計測関連用語集

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位相スペクトル(いそうすぺくとる)

(Phase Spectrum)周波数の関数としての位相表示には主として、1チャンネルの位相スペクトル、2チャンネル間の位相差の2種類がある。(小野測器の「FFT解析に関する基礎用語集」より。詳しい数式は小野測器のHP参照。)

インパルス応答(いんぱるすおうとう)

(impulse response) 数学・物理の世界で、解析関連の用語。特にラプラス変換の1手法であるFFT解析が、電気の世界(計測器)では使われる。入力と出力があるものをシステムや系という。「入力がインパルスの時のシステムの出力」をインパルス応答と呼ぶ。インパルスを与えたときのシステムの反応(応答、出力)という意味。システムの入力と出力の関係を示すのが伝達関数なので、インパルス応答とは「入力がインパルスの時の伝達関数」ともいえる。 ここでいうインパルスはインパルスノイズシュミレータなどの計測器から発生するノイズ(大きな電圧値でパルス幅が短時間の信号)ではなく、「無限小の時間で無限大の大きさがあるパルス」という理論上の概念である。インパルス応答は時間領域の伝達関数(系の入出力関係)で、(フーリエ変換で求められる)周波数領域の周波数応答と対になっている。 FFTアナライザで有名な国産計測器メーカ、小野測器の「FFT解析に関する基礎用語集」では以下の説明がある。 線形系に単位インパルスδ(t)を加えたときの系の応答h(t)をインパルスレス応答という。インパルス応答は系の特性を時間領域で表現したもので、これに対し、周波数領域で表現したものが周波数応答関数であるといえる。系のインパルス応答がわかっていれば、その系にx(t)が入力されたときの出力y(t)は、畳み込みの演算によって求めることができる。小野測器のFFTアナライザでは、周波数応答関数を逆フーリエ変換してインパルス応答を求めている。別名:インパルスレスポンス。

インピーダンス測定器(いんぴーだんすそくていき)

(impedance measuring instrument) 交流インピーダンスの測定器を指していることが多い。 1. 回路素子測定器 1)LCRメータ、ブリッジ、Qメータ、Cメータなど。この内、現在はLCRメータが元も使われている。L(コイル)、C(コンデンサ)、R(抵抗器)という素子(電子部品)の値を測定する。メーカはキーサイト・テクノロジーと日置電機のラインアップが豊富。形状はベンチトップ(またはポータブル)が多く、周波数が固定のものと可変のモデルがある(100Hz~1MHz)。ハンドヘルドのモデルもある(三和電気計器、LCR700など)。 2)インピーダンスアナライザ。周波数を掃引(スイープ)して、L、C、Rの値を求め、グラフ表示する機能がある。周波数が高いモデルを中心にキーサイト・テクノロジーが世界的なデファクトだったが、最近は日置電機が日本ではシェアを伸ばしている。同社の3570インピーダンスアナライザなどは2つのモード(LCR/ANALYZER)があり、LCRメータにもなる。LCRメータとインピーダンスアナライザは似た製品なので、日置が両者を1台にしたのはリーズナブルである。 2.回路素子測定器でない物の代表例 1)FRA(周波数応答アナライザ)。電池、生体、腐食などの電気化学の分野で周波数特性を測定する。基本的にはインピーダンスアナライザと同等の機能がある。FRAはエヌエフ回路設計ブロックが有名でラインアップが多い。そのため同社は古くからLCRメータも(モデルは少ないが)継続してラインアップしている。最近はFRAのシリーズでインピーダンスアナライザを品名にするモデルもある(ZA57630、ZGA5920など)。 電気化学の測定には交流インピーダンス法が良く使われる。電気化学測定に必要な測定器として、ガルバノスタット/ポテンショスタットと、FRAが紹介されている(東陽テクニカの物性/エネルギーの製品ページ)。 2)ロックインアンプ。ゲイン(利得)と位相から物性などのインピーダンスを求める。 3)各種の抵抗測定器はインピーダンスの実数部(抵抗成分)を求めることができる。ミリオームメータ、接地抵抗計、ガウスメータ、ひずみ計測器、一部の温度計などである。テスタ(回路計)の付加機能でも交流インピーダンスを測定できる場合がある。

