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- 気圧(きあつ)
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(atmospheric pressure)空気の重さのこと。標準気圧である1気圧は1013hPa(ヘクトパスカル)。気圧のことを大気圧とも呼ぶ。高度が高くなると気圧は下がる。たとえば500mの高さの山に登ると50hPa下がるといわれている。人間の耳の内部は気圧を敏感に感じ取るため、飛行機に乗るなど、高度が高くなると耳が鳴ることがある。
- 気圧計(きあつけい)
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(barometer) 大気圧(大気の圧力)を測定する機器。別名:大気圧計(atmometer)。計測器としては物理量測定器の圧力計に分類されるが、気象観測機器でもある。気圧は天候変化を予測するために必須の測定項目のため、ほとんどの気象観測点で測定される。日本では気象業務法と関連法令により、公共的な気象観測には気象測器検定に合格した気圧計が使われる(※1)。 気圧計の種類は以下の4つ。また表示方法によってアナログ式とデジタル式がある。 1. 水銀気圧計 : 水銀の高さで気圧を測定する、古くからある方式。 2. アネロイド気圧計 : 内部を真空にした金属缶が気圧の変化で膨張・収縮することを利用。 3. 電気式気圧計 : 静電容量式(静電容量の変化を検知する方式)、ピエゾ抵抗式(シリコン製の素子が気圧変化で歪むと、電気抵抗の変化を検出する圧力センサを使用。この現象を「ピエゾ抵抗効果」といい、抵抗値の変化を電気信号に変換して気圧を算出する。圧力センサが電気信号を出力する方式。※2) 4. 自動気圧計 : 記録紙にペンで気圧の変化を自動記録する。自記温湿度計や自記記録計と似ている。 気圧計は計測器の圧力計の1種ではあるが、雨量計や積雪計などの気象観測機器にも分類される(風向計も計測器と気象観測機器の両方に分類されている)。気圧計は計測器メーカでは佐藤計量器製作所やテストー(testo)、ヴァイサラなどがつくっている。 (※1) 気象予報の民間最大手であるウエザーニューズは気象観測機器のソナテラProを販売している。気圧を含む7つのセンサで気温・湿度・風向・雨量などを観測できるが、気象庁の認定を受けた観測機器ではないので、気象庁が観測しているような気象データとしては使えないが、工事現場にユーザが設置して自衛のための気象観測に使用されている。 (※2) 圧力や振動を電圧に変換する電子部品をピエゾ素子(piezoelectric element、圧電素子)と呼ぶ。 気圧計は天候変化を予測する重要な指標なので、英語のbarometer(日本語:バロメータ)は転じて「物事の状況や状態を推測するための目安」の意味で使われている。ビジネスでは企業の「業績や経営状況」、健康では「食欲や睡眠の質」などがバロメータと呼ばれている。 atmospheric meter(大気中の/空気の/大気のメータ)を意味するatomometer(大気圧計)はbarometerと同義である。
- Keysight World(きーさいとわーるど)
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世界的な総合計測器メーカのキーサイト・テクノロジーが毎年開催する自社イベント(個展)の名称。日本だけでなく世界中で開催している。日本では2016年7月に東京で開催された記録が残っている。 1~3日間の日程で、カンファレンス(最新技術の講演)と計測器の展示(カンファレンスで紹介した機器以外も展示)で構成される。時代に合ったテーマの講演、セミナーと、同社の新製品や、今後発表予定のソリューションを知ることができる。キーサイト・テクノロジーだけでなく同社のパートナー企業も参加し、個々に展示ブースを設けることもある。Tech Eyes Online取材班は、展示品の中から目利きして選んだ製品群を、イベントレポートで紹介している。世界最高速の広帯域オシロスコープの世界初披露や、小型・軽量になった53GHzのベクトルネットワークアナライザ(USB計測器)、オール・フォトニクス・ネットワークを目指すNTTのIOWNなどで使われる、近未来の光電融合デバイスの評価ソリューション(偏波シンセサイザほか)、産総研G-QuATから2023年に受注した1000量子ビットシステム(量子コンピュータの制御部である、マイクロ波PXI製品)など毎回、最新のソリューションが紹介される。同社の強みである高周波の新製品の数々が展示される。 