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- Termoview(さーもびゅー)
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チノーのサーモグラフィ(熱画像計測装置)で、体表面温度測定モデルの通称。同社はサーモグラフィCPA-L4シリーズをベースにした体表面温度測定に特化した専用機種Thermoview CPA-L25TVを、新型コロナウイルスが蔓延する2020年4月に発売した。カタカナ表記は「サーモヴュー」である。「Thermo Viewer( さーもびゅあ)」だと、一般的にサーモグラフィ(2次元の温度分布を色で表示する、非接触の温度測定器)の別称である。
- tinySA(たいにーえすえー)
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2020年頃からネット通販などで流行の小型RF測定器の1種(tinySAやnanoVNAなど)。tinySAは手のひらサイズで価格1万円程度という、超小型・激安スペクトラムアナライザ。モデルにも寄るがおおよその仕様は、測定周波数範囲100k~960MHz、分解能帯域幅3k~600kHz、サイズは約6×10cm、厚み約20mmでバッテリ駆動する。tiny(とても小さい、smallよりもさらに小さい)SA(Spectrum Analyzer)というネーミング。 tinySAは「オランダの技術者Erik Kaashoek氏が設計し、中国のHugen氏が製造した小型の簡易スペアナ」といわれ、ネット上にはtinySA Basic(画面サイズ2.8インチ)やtinySA Ultra(画面サイズ4インチ)などの製品が紹介されている。購入経路によっては純正でない粗悪品もあるらしい(ECサイトでの購入が主流のため仕方がない)。nanoVNAと比べると種類(モデル数)は少ない(2023年6月現在)。 アマチュア無線の専門誌を発行するなど、趣味の電子工作ユーザに人気のCQ出版社は、2021年1月発売の「RFワールド No.53」や2023年7月発売の「トランジスタ技術 8月号」などに、マニアがtinySAを性能評価した記事を掲載している。 2010年代後半にキーサイト・テクノロジーやテクトロニクスなどが従来のベンチトップのRF測定器ではなくUSBタイプの小型モデルの発売を始めた(キーサイトのStreamlineなどのUSB計測器)。電子部品の小型化、性能向上、コストダウン、USB規格の普及など、技術の進歩によっていまやUSB計測器は1つのジャンル(カテゴリー)になろうとしている。手のひらサイズのポケット計測器もその流れの中で、アマチュア電子工作ユーザに広がっている。オシロスコープはポケットサイズなら約5000円、ハンディ(テスタ・サイズ)は1万円以内、タブレット型(2ch)は2万円以内で数社が販売している(いずれも従来の計測器メーカではない)。ベンチトップでもリゴルやOWON(オウオン)などの中華系オシロスコープメーカは50M~100MHz、4chで5万円以内のモデルをつくっている。前述のトランジスタ技術(2023年8月号)のタイトルは「研究!1万円級ポケット測定器」である。 個人でオシロスコープを持っている(家にオシロを保有する)技術者はまれではないが、スペクトラムアナライザまで持っているとなると数が限られる(ネットワークアナライザはほとんどいない)。tinySAはアマチュア電子工作を趣味にするマニアの夢だった「家でスペアナ」を実現した。nanoVNAは「家でネットアナ」を可能にした。
- Typhoon HIL(たいふーんひる)
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パワーエレクトロニクス関連の大手メーカであるMywayプラスが販売しているHILS。汎用HILSは多くのメーカがつくっているが、パワエレに特化した(パワエレ技術者向けの)HILS(たとえば自動車向けのHILSはエー・アンド・デイやdSPACEがつくっている)。 Typhoon HILは米国のHILS専業メーカの会社名だが、Mywayプラスは製品名にしている。2017年頃に日本の販売店を探していたTyphoon HIL社は、東京都立大学の清水先生の紹介でMywayプラスと契約した。同社がパワエレ用の回路シミュレータ PSIM(ピーシム)で大きな実績があったことが紹介の背景にあると推測される。同社が取り扱いを開始した2017年と、数年の販売実績を経た2つの展示会取材(以下)を比較すると面白い。 Mywayプラスの事業は大きく3つあり、開発ツール(PSIMや、モデルベース開発のツールであるTyphoon HILなど)、試験用電源・バッテリ充放電試験システム(電力回生型双方向電源のAPL2やpCUBEなど)、モータやインバータの評価システム(インバータエミュレータ pMOTION、リアクトル評価装置、モータエミュレータ)である。
