計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
計測・測定に関連する用語全般が収録されており、初めて計測器を扱う方でも分かりやすく解説しています。
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アーキテクチャ(あーきてくちゃ)

(architecture) 設計思想、考え方などの意味。元々は建築物の構造や、建築様式をさすことば。コンピュータやIT分野で良く使われるが、計測器も内部はコンピュータのため、このことばで表現されている事例がある。表記はアーキテクチュア、アーキティクチャなどもある。

アース(あーす)

地中深く埋めた銅板などと電気器具とを導線でつなぐこと (=接地)。漏電した場合でも漏電した電気はアースを通じて大地へ流れ、事故を未然に防ぐ。

アーステスタ(あーすてすた)

接地された導体と大地間の電気抵抗を接地抵抗という。接地(アース)抵抗を測定する機器がアーステスタ。別名:接地抵抗計 。 機器の(人が接触可能な)金属部が接地されているか確認する計測器に「アース導通試験器」がある(菊水電子工業などが安全規格の機種群としてつくっている)が、アーステスタ(接地抵抗計)とは異なる。

アース導通試験器(あーすどうつうしけんき)

(earth continuity tester、ground bond tester) 電気製品が確実にアースされているかを試験する測定器。英語名称は複数あり、一番一般的なearth continuity testerは、電気機器の金属筐体とアース端子間の抵抗が低い(導通している、低抵抗)ことを確認する試験器。次に多い名称のground bond testerは、接地(グランド)の強固さ(bond)を試験するために大電流を流す試験器。計測用電源メーカの1社である菊水電子工業や計測技術研究所にはground bond testerがある(菊水 TOS6200Aなど)。海外メーカのSCHLEICHには、grounding continuity tester(接地導通テスタ)や、IEC規格などで規定された保護接地(Protective Earth)を確認するPE Testerなどの名称のモデルがある。 戦後の1949年に創業した老舗計測器メーカ、菊水電子工業のHPでは「製品情報」ページに約10種類の製品群が、直流電源、交流電源、安全関連試験器の順番で記載されている(2026年3月現在)。同社は、電気技術者が実験室で使うベンチトップの直流電源で国内トップシェアだが、電源の次に安全規格関連の測定器に注力していることが、HPの製品掲載順から伺える。同社の製品総合カタログ(安全機器に関する用語)には次の説明がある。「アース導通試験:基礎絶縁とアースへの保護接地で安全性を確保するように設計された機器の、保護接続の完全性(連続性)を評価する試験。」

アースリード(あーすりーど)

(earth lead) オシロスコープの電圧プローブの先端(プローブヘッド)についているグランド側の線材のこと。アースはグランドと同義のためグランドリード(表記はグランド・リードもある)とも呼ばれる。アースリードはプローブヘッドに抜き差しできる交換部品である。 メーカによってアースリードやグランドリードなどの呼称があり、同一メーカでも2つの表記をしていることも多く、統一されていない。ECサイト(amazonなど)ではアースリードの商品名で販売している。同軸ケーブルなどの高周波の電子部品メーカのスタック電子は、計測器用のアクセサリとして固定減衰器やアッテネータをつくっているが、FETプローブや絶縁型のパッシブプローブも標準品で販売している。アースリードの先端がワニ口クリップ(※)になっている「ねじ頭グリップ(※)式アースリード」がスタック電子にはある。プリント基板などの四隅にある固定用のネジは信号のグランドにつながっていることが多いので、ネジの頭をクリップで挟んでアースに確実につなぐことができる。電気機器に使われているプリント基板にはアース用の端子(GND端子)が無い場合も多く、このようなアースリードは便利で重宝する。 (※) クリップ(clip)は物を挟む道具や部品、グリップ(grip)は物の握る部分。紙を挟んで束ねるクリップのように、計測器でもテストリードなどのDUTに接触する箇所にクリップは多く使われる(マルチメータやLCRメータなど)。アースリードの先端(アースにつながる側)はワニ口やミノムシなどのクリップが多い。グリップは野球バットやゴルフクラブなどの握る箇所を指しているが、スタック電子の商品名は「ねじ頭を握ることができる」という意味でクリップ(挟む)ではなくグリップ(握る)と命名していると推測する。

