsでなくてf(s)でも良さそうだが、f(s)と書かれたら「sという物理量によって変化するfという物理量」という意味で、関数を表記する書き方、と数学上の決まり事になっている。f(s)のsは関数fの引数(いんすう)と呼ばれる。