ウィグナー分布(うぃぐなーぶんぷ)

(Wigner Distribution)FFT解析関連で使われる用語。量子力学の分野において、E. Wigner により提唱されたもので、非定常信号に対して拡張されたパワースペクトルというような性質をもつもの。従来のFFTでは時間分解能―周波数分解能が相補的な性質(周波数分解能を上がるとサンプル時間が長くなる。)を有しているため、非定常的な信号の瞬時的なスペクトルを良好な分解能で求めることは困難だったが、これに対しウィグナー分布では時間分解能―周波数分解能の相補的な制約を直接受けないため、周波数―時間平面上でパワースペクトルの良好な時間―周波数分解能を得ることができる。しかしながら、計算点数がFFTと比較して非常に多いことから、実用的ではなかった。小野測器のOscope 時系列データ解析ツール(ソフトウェア)のオプション OS-0263 時間-周波数解析ソフトを使用するとウィグナー分布の解析ができる。(小野測器の「FFT解析に関する基礎用語集」より)

ウインドウ(ういんどう)

(Window)小野測器の「FFT解析に関する基礎用語集」には次のようにある。別名:時間窓 (Time Window)。FFT処理は、サンプリングされた数値データ系列のうち、ある区間(例えば1024点とか2048点)のデータについて行われるが、このように波形の一部を切取ることをウィンドウ(時間窓)で波形を切取る、またはウィンドウをかけるという。フーリエ変換は無限長のデータを処理することで定義されている。離散的フーリエ変換(DFT)においてもこれは変わらず、FFTアナライザでは、ウィンドウで波形を切取ると、その区間の波形が無限に繰返されるという仮定で信号解析を行う。このとき解析データ長(ウィンドウの長さ)がそれぞれの周波数の周期の整数倍になっていれば、FFTアナライザで仮定された波形は実際の入力波形と一致し、単一のラインスペクトルが得られる。ところが解析データ長が周期の整数倍と一致していない場合(周波数分解能にあてはまらない場合で、始端と終端がつながらない)は、ひずんだ波形を処理することになり、そのスペクトルはパワーが集中しないで、左右に広がり(サイドロープ)が生じてしまう。このパワーの漏れをリーケージ誤差と呼んでいる。そこでこのリーケージ誤差を防ぐのが、ウィンドウ処理になる。フレームの両端がゼロとなるような山型の関数をフレームに掛合せれば、始端と終端がつながり誤差が少なくなる。このような関数をウィンドウ関数と呼び、ウィンドウ関数により解析信号を同期させる処理のことをウィンドウ処理という。その結果、スペクトルの形はラインスペクトルに近づいている。ウィンドウとして代表的なものがハニングウィンドウだが、その他解析信号に応じてそれぞれ適したウィンドウを使用する。

エネルギースペクトル密度(えねるぎーすぺくとるみつど)

(Energy Spectral Density)打撃法などによるインパルス状の有限なエネルギーに対し、これをエネルギーで規格化して表示したもの。 エネルギースペクトル密度はパワースペクトル密度に取り込み時間(ウィンドウ長、T=1/⊿f)をかけることにより求められる。(小野測器の「FFT解析に関する基礎用語集」より)

FRA(えふあーるえー)