アートワーク(あーとわーく)

(artwork) 電子機器内に使われているプリント基板は、電子部品を配置して固定し、設計された回路図に従って部品同士をつないで電子回路をつくる役割をしている。配線はプリント基板上のパターンによってされる(多層基板の場合は内部にも配線がある)。電流が流れる配線であるパターンのことをアートワークと呼ぶ。パターンをつくるには電子部品の配置から考える必要があるので、広義には「パターンの設計をアートワーク」と呼ぶ。つまり、電気機器内で電子回路を実現するプリント基板の設計のことを「パターン設計」や「アートワーク設計」と呼称している。 マイクロコンピュータの普及によってパターンは複雑化し、コンピュータによる設計(CAD:Computer Aided Design、キャド)が普及したが、アナログ回路、高周波回路では単に部品の端子同士を線でつないでも正常な動作をしないことが多い。たとえばグランドラインを線でなく面にするとか、シールド(電磁的な遮蔽)を施すとか、アートワークは電気の知識がある技術者の設計作業である。 artwork(work of art)とは「芸術作品」という意味である。様々な形状、サイズ、ピン配置をした電子部品を、プリント配線板の上に実装してつくられた電子機器(ボードやユニット)は、電気のハードウェア技術者がデザインした芸術作品といえる。もちろん、電気の理論に従って緻密な部品配置とパターンをつくり、回路設計者の考え通りの機能を実現しての話である。

アービタリージェネレータ(あーびたりーじぇねれーた)

Arbitrary Waveform Generatorの略。つまり、任意波形発生器のこと(Arbitery:任意、Waveform:波形、Generator:発生器)。AWGと表記されることも多い。テクトロニクスの任意波形発生器の型名(※)は「AWG7000シリーズ」のように頭3文字をAWGにしている。任意波形発生器をつくっている外資系メーカの人が、会話で「アービタリー」と略していっているのを筆者は聞いたことがある(社内では英語の会話が多いためと推測される)。 2010年代から、「任意波形/ファンクションジェネレータ」という品名の製品が増えてきた。TechEyesOnlineではファンクションジェネレータ(FG)とAWGは別のカテゴリー(機種分類の仕方、機種群の名称)として扱っているが、2つを1つの分類で扱う傾向が計測器メーカから感じられる。従来、AWGにもFGの機能が多少はあった。FGが多機能化してAWGの機能を持つようになり、メーカとしても新機軸として、単なるFGではなくAWGの機能もある製品、というアピールを品名で伝えたいという意図が感じれらる。「高級器であるAWGの機能があるFG」というPRと思われる。品名が任意波形/ファンクションジェネレータである新製品を2020年頃にTechEyesOnlineに登録する際、メーカにAWGですかFGですか? と確認すると、はっきりと「両方です」という確たる回答があった。時代によって計測器のカテゴリーは変化する例といえる。 (※)テクトロニクスは自社製品の形名(モデル名、モデル番号)を「型名」といっている。形名の表記にも「AWG5202型」のような表現が随所にみられる。当用語集では「形名」で統一している(TechEyesOnlineには形名について考察する連載コラム記事「計測器の形名」がある)。同社の形名(いや型名)はDPO、TDS、RSA(リアルタイムスペクトラムアナライザ)のようにアルファベット3文字で始まることが多い。同社の任意波形発生器の品名は「任意波形ジェネレータ」である。2019年に他社に売却してしまったが、同社の映像関連の発生器の品名は「ゼネレータ」だった。それまではテクトロニクスといえば「オシロスコープ」と「ビデオ関連測定器(オーディオ・ビデオ測定器)」が長らく二枚看板だった。2000年代にRSAでRF(無線測定器)に参入し、2010年にケースレーインスツルメンツを吸収し、現在はオシロとワイヤレス、DC・半導体の3つが主要ラインアップになった。2024年にはDC電源のElektro-Automatik(EA)社がテクトロニクス・ファミリーに加わり、DC測定器が強化されている。