計測器の展示会というと古くはJEMIMA(ジェミマ、日本電気計測器工業会)が開催する計測展(現IIFES、アイアイフェス)があるが、海外の計測器メーカはいつの頃からか参加しなくなった(効果がなくなった為と推測される)。国内の計測器メーカも30周年や100周年などの節目に個展を開くことはあるが、原則、大きな総合展示会に参加している。オシロスコープのトップベンダー、テクトロニクスもKeysight World同様に毎年、個展を開いている(テクトロニクス・イノベーション・フォーラム、TIFと称している)。ローデ・シュワルツはコロナ以前に毎年開催していたEMCユーザ会議を2024年からR&S Technology Symposiumとして復活させた(同社は2018年に広帯域オシロスコープを発売するなど、EMC以外の分野にラインアップを広げているので、個展の名称からEMCを外したと思われる)。このように外資の大手計測器メーカは4月から9月に個展を開催している(2025年現在)。 テレビ・オーディオ測定器の2トップ(逆にいうと唯一の国産2社)である、リーダー電子とアストロデザインも、計測展には出展せず、映像関連の専門展示会(Inter BEEなど)に参加し、2015年頃から毎年プライベートショー(個展)を開催している(リーダー電子は2018/2019年の2回、アストロデザインは毎年開催中)。小野測器は人とくるまのテクノロジー展(会場:パシフィコ横浜)の常連だが、同時期に会場近くのホテル上層階の大会場で個展を開き、招待状を送付した特別の顧客だけに情報提供をしてきた(2020年からコロナウイルスの蔓延で中止している)。日置電機は設立80周年、90周年などの節目に本社(長野県上田市)で個展を開催している(2024年に90周年イベントを開催)。アンリツは2025年に130周年記念でTECHNO PLAZAと題した個展をゆりかもめ 国際展示場駅下車のTFT(東京ファッションタウン)で開催した(非公開でVIPのみを招待)。共和電業は2016年に東京で「2016 KYOWA展」を開催している。このように国産計測器メーカは時々、個展を開催する。 TechEyesOnlineは2017年8月に開設し、2018年と2019年の7月に開催されたKeysight Worldを取材して、新製品などを記事で紹介した。2020年はコロナ対策で開催は中止され、2021年と2022年は10月にオンラインで開催された。2023年8月には、4年ぶりの対面での開催が御茶ノ水駅近くの会場で催された。以降、2024年、2025年と開催は続いている。 キーサイト・テクノロジーはCEATEC(旧エレクトロニクスショー)に出展している数少ない計測器メーカの1社である。 【編集後記】今年のCEATEC
- 機械語(きかいご)
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(machine language) マイクロコンピュータ(マイコン、CPU)を動かすソフトウェアに関連する用語。マイクロコンピュータが理解して実行できる命令が書かれたプログラム(言語)。0と1の2進数の文字列。別名:マシン語。 人間は機械語を書けないので、C言語などでプログラムを記述する(ソースファイル)。C言語(人間が書いたプログラム)はアセンブリ言語を経由して最終的に機械語に変換される。詳しく流れを書くと、まずソースファイルはコンパイラによってアセンブリ言語に変換される。アセンブリ言語はアセンブラによってオブジェクトファイルに翻訳される。オブジェクトファイルはリンカやコンバータによって機械語(データファイル)に変換される。 プログラマが書いたソースファイルは、このような流れでオブジェクトファイルを経由してマイクロコンピュータが実行できるデータファイル(機械語)になる。この一連の作業工程(ソースファイルからデータファイルを作る)をコンパイルと呼んでいる。(以下の参考記事の図5が詳しい) 1970年代にインテルなどが開発した4ビットのマイクロコンピュータは、1980年代に8ビット、16ビット、32ビットと発展した。コンピュータの心臓部であることは周知だが、ソフトウェアを搭載した組込み機器(組込みシステム、embedded)も普及し、いまや炊飯器からスマートフォンまでCPUを動かすソフトウェアが搭載されている。機械語(マシン語)は私たちの日常の身近にある。 データファイルをメモリに格納し(実際はEPROMなどの、簡便に何度も書き換え可能なデバイスを使う)、プログラムを実行させ、電子機器(組込み機器)を動作させ、検証していく作業をデバッグと呼ぶ。プログラムをどこからどこまでの範囲で実行させるかなどを設定するツールがICE(アイス)である。そのためICEは別名、デバッガ(debagger:debagする物)とも呼ばれる。ICE市場は2000年代以降に激減したが、組込みマイコン(組込み機器用のCPU)の黎明期から普及期(1980~2000年代)は、計測器メーカと電子機器ベンチャーが競って製品開発をした、モンキービジネス(花形の計測器カテゴリー)だった。