- tance(たんす)
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(-tance) 導体に電気が流れる(電流)とき、電圧と抵抗の関係を示したのがオームの法則だが、ここで定義している抵抗は直流である。現実世界では、交流が電子部品に流れる(交流電圧が印加される)と周波数の値によって様々な電磁気現象が起こり、静電容量や誘導係数などの値が定義されている。これらは英語では-tance(〇〇タンス)と命名され、以下の9つがある。 名称 / 記号 / 単位(読み方) / 説明(日本語での呼称など) 1. レジスタンス(registance) / R / Ω(オーム) / 電気抵抗 2. キャパシタンス(capacitance) / C / F (ファラッド) / 静電容量 3. インダクタンス(inductance) / L / H(ヘンリー) / 誘導係数 4. インピーダンス(impedance) / Z / Ω(オーム) / 複素抵抗 5. コンダクタンス(conductance) / G / S(ジーメンス、大文字のSで、小文字のsはsecond、秒である) / 電気伝導度(No.1の逆数) 6. アドミッタンス(admittance) / Y / S(ジーメンス) / 複素伝導度(No.4の逆数。No.5を複素数に拡張した値) 7. リアクタンス(reactance) / X / Ω(オーム) / インピーダンスの虚数部分の名称(No.2とNo.3の総称) 8. サセプタンス(susceptance) / B / S(ジーメンス) / アドミッタンスの虚数部分の名称 9. イミッタンス(immittance) / / / インピーダンスやアドミッタンスの虚数部分の名称(No.7とNo.8の総称) No.1~3はLCRと呼称される受動素子(抵抗器
- tanδ(たんでるた)
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誘電体内の電気エネルギー損失の度合いを示す値。一般には電子部品のコンデンサの損失の指標。コンデンサ内部で消費されるエネルギーを示す特性の一つで、ある周波数の正弦波電圧で生じる電力損失を無効電力で割り、計算する。そのため誘電損失とも呼ばれ、コンデンサの性能を表す重要な指標である。 定義(数学的な計算)がタンジェント・デルタのため“タンデルタ”と呼称される。正式には誘電正接や誘電体損(DissipationFactor/LossTangent)と呼ばれ、Dissipation(散逸)を略したDで表記されることが多い。コンデンサなどの電子部品の値を測定するLCRメータでも「D(損失係数:エネルギー散逸の多さ)で表示されている(以下の参考記事の表1)。 誘電体損の測定器をtanδやタンデルタの通称で呼んでいることも多い。「誘電正接試験器」や「タンジェントデルタ試験器」という表現もある。 ・ブリッジなどの回路素子測定器や、材料測定器を1980年代まで注力していた安藤電気はtanδ測定器をつくっていた。 ・総研電気株式会社は耐圧試験器や部分放電/インパルスの試験器をつくる電子計測器メーカだが、1976年(創業3年目)に「低圧コンデンサのタンデルタ測定器DAC-ASC-1(現DAC-ASC-5)」を開発したtanδの老舗である。同社HPのトップページには「tanδ試験とは?」という解説がある。このようにtanδは計測器の名称に使用される。 ・リレー試験器で有名な双興電機製作所(SOUKOU)は高圧機器全般の検査機器をつくっているが、「高圧機器診断」のカテゴリーに高圧機器(PT・CT・トランスなど)の診断をtanδと漏れ電流で行なうモデルとして「タンデルチェッカー TA-1020」がある。製品のサブタイトルは「高圧機器のタンデル値の測定器」である。ここではtanδを「タンデル」と呼称している。 電子部品メーカの説明では、「tanδとは、コンデンサの損失角の正接で、理想コンデンサに対する出力の位相差を示す特性。表記はtanδのほかに、D.F.、誘電正接、タンデルタ、タンデルなどがある」。そのほか、「材料が変形する際に吸収するエネルギーを示す損失係数」や「絶縁物の吸湿や汚損、空隙などの絶縁劣化の程度を判定する値」という説明もあり、誘電体を使用するアプリケーションによってtanδは様々な評価に使われている。
- True RMS(つるーあーるえむえす)
