ソニー・プレシジョン・テクノロジー
(Sony Precision Technology)
ソニーがデータレコーダなどの磁気式計測器をつくるために1969年に設立したソニーマグネスケール株式会社が1996年に社名変更した会社。精密測定機器(レーザを使った測長器など)もラインアップしていた。2004年にソニーマニュファクチュアリングシステムズ株式会社に社名変更(つまり、8年間の会社名)。ソニーのデータレコーダというと「ソニーマグネスケール」の次に「ソニー・プレシジョン」が思い浮かぶ(つまりSONYのデータレコーダといえば、「マグネスケール」か「プレシジョン」と呼称された)。
2000年代に記録媒体としての磁気テープが生産終了になるのに伴い、ソニーはデータレコーダからも撤退した。2004年以降の会社名であるソニーマニュファクチュアリングシステムズはソニーの最後のデータレコーダの会社名であるが、社名が長く、マグネスケールやプレシジョンのような略称はなく、「ソニーのデータレコーダ」とでもいうようないい方だった。その後さらに社名変更した「ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ」が修理業務を引き継いでいたため、ソニーのデータレコーダの最終会社名は当サイトでは、ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズと表示している。日立電子と日立国際電気、松下通信工業とパナソニックモバイルコミュニケーションズのような関係である。
SONYのデータレコーダは、もう1社のメーカであるTEAC(ティアック)のように会社名が継続していなくて(複数回、会社名が変わっているので)覚えにくい。TEACとSONYはオーディオ機器の「磁気テープを使ったレコーダ」のメーカである。テープレコーダは過去の物となったが、計測器としてのレコーダで競った2社のスタンス(工業用途の計測器のレコーダの、グループ内での位置づけ)は違っていたといえる。TEACは磁気テープ以外のメディアを使ったデータレコーダをしぶとくつくり続け、多チャンネル・長時間記録のデータレコーダの唯一のメーカとなっている(国内だけでなく、2012年には米国でもデータレコーダを販売している)。
ソニーの計測器というと一番にオシロスコープのソニー・テクトロニクが思い浮かぶが、データレコーダでもソニーはブランドだった。同じ計測器でもTektronixがオシロ以外にテレビ・オーディオ測定器などをラインアップしてソニー・テクトロニクスが存続したのと比べ、磁気テープを使った記録計に注力したソニーマグネスケールは、ソニーグループ内の他の製品群との合併によって会社名が変わり、磁気テープの終焉と共に計測器から撤退して会社は終わった。
多チャンネル・長時間の記録ができて、再生も可能なデータレコーダの需要はいまだに根強いが、磁気テープ終了後は自動車・鉄道分野ではひずみデータロガーが普及し(DEWETRON、DEWEsoft、CRONOS PL、CRONOS compactなど)、現在のデータレコーダの国内市場規模は2000年以前ほど大きくないと推定される。ソニーがデータレコーダから撤退したことは適切だったと思われる。