- 機械式電力計(きかいしきでんりょくけい)
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計測器としての低周波の電力計の1種で、指針型のアナログ表示の電力計のこと。一般に電力計(watt meter)というとこの機械式電力計のことを指すが、広義の電力計は高周波電力計やデジタルパワーメータや積算電力量計まで含む。 電力計測が始まった当初からある指示計器で、直流から交流まで測定でき、駆動するための電源は不要で、構造がシンプルであり、表示が直感的であるため、開発~生産まで幅広く使われた。理工系の電気の学生実験では現在でも必ず使用されている。 参考用語:YEW 参考記事:電力計の基礎と概要 (第1回)・・冒頭に各種の電力測定器を解説。
- ギガビットLAN(ぎがびっとらん)
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(gigabit LAN) 企業内に広く導入された10/100Mbps LAN(10/100 BASE-T、Tはツイストペアケーブル)の延長線上にあるデータ伝送速度が1G/10GbpsのLANで、2000年代に構想された。LANとイーサネット(ethernet)はほぼ同義。ギガビット・イーサネット(GbE)と言うと伝送速度1Gbpsを指し、ルータなどに装備されている。また10ギガビット・イーサネット(10GbE)は最大40Kmの伝送距離があるため、基幹網に導入されている。 GbEには1000BASE-LX/SX/CX/Tの4規格があり、LX/SXが光ファイバ、CX/Tが銅線。10GbEは7規格がありすべて光。それぞれ用途によって使い分けされる。ギガビットLANは1Gbpsまでは普及したが、10Gbpsは業務用までで、一般家庭にはまだ普及していない(※)。なお10GbEはイーサネットの根幹であるCSMA/CD技術を採用していないし、LAN向けとWAN向けの2種類の仕様があるため、厳密にはイーサネットでもLANでもない。 1GbpsのギガビットLAN(別名:ギガビット・イーサネット)は家庭に普及し、動画のストリーミングやオンラインゲームなどでその性能(高速通信)を発揮している(2025年現在)。また基幹通信網では2010年に100Gbpsが標準化され(IEEE 802.3ba)、2017年に400G(IEEE 802.3bs)、2024年に800Gbps(IEEE 802.3df)が正式に承認・規定されている(光伝送 400G/800G)。アンリツのネットワークマスタ プロ MT1040Aはデータセンタ内で導入が進む400Gイーサネットの物理レイヤを測定できるため、品名の後に「400Gテスタ」と但し書きされている(2025年10月現在)。2025年には1.6Tbps(800Gbpsの2倍の1.6テラ/秒)の試験器がViavi(ビアビ)、キーサイト・テクノロジー(買収したIXIA)、テレダイン・レクロイから発売されている。 (※) 2025年3月末時点で、国内の10Gbps光回線サービスの契約数は100万件に達したが、FTTHでの10Gbpsサービスの比率はまだ低い(2.7%)。プロバイダとの契約や対応機器(ルータ、ケーブル、PC)を揃えるにはお金がかかる。2030年までには約10%に成長すると予測されている。
- GHz(ぎがへるつ)
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(giga hertz) 周波数 の単位で、1,000,000,000Hz に相当。G(ギガ)は10の9乗の接頭辞で、10億。無線(RFなどの高周波)の基本測定器であるスペクトラムアナライザの、仕様の1番目は測定周波数である。最高3GHz~9GHzモデルのラインアップが多い(キーサイト・テクノロジーの最上位機種、Xシリーズ シグナルアナライザは110GHzまで測定可能。2022年3月現在)。現在普及している携帯電話で最も使われている周波数(キャリア、搬送波)は1.5GHz帯である。このようにGHzは無線通信の測定器で大変良く使われる用語(単位の略記)である。 2000年代に登場した高速オシロスコープは、周波数帯域 数百MHz(メガヘルツ)が主流だったオシロスコープを高周波の製品群(GHzの製品)に豹変させた。初めての広帯域なオシロスコープとして54855A(6GHz)を発売したキーサイト・テクノロジーは2018年には世界最高速の110GHzモデルを発売している(TechEyesOnlineはKeysight World 2018で世界初公開された新製品 UXRシリーズを取材し、展示会レポートを公開した)。UXR1104(110GHz)は現在も世界最速のオシロスコープである(2025年12月現在)。 電子工作の専門技術誌、月刊「トランジスタ技術」2023年12月号は、高周波の代表的な機種であるネットワークアナライザで、最近話題のnanoVNAを特集した(特集のタイトルは「GHz測定 nanoVNAで回路名人になる」)。記事の執筆者の1人にペンネーム「じがへるつ」氏がいる。GHzをもじったネーミングである。つまり、ペンネームに使われるくらい、「GHz」は計測器を含む電気(高周波)の世界で基本の(身近な)ことばである。
