速納.com

学び情報詳細

2022/11/14

オシロスコープの動向と、最新1GHz帯域モデルの各社比較

2000年以降のオシロスコープの変遷~新しい機種群の登場

2000年代初頭のオシロスコープのボリュームゾーンは周波数帯域100MHz~500MHzで、1GHzモデルは高級器、最高機種は4GHzだった。2000年代はデジタルカメラ、薄型テレビ、DVDレコーダなどのデジタル家電が進化した。新情報家電といわれた商品群の勃興は、従来より広帯域なオシロスコープを必要とした。2005年にアジレント・テクノロジー(現キーサイト・テクノロジー)は、高速シリアル伝送などの評価用に新しいコンセプトの6GHz帯域モデル54855Aを発売した。これは従来のオシロスコープとは異なる、高速伝送評価用のアナライザ(広帯域オシロスコープ/高速オシロスコープ)で、デバイスや家電メーカの旺盛な設備投資によってアジレント・テクノロジー以外も同等製品で追随した。以降、DDRやPCI Express※1などの評価用に、オシロスコープの周波数帯域は8GHz、10GHz、20GHzと最高性能を更新するモデルが、主要3社から販売された。これらのオシロスコープの本体価格は数百万円~1千万円以上だった。併用するアクティブプローブは約100万円/本で、当時の500MHzオシロスコープの本体価格より高額だった。カテゴリーとしてのオシロスコープの生産・販売額は激増した。

※1

DDR(Double Data Rate)は半導体メモリの代表であるDRAM(Dynamic Random Access Memory)の規格。PCI Express(Peripheral Component Interconnect Express、略記はPCIeやPCI-Eもある)はインテルが主導するPC向けシリアル通信規格。これら規格のアップグレードに伴い、広帯域オシロスコープは評価用オプションを発売する。

広帯域オシロスコープの周波数帯域の向上とともに、ミドルクラスのオシロスコープにも2000年代後半以降にいくつかの変化があった。マイクロプロセッサの進歩・普及により、組込み装置※2の開発にはICE(インサーキットエミュレータ)とロジックアナライザが使われていたが、オシロスコープはロジックアナライザの機能を取り込んだ。アナログとデジタルの混合信号(ミックスドシグナル)を1台で波形観測できるMSO(ミックスドシグナルオシロスコープ)が登場した。2007年発売のテクトロニクスのMSO4000シリーズはいまに続く薄型大画面の走りだが、現在では形名にMSOと付くオシロスコープが一般的となった。また、ミドルクラスのオシロスコープの周波数帯域は500MHzから1GHz(~2GHz)へと伸びた。

※2

組込みソフトウェアが搭載された装置。炊飯器から携帯電話まであらゆる電子機器にはマイクロプロセッサとそれを動かすソフトウェアが組込まれている。Embedded System(組込みシステム)とも呼ばれる。

自動車の電動化の進展など、活況なパワーエレクトロニクス分野では、時間波形だけでなく電圧も精度良くオシロスコープで測定したいという需要が高まった。2011年にレクロイ(現テレダイン・レクロイ)はADコンバータを12ビットにした高分解能オシロスコープを発売した。デジタルオシロスコープの誕生以来、1千万円の高額な広帯域オシロスコープでも分解能はすべて8ビットと決まっていた※3。12ビットモデルの登場によってオシロスコープは時間波形の観測器ではなく、電圧も測定できる計測器となった。2018年以降はテクトロニクスやキーサイト・テクノロジーなどが12ビット分解能モデルを発売したことで、高分解能モデルはミドルクラスの1つの機種群(主要な仕様の1つ)になりつつある。

※3

8ビット=256分割。1/256=0.4 % のため、オシロスコープの電圧表示の有効桁数は2桁までで、3桁目はあまり信用できない値である。この精度はハンドヘルドのデジタルマルチメータよりもはるかに劣る。

オシロスコープの入力チャンネル数は4ch(か2ch)だが、DLシリーズでデジタルオシロスコープに参入した横河電機(現横河計測)は唯一、8chモデルを1993年からラインアップしてきた。2017年以降は他社も8チャンネルモデルを発売し、現在では主要なオシロスコープメーカが多チャンネルモデルをつくっている。また、2022年6月、テクトロニクスは3シリーズMDO※4の下位モデル「2シリーズMSO」を発売したが、形状はタブレット型※5で、今後はミドルクラスのタブレット型が他社からも発売されるかもしれない。