(Frequency Response Analyzer) 日本語では「周波数特性分析器」。その略号。正弦波信号を被測定物に与えて、その周波数応答(利得・位相)を、ノイズ除去特性に優れたディジタルフーリエ演算方式により高精度に測定する装置。正弦波の発振器とオシロスコープで行うゲインーフェーズ特性が1台で測定できる。正弦波周波数を可変(自動的にスイープ)させてゲインーフェーズ特性のグラフ(カーブ)を得る。特長は広いダイナミックレンジによる高精度な測定と、超低周波数の測定が可能であること。「低周波のネットワークアナライザ」と称されることもある。電源やモータ・サーボ回路の評価に使われる。フィードバック技術を応用した測定器で、エヌエフ回路設計ブロック(エヌエフ)の製品がほぼ独占状態である。複数のモデルをラインアップしている。形名はその名のとおり、FRA50xxやFRA516xx。最近は「インピーダンス/ゲイン・フェーズアナライザ」などインピーダンスアナライザを称したモデルも発売している。余談だが、同社は古くからLCRメータを製品化している。インピーダンス測定に多くのノウハウがあり、インピーダンス計測のセミナーを活発に開催している(2020年現在)。LCRメータは低周波から高周波まで業界標準はキーサイト・テクノロジー(キーサイト)である。1980年頃に国産メーカが参入(たとえば安藤電気のAG-4000シリーズなど)したが、測定周波数は数百kHzまでの製品しかなく、MHzモデルはキーサイトの牙城が守られた。ただし、2010年代以降、電子部品メーカの生産ライン向けLCRメータでシェアを伸ばした日置電機がラインアップを増やし、現在はMHzオーダの製品も同社がメインプレーヤになった。つまり現在の国内LCRメータ/インピーダンスアナライザ市場は、標準器はキーサイト、汎用器は日置電機、の2社に収斂した。そんな中、エヌエフはずっとLCRメータを作り続け撤退しなかった。2019年5月に発売されたインピーダンスアナライザZA57630は最高測定周波数36MHzである。

FFT(えふえふてぃー)

(Fast Fourier Transform) ・フーリエ変換 数学では、複雑な周期関数は(単純な周期関数である)正弦関数(サイン関数、正弦波)や余弦関数(コサイン関数)の和として表されることが知られている(フーリエ級数)。複雑な物理現象(関数f)を正弦波と余弦波に変換すると計算がしやすくなり、物理現象を簡便に解析できる。この変換をフーリエ変換と呼ぶ。工学では時間領域の現象(時間の関数)をフーリエ変換して周波数領域(周波数の関数)にして、色々な解析を行う。解析結果を逆フーリエ変換で時間関数に戻すと、時間領域の現象(現実の物理現象)がどうなるかがシミュレーションできる。フーリエ変換は数学、物理、工学で使われる代表的な解析手法である。 ・DFT フーリエ変換をデジタルデータで行うのが離散フーリエ変換(DFT:discrete Fourier transform)である。現実世界の物理現象はアナログ(連続して起こっている)だが、計測器はサンプリングによってデジタルデータをつくり、各種の処理や解析を行う。そのため、DFTの理論が確立した。 ・FFT DFTを高速に計算する手法がFFT(高速フーリエ変換)である。この手法を使った周波数分析器がFFTアナライザである。振動や音などの周波数測定に使われる。表示される波形はスペクトラムアナライザ(スペアナ)と同じで、横軸が周波数、縦軸がパワー(電力)だが、DC(直流)から低周波で使われ、スペアナとはアプリケーションや周波数帯が異なる。 FFTはFFTアナライザだけでなくオシロスコープの解析オプションにもあり、測定データを周波数領域に変換してスペアナのような表示を出すことができる。FFTアナライザは日本では小野測器が有名だが、環境計測のリオンもラインアップがある(両社ともに最近は「多チャンネル分析器」や「音響振動解析システム」などの品名で、FFTアナライザというよりデータ集録&解析器である)。海外メーカでは東陽テクニカの取り扱うオロス社がFFTアナライザでは名が通っている。

FFTアナライザ(えふえふてぃーあならいざ)

(FFT analyzer) 信号波形を高速フーリエ変換(FFT)の手法で、横軸を周波数、縦軸をレベルとして表示する測定器。フーリエ変換は時間の関数を周波数の関数に変換する数学の理論。デジタルの演算手法であるFFTを使いスペクトラムアナライザ(スペアナ)の様な周波数ドメイン(周波数軸での分布を測定する)の計測器。日本では小野測器が有名で1980年頃から製品化された。主に音響・振動などの低周波数信号の解析に使用される。周波数成分ごとのパワーを測定する測定器だが、スペアナとは原理も用途も異なる。FFTアナライザはDC~100kHz程度の周波数解析が得意。スペアナはDCから測定可能な機種はほとんど無く低周波は苦手、RF帯域の周波数測定に使われる。 FFTアナライザはベンチトップやポータブルのモデル(いわゆるスタンドアロン)だけでなく、最近はPC接続型の多機能計測器、データ収集&解析器のモデルも増えている。そのようなモデルでは振動測定など環境計測のリオンや、音響計測器のHBK(旧Bruel&Kjaer、B&K、ブリュエルケアー)もデータ集録機能に特長を持ったFFTアナライザ製品をつくっている。つまりFFTアナライザのアプリである振動解析に、振動計のリオンや、音響測定器のB&Kが、データ集録機器として小野測器のFFTアナライザと競合する製品群をつくっている。FFTアナライザ、振動計測、騒音計、音響測定器、データ集録機器(たとえばデータロガー)などは似た位置関係にあるカテゴリー(機種群)といえる。 自動車の評価機器をラインアップするエー・アンド・デイには「車載用振動・騒音解析測定器」があり、実態はFFTアナライザである。

