計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
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トランスポンダ(とらんすぽんだ)

(transponder)transmitter(送信機)とresponder(応答機)の合成語。無線通信の中継機を指すことば。信号を増幅したり、周波数を変えたりする機能を持っている場合もある。人工衛星に搭載されている応答装置の通称でもある。人工衛星は、地球局から送信された電波が減衰して微弱になったのを検知・受信し、信号を増幅して送出することで伝送距離を延長させている。トランスポンダは人工衛星の最も重要な機器といえる。

トランスミッタ(とらんすみった)

(transmitter)日本語では「送信機」。信号を送信する機器のこと。電波などの無線信号の送信機や、光通信の光信号を発信する光トランスミッタなどがある。対になる言葉として「レシーバ(受信機)」がある。回路図などではトランスミッタをTx、レシーバをRxと略記している。

トリガ(とりが)

(trigger) 計測器はトリガ機能をもっているものが多いが、特にオシロスコープ(オシロ)には多彩なトリガが備わっている。オシロでは「波形観測の基準点」をトリガ点(トリガポイント)といい、波形表示をどのようなタイミングでするかを設定する機能がトリガである。 ミドルクラス(周波数帯域 MHz帯)のモデルには10種類以上のトリガタイプ(具体的に条件設定してトリガをかける、トリガの種類)が標準装備されている。使用者は用途によってトリガを選択し、意図する波形を表示させ、目的(信号の検証や不具合原因の究明など)を達成するのが、オシロの主要な用途である。つまり、トリガはオシロを使うための基本になっている。使用頻度が高いのは一番シンプルなエッジトリガである。 現在のオシロは複数の種類のトリガを組み合わせたり、ロジックを比較してトリガできたりする機能が備わっていて、信号の特長を抽出してトリガをかけるなど、高度(複雑)な機能がある。特に高速オシロスコープには1000種類以上のトリガの組み合わせがあり、高速デジタル回路の解析に使われている。 2000年代後半からMSOが普及し、信号データの論理条件(ANDやORなど)でかけるトリガが充実し、組込みシステムのエンジニアに用途が広がった。また2000年頃から登場した多くのシリアル通信の規格に対応したトリガ機能も増え、時間軸の実波形だけでなくデコード値を表示し、プロトコルアナライザのような機能を備えた。このようなロジックアナライザやバス解析の機能は、多くのソフトウェア技術者のツールにオシロをしている。 トリガの設定は一般に次の項目がある。トリガタイプ(trigger type)、トリガソース(source)、トリガレベル(level)、トリガスロープ(slope)、トリガカップリング(coupling、結合)、トリガモード(mode)。これらの設定例は以下の記事「時間軸とトリガの基本的な設定」が詳しい。 テクトロニクスの冊子「オシロスコープのすべて」(2017年発行)では「トリガ:オシロスコープの水平軸掃引の開始点を決める回路」と説明されている。これはアナログオシロスコープのトリガの説明で、現在主流のデジタルオシロスコープでは、「トリガ:メモリに書き込む動作を中止し、指定されたトリガ条件に従ってメモリのデータから画面に波形を表示させる機能」である。 使い方動画(会員専用) [計測入門講座 Isee!]第11回 複雑な信号にトリガをかける

トリガカップリング(とりがかっぷりんぐ)

(trigger coupling) オシロスコープのトリガ機能の1つ。オシロスコープは下図のような回路で、入力信号とトリガ回路をつないでいる。入力信号の「トリガ回路への結合」という意味で、トリガカップリングと呼ぶ。 (1)DC結合:トリガソースの信号のDCレベルでトリガをかける。交流信号に直流成分が重畳している場合は、このDC結合で正確な電圧が表示される。DCレベルが変動するような場合は、LF-REJ を試すと有効な場合がある。 (2)AC結合:トリガソースの信号をコンデンサを通してトリガ回路に結合する。DC成分がカットされAC成分だけになるので、入力信号に十分な振幅があれば、トリガレベルを0 Vに設定すると、必ずトリガがかかる。 (3)HF-REJ(High Frequency-Reject、高周波除去):トリガソースの信号の高周波成分を除去(Low Pass Filter)してトリガ回路に入力する。トリガ信号にノイズが多くてトリガが安定してかからないようなときに使用される。 (4)LF-REJ(Low Frequency-Reject、低周波除去):トリガソースの信号の低周波成分を除去(High Pass Filter)してトリガ回路に入力する。 計測器には「カップリングアダプタ」という名称の製品がある(以下の計測器情報を参照)。