※4

(Mixed Domain Oscilloscope)スペクトラムアナライザのオプションがあるオシロスコープ。

※5

タブレット型オシロスコープはすでに通販サイトで販売しているが(約数万円)、2シリーズMSOは500MHzまでの組込み装置の開発などを対象にした、ミドルクラスで初めてのタブレット型である(発表時価格238,000~1,420,000円)。

オシロスコープ市場の変化~デジタル化の進展

利用者や測定対象の視点から、オシロスコープの変化について以下に列記した。デジタル化の進展によって、オシロスコープはアナログ信号の観測器からソフトウェアのデバッグツールに比重が移っている。組込み装置の普及によるソフトウェア技術者のオシロスコープ活用、MSOやシリアル通信がキーワードである。

1 利用者の環境変化

製品開発チームに複数企業が参加し、開発場所が多拠点になる(海外のケースもある)。

開発期間の短縮で、モデルベース開発※6などが普及。

組込み装置の開発ではソフトウェア技術者によるデバッグの比率が大きくなる。

※6

(Model Based Development)組込み開発のリードタイムを短縮する手法で、自動車業界などで導入されている。略記:MBD。制御対象をリアルタイムに実現するシミュレータであるHIL(Hardware In the Loop)が使われる。

2 測定対象の変化

デジタル化によってアナログ回路が少なくなったことで、アナログ信号の観測が限定的になり、アナログとデジタルの同時観測が必要になる。

組込み装置の開発では多点同時の波形観測が必要になる(オシロスコープの多チャンネル化)。

デジタルICの高速化と低電圧化が進み、デジタル波形の観測ニーズが高まる。

デジタル回路が組まれたプリント基板内や基板間がシリアル通信で接続される。

試験方法や解析方法が規格化されるようになる(オシロスコープの解析オプションの充実)。

3 オシロスコープの変化

利用者はハードウェア技術者だけに限定されず、ソフトウェア技術者が増える(電気の知識が少ない技術者がオシロスコープを操作することが増える)。

アナログ / デジタル混在の信号を観測できるようになる(MSOがミドルクラスの標準になる)。

シリアル通信の解析が容易になる(オシロスコープのソフトウェアオプションが対応)。

特定の評価を対象とした試験方法や解析がオシロスコープだけで可能になる。

目的に応じた多様な信号を測定できるようにプローブの種類が増える。

デジタル化された作業環境を構築するためのソフトウェアやサービスの価値が高まる(たとえば、PCとの併用を前提としたり、ネットワークを介した開発環境など)。

オシロスコープに波形発生器などが搭載でき、1台でデバッグできるように高機能化する。

オシロスコープの低価格化と高性能化により市場の寡占(棲み分け)が進む。残念ながら国産メーカは2社に減り、逆に新規参入によって海外メーカは増えている。

オシロスコープはアナログ波形だけでなくロジック信号を観測し、プロトコルアナライザのように通信内容を翻訳表示し、特定の通信方式のジッタやアイパターンなどが規格に合致しているか、適合性試験(コンフォーマンステスト)ができる、高機能測定器になった。一口にオシロスコープといっても機種が広範なので、利用者は自分のやりたいことを明確にして、適切な機種を選定する必要がある。選定にはある程度の知識やスキルを求められるが、各オシロスコープメーカが多彩な製品群を発売しているので、利用者の選択肢は広がったといえる。

オシロスコープの周波数帯域別の用途と各社のモデル

TechEyesOnline編集部はオシロスコープ全体を俯瞰し、用途を周波数帯域別に整理した。各オシロスコープメーカによって違いはあるが、周波数帯域2GHzまでの機種がミドルクラスと呼ばれ、2GHzあたりを境に周波数帯域が高いシリーズが広帯域モデルである。主要メーカのモデル(シリーズ)を用途(周波数)別に4分類し、表1にまとめた。