エリアシング(えりあしんぐ)

(aliasing) アナログ値(連続した信号)である物理現象を測定した後で、コンピュータ処理に適したデジタル値(離散データ)にする手法にサンプリング(標本化)があり、計測器を含む多くのデジタル電子機器で使われている。サンプリング周波数(fs)(※)は測定する信号の周波数(fm)の2倍以上である必要がある(サンプリング定理)。つまりfs>fm x 2(fsはfmの2倍以上)。fs/2(サンプリング周波数の1/2の周波数)よりも高い周波数成分は周波数fs/2を中心にして、低周波側に折り返したように見える。この現象をエリアシングという。エリアシングは「折り返し雑音(folding noise)」や「エリアシングノイズ」とも呼ばれる(表記は「エイリアシング」もある)。つまりサンプリング周波数が低いと、ノイズによって正確な結果が得られない(サンプリングで得られたデータは正しくない)。 サンプリングとは連続して変化している値を一定間隔(時間)で間引いて、デジタルデータをつくること。間引く間隔が長い(ゆっくりした間隔でサンプリングする=サンプリング周波数が低い)と、急な変化には対応できないので、できたデジタルデータは不正確で、元のアナログデータ(測定信号)を正確に反映できない。元の信号が急な変化をしているのは高い周波数成分を含んでいるからで、その周波数の2倍の周波数でサンプリングする、という目安がサンプリング定理である。 エリアシングはFFTアナライザなどのFFT解析で使われる用語だが、オシロスコープ(もちろんデジタルオシロスコープ)の使い方として、測定したい信号の周波数成分からエリアシングを考慮してサンプリングレートを設定することがあげられる。エリアシングを防止するには、fs/2の周波数以上をカットするLPF(Low Pass Filter、低域通過フィルタ)を使用する。 そのため、このLPFをアンチエリアシング・フィルタという(LPFについては用語「フィルタ」に図解がある)。fs/2は「ナイキスト周波数」と呼ばれる。 実際の測定信号にはどれだけ高い周波数成分が含まれているかわからない。そこでLPFによって高い周波数をカットすれば、最大周波数からサンプリング周波数を決められるのでエリアシングを防止できる、ということである。 (※)周波数は英語のfrequencyから「f」で略記される。何の周波数かを区別するためfの後に略記を続ける。サンプリング周波数は、英語samplingのsをとって「fs」と表記している(あくまで一例であり、必ずfsでないといけないというわけではない)。数学(物理)では、このような表記を良く使う。fsでなくてf(s)でも良さそうだが、f(s)と書かれたら「sという物理量によって変化するfという物理量」という意味で、関数を表記する書き方、と数学上の決まり事になっている。f(s)のsは関数fの引数(いんすう)と呼ばれる。

オーバーオール(おーばーおーる)

(Overall Value)小野測器の「FFT解析に関する基礎用語集」には次のようにある。分析周波数レンジまでのパワーの総和のこと。オーバーオール値の算出は測定器の機種によって2つある(詳細は小野測器HPを参照)。1. 片振幅値(Peak 値)を基準としている場合(同社モデル:CF-350/360*、CF-900 シリーズ*、CF-880* 等)。2. 実効値を基準としている場合(同社モデル:CF-5000 シリーズ*、CF-3000 シリーズ*、DS-2000 シリーズ* DS-3000シリーズ)(*:販売終了)