ARM(あーむ)

[半導体デバイスメーカ関連] RISCプロセッサで有名な英国のARM社のこと、またはARM社が提供するプロセッサ設計データ(ARMアーキテクチャ)を元に製造されたマイコンの総称。ICEに慣れた人はARMと表記するが、一般には「アーム」と表現されることの方が多い。 ARM社は電子回路の開発・設計をする英国企業で、自社工場を持たず製品販売もしないが、米国インテル、モトローラなどがARM社とライセンス契約をしてARMマイコンを製造・販売した。設計データはARM6、ARM10など複数のアーキテクチャがあり、アーキテクチャをカスタマイズできるライセンス契約をしたインテルのようなメーカはStrongARMと呼ぶ製品を自社開発した。消費電力あたりのパワー効率が高い為、2000年代には携帯電話の組込み用マイコンとして世界でもっとも多く採用された。ARM社自身はICチップの製造・販売などは行わず、設計情報をチップメーカーに提供し、製品の販売額などに応じたライセンス料を得る事業モデルである(ファブレスのさらに一歩進んだモデル)。 ARMは「Advanced RISC Machines」の略で、CISCの特長も取り入れたRISCといえる。「ARMアーキテクチャ」は「ARM系プロセッサ」とも呼称される。ARM系プロセッサはメーカが異なっていても命令セットを共有しているためソフトウェアの互換が容易で、組込みシステム(産業機器や家電製品の一部として組込まれるコンピュータシステム)への採用が進んだ。マイクロプロセッサ市場のうち、パソコン向けはインテルの86系プロセッサと各社の互換製品(サードパーティ)が主流だが、スマートフォンやタブレット端末などの携帯機器ではARM系製品のシェアが高い。インテル系製品の強かったサーバ市場でも、サーバ向けに特化したARMプロセッサが開発され、電力効率を重視するデータセンターなどに導入が始まっている。 まとめると、ARMとはマイクロプロセッサの設計を行なう英国企業。また同社によるマイクロプロセッサの設計(アーキテクチャ)や、それに基づくプロセッサ製品などの総称である。 日本のキャリア(携帯電話事業者)であるソフトバンクは2016年にARM社を傘下に収めた(ソフトバンクはITベンダーから始まり通信事業者になったが、さらに半導体メーカまで吸収した)。GPU大手の半導体メーカであるNVIDIA(エヌビディア)はインテル、AMDというCPUメーカに対抗して半導体市場のNo.1デバイスメーカになろうと、2020年にソフトバンクからARMを買い取ると発表したが、欧州での規制をクリアできず2022年に断念している。 ARMのビジネスは図面のライセンス。これは半導体の工程の上流を抑えていることを意味する。微細加工の進歩による集積度の向上で高密度チップにはトランジスタが数百億個あり、今後も増えつつける。 「建築にたとえれば、1つのチップを設計する作業は、大都市を丸ごと設計するようなもの。能力のある設計事務所でも、ビルや住宅などの細かい部分は出来合いの図面を買ってきて貼り合わせたり修正したりしながら、都市全体の図面を描いていくしかない。アームはビルや住宅の図面を設計事務所に売る会社である。2021年8月に英国政府の競争・市場庁は買収に異議を唱える報告書を公表した。欧州最後のテクノロジー企業が米国人(エヌビデイア)に売却されようとしている。」(「2030 半導体の地政学」 2021年11月 日経BP発行、より抜粋) インテルさえもARMから図面を買わないと設計ができない。ARMだけでなく、最先端の露光装置でオンリーワンのASLM(オランダ)などは、半導体で欧州が存在価値を示す切り札といえる。半導体が純粋な技術の話ではなく、軍事などの経済安全保障の問題である所以である。 計測器情報:ARM関連のICE製品例