表1 オシロスコープの周波数帯域別の用途と各計測器メーカのモデル
No 用途 最高
周波数帯域
岩崎通信機 キーサイト・テクノロジー テクシオ・テクノロジー テクトロニクス テレダイン・レクロイ 横河計測 ローデ・シュワルツ
1 多用途電気電子回路
(メカトロニクス、
パワーエレクトロニクス)
~500MHz DS-5600A
DS-5400A
DS-5100B
InfiniiVision
1000X/2000X
DCS-1000B
MDO-2000E
GDS-3000
GDS-2000A
MSO/DPO2000B
TBS1000C/2000B
2シリーズMSO
TPS2000
T3DSO1000/2000A DLM3000/5000 RTB2000
2 アナログ / デジタル
(一般的な回路基板評価)
500MHz
~2GHz
DS-8000 InfiniiVision
3000G X/4000X
Infiniium EXR
MDO3000/4000C
3シリーズMDO
4シリーズMSO
5シリーズMSO
MSO / DPO5000
T3DSO3000
WaveSurfer 3000/4000HD
HDO 4000A
HDO 6000B
WaveRunner 8000HD
RTM3000
RTA4000
RTE1000
3 高速デジタル回路
(高速通信インタフェース)
2GHz
~10GHz
InfiniiVision 6000X
Infiniium S
Infiniium MXR
6シリーズMSO WaveRunner 9000
WavePro HD
RTO2000
RTO6
4 超高速デジタル回路
(超高速光通信)
10GHz~ Infiniium V
Infiniium Z
Infiniium UXR
MSO/DPO70000
DPO70000SX
8シリーズ
WaveMaster8Zi-B
LabMaster 10Zi-A
RTP

各社の製品カタログを参考にTechEyesOnline編集部が作成(2022年9月現在)

1GHz帯域の高性能モデルと普及モデル

前述のように最近の十数年の間にミドルクラスのオシロスコープにはいくつかのトピックスがあった。周波数帯域のボリュームゾーンが500MHzから1GHzに移行しつつあるので、表1のNo.2項を、さらに高性能モデルと普及モデルに分けて、1GHz帯域の比較表を表2、表3に作成した。各社のHPを参照し、製品カタログからの転記であるが、現在のオシロスコープの全体像を把握する一助になれば幸いである。

表2 1GHz帯域 / 4chの高性能版オシロスコープ
メーカ名 キーサイト・テクノロジー テクトロニクス テレダイン・レクロイ ローデ・シュワルツ
形名・シリーズ名 InfiniiVision 4000 X
MDO4000C
4シリーズMSO
WaveSurfer 4000HD
RTA4000
発売年月 2012年11月 2015年12月 2019年6月 2019年11月 2018年1月
寸法
(高さ × 幅 × 奥行、単位 m m)
275 × 454 × 156 229 × 439 × 147 286.99 × 405 × 155 273 × 380 × 160 220 × 390 × 152
表示画面サイズ 12.1型 10.4型 13.3型 12.1型 10.1型
基本仕様 アナログ入力数 2、4 4 4、6 4 4
デジタル入力数 16(MSOXモデル) 16(オプション) 32、48(オプション) 16(オプション) 16(オプション)
周波数帯域 200MHz、350MHz
500MHz、1GHz、1.5GHz
200MHz、350MHz
500MHz、1GHz
200MHz、350MHz
500MHz、1GHz、1.5GHz
200MHz、350MHz
500MHz、1GHz
200MHz、350MHz