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「真の実効値」の略記。RMS(Root Mean Square)は実効値。デジタルマルチメータ(DMM)などで電圧測定する際に、交流信号の実効値を算出する方式には2つある。「平均値整流方式(MEAN)」は信号を正弦波として計算する。計測器に特に記載がない場合は、この方式。「真の実効値方式(True RMS)」は高速でデジタルサンプリングされたデータから理論的な数値計算をする。信号が綺麗な正弦波でないときや、ノイズがのっているときは後者の方式が適している。インバータなどの普及によってTrue RMS方式の計測器が増えたが、平均値整流方式のモデルよりも高額になる傾向がある。また、モデルによって性能が違うためどれだけ正確に測定できるかは注意がいる。 計測器情報: 品名に「真の実効値」が付く製品の例 電圧・電流測定器で品名にtrueが付く製品の例
- Trueform(つるーふぉーむ)
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キーサイト・テクノロジーのベンチトップのFG/AWG(Function Generator/Arbitrary Waveform Generator)のシリーズ名(通称)。同社はベンチトップDMMにTruevolt(ツルーボルト)というシリーズがある(True RMS、「真の実効値」が語源と推定)。waveform(波形)から一部をとり波形発生器をTrueformと命名したと思われる。形名は335xxA/B、336xxAで、33509A~33522B、33611A~33622Aの12モデルがある(2023年11月同社ホームページより)。発振周波数や出力チャンネル数、機能によってモデルが異なる。品名はすべて「波形発生器」である。 現在のFGはAWG機能を備え、メーカ各社の品名もファンクション/任意発生器のようなものが増えたが、両者がはっきり分かれていた時代から説明する。2004年のFGの代表モデルとしては、アジレント・テクノロジー(現キーサイト・テクノロジー)の33120A、33250A、エヌエフ回路設計ブロック(NF回路)のWF194xAシリーズなどがあった。キーサイト・テクノロジーは世界的にトップシェアだが、日本では(自動車市場など、電気よりも機械系を中心に)NF回路のシェアが高い。テクトロニクスは(AWGのラインアップは豊富だが)、FGはAFG310/AFG320任意波形ファンクション・ゼネレータだけだった。当時のFGやDMMの表示部は7セグメントLEDが並んだ数値だけの表示だった。 2005年7月にテクトロニクスはAFG3000シリーズを発表した。この製品は従来とは違い表示パネルが大きい多機能表示で、発振波形などを表示した。当時、テクトロニクスのFGの事業部は日本テクトロニクス(東京の品川)にあり、日本で開発を行っていた。それまでは発振周波数を数字で表示するだけだったFGが、オシロスコープのように波形表示した。NF回路の従来品、WF194xAは黒色でサイズ(高さ):約133mm、質量:約2.6kgだが、新製品WF197xAシリーズ(白と青色、高さ:約88mm、質量:約2.1kg)が2007年2月に発売された。WF197xAは従来品より小型・軽量で、もちろんディスプレイには(AFG3000同様に)波形表示をした。キーサイト・テクノロジーも大きな画面に波形表示する新製品FGを発売し(現在のTrueformにつながる初号器)、ベンチトップFGはディスプレイに波形表示が当たり前になった。テクトロニクスはAFG3000以降にラインアップを増やし、現在はAFG31000Aシリーズが現役モデルである(2023年11月)。2000年代後半にFGは表示部を中心に世代交代し、現在に続いている。AFG3000に始まった表示の仕方は他の機種群にも広がり、現在のベンチトップDMMは数字だけでなく多彩な表示をするようになった。 現在のキーサイト・テクノロジーの形名は頭が英字の大文字1字で、その後に数字4(または5)文字が多いが(以下の形名の記事が詳しい)、FGは33120Aの時代から33xxxAを踏襲して、新製品を発売している。同社の2010年代以降の新製品はN5166BやP9370Aなど原則、形名は英文字で始まるのに、FGは従来の数字5文字の形名が踏襲されている(その理由は不明だが、33xxxAはxxxの数字にまだ十分に余裕があるのかもしれない)。 計測器情報:キーサイト・テクノロジーのFGの製品例
- Truevolt(つるーぼると)
