計測関連用語集

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詳細説明

偏波

(polarization)
電磁波や光は進行方向に垂直な面内で、電界と磁界が時間的・空間的に規則的な振動をする。振動の軌跡には偏りがあり、この状態を電波は偏波、光は偏光と呼ぶ(※)。偏波とは電波の空間に対する向きを表し、直線偏波と円偏波の2つがある。電界が常に1つの平面内に存在するのが直線偏波、電界が進行方向に向かって回転する場合を円偏波と呼ぶ。

テレビの電波を良好に受信するには受信したい中継局の電界の振動方向(つまり偏波状態)に合わせてアンテナを設置しないといけない。地上波デジタル放送(地デジ)などは一般には水平偏波が多いが、地域によって違う場合がある。地デジやFM放送は直線偏波だが、衛星放送は円偏波。TVやFMラジオなどのVHF、UHFの電波の受信は八木・宇田アンテナが使われることが多い。このアンテナはエレメントの向きが偏波面からずれると感度が低下するので、エレメントの向きを放送波の偏波面に合わせることが重要。電気工事の作業者の常識である。

シングルモードファイバは、その名の通り1つのモードだけを伝搬しているが、実際には直交する2つの偏光モードが伝搬する。光ファイバのコアは理想的には真円だが、側面からの外圧などにより真円ではなくなり、僅かな複屈折が発生する。この影響で直交する2つの偏光モードの伝搬速度に差が生まれ、信号波形が劣化する。この現象を偏波モード分散(PMD:Polarization Mode Dispersion)と呼び、高速光通信(10Gb/s以上)では問題となる。電磁波の1種である光が偏波なので起きる現象である。
PMD以外に光ファイバの重要なもう1つの特性に「波長分散」がある。光は波長が違うと、光ファイバの中を伝搬する速度が違うため、伝搬時間の差(遅延)が発生する。光通信用の光源の波長にはわずかな幅があるため、単一の光パルスが光ファイバを伝搬していくと、波長分散によって、時間と共にパルス幅が広がっていく。この現象を波長分散と呼ぶ。偏波モード分散と波長分散は光ファイバ通信の重要な評価項目である。
電気を使わずに光で処理を行う光集積回路(光半導体)が、インテルなどの大手デバイスメーカで研究されている(シリコンフォトニクス)。NTTが2019年に発表したオール・フォトニクス・ネットワーク構想であるIOWN(アイオン)でも光半導体はキーデバイスである。光半導体からの光を受ける側の光導波路をプリント基板などに生成しないと、オール・フォトニクス・ネットワークは普及しないと考えられている。光導波路の特性は偏波に大きく依存する。そのため偏波依存性損失(PDL)を波長可変光源偏波コントローラ光パワーメータなどによって評価することが重要である。

(※)実際は光も偏波という表現を使うことが多い。たとえば上記の偏波依存性損失や偏波コントローラなど。ただし光の偏波の度合い(偏光度)の測定器は偏波計ではなく「偏光計」と呼ばれている。また偏波コントローラを偏光コントローラと呼称する場合もある。英語のpolarizationを翻訳時に、光の場合は偏波と偏光が、統一されずに日本語になっている(明確な定義を筆者は見たことがない)。解説者によって不統一なので、偏波コントローラが電波ではなく光の測定器であることは初心者にはわかりにくい。偏光コントローラならば、光測定器をイメージしやすい。計測器はまったく、知っている人達だけのニッチな村世界である。

参考用語
参考記事
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