500MHz、1GHz
波形メモリ長 2M(全チャネル)
4M(ハーフチャネル)
20M 31.25M(標準)
62.5M (オプション)
12.5M(全チャネル)
25M(ハーフチャネル)
100M(全チャネル)
200M(ハーフチャネル)
最大波形取込みレート 1,000,000 波形/秒 340,000 波形/秒 500,000 波形/秒 175,000 波形/秒 64,000 波形/秒
入力感度 1MΩ 1mV/div ~ 5V/div 1mV/div ~ 10V/div 500µV/div ~ 10V/div 1mV/div ~ 10V/div 500µV/div ~ 10V/div
50Ω 200 ~ 500MHzモデル:
1mV/div ~ 5V/div
1 ~ 1.5GHzモデル:
1mV/div ~ 1V/div
1mV/div ~ 1V/div 500µV/div ~ 1V/div 1mV/div ~ 1V/div 500µV/div ~ 1V/div
A/D変換器 分解能 8ビット 8ビット 12ビット 12ビット 10ビット
ハイレゾ設定時の分解能 12ビット 11ビット 最大16ビット 最大15ビット 最大16ビット
最高サンプルレート 2.5GSa/s(全チャネル)
5GSa/s(ハーフチャネル)
200MHzモデル:2.5GS/s
350MHzモデル:2.5GS/s
500MHzモデル:2.5GS/s
1GHzモデル:5GS/s
6.25GS/s 2.5GSa/s(全チャネル)
5GSa/s(ハーフチャネル)
2.5GSa/s(全チャネル)
5GSa/s(ハーフチャネル)
ファンクションジェネレータ 2ch(オプション)
(正弦波:0.1Hz ~ 20MHz)
1ch(オプション)
(正弦波:0.1Hz ~ 50MHz)
1ch(オプション)
(正弦波:0.1Hz ~ 50MHz)
1ch(オプション)
(正弦波:1µHz ~ 25MHz)
1ch(オプション)
(正弦波:0.1Hz ~ 25MHz)
デジタル・ボルトメータ(DVM)機能 〇(3桁) 〇(4桁) 〇(4桁) 〇(4桁) 〇(3桁)
電源解析 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション)
プローブ・インタフェース AutoProbe TekVPI FlexChannel ProBus R&S probe interface
推奨プローブ 受動プローブ 〇( ~ 700MHz) ○( ~ 1GHz) ○(1GHz) 〇( ~ 500MHz) 〇( ~ 500MHz)
高電圧受動プローブ 〇( ~ 3.7kV) 〇( ~ 20kV) 〇( ~ 20kV) 〇( ~ 6kV) 〇( ~ 1kV)
AC/DC電流プローブ ○( ~ 150MHz) ○( ~ 120MHz) ○( ~ 120MHz) ○( ~100MHz) ○( ~ 120MHz)
ロゴスキーコイル電流プローブ 〇( ~ 30MHz) 〇( ~ 30MHz) 〇( ~ 30MHz) 〇( ~ 30MHz) ×
アクティブ(FET)プローブ 〇( ~ 2GHz) ○( ~ 3.5GHz) 〇( ~ 2.5GHz) 〇( ~ 1.5GHz) 〇( ~ 1.5GHz)
高電圧差動プローブ ○( ~ 400MHz) ○( ~ 200MHz) ○( ~ 200MHz) ○( ~ 400MHz) ○( ~ 200MHz)
広帯域低電圧差動プローブ ○( ~ 1.5GHz) ○( ~ 3.5GHz) ○(~ 1.5GHz) ○( ~ 1.5GHz) ○( ~ 1.5GHz)
光絶縁プローブ × × 〇( ~ 1GHz) 〇( ~ 150MHz) ×
パワーレール 〇( ~ 2GHz) 〇( ~ 4GHz、制約あり) 〇( ~ 4GHz) 〇( ~ 4GHz) 〇( ~ 2GHz)