トリガ機能(とりがきのう)

(Trigger Function) 計測器が測定を開始する(測定対象からの連続した信号を取り込んで記録や表示をする)タイミングを設定する機能。オシロスコープ、レコーダ、プロトコルアナライザなど多くの測定器が持っている、計測器の代表的な機能。 FFTアナライザで有名な小野測器の「FFT解析に関する基礎用語集」には以下の解説がある。入力信号のある点、または外部信号を合図にサンプリングを開始する機能。入力信号そのものをサンプリング開始の信号すなわちトリガ信号として、それが設定電圧に達した時点を基準にサンプリングを開始する内部トリガと、外部からパルス信号を入力しその時点を基準にサンプリングを開始する外部トリガがある。この機能により波形のうちの解析したい部分を効率よく捕らえて分析することができる。また時間波形の平均化を行う際はトリガ機能によって波形を同期させる。1)トリガ極性:信号が立ち上がって設定電圧に達したときにトリガをかけるか(+)、立ち下がって設定電圧に達したときにトリガをかけるか(-)、両方でかけるかの3種類がある。2)トリガポジション(※):トリガがかかった点(トリガ点)に対して何点前から、または後からサンプリングを開始するかを指定する。トリガ点より前からサンプリングを開始することをプレトリガ(※)、トリガ点より後からサンプリングを開始することをポストトリガという。3)トリガレベル:トリガがかかる電圧レベルを設定する。4)トリガの種類:次の3種類のモード(※※)、シングルトリガ、リピートトリガ、ワンショットトリガがある。5)シングルトリガ:一旦トリガがかかり1フレーム分取込まれると待ちの状態となるモード。6)リピートトリガ:トリガがかかるたびに1フレーム分ずつ取込むモード。サンプリングの途中でトリガパルスがきてもそれは無視される。7)ワンショットトリガ:一旦トリガがかかるとトリガフリー(トリガをかけていない状態)となるモード。) 上記の解説はFFTアナライザの機能説明も兼ねている。トリガ機能が充実しているオシロスコープでは以下のように別の解説もある。 (※)トリガポジションについては以下の用語解説(オシロスコープの機能説明)に図解がある。「プレトリガ」は別名「プリトリガ」と表記されることの方が多い。 (※※)トリガの種類をオシロスコープでは「トリガモード」と呼称する。以下の用語解説はオシロスコープの機能説明である。オシロスコープではオート(auto)、ノーマル(nomal)、シングル(single)がある。オシロスコープは多くの電子・電気技術者が使うので、このモードの名称は良く知られている。

トリガ計測(とりがけいそく)

(trigger measurement)設定されたトリガの条件を入力信号が満たすと、自動的にデータを記録すること。オシロスコープやレコーダなどの電気信号を記録する測定器に搭載されている機能。 参考用語: トリガ機能 参考記事(会員専用):【展示会レポート】2019国際ロボット展(iREX2019)の1社目 ・・株式会社東京測器研究所のひずみ計測機であるマルチレコーダーTMR-300がトリガ計測によって自動でデータを収録することが語られている。

トリガ信号(とりがしんごう)

(trigger signal) 機器の動作のきっかけ(引き金)になる信号のことで、電子機器の開始(または終了)のタイミングを合わせるために使うことができる(菊水電子工業の製品総合カタログ・用語集より)。 「トリガ」は計測器では大変よく使われる用語。測定対象(連続している信号)をどのタイミングで測定開始(データとして取込み、記録)するかの条件を設定する機能がトリガである。そのためトリガ信号の設定は重要で、一番多くの条件設定ができるのがオシロスコープである。多種多様な条件設定で複雑なトリガ信号の設定ができるモデルがある。トリガの意味は「銃の引き金」や「引き金を引く」こと。

