光電融合
(photoelectric fusion)
光回路と電気回路を融合させた技術や、光と電気が融合した複合デバイスの総称。
電気でなく光で処理を行う光半導体(光集積回路)の実用化を進めているNTTは、2019年に次世代ネットワーク構想、オール・フォトニクス・ネットワークのIOWN(アイオン)を発表した。NTT研究所の光電融合部門は2023年8月にNTTエレクトロニクスと統合され、NTTとは別会社のNTTイノベーティブデバイス株式会社となった。「研究所で基礎技術を培ってきた光電融合を事業として実用化するため」と発表されている。
IOWNグローバルフォーラムには世界中の先端企業が参画している。インテルなどの米国企業は、シリコンフォトニクスといって、従来のシリコンベースの半導体で光電融合(光半導体)を実現することに注力している。光を使うことで、電気を使う部位が減ると省エネ、小型化が実現する。米国、中国を筆頭に世界中の企業が次世代の半導体として研究している。光半導体のような半導体チップだけでなく、プリント基板に光を通すことも視野にある(電気の配線が光に置き換わる)。シリコンなどの光導波路の実現には材料の研究開発も必要で、日本の優秀な材料メーカには期待がかかる(半導体の材料では世界トップの企業群がある国産メーカがインテルなどに供給しているかは、ほとんど報道されないので現在は不明である)。
キーサイト・テクノロジーは、光部品の評価に注力して光測定器をラインアップしてきた(※)。光電融合の関連製品としては、光ファイバの調芯ステージ(測定用の治具)を含めた、光測定ソリューションを提案している。光導波路の偏波依存性損失(PDL:polarization dependent loss)などを偏波アナライザや波長可変光源などを組み合わせて評価するシステムをラインアップしている(以下の参考記事が詳しい)。
アンリツはマイクロウェーブ展2023(11月30日~12月2日)で、「光電融合デバイスのミリ波特性評価」と題してOpto-Electronic Network Analyzer ME7848Aを展示した。110GHzのO/E変換器とE/O変換器を使い、光デバイスを評価する(システムの構成は以下)。
ME7838AX 70kHz~125GHz VNA、MN4775A 110GHz E/O Converter、MN4765B O/E Calibrator、MPIプローバシステム。(proberは半導体デバイスと測定器をつなぐプローブ装置。DUTの治具)
同社は無線測定器のトップベンダだが、BERT(ビット誤り率測定器、バート)などの高速光通信の信号品質を評価する測定器も世界No.1である。上記のシステムは、光デバイスをO/EとE/Oによってネットワークアナライザで評価する。光測定器ではなく電気ドメインで評価するアプローチである。
(※) キーサイト・テクノロジーのホームページの「製品・サービス」ページでは、「photonic tests and measurements」(フォトニック試験および測定製品)と題したページの下に「optical component test」(光学部品試験製品)が掲載されている(2024年4月現在)。同社は2000年頃には光通信測定器の世界No.1メーカだった(No.2は安藤電気)。光パワーメータ、光源から、光スペクトラムアナライザ、OTDR、光信号のアナライザ(DCA)、偏光(偏波)測定器まで、ほとんどの光測定器をカバーしていた。競合のアンリツや安藤電気は、光部品の中でも光ファイバを評価する光測定器(OTDRやOLTS)に注力したが、同社とアドバンテスト(遅れて光測定器に参入したが、2010年頃にはほとんどの製品を生産終了)は長尺の光ファイバではなく一般的な光デバイス(数mm程度の短尺)の評価に使う偏波スクランブラをつくっていた。
光海底ケーブルバブルによって同社は光スペアナやOTDRなどの光測定器の主力製品を生産終了し、光測定器のラインアップは激減したが、光パワーメータ、光源、偏波関連測定器はつくり続け、光デバイスの評価ソリューションを堅持している。高周波で材料を評価するネットワークアナライザも同社は世界トップである。