REF CAL(あーるいーえふきゃる)

(Reference Calibration)非接触温度計(サーモグラフィ、放射温度計)関連の用語。測定対象物の放射が低く、温度が室温付近や低温の場合、室温や周囲温度からの反射成分が無視できなくなり、放射率補正では誤差が生じる。この誤差を補正するために環境温度に相当する物体を測定し、室温反射を補正する信号を発生させ、以後の補正値とする動作をいう。関連用語:IRSP CAL、ERSP CAL。(日本アビオニクス株式会社の「赤外線や工業計測器に関する用語」より)

RS-232C(あーるえすにーさんにーしー)

(Recommended Standard 232 version C) 米国電子工業会(EIA :Electronic Industries Association)によって標準化されたシリアル通信の規格の一つ。1960年に最初のRS-232が策定され、改訂を経て1969年にバージョンCのRS-232Cになった。EIA-232-Cという表記もある。 ホストコンピュータや端末(テレタイプライタ※1など)の「データ端末装置」(DTE:Data Terminal Equipment)と、モデムなどの「データ回線終端装置」(DCE:Data Circuit-Terminating Equipment)を接続してデータ通信するための電気的・機械的な特性の規格として策定された(※2)。その後、パソコン同士の直接接続や、コンピュータ周辺機器の通信インタフェースとして普及した。1970年代から1980年代のマイクロプロセッサ(MPU )の進歩とコンピュータの普及が背景にある。1980年代に民間に普及したパソコンには通信インタフェースとしてRS-232Cが標準で、2000年代にUSB が普及するまで採用されていた。工場などの産業・工業分野の電子機器も1980年代にアナログ通信がデジタル化する際に、シリアル通信のRS-○○(RS-422,RS-485 )が採用された。規格の発端はITU -T(旧CCITT)がテレタイプ端末とモデムの接続用に勧告したV.24やV.28で、これをIEAは米国内の規格にした。 モデム側のコネクタ仕様からピン数は25だったが、IBM が小型の9ピンのコネクタをつくり、現在はこちらが普及している。規格外だった9ピン仕様はANSI /TIA/EIA-574-90として規格に追加された。USBや無線LANなどのより高速な通信規格が普及し、RS-232Cは古い規格となったが、現在でも低速インタフェースとして使い続けられている。RS-232Cのプロトコルアナライザ、オンラインモニタは通信計測器の1機種群として健在である。 (※1)(teletypewriter) 遠隔地と文字で通信するための、タイプライタ型の装置。送信した文字が回線を通じて相手の装置に届き、自動的に印字され、電信(Electrical telegraph)のために開発された。テレタイプ端末という呼称もある。その後のコンピュータのキーボードやプリンタの元となった。電動タイプライタを使って文字情報を通信する電信のための装置。NTTは日本電信電話株式会社の英語名、Nippon Telegraph and Telephoneの略である。昭和前半の電話普及率が高くない時代には、カタカナの短い手紙で情報を届ける電報が使われている。teleは「遠く、遠隔の」を意味する接頭辞で、テレタイプライタは「(遠隔地と通信する)遠くのタイプライタ」。teleは多く使われ、television(テレビ)、telephone(電話)、telemeter(テレメータ)、telescope(望遠鏡)などがある。 (※2)遠隔地のコンピュータ同士がデータ通信する方法は、アナログの電話網を使うしかなく、モデムのような装置が開発された。1990年代に公衆通信網でデジタル通信(日本だとISDNなど)が始まるまでこの方式が主流だった。TechEyesOnlineの記事「計測器の形名・・・第4回 通信計測器Part1」の図3で図解している。

RS-232Cアナライザ(あーるえすにーさんにーしーあならいざ)