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キーサイト・テクノロジーのベンチトップのデジタルマルチメータ(DMM)の最近のシリーズ名。34460A以降のモデルが相当する。34460A、36641A、34468A、34470AがTruvoltシリーズ。上記の4モデルは汎用タイプ(5.5桁と6.5桁)で、上に8.5桁の高精度DMM3458Aがあり、下には5.5桁の安価モデル34450A(OLEDディスプレイ)などがある。またその他に34420Aナノボルト/マイクロ・オーム・メータがある。(2022年5月現在のラインアップ) Truevoltとは、「True RMS(真の実効値)に対応している」、ということと思われるが、メーカの命名する通称やシリーズ名の由来は公開されないので、語源は定かではない。 同社の34401Aは長らくベンチトップのDMMの代名詞で、後継の34461Aに引き継がれている。高精度(8桁表示)から汎用機種までキーサイト・テクノロジーはベンチトップDMMのトップベンダーである。校正用の標準器で有名なフルークは、ハンドヘルドのDMMではトップメーカだが、最近のキーサイト・テクノロジーは安価な製品にも注力していいて、ハンドヘルドDMMもラインアップを増やしている。逆にフルーク(フルーク・キャリブレーション)は高精度DMMのモデルを更新してキーサイト・テクノロジーに対抗している。 計測器情報:キーサイト・テクノロジーのDMMの製品例
- Tier1(てぃあわん)
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メーカに直接納入する1次サプライヤのこと。Tier1に納品するメーカをTier2と呼ぶ。多くの部品を使う業界のサプライチェーンを示す用語だが、自動車産業で使われることが多い。
- TIA方式(てぃーあいえーほうしき)
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電流を電圧に変換する方式の1つ。Trance Impedance Amplifier(変換・抵抗・アンプ)の略記。入力電流を抵抗(インピーダンス)倍の電圧に変換する増幅器。O/E変換器に使われるPD(フォトダイオード)は電流出力型の光センサである。その出力を取り出すのにTIA回路が最も良く使用される。電流-電圧変換方式としては、デジタルマルチメータなどに使われている抵抗方式が一般的である。 参考用語:シャント抵抗、バードン電圧
- T&M(てぃーあんどえむ)
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Test&Measurementの略。欧米で計測器を表現するときに使われる。国内計測器メーカはあまり使わない。 欧米では計測器のことをtester(テスタ)やtest&measurementといっている。1990年代に世界的な総合計測器メーカのHP(Hewlett-Packard、ヒューレット パッカード、現キーサイト・テクノロジー)は計測器事業部門をTMO(Test&Measurement Organization)と呼称していた。日本の大手計測器メーカである横河電機も計測器部門(現横河計測)をT&M事業部といっていた時代があるが、現在はT&Mという表現はしていない(※)。この横河電機の例以外には、当時の国内計測器メーカはT&Mという用語は使っていない。 HPのTMOや横河電機のT&Mに触発されて、「計測はもう古い、T&Mが最先端だ」と解釈したあるレンタル会社上層部は、自社の計測器部門の組織名称を計測からT&Mに変更した。長年、計測畑にいた人はそんな部署名は恥ずかしいので、顔をしかめて「計測」が良い、と反論したが、新しもの好きの担当役員は譲らなかった。地味でニッチな計測に、ハイカラな部署名をつけて少しでも活性化しようという役員の配慮だったかもしれないが、実務者の心配は的中した。T&M部門の実務者は国内の各計測器メーカと名刺交換すると、かならず新しい部署名の由来を問われた。「T&Mとは何ですか? P&Gと近いですか?コンシューマ製品を扱い始めたのですか?」と聞かれて大変閉口した。それくらい当時の国内計測器メーカには「T&M」は奇異な、馴染みのないことばだった(P&Gとは、洗剤などの家庭の消耗品のブランドの、あのP&Gのことである)。 30年前に海外の大手計測器メーカが使い、それと近い関係にあった国内大手計測器メーカが後で使ったが、この2社以外にこの表現は国内では普及しなかった。計測器の総合展示会にT&Mなる名称は無い。Measureは計測の意味で使われているが(INTERMEASURE:計量計測展など)、隔年に大阪で開催される電気計測器の展示会は「計測展 」である。つまり国内では「計測」をT&Mと表現することはほぼ無い。国内の計測畑の人々は「自分たちは計測だ」と思っていて、T&Mなどどいう変な略称は使わない。現在では一部の国内計測器メーカが使っている例が少なからずあるが、日本の計測器業界で通用する(認知された)用語とは思えない。ただし、現在でも海外メーカでは普通に「Test&Measurement」は通用する単語であるため、まちがいなく計測関連の用語である。 アンリツや日置電機、菊水電子工業などの国内の電気計測器メーカがつくる業界団体である一般社団法人日本電気計測器工業会は、Japan Electric Measuring Instruments Manufacturers' Associationの頭文字からJEMIMA(ジェミマ)と呼称している。