広帯域オシロスコープ
(wideband oscilloscope/broadband oscilloscope)
2000年代に登場した周波数帯域がGHzのオシロスコープ。それ以前にも4GHzのモデルはテクトロニクスやhp(現キーサイト・テクノロジー)も発売していたが、高速シリアル通信などの評価をするアナライザとして2000年代中頃から登場したキーサイト・テクノロジーの54855AやテクトロニクスのTDS7000シリーズ以降の6GHz以上の帯域の機種群が代表的なモデルである。
広義には1GHz以上の帯域のモデルを指しているとする文献もあるが、各オシロスコープメーカのシリーズを見ると、2GHzあたりを境にしているので、筆者は2GHz以上が広帯域オシロスコープ(通称:高速オシロスコープ)と考えている(以下の参考記事「オシロスコープの動向と、最新1GHz帯域モデルの各社比較」に主要メーカのモデルを分類)。広帯域オシロスコープは単に周波数帯域が高いだけでなく、半導体デバイスなどに採用される、各種の通信規格の評価ができることが特長(たとえばDDRや、高速なシリアル通信のバス解析など)。そのため解析ソフトウェアや大きなメモリをオプションで用意している(以下の参考記事「計測器の形名・・・第3回 オシロスコープPart2 ~ DSO、DPO、DSA、MSO」が詳しい)。
また、広帯域オシロスコープが登場する以前は、高い周波数はサンプリングオシロスコープで測定を行ったが、広帯域オシロスコープが普及するとサンプリングオシロスコープの主要な目的の1つであるアイパターン測定は、広帯域オシロスコープのマスクパターン(オプション)などで行われるようになっている。
2010年代初頭にはオシロ3大メーカのテクトロ、キーサイト、レクロイ(現テレダイン・レクロイ)が周波数帯域30GHzのモデルを発売して、最高機種を競っている。2018年にはキーサイト・テクノロジーが110GHzモデルを発表している(以下の参考記事「キーサイト・ワールド2018」で世界初公開を取材)。同じく2010年代に、分解能(ADコンバータのビット数)を向上させる方向に各社が製品開発を進め、高分解能オシロスコープが発表されている。2023年には多チャンネルオシロスコープを売りにしてきた横河計測も12ビットモデルを発売し、内外の主要なメーカ(テクトロニクス、キーサイト・テクノロジー、テレダイン・レクロイ、ローデ・シュワルツ、岩崎通信機
、横河計測)がラインアップした。中華系オシロスコープも続々と追従している(リゴルやSiglent Technologiesなど)。
広帯域オシロスコープは薄型TVやデジタルカメラ、携帯端末、などの情報家電機器に高速な通信インタフェース規格が搭載されるに従い、それを実現する半導体デバイスメーカや家電メーカの旺盛な需要によって2000年代以降に普及した。同時にWi-FiやMIMOなどの高周波の無線通信の評価にも不可欠となった。400Gbpsなどの高速な光コヒーレント通信の開発にも使われる。
上記のアプリケーションはすべて通信である。つまり広帯域オシロスコープは、電気技術者が1台/1人で使う(普段使いの)基本測定器ではなく、通信の専用器(アナライザ)である。
参考用語
参考記事
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オシロスコープの動向と、最新1GHz帯域モデルの各社比較
表1は2022年9月現在の各社のオシロスコープの形名一覧。No.3、4の最高周波数帯域2GHz以上が、広帯域オシロスコープ。
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計測器の形名・・・第3回 オシロスコープPart2 ~ DSO、DPO、DSA、MSO
広帯域オシロスコープのDSAとは。
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会員専用【イベントレポート】キーサイト・ワールド 2018 /会場:JP TOWER Part1
UXRシリーズ 110 GHzリアルタイムオシロスコープ
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会員専用市場動向レポート 「高速デジタルインタフェースの動向と計測ソリューションの概要」2016年10月号 TechEyes Vol.19 2ページ目
図10にテクトロニクスのモデル変遷を図解。
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高速オシロに本格参入 (ローデ・シュワルツ R&S RTP ハイパフォーマンス・オシロスコープ発表会)
ラインアップあり(2018年6月現在)。