(RS-232C analyzer) RS-232C回線の情報のやり取りを観測する測定器。別名、RS-232Cラインモニタ、さらに略してラインモニタとも呼ばれる。 1980年頃から2000年代前半頃までPCのインタフェースはRS-232Cが標準だった。端末間のデータ通信にRS-232Cが広く使われ(モデムとの接続もRS-232C)、ラインモニタといえばRS-232Cの通信ラインをモニタするもの、という意味で「RS-232Cラインモニタ」や「RS-232Cアナライザ」という表現が良く使われた(ラインモニタはRS-232C以外の規格も観測できる)。アナライザとは、プロトコルアナライザのことである。 プロトコルアナライザはRS-232Cなどで通信している端末の代わりになって送受信することができる(擬似端末になる)。そのようなエミュレーション機能ではなく、回線に流れているデータを観測する機能がラインモニタ(正式にはオンラインモニタ。オフラインではなくオンラインでリアルタイムにモニタできる)である。つまり、ラインモニタは限定された機能のプロトコルアナライザ。プロトコルアナライザのモニタ機能を指してオンラインモニタ(やラインモニタ)と呼ぶが、ラインモニタと呼称するモデルでも擬似端末になる機能がある場合があり、具体的な名称(品名)からは判別が難しい。 PCのインタフェースはRS-232CではなくUSBになり、アナログ電話回線の時代に活躍したモデムも過去の物となったが、RS-232Cは低速の通信規格としていまでも現役である。「データリンク / RS232Cアナライザ」や「RS232C RS422 RS485アナライザー / シリアル通信モニタ」、「ラインモニタ Analyze232C」などの名称の製品が販売されている(2024年にインターネットで検索)。 形状は、タブレット型のハンドヘルドなサイズから、変換アダプタのような2~3cm程度の小箱だったり、PC上で動くソフトウェアだったりする製品も多い。1980年代にhp(現キーサイト・テクノロジー)や安藤電気がラップトップ型計測器のRS-232Cアナライザ(AE-5106など)をつくっていた時代とは違い、いまはデジタル機器のベンチャー企業が主なメーカである。形状もハードウェア(計測器という外観)ではなく、小箱やソフトウェアになっている。

RS-232Cラインモニタ(あーるえすにーさんにーしーらいんもにた)

(RS-232C line monitor) 低速のシリアル通信規格であるRS-232Cの、通信データをモニタするプロトコルアナライザ。正式には「RS-232Cのオンラインモニタ」(オフラインではなくオンラインでリアルタイムにモニタできる)だが、ラインモニタという呼称が良く使われている。 RS-232Cアナライザともいわれる(プロトコルアナライザの1種なので)。 パソコンの標準インタフェースがRS-232Cで、モデムにRS-232Cで接続して、アナログ電話回線でデータ通信をした時代(1980~1990年頃)とは異なり、いまのPCはUSBが標準で、Wi-Fiや光回線を使いインターネットにつながるのでRS-232Cは使わないが、低速の安価な規格としてRS-232Cはいまでも現役である。「RS-232cラインモニタ / シリアル通信用アナライザ」や「ラインモニタ Analyze232C」、「RS232C RS422 RS485 シリアル通信用ラインモニター」などの名称の製品が販売されている(2024年にインターネットで検索)。 ただしこれらは、1980年代のhp(現キーサイト・テクノロジー)や安藤電気がつくっていたラップトップ型計測器(AE-5106)やハンドヘルドモデル(AE-5108)のRS-232Cラインモニタとは大きく異なる。現在のメーカはほとんどがデジタル機器のベンチャー企業で、形状もハードウェア(計測器という外観)ではなく、2~3cm程度の小箱やソフトウェアが多い。つまり計測器というよりIT商品に近い。通信計測器の1カテゴリーであるプロトコルアナライザには違いないので、本稿でも取り上げているが、計測器メーカはつくっていないし、計測器の範疇でも流通していない。通信機器、PC周辺機器、デジタル商品、という範疇でECサイトなどが販売している。 プロトコルアナライザだけでなくロジックアナライザ(※)やICE(マイコン開発支援装置、デバッガ。アイスと呼称)などのデジタル系の計測器はアナログの物理現象を測定しないので、校正の必要がない。PCのようにソフトウェアで動作するデジタル系計測器は計測器メーカだけではなく、デジタル機器をつくれるメーカが元から多い。 (※) ロジックアナライザは電圧を測定するが、表示はHigh/Low(1か0)で、電圧値ではない。値を表示しないのでマルチメータのように測定精度(誤差)の概念がない。つまり校正対象外である。

