ワイヤレス
(wireless)
日本語では「無線」。ただしワイヤレスはすでに日本語になっていて「ワイヤレスLAN」、「ワイヤレスイヤホン」など多くの無線機器の名称で使われている。計測器でもワイヤレスは基本用語である。
ワイヤレスとは「ワイヤ(wier)がない(less)」ということで、通信するための電線(や光ファイバ)などの線材がないという意味である。ワイヤレスを無線と翻訳したので、線を使った通信は有線といわれる。有線のことを英語ではwired(ワイヤード、ワイヤがある、線でつながっている)と表現するようで、通信計測器の世界的なベンダであるアンリツでは、光ファイバ通信などの有線通信(無線でない通信)を「ワイヤード」と呼称している。同社では製品群を大きくワイヤレスとワイヤードの2つに分類している(同社以外では「有線(通信)」や「光通信」という表現が一般的で、ワイヤードとはいわない)。ただし、一般には同社は通信の中でも特に「ワイヤレスの会社」と認識されている(※)。
株式会社リックテレコムが主催する展示会に「ワイヤレス・ジャパン」があり、毎年5月に東京ビッグサイトで開催されている。2023年は5G/ローカル5G、LPWA/IoT、ミリ波、産業DX、スペースICT、Beyond 5G/6Gなどがテーマだった。広く無線機器(計測器も含む)が出展するイベントである。同じく無線の展示会にマイクロウェーブ展(MWE)がある。こちらは学会が主催するワークショップに併設する展示会である。
ワイヤレスに近いことばに「モバイル」がある。Mobile(可動性の、移動可能な、という意味)は携帯電話やノート型パソコンで使われる移動体通信や、移動体通信の機器そのものを指す。モビリティ(Mobility:「体の動きやすさ、機動性」が元の意味で、「人やものを空間的に移動させる能力や機構」に使われる)は自動車を指すことばに使われ、自動車はこれからのワイヤレス通信の大きな市場になろうとしている。Automotive(オートモーティブ)は「自動車の、自動車に関する」という意味である。ワイヤレス(無線)、モバイル(移動体)、オートモーティブ(自動車)はそれぞれ関連していることばといえる。
(※)「アンリツの旧社名“安立電気株式会社”は1931年(昭和6年)の共立電機と安中電機の合併で設立。安中電機の36式無線電信機は、1905年(明治38年)の日本海海戦(日露戦争)で「敵艦見ゆ」の信号を発信。(アンリツのホームページ、沿革より)」 つまりアンリツは100年以上前から無線機をつくっていた会社が祖となっている、日本のワイヤレスのインフラと共に歩んだ会社である。NTTやNTTドコモが構築してきた日本の通信インフラを計測器の面で支え、インフラ構築と共に発展してきた通信専業の計測器メーカといえる。通信の中でも特にワイヤレスに注力し、キーサイト・テクノロジーやローデ・シュワルツという世界的な高周波(無線通信)の計測器メーカと伍している国産企業である。同社の無線機テスタやシグナリングテスタ、送信機テスタなどが、次々と登場する最先端の無線通信方式を試験・評価することで、日本の無線通信インフラは開発・製造から施工・保守までが行われてきたし、今後も続いていくといっても過言ではない。
参考用語
参考記事
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会員専用市場動向レポート 「高度化が進む超高速無線LAN」2014年7月号 TechEyes Vol.06
概要~主要な計測器まで紹介。
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会員専用市場動向レポート 「ウェアラブルデバイスの動向」2016年1月号 TechEyes Vol.15 2ページ目
表3 無線技術の概要
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会員専用市場動向レポート 「デジタル変調技術と評価用測定器の最新動向 ~OFDM信号と位相雑音測定~」2017年6月号 TechEyes Vol.23
現在のワイヤレス通信の主役、デジタル変調。
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会員専用市場動向レポート「ワイヤレス給電の技術と市場の動向」2019年5月号 TechEyes Vol.33
各種方式と計測器。
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会員専用市場動向レポート「第5世代 (5G) 移動通信システムの動向と開発用測定器」2019年9月号 TechEyes Vol.34
5G普及前夜の解説。