- GigE Vision(ぎぐいーびじょん)
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産業用・工業用カメラの国際規格。イーサネットのIPネットワーク上で動作するカメラ・インタフェース標準。準拠したものはロゴが使用できる。カメラが撮影した映像信号をイーサネット経由で伝送し、カメラの制御にも使われるプロトコル。Camera Linkなどと同じマシンビジョン標準規格の中の1つ。JIIA(日本インダストリアルイメージング協会)が詳しい説明を掲載している。 GigE(ギグイー)とは、PoEを使った1G bpsのイーサネット規格で、Gigabit Ethernetを略記したと思われる。出力構成(コンフィグレーション)を1 GigEや10 GigEなどと呼称し、画像データの転送速度が異なる。Visionはマシンビジョンからきていると思われる。つまり「ギガビット・イーサネット(GbE、ギガビットLAN)のマシンビジョンの規格」とでもいうネーミングである。 イーサネット通信規格(IEEE802.3)を用いたカメラ・インタフェース規格として2006年5月にリリースされ、2018年にVersion 2.1が発表された。標準のイーサネットケーブルを使い、長距離を高速にエラーなく伝送する。この規格によって、異なるベンダの機器やアプリケーションを各種のデータレートで接続することができる。IEEE 1588を使った高精度な同期機能も規定している。伝送速度は1、2.5、5、10Gbits/s。コネクタは銅線から光ファイバまで各種ある。
- 器差(きさ)
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(instrumental error) 測定器が示す値(指示値など)と、本来示すべき正確な値(真の値)との差。JIS(日本産業規格)では「器差:1.測定器の示す値から示すべき真の値を引いた値。2.標準器の公称値から真の値を引いた値」と定義している。 個別の機器がもつ誤差のことを「その器の(真値との)差」という意味で器差と呼んでいるようだが、通常、電子計測器の業界では誤差や精度、確度などの用語が使われ、「器差」なる表現は限られた機種群だけで使われている(多くの電気計測器メーカの用語解説には「器差」は無い)。たとえばノギスやマイクロメータなどの寸法測定器は器差という用語を使っているようである。寸法測定器メーカのホームページで、「測定機器が持つ精度のことを器差という」という解説があった。医科器械メーカの用語解説にも器差があるので、医療器具でも誤差や精度のことを表しているようである。 計測器専門の情報サイト TechEyesOnlineのお問い合わせに「温度計のモデル○○の器差はいくつですか?」という技術相談があり、○○の製品カタログなどの資料にはどこにも記載がないので、メーカに確認したら、「器差は仕様で規定していません、精度は△△です」という回答だった。つまり電気計測器である温度計には器差なる概念は無いのである。一般に計測器には精度や確度、分解能などの仕様の規定はあるが、器差を明記しているメーカや機種はほとんどない(上記のように寸法計測器ではしているようである)。 筆者は新卒で電気計測器業界に就職して以来、約40年以上を計測器関連の仕事に従事しているが、上記の質問で初めて「器差」について真剣に調べた。つまりそれまでなんとなく耳にしたことはあった、という程度である。上記の温度計メーカの回答が電気計測器メーカの見解を明確に示している。個品(同じモデルでも個々の製造番号をもつ個別の品物)の器差は寸法計測器や医科機器・医療器具では重要なのだと推測する。器差と誤差・精度との違い(定義)は不明確である。器差を明示する業界(機器)とその理由を知っている方がいらしたらご教授いただけると嬉しい。器差ということばが生まれ、使われている背景(理由)もあるはずである。あくまで一例だが、ガス計量器メーカが「器差は比較した機器(標準器など)との差で、誤差は真の値との差」と解説している。計量器業界では原器との差を器差と呼んでいるのかもしれない。 