RS-485(あーるえすよんはちご)

(Recommended Standard 485 ) 米国電子工業会(EIA :Electronic Industries Association)によって標準化されたシリアル通信で、バス型のマルチポイント接続に対応しており、最大32台まで対応している(株式会社高砂製作所の用語集より)。FA(工場の自動化)やビル管理などの産業現場で広く使われているデジタル通信の規格。別名、EIA-485やTIA-485。 マルチポイント接続(マスタ/スレーブ)は親機 1台に対し、最大32台の子機を接続できる。特長は1つのペア線で複数機器を接続でき、最大1.2km(ケーブル長)まで最大10M bpsの長距離・高速伝送できること。2本の信号線(A線、B線)の電圧差でデータを判別する差動のためノイズが乗りにくい(耐ノイズ性が高い)ので、産業機器などのノイズが多い環境でも安定した通信ができる。半二重通信(2線式)で、1つのバス(2線)を共有するので、送受信を切り替える。工場内でPLC(プログラマブルロジックコントローラ)とセンサ間の通信や、温調計、インバータ、モータドライバの監視・制御、BA(ビルオートメーション)や空調管理システムなど、広範に使われている。 RS-485は物理層(レイヤ1)規格で、Modbus(モドバス)やMECHATROLINK(メカトロリンク)はRS-485を使って上位レイヤ(プロトコル)を規定している。RS-485はRS-422と共に工場内の生産現場、発電所などのプラントで現役で広く普及しているデジタル通信である。1970年代から長らくパソコンに標準装備されていた通信インタフェースのRS-232Cは、2000年頃からUSBに置き換わった。工場内のネットワークもより高速化が求められ、産業用イーサネットが2000年代前半に登場し、2010年代を通じて従来のフィールドバス に代わる主流通信技術として普及した。2017年には新規市場の過半数を占めるようになったといわれるが、RS-485などの従来技術は現在も使われ続けている。

Rx(あーるえっくす)

有線・無線通信で受信データのこと。Received dataの略記(小文字のxはデータの意味)。受信機(レシーバ)のことをRxと記述している例もある。Rxと対になる送信データはTx(Transmission dataの略記)と記載される。Rx同様に送信機をTxと表記することもある。

RF(あーるえふ)

