アナログ・デバイセズ
(Analog Devices)
[半導体デバイスメーカ]
米国の半導体デバイスメーカ(多国籍企業)。ADC(A/D変換器)、DAC(D/Aコンバータ)、MEMS、DSPなどをラインアップしている。計測器メーカではないが、計測に関するアプリケーション資料を多く作成している。同社ホームページには「アナログ・デバイセズは、世界をリードするアナログ、ミックスド・シグナル、DSPなどの集積回路を開発製造している」旨が記載されている。会社名が示す通りアナログ半導体の世界的トップベンダ。「ミックスド・シグナル」はオシロスコープのMSOを連想させる。NASDAC(ナスダック、米国の新興企業向け株式市場)ではAnalog Devices Inc.を略したADIで呼称されている。大手メディアもアナログ・デバイセズをADIと略記している場合がある。
計測器のデジタル化が進み、FPGAなどが計測器に導入され、半導体チップが計測器の心臓部を担うようになった。アナログ半導体が得意な同社は、自社製品(デバイス)を使って電子回路を設計すると、数々の計測ソリューションが実現できるので、計測に関する技術資料を公開している。「往年の計測器メーカがつくっていたアプリケーション事例が最近は減って、デバイスメーカが提案する例が目立つ」という年配技術者の声も聞かれるほどである。ハードウェア製品として(計測器ではないが)発振器ボードなどをつくっている。発振器ボードは計測器のデモ(デモンストレーション、宣伝のための実演)などに使われる。
2000年代に安価な基本測定器(中華系メーカのオシロスコープやデジタルマルチメータなど)が秋葉原の計測器ショップに並び、国産オシロスコープメーカは次第に姿を消した。電子回路の知識があれば、計測器の心臓部を市販の半導体を購入して作り込んで、デジタルオシロスコープがつくれる時代になった。老舗の計測器メーカが蓄積してきた知見がデジタルの時代には優位にならなくなりつつある。エントリーからミドルクラスのオシロスコープの価格は2000年代に数十万円から数万円に1桁安くなったので、ユーザにとっては嬉しいことである。
アナログの電子部品(半導体)であるOPアンプをつくっているメーカはアナログ・デバイセズ以外ではTexas Instruments(テキサス・インスツルメンツ、略記:TI)など海外メーカが有名だが、東芝デバイス&ストレージや日清紡マイクロデバイスなどの国産もある。2017年3月にLiner Technology(リニアテクノロジー)、2021年8月にMaxim Integrated(マキシム・インテグレーテッド)を買収して製品群を拡大している。Maxim Japan(マキシム・ジャパン)のツイッターには「Maxim IntegratedとAnalog Devicesは1つの会社になった(2021/12/14)」と書かれている。