JISの計測用語で誤差のことを器差と規定しているため、「校正とは、器差を知って、計測器と真値の差を・・・」といいたくなるが、ほとんどの計測器の校正事業者は器差なることばは使っていない。計測器の精度/品質管理である校正でも、器差という表現は使われていない。電気計測器全般ではなく、ごく限られた機種群で使う用語といえる。JISに器差の規定があるのに電気計測器では使われていない理由は不明。 一口に計測(や測定)といっても、業界によってJISのどの範囲を参照するか同じではないと推測される。計測(測定)の分野は細分化されていて、各村では流儀(用語などの使い方)が違うので、どの村のことばなのか把握することが肝要である(素人にはめんどくさい話である)。たとえば電気計測器と科学分析機器では使われる用語に違いがある。 器差の英語はinstrumental error(またはinstrument error)なので、誤差とほぼ同義と思われる。器差を自動翻訳するとinstrumental differenceになる。つまり日本語の熟語は「個品ごとの差」という意味を表しているが、実態は誤差である。器差ということばは止めて誤差(または精度)に統一するほうが誤解を生まないと筆者は思うが、すでに長く使用している業界では無理であろう。
- 疑似(ぎじ)
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本物の代わりをすること。シミュレータやエミュレータを日本語で「疑似○○」と呼ぶことがある。計測器の品名では擬似という手偏のついた「擬」が「疑」よりも多く使われているが、ときどき「疑似信号」のような表現をしている計測器メーカを見かける。疑似は擬似とほぼ同じだが、違いを説明するのは難しい。多くの電話機の代わりをして交換機に呼を与えるコールシミュレータはアンリツの製品だが、1980年頃までは疑似呼といっていた。
- 擬似(ぎじ)
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本物を真似てつくられたものや、本物の代わりになるように模倣された状態を意味する。計測器ではシミュレータ(simulator)やエミュレータ(emulator)は「模擬している」や「擬似○○」と表記されることが多い。計測器の品名の例は以下。 擬似電源回路網(協立テクノロジーKNW-407、アンリツMN425B)、擬似線路(東京理工研究所TR-8058)、擬似音声発生器(アンリツMG11A、菊水電子工業KSG3600)、ISDN擬似端末(アンリツEQ612A)、擬似交換機(アドシステムズX-4108、甲賀電子KG-3008、ニシヤマEXCEL-A004、ハウND4T-EXCH)。このようにその機種群の有名なメーカはほとんど「擬似」を品名にしている(一部のメーカの製品には疑似もある)。ただし、通信計計測器の代表例であるコールシミュレータの別名は「疑似呼」で、擬似呼ではない(※)。「微少」と「微小」は計測器メーカによってどちらかが使われていて(たとえば微小電流計、微少測定など)、どちらが多いとはいえない。 (※) 疑似呼の国産唯一のメーカであるアンリツは1980年代まで疑似呼をつくっていたが、1988年発売のEF101Aからコールシミュレータが品名になり、現在は疑似呼という製品はない(同社HPには疑似呼の資料はない)。筆者は1980年頃に疑似呼という表記を見聞きしているが、いまでは(2025年現在)疑似呼という表記はネットワーク上にほとんどないので、擬似呼ではなく疑似呼である、と断言する確証が弱い。文献の裏付けがないので、筆者の記憶の範疇と思っていただきたい。 擬似を英語にすると形容詞のpseudoになる。この単語の意味は「偽性」、「まがいの」で、悪い意味の「偽物(にせもの)」を指している。シミュレータは日本語で「擬似○○」と表現されることが多いが、そのまま英語に翻訳することはできない。
- 擬似基地局(ぎじきちきょく)
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計測器としては、基地局を模擬した動作をする移動体通信の代表的なモデル。RFポートから規格に準じた信号が出力され、この信号を携帯電話などの無線端末に入れて、端末がネットワークにつながるか、またつながった後で想定通りに動作するかを確認する。新しい無線通信の規格ができると、それに対応した端末の一通りの試験ができる。別名、基地局シミュレータ、基地局エミュレータ、シグナリングテスタなど、メーカによって名称(品名)は異なる。 国産の無線通信計測器メーカであるアンリツはシグナリングテスタの名称で早くから擬似基地局を開発・リリースしてきた。同社はNTT(旧電電公社)に長年、計測器を納品してきた代表的な電電ファミリーである。 