(Radio Frequency) 別名:無線周波数。和訳すると「ラジオ周波数」。無線通信に使われる周波数のこと。「高周波」と表現されることもある。正確に何Hzの周波数範囲を指すかは文献によってさまざまで、定義は難しい。無線通信が始まったとき、無線機(ラジオ)で通信できるキャリア(搬送波)の周波数範囲をRFと呼称したと推測される。現在ではおおむねMHz~GHzの周波数を指している。「kHz~300GHzの電磁波の総称」という定義もある(※)。 RFの計測器というと、スペクトラムアナライザ(スペアナ)を筆頭に信号発生器(SG)や高周波パワーメータ(低周波の「デジタルパワーメータ」ではなくRFパワーメータ)などの高周波の(無線の)基本測定器が相当する。高周波ということでネットワークアナライザ(ネットアナ)を含める場合もあるが、ネットアナは回路素子測定器(LCRメータなど)や材料測定器と同じ分類にされることも多い。 同じRFの周波数帯の測定器でも、携帯電話などの特定の通信方式に対応した測定器(ワンボックステスタ、無線機テスタ、シグナリングテスタなど)は(基本測定器ではなく)専用器なのでTechEyesOnlineでは「無線/移動体測定器」という別カテゴリーに分類している。ただし、無線測定器の主力(大きな売上)は携帯電話用途なので、「RF/マイクロ波」というカテゴリーで、上記のスペアナから無線機テスタや、電磁界強度計(メジャリングレシーバ)までを説明している文献(計測器の辞典)もある。 通信計測器には有線の測定器(光通信測定器や伝送交換の装置用測定器など)と無線の測定器があり、RFを含む無線測定器のメーカは、世界的にキーサイト・テクノロジー (米国)、ローデ・シュワルツ(ドイツ)、アンリツ(日本)の3社が有名で、多くのラインアップがある。特定分野の無線測定器ではリーダー電子(TV放送)、目黒電波測器(現計測技術研究所、GPS関連測定器)などがある。横河計測や菊水電子工業も特定モデルをラインアップしていたが、ほとんど生産中止になっている(横河計測は低周波の電力計、パワーアナライザなど、菊水電子工業は直流電源などの安定化電源が高シェアで、いずれも低周波の基本測定器が主力のメーカといえる。菊水電子工業はEMC関連計測器もある)。テクトロニクスはリアルタイムスペクトラムアナライザでRFの基本測定器であるスペアナに参入したが、上記の無線3メーカに伍するまでにはなっていない。 無線のほぼ専業だったローデ・シュワルツやアンリツは無線以外のカテゴリーの計測器(オシロスコープや温度・振動・ひずみなどの物理量測定器)にラインアップを広げている。キーサイト・テクノロジーは無線の専業ではなく、デジタルマルチメータなどの基本測定器からワンボックステスタなどの専用器まで直流から高周波を幅広くラインアップする総合計測器メーカだが、RF測定器の事業部門は名門で、同社を支える屋台骨である(オシロスコープの事業部門よりも歴史が古い)。 計測器の名称(品名など)でRFが付くモデルは多く、TechEyesOnlineでは約800モデルを掲載している(2025年現在)。 (※) RFの定義(周波数範囲)は文献によって「数kHz~数GHz」や「3kHz~300GHz」と説明している例がある。ただし、AMラジオ(中波放送)は526.5kHz~1606.5kHz(つまり0.5MHz~1.6MHz)、FMラジオの東京FMは80.0MHz、4G携帯電話は700MHz~3.5GHzで、身近な無線通信はMHz~GHzの周波数を使用している。計測器でRF(または高周波、無線)というとこの範囲を指していることが多い。 もっと高い周波数にマイクロ波(一般の定義では、300MHzから30GHz)、ミリ波(一般の定義では、30GHz~300GHz)がある。一般にマイクロ波は「RFよりも高い周波数」と認識されている。両者の違いは「波長がメートル単位だとRF(高周波)、もっと短い(周波数が高い)センチメートル単位がマイクロ波」といえるが、ほとんど同義で使用されることも多い。別の解説で「RFは、3kHz~300GHzの広い範囲の電磁波の総称で、マイクロ波はその一部の300MHz~300GHzの比較的高い周波数を指す」という説明もある。ここではマイクロ波にミリ波が含まれているが、通常はミリ波はマイクロ波とは別で区別されている。つまりこの解説は少し怪しいが、「RFはマイクロ波を含む呼称」という解説は一理あると筆者は思う。 可聴周波数(20Hz~20kHz)に対応するオーディオ関連測定器は、低周波(商用周波数の50Hz/60Hz)ではないので高周波と呼ばれることはあるが、RF(無線周波数)かというと微妙である。スペアナの測定範囲はkHzからの機種も多いので、明確に「kHzはRFではない」とはいえないが、RFの範囲といえば筆者はMHz~GHzをイメージする。広義で「MHz~30GHz」であろうか。このようにRFの周波数範囲は識者の見解によって変わり、定義は明確ではない。

RF I-V法(あーるえふあいぶいほう)

交流インピーダンス測定の手法の1つ。インピーダンスアナライザで測定周波数100MHz~3GHzあたりのモデルに採用されている方式。100MHz以下のLCRメータなどには自動平衡ブリッジ法が採用されている。参考記事:LCRメータの基礎と概要 (第1回)・・LCRメータの構造や測定原理、各社LCRメータの紹介など。

