Infiniium
キーサイト・テクノロジーの周波数帯域がGHz帯域の高性能オシロスコープ(オシロ)のニックネーム(通称、愛称)。2025年現在、EXRシリーズ(500MHz~6GHz)、MXR-Bシリーズ(500MHz~6GHz、DDC RTSA)、UXRシリーズ(10GHz~110GHz)などの5シリーズがある。2020年にはSシリーズ(500MHz~8GHz)からUXRシリーズまでの6シリーズだったが、同年5月に8chモデルがあるMXRシリーズを、11月に同じく8chがあるEXRシリーズを発売した。UXRシリーズは2018年7月に発売され、110GHzモデルは世界最高(価格も最高の約1億円/台)のオシロである(2025年現在)。
Infiniiumの説明(正確な定義)は同社HPにも無いが、大まかにいうと同社の高速オシロ(周波数帯域がGHzで、解析機能が特徴の広帯域・高額のアナライザ)のニックネームである。Infinity(無限大)からつくった造語という説があるが定かではない(iが2つあるのは、意図的に無限大とは違ったつづりにしている、ともいわれるが、これも不確かである)。
1999年頃に発売された54845A(1.5GHz、4ch)はInfiniiumだが、54800シリーズからInfiniiumなる名称になったかは不明である。Infiniiumは1990年代中頃に登場した(メーカの営業からPRされた)記憶が筆者はある。
2002年1月発行の製品カタログ「Agilent Technologies Infiniium 54800シリーズ・オシロスコープ」には54830~54846の5モデルが掲載されている。
54830B(600MHz、2ch)、54831B(600MHz、4ch)、54832B(1GHz、4ch)、54845A(1.5GHz、4ch)、54846A(2.25GHz、4ch)
2002年当時はGHz帯域のモデルは高級品だった(リアルタイムオシロスコープの最高が4GHz)。600MHzから2.25GHzをラインアップした54800シリーズは当時のハイエンドモデルである。2002年11月に、従来とは違う新しいコンセプトの54855A(6GHz)が発売される。54855Aは高速通信規格を評価するアナライザとしての広帯域オシロの先駆けとなったモデルである(前面パネルにはInfiniiumとある)。
2004年1月発行の「Infiniium 54800シリーズ・オシロスコープ」カタログには54830D(600MHz、2ch+16ch、MSO)~54833A(NEW、1GHz、2ch)、54833D(NEW、1GHz、2ch+16ch、MSO)の6モデルが掲載されている。つまり54830シリーズをPRしている。また「Infiniium 54830/54840の共通の特長」も説明されている。2002年発売の54855A(6GHz)が54800シリーズとは別格のモデルであることが伺える。「54855A and 54854A Infiniium Oscilloscopes User's Quick Start Guide」(2003年発行)というマニュアルがあるので、操作面では6GHzの54855Aと1.5GHzの54845Aは同じと思われる。
Infiniiumは「無限大」を連想させる同社の高性能(ハイエンド)モデルのニックネームとして登場し、いまや高速オシロスコープの代名詞となっている。
汎用オシロ(一般に約2GHz以下の普段使いのオシロ)に、同社はInfiniiVision(インフィニヴィジョン)というニックネームをつけている。Infiniiumは500MHz~110GHzの「解析するオシロ」だが、InfiniiVisionはミドルクラスを中心に70MHz~6GHzをラインアップし、「見えるオシロ」と位置づけている(2025年現在、1000Xから6000Xまで6シリーズ)。OSでも違いがあり、InfiniiumはWindows、InfiniiVisionはnon-Windowsである。また、Infiniiumに使う広帯域プローブにはInfiniiMax(インフィニマックス)の愛称がある。
キーサイト・テクノロジーのオシロスコープは、形名からシリーズの関連性がわかりにくい。数字だけの3000X、英字1文字のSシリーズやZシリーズ、3文字のEXR、MXR、UXRなどのシリーズがあり、シリーズ間の上下関係が形名からはまったく想像することができない(同社の社員でも、オシロの専任者以外は形名からラインアップ中の位置づけを理解している人はほとんどいないといわれている)。形名の命名基準が不明確で、一貫性がまったくない(誤解を恐れずにいうと「新製品発売時の気分で命名している」と思われてもしかたがない)。ただし、高速オシロはInfiniium、汎用オシロはInfiniiVisionという通称がある。同社のオシロの事業部門(開発部)は不思議である。こんなにも形名に執着がなく、中長期的なオシロのプロモーションを無視しているのに、ニックネームだけは立派である。素性不明なニックネームよりも形名をもっと真剣に命名してほしいと筆者は強く要望する。わかりやすい形名はユーザにとって重要なだけでなく、メーカにとっても絶大な宣伝効果があることは、説明する必要もない。
キーサイト・テクノロジーのラインアップ(2024年1月 オートモーティブワールドにて)
参考記事
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