キーサイト・テクノロジーが2023年2月に発売した、ローカル5Gの規格(リリース17)であるRedCapに対応した擬似基地局の品名は「5Gワイヤレス・テスト・プラットフォーム」である。この名称からは擬似基地局であることは想像しにくい。 ローデ・シュワルツが2024年5月に開催したTechnology Symposium(90周年記念企画のイベント)では、2023年末に規格化された、最新の高速無線LANのWi-Fi 7に対応した「5G ワンボックス・シグナリング・テスタ」の講演と製品展示がされた。同社は無線機テスタの中の1モデル、と称しているが、上記のキーサイト・テクノロジーと同じ、擬似基地局である。無線機テスタのことをワンボックステスタと呼ぶことが多い(1台ですべての試験ができるテスタという意味)。 基地局シミュレータやシグナリングテスタを関係者は日常会話で「擬似基地局」と呼ぶことが多い。日本語の擬似基地局を直訳したpseudo base stationは、英語としては意味が通じないと思われる。英語の動詞 simulateは「似る」、「似せる」なので、シミュレータ(simulater)は「似せる/似ている 物」→「擬似」となる。ただし、日本語の擬似を英訳すると形容詞 pseudo(偽性、まがいの)で、シミュレータではない。負荷試験機も英語ではtraffic generatorやnetwork simulatorで、負荷をloadと翻訳すると、間違った英語になってしまう。 正規の基地局を模倣した不正な装置で、携帯電話の通信を傍受したり、フィッシング詐欺のSMSを送信したりする偽基地局(ぎきちきょく、IMSIキャッチャ:International Mobile Subscriber Identity catcher)の被害が近年、報告されている。擬似基地局というとこの偽基地局を指していると解釈される可能性がある。「本物を意図して模倣した」、「疑わしいほどよく似ている」ということで、悪い意味に擬似や疑似が解釈される例である。口頭では擬似基地局という表現はしても、計測器メーカの資料には擬似基地局という表現はほとんどみけけなくなっている(2025年現在)。
- 疑似呼(ぎじこ)
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(call simulator/traffic generator) 計測器としての「疑似呼」は交換機の試験機。交換機にたくさんの電話機がつながったとき(発呼や着呼)、交換機が正常に動作するかを試験する。多くの電話機(呼)の代わりをして交換機に負荷をかける測定器。反対に電話機などの端末の試験機は疑似交換機。日本の疑似呼メーカは電話機などの情報通信装置メーカだったアンリツ。コールシミュレータの品名でEF104などの製品があった。通常、アンリツの計測器の形名はMS2830 スペアナ、MG3703 信号発生器、のように頭がMではじまる。これは計測器事業部門の製品であることを示すMeasure(計測)に由来すると思われる。コールシミュレータは電話機をつくっていた事業部門の製品で、MでなくEで形名がはじまる。電話機や情報通信装置を手掛けてきたので呼制御の技術があり、疑似呼を製品化できたと思われる。同様にNTTに通信計測器を納入してきた安藤電気や、電話機を納入してきた岩崎通信機には疑似呼はない。呼制御などの疑似呼の基礎技術は、後のデジタル無線通信時代のアンリツのシグナリングテスタ(呼接続試験機)につながったといえる。 以下のような解説がある。「疑似呼発生器(traffic trials generator):携帯電話の利用者が一時的に集中する状況を模擬するために、集中負荷疑似呼を発生させ、実際にフィールドで発生する状況に即した無線基地局装置の疑似呼試験を行う」。この解説ではtraffic trials generator(情報量・試練・発生器)なる英語が使われているが、コールシミュレータ(call simulator)またはトラフックジェネレータ(traffic generator)が擬似呼の別名では使われる。固定電話の時代は交換機の試験に疑似呼が活躍したが、携帯電話の時代になると、アンリツは「シングナリングテスタ」という看板製品をつくった。 2025年現在、ネット検索しても疑似呼の情報はみつからない。アンリツHPにも疑似呼の資料はない。NTTドコモの技術誌には「試験呼」という用語の解説がある(NTT DOCOMO Technical Journal Vol.22 No.3 36ページ)が、最近は疑似呼という表記はほとんどみられなくなった。現在ではコールシミュレータも生産中止のため、その古い品名である疑似呼はすでに死語といえるかもしれない。 疑似呼を英訳するとpseudo callだが、この意味は「いつわりの呼」、「偽の呼」で、正しい英語にならない。疑は「うたがう」という意味がある漢字である。