RF信号発生器(あーるえふしんごうはっせいき)

主に無線通信機器の試験用信号を発生する測定器。別名:シグナルジェネレータや標準信号発生器。 2000年代に無線通信がアナログからデジタル方式に変わっていったため、現在はRFデジタル信号発生器という品名のモデルが増えた。また、キャリア周波数が高くなる傾向で、マイクロ波での通信が普及したり、6Gではミリ波の使用が現実視されている。そのため無線通信用の信号発生器も「RF/マイクロ波信号発生器」という品名のモデルもある。

RFパワーアンプ(あーるえふぱわーあんぷ)

(RF power amplifier) RF帯で使用される電力増幅器。RFとはRadio Frequencyの略で、無線通信などに使われる周波数のこと。「高周波」と表現されることもある。RFパワーアンプを翻訳すると「高周波電力増幅器」。EMCでは必須で使われる。また、SG(信号発生器)からDUTに高周波信号を入力してスペクトラムアナライザで評価する場合、複数のDUTを一度に評価するとき、DUTの前にPFパワーアンプと分配器を入れ、DUTの後に切替器(スイッチ)を入れると、効率の良い評価ができる。そのためRFパワーアンプは精度が求められる。「RFアンプ」というと計測器(機器)ではなく部品を指している場合が多い。 EMC用途では海外のAmplifier Research社(販売は日本オートマティック・コントロール株式会社)が有名。東陽テクニカも複数メーカを取り扱っている。国産では高周波機器の株式会社R&K(アールアンドケー、本社:静岡県富士市)が計測器(RFパワーアンプ)と部品(RFアンプ)の両方をつくっている。高周波部品メーカのMini-Circuits(ミニサーキット)もRFパワーアンプのラインアップがある。 計測器の情報サイトTechEyesOnlineの計測器ページでは、障害・EMI試験器 / 電力増幅器に分類している。RFが付かない「パワーアンアプ」だと高周波に限らず、商用周波数の電力計(パワーメータ)のアクセサリなどがある。

RFパワーセンサ(あーるえふぱわーせんさ)

(RF power sensor) RFパワーメータ(高周波電力計)のセンサ。高周波電力の値を測定するために各種のセンサがあり、用途によって使い分けられている。周波数などの仕様が各センサで異なる。 センサはパワーメータ本体によって使えるものが決まっている。メーカが異なると通常は併用できない。メーカが同じでもパワーメータによって使えるセンサは限定される。つまりパワーメータの併用製品(センサがないとパワーメータは測定できないので必須の製品)である。 メーカは高周波(RF)の計測器をつくる、アンリツ、キーサイト・テクノロジー、ローデ・シュワルツなどである。以前は国産のフジソクがあったが、2022年頃に生産中止になっている。

RFパワーメータ(あーるえふぱわーめーた)

(RF power meter) 高周波(RF)信号の電力(power)を測定する計測器(メータ)。別名:高周波パワーメータ、高周波電力計。 パワーメータ(電力計)には3つあり、アナログの指示計器のものを通常は「電力計」、低周波(商用周波数など)のものを「デジタルパワーメータ」や「パワーアナライザ」、高周波のものを「RFパワーメータ」や「高周波電力計」と呼称する。計測器村の住人ではない初心者にはこの呼び方の違いを理解するのは難しい。 メーカは高周波の計測器をつくる、アンリツ、キーサイト・テクノロジー、ローデ・シュワルツなどである。同3社は低周波のパワーメータをつくっていないので、自社のRFパワーメータを単に「パワーメータ」と呼称することも多い。3社が高周波が得意な計測器メーカであるという知識がないと、この「パワーメータ」がRFパワーメータであることがわからない(計測器村の住人以外は、まったくわからない)。 以前は国産のフジソクがあったが、2022年頃に生産中止になっている。