オーバーラップ処理(おーばーらっぷしょり)

(Overlap Processing)小野測器の「FFT解析に関する基礎用語集」には次のようにある。リアルタイム解析周波数以下の場合ウィンドウをオーバーラップして、FFT 解析を実行できる。例えば1024点ごとのデータをFFT 処理するが、このとき新しくサンプリングされたデータと以前のデータと重ねて(オーバーラップして)FFT 解析を 実行する。オーバーラップ量が大きいということは、それだけ信号時間の変化をより細かく計測できることになる。

オービット(おーびっと)

(Orbit) 2つの信号を直交するx軸・y軸上で合成した図形をオービットまたはリサジューといい、2信号の振幅、周波数比、位相差の組合せによって視覚的な特長を示す。周波数比が整数のときには描かれる図形の軌跡は一定の周期で元に戻る。(小野測器の「FFT解析に関する基礎用語集」より) 参考記事: FFTアナライザの基礎と概要 (第1回) デジタルオシロスコープの基礎と概要 (第1回)

オクターブ分析(おくたーぶぶんせき)

(Octave Analysis)パワースペクトルが分析周波数を一定の幅に分割して(定幅型)各帯域毎のパワーを表すのに対し、音響分野での周波数分析器では周波数軸を対数スケールにとり、対数スケール上で等分に分割する定比幅の帯域フィルタを通過させることにより、周波数分析を 行う場合が多くある。帯域幅は1オクターブ幅および1/3オクターブ幅が一般的で、このような分析をオクターブ分析という。IEC 61260(JIS C 1514)の規格では、オクターブバンドの中心周波数、およびフィルタ特性が定められていて、アナログまたはディジタルのオクターブ分析器はこれに統一されている。(小野測器の「FFT解析に関する基礎用語集」より。詳しい数式は小野測器HPを参照。)

音響インテンシティ(おんきょういんてんしてぃ)

SI(Sound intensity)または AI(Acoustic intensity)のこと。音場のある点を含む単位断面積を単位時間内に通過する音のエネルギーで、その点の音圧(時間の関数) と粒子速度 の積の時間平均で定義されるベクトル量。SI測定法の応用例をいくつかあげる。(1) 音源のパワーレベル測定:音源を中心とする半球面で、球面と直交する方向にて、分割された面積における音響インテンシティの測定から、音響パワーが算出される。(2) 遮音測定:SI法によって部位ごとに透過パワーを測定することにより、複数の部位からなる壁の遮音性能や隙間からの漏音の程度を定量的に測定できるので、現場での遮音測定に有効である。(3) 音場解析:SI値はベクトル量であるから、音の伝播方向と大きさを2次元、もしくは3次元表示することにより、音のエネルギー流を視覚化して捉えることができる。(小野測器の「FFT解析に関する基礎用語集」より。詳しい数式は小野測器HPを参照)

カーブ・フィッティング(かーぶふぃってぃんぐ)

(Curve Fitting)機械などの構造物の動的特性の測定では、通常、構造物にハンマーでインパルスを加えて得られるインパルス応答を、FFTで処理して系の伝達関数を求めている。しかし、FFTを用いた伝達関数は、有限の等間隔周波数分解能をもつ離散値データであるため、振幅曲線が急激に変化する固有振動数付近では測定点が非常に少ない。そのため、これから求めたナイキスト線図は理想的な円軌跡とはならないので、正しいピーク値、固有振動数などのモーダル・パラメータを得るためには、この等間隔データ間を補間しながら計算する、曲線あてはめ(カーブ・フィット)が必要である。カーブ・フィッティングと呼ばれる手法は、伝達関数の解析式を想定し、この式中の固有振動数、減衰比、振動モードなどのモーダル・パラメータを適当な値にすることにより、実測された伝達関数とモデルの伝達関数をできるだけ近似させるようにするものである。これは、モーダル解析において、構造物の動的応答を理論的に決定づけるものである。実際のカーブ・フィッティングでは、まず測定して得られた離散系の複素伝達関数の実数部と虚数部を用いて、複数個の点をナイキスト線上にプロットする。次に、これらの点との誤差が最小になるような、理論上のナイキスト線図を算出し、このナイキスト線図から改めて伝達関数を計算して求め、測定した伝達関数にこれをフィットする。測定された伝達関数のカーブ・フィッティングには、主として2つの方法が用いられる。各振動モードのピークが離れていて、相互に影響を及ぼさない場合には、1自由度系のカーブ・フィット(SDOF:Single-Degree-of-Freedom curve fit)が使われる。一方、隣接する振動モードの特性が互いに重なり合った場合には、多数の振動モードの影響を考慮する必要があり、伝達関数を解析的に表現している多数のモーダル・パラメータを、測定された伝達関数に同時に適合させる計算アルゴリズムが要求される。この方法は、多自由度系カーブ・フィット(MDOF:Multi-Degree-of-Freedom curve fit)と呼ばれている。(小野測器の「FFT解析に関する基礎用語集」より)