- 擬似交換機(ぎじこうかんき)
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(network emulator、exchange simulator) 有線通信測定器の1種。電話機などの端末の性能試験に使われる、交換機の代わりをする測定器のこと。別名、ネットワーク エミュレータ(network emulator)、ネットワーク シミュレータ(network simulator)、回線シミュレータ。 インターネットが普及する2000年代まで、電話機などの端末同士をつなぐのは交換機が担った。そのため、アナログの電話回線の代わりをする(通信回線と同じ機能を持ち、動作をする物)をアナログ擬似交換機、ISDNなどのデジタル回線の代わりをする物をデジタル擬似交換機と呼んだ。NTTが新しい通信サービスを開始するとき、それに対応した電話機などの、新しい機能を持つ端末を開発・試験するために擬似交換機が必要になる。1988年にNTTが「INSネット64」、「INSネット1500」というISDNサービスを開始する際は、そのサービスに対応するDSU(Digital Service Unit、ディーエスユー)やTA(Terminal Adapter、ターミナルアダプタ)などの端末機器が発売されたが、それら端末の開発・試験にはISDNに対応した擬似交換機が使われた。ISDNは2000年頃まで契約者数が増えたので、ISDN擬似交換機は複数メーカが発売した。 アナログ擬似交換器の老舗はアドシステムズで、X-4000シリーズ(X-4008 アナログ交換シミュレータなど)が有名。アナログ通信時代の通信計測器をラインアップしていた株式会社ニシヤマもEXCEL9204などを販売。三和無線測器研究所はAX267。これらはすべて生産終了(ニシヤマは2023年11月現在、EXCEL-N000シリーズを販売している)。現在は「松本無線パーツ株式会社岩国」が@約4万円で、電話回線疑似交換機(Network Simulator)TK-7598Wモジュラー縦置きタイプ、TK-7598WHモジュラー横置きタイプの2モデルを販売している。同社ホームページには「電話網のシミュレーションを行うための疑似交換機(ネットワークシミュレーター)で、各種電話機やFAX(ファックス)等の電話端末装置を、加入者回線に接続することなく試験やデモンストレーションができる。ナンバーディスプレイ対応。」とある(2024年5月現在)。 1988年に日本でISDNが開始されるまでは、擬似交換機はアナログの電話回線用が大半だったと筆者は推測する。ISDNが始まってISDN擬似交換機が計測器として各メーカから発売され、擬似交換機の主流はデジタルになったが、現在は主要な計測器メーカは擬似交換機をつくっていない。工場・防災・監視システムメーカの株式会社ハウは、アナログ電話回線用と「ISNネット64」用の疑似交換機をラインアップしている。有線電気通信機器メーカの甲賀電子株式会社はISDN擬似交換機を複数モデルつくっている。 emulateは「倣う」なので、「まねをする、代わりの動作をする」ものをemulator(エミュレータ)という(エミュレータの代表にICEがある)。simulation(シミュレーション)も「見せかけ、ふり、擬態」などの意味で、「模擬実験」の計測器をシミュレータと呼んでいることが多い。交換機の代わりをする擬似交換機はネットワーク エミュレータ(やシミュレータ)と呼ばれる。ネットワーク(通信回線)の代わりをする擬似通信網(擬似通信回線)という意味である。交換機は英語でexchangeなので、擬似交換機を単純に英訳するとpseudo exchangeになるが、計測器の擬似交換機は英語ではnetwork emulator(またはexchange simulator)が適切と筆者は思う。 ネットワーク機器に多くのアクセス(トラフィック、情報量)を与えて動作を評価する測定器を、負荷を与えるということで日本語では「負荷試験機」と呼ぶが、英語表記はtraffic generator(トラフィック発生器)で、負荷の英語であるloadではない。交換機に多くの電話機からアクセス(呼、call)が集中した際に正常な動作ができるか確認する測定器を疑似呼(ぎじこ、英語ではcall simulator、コールシミュレータ)という。多くの電話機が交換機につながろうとしてアクセスする(呼の負荷をかける)、多くの電話機(呼)の代わりをするのが疑似呼である。負荷試験機や疑似呼は通信回線にある機器(ネットワーク機器)に多くの機器からアクセスがある状況をつくり(トラフィックの負荷をかけて)評価し、擬似交換機は(交換機などのネットワーク機器ではなく)ネットワークにつながる端末(電話機など)を評価する測定器である。