シリアルバス解析機能は表5に記載

表3 1GHz帯域 / 4chの普及版オシロスコープ
メーカ名 キーサイト・テクノロジー テクトロニクス テレダイン・レクロイ ローデ・シュワルツ
形名・シリーズ名 InfiniiVision 3000G X
MDO3000
3シリーズMDO
WaveSurfer 3000z
RTM3000
発売年月 2022年5月 2014年2月 2019年6月 2018年4月 2018年1月
寸法
(高さ × 幅 × 奥行、単位 m m)
204 × 381 × 142 203.2 × 416.6 × 147.4 252 × 370 × 148.6 270 × 380 × 125 220 × 390 × 152
表示画面サイズ 8.5型 9型 11.6型 10.1型 10.1型
基本仕様 アナログ入力数 2、4 2、4 2、4 4 2、4
デジタル入力数 16(MSOXモデル) 16(オプション) 16(オプション) 16(オプション) 16(オプション)
周波数帯域 100MHz、200MHz
350MHz、500MHz、1GHz
100MHz、200MHz
350MHz、500MHz、1GHz
100MHz、200MHz
350MHz、500MHz、1GHz
100MHz、200MHz
350MHz、500MHz、1GHz
100MHz、200MHz
350MHz、500MHz、1GHz
波形メモリ長 2M(全チャネル)
4M(ハーフチャネル)
10M 10M 10M(全チャネル)
20M(ハーフチャネル)
40M(全チャネル)
80M(ハーフチャネル)
最大波形取込みレート 1,000,000 波形/秒 280,000 波形/秒 280,000 波形/秒 130,000 波形/秒 64,000波形/秒
入力感度 1MΩ 1mV/div ~ 5V/div 1mV/div ~ 10V/div 1mV/div ~ 10V/div 1mV/div ~ 10V/div 500µV/div ~ 10V/div
50 Ω 100 ~ 500 MHzモデル
1mV/div ~ 5V/div
1GHzモデル
1mV/div ~ 1V/div
1mV/div ~ 1V/div 1mV/div ~ 1V/div 1mV/div ~ 1V/div 500µV/div ~ 1V/div
A/D変換器 分解能 8ビット 8ビット 8ビット 8ビット 10ビット
ハイレゾ設定時の分解能 12ビット 11ビット 11ビット 11ビット 16ビット
最高サンプルレート 2.5GSa/s(全チャネル)
5GSa/s(ハーフチャネル)
100MHzモデル:2.5GS/s
200MHzモデル:2.5GS/s
350MHzモデル:2.5GS/s
500MHzモデル:2.5GS/s
1GHzモデル( ~ 2ch ):5GS/s
1GHzモデル( 4ch ):2.5GS/s
100MHzモデル:2.5GS/s
200MHzモデル:2.5GS/s
350MHzモデル:2.5GS/s
500MHzモデル:2.5GS/s
1GHzモデル( ~ 2ch ):5GS/s
1GHzモデル( 4ch ):2.5GS/s
100MHzモデル:
全チャネル:1GS/s
ハーフチャネル:2GS/s
その他のモデル:
全チャネル:2GS/s
ハーフチャネル:4GS/s
2.5GSa/s(全チャネル)
5GSa/s(ハーフチャネル)
ファンクションジェネレータ 1ch(標準)
(正弦波:0.1Hz ~ 20MHz)
1ch(オプション)
(正弦波:0.1Hz ~ 50MHz)
1ch(オプション)
(正弦波:0.1Hz ~ 50MHz)
1ch(オプション)
(正弦波:1µHz ~ 25MHz)
1ch(オプション)
(正弦波:0.1Hz ~ 25MHz)
デジタル・ボルトメータ(DVM)機能 〇(3桁) 〇(4桁) 〇(4桁) 〇(4桁) 〇(3桁)
電源解析 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション)
プローブ・インタフェース AutoProbe TekVPI TekVPI ProBus R&S probe interface
推奨プローブ 受動プローブ 〇( ~ 500MHz) ○( ~ 1GHz) ○( ~ 1GHz) 〇( ~ 500MHz) 〇( ~ 500MHz)
高電圧受動プローブ 〇(3.7kV) ○( ~ 2.5kV) ○( ~ 2.5kV) 〇(6kV) 〇( ~ 1kV)
AC/DC電流プローブ ○( ~ 150MHz) ○( ~ 120MHz) ○( ~ 120MHz) ○( ~ 100MHz) ○( ~ 120MHz)
ロゴスキーコイル電流プローブ 〇( ~ 30MHz) 〇( ~ 30MHz) ○( ~ 30MHz) 〇( ~ 30MHz) ×
アクティブ(FET)プローブ 〇( ~ 2GHz) ○( ~ 3.5GHz) ○( ~ 3.5GHz) 〇( ~ 1.5GHz) 〇( ~ 1.5GHz)
高電圧差動プローブ ○( ~ 400MHz) ○( ~ 200MHz) ○( ~ 200MHz) ○( ~ 400MHz) ○( ~ 200MHz)
広帯域低電圧差動プローブ ○( ~ 1.7GHz) ○( ~ 3.5GHz) ○( ~ 1GHz) ○( ~ 1.5GHz) ○( ~ 1.5GHz)
光絶縁プローブ × × × 〇( ~ 150MHz) ×
パワーレール 〇( ~ 2GHz) 〇( ~ 4GHz、制約あり) ○( ~ 4GHz) 〇( ~ 4GHz) 〇( ~ 2GHz)

シリアルバス解析機能は表6に記載

シリアルバス解析機能も、現在の1GHz帯域モデルの大きな特長である。シリアル通信には多くの規格があるので、分野別に表4にまとめた。また、表2、表3の各モデルが表4の各規格に対応しているかを表5、表6に示した(表2、表3同様に各社のHP、製品カタログを参照して作成)。