回転次数比分析(かいてんじすうひぶんせき)

(Rotational Order Ratio Analysis) 小野測器の「FFT解析に関する基礎用語集」には次のようにある。回転次数比分析とは、回転機械の振動や騒音の周波数分析を行う場合、回転体に取付けたパルス発生器のパルスを外部サンプリングクロックとして、信号のサンプリングを行う方法である。周波数分析で、1 Hzは1秒間に1周期を完了する成分だが、これに対して回転次数比分析で回転1次とは、基準とする回転体の1回転について1周期を完了する成分をいう。回転2次は1回転について2周期を完了する成分で、回転1次の2倍となる。このように1回転当りの変動を基準とする分析を行うためには、回転数に同期したサンプリングを行う必要がある。内部サンプリングクロックそのままでは、回転速度が変化すれば1回転当りのサンプリング点数は変わってしまうが、回転パルスに同期したクロックをサンプリングクロックとした場合には、1回転当りのサンプリング点数は常に一定となる。例えば、600 r/minで回転している回転体ならば、回転1次は(600 r/min)/60 =10 Hz、回転2次は20 Hzとなる。回転速度が上昇して700 r/minになると、回転1次は11.7 Hz、回転2次は23.3 Hzに上がる。このように周波数は回転速度の変化に伴って変動してしまうが、次数として正規化すれば、回転変動による影響を受けず、ある成分に着目することも容易となる。

回転トラッキング分析(かいてんとらっきんぐぶんせき)

(Rotational Tracking Analysis) 回転次数比分析の応用として、回転トラッキング分析がある。回転トラッキング分析は、ある次数成分の振幅の変化を回転速度を横軸のパラメータとしてトレースすることによって、ある回転速度に対して、回転機器のどのコンポーネントが共振しているのか、あるいは回転速度の何倍(何次)の成分が共振しているのかを見極めるもの。(小野測器の「FFT解析に関する基礎用語集」より)

開ループ・閉ループ演算(かいるーぷへいるーぷえんざん)

(Open-Loop/Closed-Loop Operation)測定した開ループおよび閉ループ伝達関数はそれぞれ演算により閉ループ、開ループ伝達関数にすることができる。フィードバック要素がない場合、得られた開ループ伝達関数をG0とすると閉ループ伝達関数GCは、GC=G0/(1+G0)。得られた閉ループ伝達関数をGCとすると開ループ伝達関数G0は、G0=GC/(1-GC)となる。(小野測器の「FFT解析に関する基礎用語集」より)

逆フーリエ変換(ぎゃくふーりえへんかん)

(inverse fourier transform) 時間軸信号(時間関数)をフーリエ変換するとフーリエスペクトル(周波数関数)になる。反対にフーリエスペクトルを時間軸信号にすることを逆フーリエ変換という。時間軸信号の相関である自己相関関数と、フーリエスペクトルの自乗であるパワースペクトルの間も、同様にフーリエ変換と逆フーリエ変換の関係になっている。さらに、クロススペクトルの逆フーリエ変換は相互相関関数 、周波数応答関数の逆フーリエ変換はインパルス応答となる。(小野測器の「FFT解析に関する基礎用語集」より) 参考記事:FFTアナライザの基礎と概要 (第1回)