ただし、2000年代以降は交換機があまり新設されず、擬似交換機でなくネットワークシミュレータといういい方が増えている。また、負荷試験機をネットワークシミュレータと呼称するメーカもあり、品名からは両者の判別がつきにくくなっている。 余談だが、上記メーカはほとんど「擬似」交換機と表記しているが。「疑似」交換機という記載も散見する。日本語としては擬似のほうが疑似よりも多いという解説がある。LISN(擬似電源回路網)、擬似音声発生器など、計測器も「疑似」より「擬似」が多い。ただし呼制御の測定器は「疑似呼」である。計測の技術用語は、微小と微少、擬似と疑似のように、メーカによって表現が違い、統一されていない。計測器はニッチな製品で、計測器業界は村社会のため素人が理解しにくい所以である。
- 擬似電源回路網(ぎじでんげんかいろもう)
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電源ラインの妨害ノイズ測定に使用する機器。EMCのエミッション(EMI)試験で使われる。別名:LISN、AMN、擬似電源網。 一部のメーカでは「疑似電源回路網」と表記している場合もある。擬似と疑似は似た熟語で、メーカやモデルによって両方の漢字が使われている。
- 基準接点温度補償(きじゅんせってんおんどほしょう)
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温度計などに使われる温度センサである熱電対は、測温接点と基準接点との温度差で熱起電力が決定される。そのため測温点の温度を知るためには基準接点の温度も測る必要がある。その温度に相当する電圧を熱電対の起電力に加算し補正すること。(日本アビオニクス株式会社の「赤外線や工業計測器に関する用語」より)参考記事:記録計・データロガーの基礎と概要 (第2回)・・記録計/データロガーを利用する上での留意点として、基準接点補償について図解している。
- 基準レベル(きじゅんれべる)
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スペクトラムアナライザの表示で、画面の最大レベルの目盛ラインの値。(2009年9月発行のテクトロニクスの冊子「リアルタイム・スペクトラム解析のすべて」より)
- 気象観測機器(きしょうかんそくきき)
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雨量計、風向風速計、積雪計など、「天気予報で発表されるような数値」を計測する機器のこと。環境計測の機器(日射計や微粒子測定器、騒音計など)のうち、日射計は気象関連計測器に含まれることもある。温湿度計(気象用)や気圧計は、温度計や圧力計に分類されるが、気象観測機器に区分されることもある。 株式会社YDKテクノロジーズ(旧横河電子機器、横河ウエザック)は気象観測装置で有名。ノースワン株式会社には風向風速計KADECがある。
- 擬似ランダム・ビット・ストリーム(ぎじらんだむびっとすとりーむ)
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(Pseudo Random Bit Stream) 高速シリアル通信の波形評価では、ランダムな信号がテストパターンとして使われる。別名:擬似ランダム信号。周期性があるので実はランダムではない、擬似ランダム。英語を略記した PRBSという表記も良く使われる。 テクトロニクスの冊子「信号発生器のすべて」の用語解説では「擬似ランダム・ビット・ストリーム(PRBS):ランダムに繰り返される数字の列から構成される1 組のシーケンス。乱数のように見えるが、実際は予測可能な数学的パターンに従う。デジタル・システムでランダム・ノイズを作成するために使用される。」とある。シークエンス(sequence)は順序。PRBSはPseudo-Random Binary Sequenceの略という説明もある。 pseudoは擬似、 streamは流れ。PRBS(Pseudo Random Bit Stream)を直訳すると「擬似ランダムなビット列」であろうか。
- 擬似ランダム・ワード・ストリーム(ぎじらんだむわーどすとりーむ)
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(Pseudo Random Word Stream) 複数の擬似ランダム・ビット・ストリーム(PRBS)から構成されるワード・ストリームで、信号発生器のパラレル出力から送出される。シリアライザやマルチプレクサのテストによく使用される。略記:PRWS。(テクトロニクスの冊子「信号発生器のすべて」の用語解説より)