表4 シリアル通信の規格の概要
分野/規格名 概要
汎用 I2C フィリップス社によって提唱された。低速/近距離通信で2本の線で通信ができ、幅広い用途で使われている。
SPI モトローラ社によって提唱された。コンピュータ内部で使われる低速シリアル通信。4本の信号線でデータを伝送。
eSPI インテル社によってLPCバスの後継として開発された。コントローラと周辺デバイスを接続するシリアルバス。
MIPI I3C MIPIアライアンスによって提唱された。低速周辺機器やセンサに広く使用されているチップ間通信。I3CはI2Cの拡張版。
MIPI D-PHY MIPIアライアンスにより提唱された。モバイル機器等の内部にあるディスプレイやカメラの信号を伝送するためのシリアル通信。
SPMI MIPIアライアンスによって提唱された、電源制御IC(PMIC)用に最適化された2線式シリアルバス。
SMBus インテル社によって提唱された、システム管理や電源管理用に使われるI2Cの派生である低速のシリアル通信。
SVID インテル社によって提唱された、デジタルICの演算コア部に最適な電源電圧を供給する仕組みに使われるシリアル通信。
1-Wire ダラス・セミコンダクタ社が提唱した。低速通信で信号線と電力供給線を兼ねた1本の電線で通信を行う。
コンピュータ RS232 / 422 / 485 古くからある調歩同期式のシリアル通信。RS232はシングルエンド、RS422/RS485は差動。
UART RS232と同じ調歩同期式の通信だが、通信規格ではなくシリアル通信とパラレル通信を相互に変換するための集積回路。
USB RS232からの置き換えを狙った、コンピュータと周辺機器を接続するためのシリアル通信。市場ではUSB2.0とUSB3.0が使われている。
eUSB 組込みシステムに使われるUSB2.0レイヤーアーキテクチャに完全準拠している通信。信号の電圧値は1.2V。
USB PD USB Type-C規格にあるUSBケーブルを経由した電源供給規格で、デバイス間の制御に使われる。
Ethernet 有線ローカルネットワークに使われている通信方式。転送速度は規格によって異なる。
EtherCAT ベッコフオートメーション社が提唱した、フィールドネットワークを構築するためのリアルタイム性のある産業用イーサネット通信。
MDIO Media Independent Interface(MII)のIEEE802.3標準のイーサネットファミリ用に定義されたシリアルバス。別名、SMIやMIIMとも呼称される。
自動車 CAN Bosch社によって提唱されたシリアル通信規格で、現在はISOで規格化されている。主に自動車分野で広く使われている。
CAN FD CANのプロトコル仕様を拡張し、CANよりも通信速度の高速化と送受信データの大容量化に対応した通信プロトコル。
LIN LINコンソーシアムによって提唱された低速シリアル通信規格で、現在はISOで規格化されている。主に自動車分野で広く使われている。
FlexRay FlexRayコンソーシアムによって提唱された、CANより高速性と信頼性を向上させたシリアル通信。自動車分野が主な対象。
SENT SAE Internationalが規格化した。主に自動車に搭載されたセンサ回路からの情報を伝送する低速シリアル通信。
CXPI 日本の自動車技術会が提唱した、自動車でCANやLINでは対応が難し領域を対象にした低速シリアル通信。
PSI5 自動車でセンサと制御回路を接続するためのシリアル通信で、エアバックの制御に使われている。
航空機 MIL-STD-1553 軍用航空機/ミサイルや宇宙用機器の軽量化を目指したMIL規格で定められたシリアル通信。軍用航空機以外に潜水艦や戦車にも使われている。
ARINC-429 軍用のMIL-STD-1553の代替として、民間航空機内でツイストペア線を用いたシリアル伝送を行うための規格。
SpaceWire 人工衛星など宇宙機器に搭載されたコンポ-ネント間のデータ伝送を行うためのIEEE1355規格を元にした規格。
オーディオ I2S(LJ、RJ、TDM) フィリップス社が提唱した、デジタル音声を伝送するためのIC間通信。I2Sバスには、LJ、RJ、TDMと呼ばれるバリエーションがある。
表5 1GHz帯域 / 4chの高性能版オシロスコープのシリアルバス解析機能
メーカ名 キーサイト・テクノロジー テクトロニクス テレダイン・レクロイ ローデ・シュワルツ
形名・シリーズ名 InfiniiVision 4000 X MDO4000C 4シリーズMSO WaveSurfer 4000HD RTA4000
汎用 I2C 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション)
SPI 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション)
eSPI × × △(オプション)※ × ×
MIPI I3C × × △(オプション)※ × ×
MIPI D-PHY × × △(オプション)※ × ×
SPMI × × △(オプション)※ × ×
SMBus × × △(オプション)※ × ×
SVID × × △(オプション)※ × ×
1-Wire × × △(オプション)※ × ×
コンピュータ RS232 / 422 / 485 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション)
UART 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション)
USB 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) × ×
eUSB × × △(オプション)※ × ×
Ethernet × 〇(オプション) 〇(オプション) × ×
EtherCAT × × △(オプション)※ × ×
MDIO × × △(オプション)※ × ×
自動車 CAN 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション)
CAN FD 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) ×
LIN 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション)
FlexRay 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) ×
SENT 〇(オプション) × 〇(オプション) × ×
CXPI 〇(オプション) × 〇(オプション) × ×
PSI5 × × △(オプション)※ × ×
航空機 MIL-STD-1553 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) × 〇(オプション)
ARINC-429 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) × 〇(オプション)
SpaceWire × × △(オプション)※ × ×
オーディオ I2S(LJ、RJ、TDM) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション)

