ワイヤレスコネクティビティテストセット
(wireless connectivity test set)
通信計測器(特に無線通信)の世界的トップベンダであるアンリツの無線LANのテスタ(無線LANアナライザ)MT8862Aの名称(品名)。
同社ホームページの電子計測器製品カテゴリーは以下の8分類(2023年11月)。
1. 光計測器
2. BERT
3. トランスポート/イーサネット関連計測器(IPやOTN/SONETなど)
4. モバイル/ワイヤレス通信⽤測定器(シグナリングテスタ、ワンボックステスタ、エリアテスタなど)
5. シグナルアナライザ/スペクトラムアナライザ
6. ベクトルネットワークアナライザ
7. 信号発生器
8. RF/マイクロ波⽤測定器(マイクロ波周波数カウンタ、RFパワーメータ、アンテナなど)
上記の1~3は光通信測定器や伝送交換・IP関連の有線通信測定器、4は無線/移動体測定器、5~7は無線(RF)の基本測定器であるSA、VNA、SG。1.~8.は有線通信、移動体通信(専用器)、無線通信(基本測定器)の順に並んでいる。
「モバイル/ワイヤレス通信⽤測定器」はその下の項目数が一番多く、「Bluetooth/WLAN用測定器」にMT8862Aは掲載されている。この項目はBluetooth(ブルーツゥース)や無線LAN用のワンボックステスタ(無線機器の総合試験器)である。WLANとは無線LAN(ワイヤレスLAN)の略記(※)。BluetoothテストセットMT8852BやユニバーサルワイヤレステストセットMT8870Aと並んでMT8862Aが掲載されている。MT8870Aは品名の後に(スマートフォン、IoT端末、通信モジュール用測定器)、MT8862Aは(WLAN用測定器)と但し書きがされている。つまり何を対象とした測定器かを補記している。「ワイヤレステストセット」はワンボックステスタ(無線機テスタ)の1種であるが、「無線通信機器/デバイスの生産ラインで、複数個のデバイスの検査に対応し、大量生産に貢献するためのモデル」、とメーカは説明している。そのため、MT8862Aの品名も「無線LAN用ワンボックステスタ」ではなく、ワイヤレスやテストセットということばを使ったと思われる。
MT8862Aは、IEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax/be(2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯)搭載機器のRF送受信特性測定器で、標準WLANプロトコルメッセージング(WLANシグナリング)を使用してDUTと接続し、送受信測定が可能となるネットワークモードを搭載している。
2023年12月に無線LANは新しい規格のWi-Fi 7((IEEE 802.11be)が策定された。MT8826は発売以来、無線LANの規格のVerがアップするのに追従して機能を喧嘩させてきた。2024年5月のワイヤレスジャパン(東京ビッグサイト)のアンリツブースにはWi-Fi 7に対応したMT8826が展示された(Wi-Fi 7については、以下の参考記事 R&S Technology Symposium 2024で取材している)。
MT8862Aの品名は、「無線(wireless)のつながりやすさ・接続性(connectivity)を試験(test)する」というネーミングで、tester(テスタ)ではなく最後にsetとあるのは「単純な機能ではなく総合評価ができる」という主張のように伺える(品名の命名意図はメーカの自由で、その真意は社外には知らされないのであくまで推測)。この名称は測定器の概要を正しく表現しているが、品名だけを読んでも何の測定器か、瞬時には想像できない。まるで安藤電気の「データコニュニケーションアナライザ」がプロトコルアナライザであることがわかりにくいことと似ている。プロトコルアナライザは「データ通信(data communication)の分析・解析装置(analyzer)」である。
(※) 1990年頃にLANが登場すると従来の通信網を広域通信網としてWANと呼称したので、「WLANとはWAN&LAN、つまり基幹通信網~狭いLANまで全通信規格に対応する」ことだと勘違いしそうな略記である。アンリツでは無線LANが登場した2000年頃からW-LANという表記(略記)で無線LANを表現している資料が残っている。2023年現在、WLANは無線LANである、という説明は広く浸透している。
通信規格の表現は毎年のように更新され、猫の目のように新しいことばが生まれる。まるでJKの流行りことばのようである。通信の世界は新しい規格が次々と登場する日進月歩の世界で、通信計測器は時代と共にある専用器で、汎用計測器(基本計測器)とは根本的に異なる機種群(カテゴリー)である。



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