計測器を「Measuring Instruments」という英語で表記し、Test&Measurementなどという英語は使っていない。T&Mが日本の計測器業界で一般的ではないことを示す好例といえる。 そういう事情なので、国産の計測器関連の会社でも社名にT&M(またはTM)とあったら、外資系だと思った方が無難である。日本の計測器関係者が会社名で好むのは「計測」や「技術」というワードである。海外計測器メーカがtechnologyを社名に付けるのと同じく、日本でも「技術」は良く使われる。ただしT&Mはほぼ使わない。 2001年頃に設立したT&Mコーポレーション株式会社は、中国製の計測器の輸入商社である(参考:中華系オシロスコープ)。科学・産業機器、分析・計測・試験装置のメーカ兼商社であるヤマト科学が資本参加しているが、T&Mコーポレーションは中国人がつくった会社である。中華系でも計測器はT&Mということになる。世界的にT&Mは通用している(日本以外では)、ことが感じられる事例といえる。 一般にT&MというとTime and Material(実費精算契約)のことで、作業の契約で多く使われる方式。建設や製品開発などのプロジェクトで使われている。移動体通信関連の用語でTM(Transpositional Modulation、移調変調)という技術がある。T&MではなくTMである。電子機器の開発や修理をしているTM Solutions株式会社はTM:Theoretical Methodology(論理的手法)によるSolutions(ソリューション)を社名にした。TMはこのように多くの意味の略語である。 (※)横河電機の電気計測器を継承した横河計測株式会社のホームページでは、一部の製品ページに「Test&Measurement」の表示がある。
- TSMC(てぃーえすえむしー)
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Taiwan Semiconductor Manufacturing Company, Ltd.の略称。世界最大の半導体受託製造企業(ファウンドリ)。1987年に設立された世界初の半導体専業ファウンドリ。単なる半導体メーカの下請けではなく、最先端の製造技術を持ち、半導体メーカが設計した最先端のデバイスを製造できる世界No.1企業。インテルなどの世界の名だたるデバイスメーカが製造を委託している。アメリカのバイデン政権は半導体サプライチェーン構築のため、米国アリゾナ州フェニックスにTSMCの工場(12インチウェーハ)を建設することを2020年に発表した。日本でも九州(熊本県)への誘致に成功し、2024年には工場が稼働予定。
- Tx(てぃーえっくす)
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有線・無線通信で送信データのこと。Transmission dataの略記。送信機はtransmitter(トランスミッタ)と呼ばれ、小文字のxはデータの意味。送信機自体をTxと表記している例もある。Txと対になる受信データはRx(Received dataの略記)と記載される。Tx同様に受信機をRxと表記することもある。
- THB(てぃーえっちびー)
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(Temperature Humidity Bias) 日本語では「高温高湿バイアス試験」。英語のhigh temperature & humidity bias testを略してTHBと称している。半導体デバイスや電子部品の耐久性を評価する試験。高温・高湿に加えて、電源電圧を印加してデバイスを駆動させると、金属部分の腐食が加速され、絶縁性能が低下していく。半導体の絶縁試験の1種といえる。別名、高電圧マイグレーション試験、マイグレーション試験、イオンマイグレーション試験とも呼ばれる。イオンマイグレーションとは、金属や半導体などの固体材料中に含まれるイオンが電極間を移動することで、プリント配線板などでこの現象が起こると、塗布している絶縁材が劣化したことを意味し、短絡が起こる。つまり絶縁性能の劣化をイオンマイグレーション現象で確認するので、この名称がある。 THBは高温高湿試験の1種だが、温湿度サイクル試験や高加速寿命試験(HAST)と共に耐湿性試験(湿度を制御する環境試験)にも分類される。 電圧印加に重点を置いた試験にV-t試験があり、パワー半導体の試験手法として、パワーサイクル試験と共に普及している。
- ToF(てぃーおーえふ)
