分解能
(resolution)
計測できる一番小さな値のこと。測定の細かさの限界、感度と表現されたり、計測器が確実に検知できる最低の入力信号、といわれたりする。精度や確度とは定義が異なる。測定器の種類や測定項目によって定義の仕方が違う。スペクトラムアナライザは周波数の分解能を分解能帯域幅(RBW)という特別な表現をする。単に分解能と表現される場合の代表的な2例を以下に示す。
デジタルマルチメータ(DMM)などのデジタル表示の測定器は、表示桁数を5½桁というように記載する。最小桁が分解能にあたるが、それは測定しているレンジによって異なる(たとえば20 Vレンジならば、分解能は100 µVなど)。
同じ電圧測定でも、オシロスコープ(オシロ)で分解能といえば、ADコンバータのビット数のことである。ほとんどのデジタルオシロのADコンバータは8ビット(=256分割)。1/256=0.4%のため、オシロの電圧表示の有効桁数は2桁までで、3桁目はあまり信用できない値である。余談だが、オシロは信号の時間軸推移(時間による変化の波形)を見る観測機器(スコープ)で、時間軸波形を正確に計測するための周波数帯域を最も重要な仕様としている(横軸の時間については精度が良い)。ただし、信号の大きさである電圧(縦軸)は0.4%程度の精度しかないので安価なハンディDMMよりも悪い。オシロの機能は、正確な電圧値を測定することではなく、10ディビジョンの画面の中で波形を把握することが主眼なので、電圧の測定精度はこれで十分ということである。10万円のオシロも1億円のオシロもADコンバータは8ビットである。つまり電圧については測定器ではなく観測機器なので、オシロが表示する電圧値のデジタル値には注意が必要である。
自動車などのパワーエレクトロニクス分野ではオシロで電圧も精度良く測定したいという需要があり、最近は高分解能(10ビットや12ビットADコンバータを搭載)のモデルが、オシロ3大メーカの
テクトロニクス、キーサイト・テクノロジー、テレダイン・レクロイ(旧レクロイ)から発売され、オシロの新しい機種群の1つになりつつある。
計測器の名称(品名)に「高分解能」と称するものがオシロスコープ以外では電源、メモリレコーダの測定ユニット、SMU、AWGなどにある。前述のように、表示桁数の多いDMMは高分解能(高精度)といえるが、7~8桁モデルがあるキーサイト・テクノロジー、フルーク(FLUKE Calibration)、エーディーシーの品名は「デジタルマルチメータ」で、名称に「高分解能」はない。フルークは品名に「8.5桁」とうたい、高分解能であることを具体的にアピールしている。計測器ユーザは「普通のDMMは5桁程度である」ことを知っているのでこのアピールは通じるが、計測器の素人には「8桁が高精度・高分解能である」ことはわからない。DMMの利用者は桁数を聞いただけで高精度であることを理解するので、メーカの意図は十分に伝わっている(逆にいうと、計測器は万人が使わないものである)。計測器の名称は、その製品を使う(限られた)使用者に向けて各メーカは熟考して命名しているといえる。
参考用語
参考記事
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スペクトラムアナライザの基礎と概要 (第2回)
「基本的な設定」の2番目に分解能帯域幅について図解。
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デジタルオシロスコープの基礎と概要 (第1回)
オシロスコープの歴史から始まり、主な仕様や注意点を解説。主要なメーカの比較表を掲載。
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デジタルマルチメータの選定の視点や、各社の一覧を掲載。ラインアップが多いキーサイト・テクノロジーをインタビュー。
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標準器のブランド、FLUKE Calibrationが2019年にモデルチェンジした8.5桁DMMを取材。