各社の製品カタログを参考にTechEyesOnline編集部が作成(2022年9月現在)。※ 制約あり

表6 1GHz帯域 / 4chの普及版オシロスコープのシリアルバス解析機能
メーカ名 キーサイト・テクノロジー テクトロニクス テレダイン・レクロイ ローデ・シュワルツ
形名・シリーズ名 InfiniiVision 3000G X MDO3000 3シリーズMDO WaveSurfer 3000z RTM3000
汎用 I2C 〇(標準) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション)
SPI 〇(標準) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション)
コンピュータ RS232 / 422 / 485 〇(標準) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション)
UART 〇(標準) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション)
USB 〇(標準) 〇(オプション) 〇(オプション) × ×
USB-PD 〇(標準) × × × ×
自動車 CAN 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション)
CAN FD 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) ×
LIN 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション)
FlexRay 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) ×
SENT 〇(オプション) × × × ×
CXPI 〇(オプション) × × × ×
航空機 MIL-STD-1553 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) × 〇(オプション)
ARINC-429 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) × 〇(オプション)
オーディオ I2S(LJ、RJ、TDM) 〇(標準) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション) 〇(オプション)

各社の製品カタログを参考にTechEyesOnline編集部が作成(2022年9月現在)

おわりに

2018年にキーサイト・テクノロジーから周波数帯域110GHzの広帯域オシロスコープが発売された(発売時の価格は約1億円/台)。入力はプローブではなく、3.5ミリの同軸ケーブルで、400Gbpsを超えるPAM4※7や、コヒーレント光通信※8のR&Dをターゲットにしている。計測器の分類(カテゴリー)はオシロスコープだが、アプリケーションは通信である。広帯域オシロスコープは、特定の通信方式を評価するシグナルアナライザ※9やSDHアナライザ※10と同じ、高周波の専用器で、汎用器(基本測定器)ではない。このようなオシロスコープのアナライザ化(広帯域化)とは別に、ミドルクラスのオシロスコープには高分解能化、多チャンネル化、タブレット型など、新しい機種群の創出が続いている。今後も時代のニーズに応えるモデルの登場が期待される。

※7

(Pulse Amplitude Modulation 4) 「4値パルス振幅変調」。代表的なデジタル通信のNRZ信号などは0と1の2値で伝送しているが、数百Gbpsのような高速通信では00~11の4値で伝送する手法が使われる。

※8

海底ケーブルの通信ではコヒーレント(可干渉、干渉的)通信が実現しつつある。1本の光ファイバで400~600Gbpsにする研究をNTTなどが行っている。1本の光ファイバで4ch多重化する場合は4台のオシロスコープで評価することもある。

※9

(signal analyzer) 変調解析を主眼にしたしたスペクトラムアナライザの名称。移動体通信の普及によってデジタル変調が盛んなため、最近のスペクトラムアナライザの品名になっている。

※10

SDH(Synchronous Digital Hierarchy)は国際標準のデジタル伝送規格。日本の基幹通信網は1990年代にSDHになっている。SDHの試験をするのがSDHアナライザ。最近はOTN/SDH/SONET関連測定器などと呼ばれる。


関連情報
オシロスコープ比較記事
多チャンネルのオシロスコープ特集〜大手5社の8chモデル紹介
新旧比較レポート「オシロスコープ 横河計測 DL vs DLM」(会員専用)
自動車の通信規格の記事
車載ネットワークの歴史と規格概要~CANからLIN、FlexRay、CAN FDまで
自動車ECUのインタフェース~スイッチ信号から無線通信まで多岐にわたる技術を適用
速納.com