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(Time of Flight) time of flightとは「飛行時間」。レーザーやLED(発光ダイオード)から対象物に光を当て、反射光を測定して対象物との距離を計算すること。このToFの原理を使ったセンサは生産ラインなどに導入されている。そのためToFセンサ(ToF測距センサ)と呼ばれる。ToFセンサを内蔵したカメラは被写体の奥行情報があるので、顔認証システムに応用されている。 ToFセンサの例(電子部品)としては、STマイクロエレクトロニクスのVL53L3CXは寸法が約4x2x1mmと小型のため、カメラやラズパイと組み合わせてドローンやロボットなどに搭載可能である。 面で発行するレーザー(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser、垂直共振器型面発光レーザー)で対象物を照らすことで、距離情報を得るカメラをToFカメラと呼ぶ。ToFカメラの出現によって、従来のカメラはRGBカメラ(太陽光などが対象物に当たった光がイメージセンサに入り、RGBの色情報に変換される)と呼ばれるようになっている。 自動車の自動運転の要素技術として注目され、最近はロボットにも導入されているLiDAR(ライダー)はToFの例の1つである。LiDAR普及のための新しい半導体レーザーの研究が京都大学で進んでいる(以下のテクトロニクス・フォーラムが詳しい)
- TC(てぃーしー)
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(Thermo Couple) 直訳すると「温度の対」だが、日本語では「熱電対」と呼ばれている。温度センサの代表である。通常は「熱電対」と表すが、略記としてTCは良く表記される。構造は、2種類の金属を使い閉回路をつくる(2本の金属の線を2か所でつないでループにする)。つないだ箇所(接点)どうしに温度差があると電流が流れる(熱起電力が発生する)。電圧を測定すると温度を知ることができるため、温度センサとして利用される。TCを熱電対、RTDを測温抵抗体という日本語にしたのにはセンスが感じられる(単純に直訳しないで意味が伝わる熟語になっている)。
- TCXO(てぃーしーえっくすおー)
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(Temperature Compensated Xtal Oscillator)温度補償型水晶発振器。外気温を自分でセンシングして、温度によって周波数を調整して出力する。
- TCP/IP(てぃーしーぴーあいぴー)
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(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)インターネットで使われる、TCPとIPの2つで構成される通信プロトコル。TCPは伝送制御プロトコルで送ったデータが相手に届いたか、都度確認しながら行う(HTTPのリクエストとレスポンス)、IPはネットワークのプロトコルでIPアドレスにデータを運ぶ。OSI参照モデルの4階層(アプリケーション層、トランスポート層、ネットワーク層、リンク層)で仕様を規定している。
- TDR(てぃーでぃーあーる)
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(Time Domain Reflectometer、Time Domain Reflectometry) 測定対象(DUT)の片端からパルス信号を入力し、DUTの各場所(位置)からの微弱な反射信号を時間軸で測定する手法。手法として「TDR法」などの表現があるが、TDR手法を利用した一連の測定器を指すことばでもある。和訳:時間領域反射率測定、時間軸反射法。 横軸を時間、縦軸を反射信号のパワーにすると、横軸は距離となり、入射端からのDUTの位置の状態を波形(グラフ)で観測できる。 OTDR(光ファイバアナライザや光パルス試験器)が有名だが、アプリケーションによって以下の2種類がある。 応用1. ケーブルの破断点やコネクタなどの接合状態の確認をする。光ファイバの時はOTDR(Optical TDR)という。TDRは電気の場合の名称で、欠陥の位置(fault location)を特定するものという「フォールトロケータ(fault locator)」や「ロケータ」、 「ケーブル障害位置測定器」などの名称、品名の測定器がある。ロケータは1980年代には安藤電気やテクトロニクスがラインアップしていたが、現在は大手計測器メーカはつくっていない。海外製のハンドヘルドモデルを株式会社グッドマンが取り扱っている。現在、計測器でTDRといえばグッドマンが有名である(筆頭で思い浮かぶ)。 応用2. サンプリングオシロスコープの測定ユニット。伝送路の特性インピーダンスの測定・評価には主にネットワークアナライザが使われるが、オシロスコープとTDRユニットの組み合わせで、時間領域から測定する手法がある。 計測器ではなく、一般にはTDRとえば東京ディズニーランドの略記である。
