市場動向レポート「ワイヤレス給電の技術と市場の動向」2019年5月号 TechEyes Vol.33
電動歯ブラシやコードレス電話子機などでは、普及が進んでいる無接点の電磁誘導方式による充電が、なかなか携帯電話の世界では進みません。1W程度の充電と、携帯電話機に求められる5W、15Wの充電と同じにはできませんが、最近になってようやく、携帯電話機にもワイヤレス給電(ワイヤレス充電やWPT※1と呼ばれる場合も多い)が脚光を浴びるようになってきました。スマートフォンの進化とともに、より利便性の高い機能をユーザが求めるようになってきたのが大きな理由でしょう。
一方、クルマに目を転じると、「ワイヤレス給電のテクノロジーが、今後、PHEV/EV普及の鍵となる」、「ワイヤレス給電の実用化に期待している」、「開発を加速したい」というような議論もでるようになってきました。この議論に応えるかのように、高い伝送効率を保ちながら、数kW、10kW超の、大きなパワーを無線伝送する製品も、展示会などで見られるようになりました。
本号では、熱い期待が高まる、ワイヤレス給電に焦点をあて、その技術や市場動向に触れます。
※1 WPT:Wireless Power Transfer/Wireless Power Transmission
ワイヤレス給電の方式と利用形態の分類
ワイヤレス給電システムは、非放射型のものと放射型のものとに大別されます。それぞれ磁界結合式、電界結合式、およびマイクロ波など電磁波を使用する無線式、光パワーを伝送するレーザ式、超音波を用いる超音波式などに分類されます(図1)。各方式の概要と特徴は後段に記します。
利用形態を、伝送電力の大きさをX軸に、伝送距離をY軸にした座標上にプロットすると、おおよそ図2のように表せます。1W程度の電動歯ブラシやコードレス電話子機、現在、実用化されていないものなどは省いています。利用形態により、求められる伝送電力の大小と伝送距離の長短は異なりますが、適合する伝送方式が決められ、送・受電コイルなど共振器の材料や周波数などが選択されます。

出典:各種ワイヤレス電力伝送資料を参考し、作成