- TDSシリーズ(てぃーでぃーえすしりーず)
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(TDS series) 電気計測器の世界でTDSといえばTektronix(テクトロニクス)社のデジタルオシロスコープ(オシロ)で、世界市場でシェアNo.1だった機種群のこと。1999年に発売されたTDS3000シリーズは、国産計測器メーカとして後発でオシロ市場に参入した横河電機(現横河計測 )のDLシリーズ(DL1500/1600/1700など)と国内市場を二分した。TDSシリーズとDLシリーズは設計思想がまったく違い、両社にそれぞれファンがいた。TDS3000は電気・電子技術者に幅広く受け入れられた汎用オシロスコープ(MHz帯域)の王道モデルだが、メモリは多くなく、増やせないことが欠点だった。国内シェアはTDSシリーズがNo.1、DLシリーズがそれを猛追するNo.2と推定される(横河レンタ・リースの計測器有料トレーニングは実機としてTDS(MSO)シリーズとDL(DLM)シリーズを選択できるが、その比率からの推定)。 TDS3000シリーズはTDS3000B、TDS3000Cとエンハンスド(モデルチェンジ)してメモリも増えて、DSOやMSOが主流になった時代も延命し、2019年に3シリーズMDOが発売されるまで販売された(つまり20年間、汎用オシロスコープの代表器だった)。特にDPO3000シリーズが登場する2000年代まではTDS3000はデファクト・スタンダードといえる。TDS3000より安価なローエンドモデルにTDS1000/TDS2000シリーズがあり、安価なエントリークラス(入門器)として学校やメーカの教育機材として使われたが、現在はTBS1000/2000などがあり、TDSシリーズは終焉した。 2000年頃に同社はTDS7000シリーズ(周波数帯域4GHz)、TDS6000シリーズ(周波数帯域6GHz)のラインアップがあった。2005年にキーサイト・テクノロジーが54855A(周波数帯域6GHz)を発売し、高速オシロスコープという機種群を開発すると、テクトロニクスはすぐに同等製品を発表した。周波数帯域を伸ばす競争が始まり、TDS7704B(7GHz)やTDS6154C(15GHz)が発表された。2006年にはDPO72004シリーズ(20GHz)がリリースされ、広帯域オシロスコープのTDSシリーズはTDS3000シリーズよりも早く終焉した。 テクトロニクスのTDSの語源はTektronix Digital Scopeの略という説があるが定かではない。 「TDSシリーズ」ではなく、略記のTDSは、計測関連では以下がある。 1. ひずみ測定メーカの株式会社東京測器研究所のデータロガーの形名(TDS-150/540など)。 計測器情報: 東京測器研究所のTDS-xxの製品例 2. 東京電力系のインフラ設備・エンジニアリング企業の東京電設サービス株式会社の略記は「TDS」である。 3. TDS(Total Dissolved Solids、総溶解固形物)は、水中に含まれる無機塩類(カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムなど)と水に溶解する有機物の濃度の総計のこと。数値が低いほど不純物が少ないので、TDS値は水質指標の基準の1つ。水の中に溶けている電解質の総濃度を調べる水質計(科学分析機器)をTDSメータと呼称する。原理は水中の電気伝導度を測定し、係数をかけた値を便宜的にppmに換算して濃度として表示する。機器(水質計)の名称は、ポケットテスタやポケットメータが多い。つまり小型の可搬型で、屋外で簡便に簡易水質検査をすることが主である。ラボ(実験室)で試料を分析するベンチトップの分析機器ではなく、フィールドユースの分析計である。電気伝導度など、電気の物理量を測定するので、いわゆる電気計測器と思われがちだが、主要な計測器メーカはつくっていない。そのため、計測器でTDSというとテクトロのオシロスコープがまず思い浮かび、TDSメータは出てこない。 輸入商社の株式会社エムケー・サイエンティフィックは、防水ポケット型の「導電率/TDS/温度計(EC59 PROなど)」を取り扱っている。「導電率(EC)、TDS、温度の3 in 1テスタ、生産者のためのオールインワンソリューション」、「IP67適合で本体を水に落としても、問題が起きない構造」とPRしている。外観はペンシル型でポケットに入れて持ち運べるサイズ、重量である。 参考記事: 東亜ディーケーケーのポータブルマルチ水質計