トリガスロープ(とりがすろーぷ)

(trigger slope) オシロスコープのトリガ機能の1つ。トリガ用信号(トリガソースで指定した信号)が、トリガレベルを通過する際の傾斜には、立ち上がり(Rise)と立ち下がり(Fall)がある。トリガスロープはどちらの傾斜のときにトリガをかけるかを選択して指定できる機能のこと(以下の記事「時間軸とトリガの基本的な設定」に設定画面を図解)。 デジタルは1と0の2進数で表されるが、デジタル回路ではH(High、ハイ)とL(Low、ロー)の2つのレベル(電圧の値)のパルス列となる。HとLが安定している定電圧レベルからHとLが遷移するときは立ち上がりや立ち下がりの状態になる。この状態の時間は通常はパルス幅に比べて短く、パルス波形の端(はじ)やふち、なのでエッジ(edge)と呼ばれる。「立ち上がりスロープ」は立ち上がりエッジ、「立ち下がりスロープ」は立ち下がりエッジとも呼ばれる。 エッジは広範に使われることばで、立ち上がり時間や立ち下がり時間のことをエッジと呼称していることもある(以下の参考記事が詳しい)。

トリガソース(とりがそーす)

(trigger source) オシロスコープ(オシロ)で、トリガ条件を設定する対象の信号のこと。オシロの基本機能であるトリガの説明では「トリガソース」ということばが使われる。トリガソース信号とも表現される。トリガの源(source)となる信号、という意味。トリガの説明では「信号ソース」や、単に「ソース」と表記している場合もある。「トリガ信号」ということばは、オシロで使う場合はトリガソースとほぼ同じ意味だが、オシロ以外のモデルにも多く使われている。オシロでトリガ信号というと、トリガタイプ(トリガの種類)を意味している場合も多く(たとえば「○○トリガなど、多彩なトリガ信号に対応する」など)、トリガソースは「オシロに入力される何の信号をトリガの対象にするか」を意味する、オシロ特有の用語である。 ロジック入力ができるMSO(Mixed Signal Oscilloscope)が登場するまでは、トリガソースは入力チャンネルのいずれか1つを選択していた(電源ラインも指定できるモデルが多かった。これをライントリガと呼ぶ)。MSOではロジック入力もトリガソースにできるようになった。ただしすべての種類のトリガで指定できるわけではない。エッジトリガやパルス幅トリガではロジック入力でトリガがかけられるが、「立ち上がり/立ち下がり時間」トリガやラントトリガは信号のアナログ的な特長を捉えるトリガのため、ロジック入力はトリガソースにできないことが多い(各モデルによって異なる)。 オシロの世界的トップベンダ、テクトロニクスの技術資料「トリガ入門」はDPO7000、DPO/DSA70000B、MSO70000の各シリーズ(主にGHz帯域にフォーカスした広帯域オシロスコープ)を対象に、トリガ機能を解説した入門書だが、トリガソースについて以下の説明がある(かっこ内はTechEyesOnlineの追記)。 トリガ掃引で一般的に使用される信号ソースには、以下のようなものがある。 1. 入力チャンネルに入力された信号(MSOではデジタル入力も対象となる) 2. 入力チャンネルに入力された信号以外の外部ソース(外部トリガ信号) 3. 商用電源のライン信号(ライントリガと呼ばれる) 4. 1つ、またはそれ以上のチャンネル入力信号を評価し、それに基づいてオシロスコープ内部で算出した信号 周波数帯域がMHz帯の、エントリークラスからミドルクラスのモデルでも上記No.1~3のトリガソースを使用できるモデルが多いが、詳細は使用するモデルのマニュアルを参照することが肝要である。

トリガタイプ(とりがたいぷ)

(trigger type) オシロスコープ(オシロ)のトリガを設定する場合、機器の設定画面ではトリガの種類をtrigger typeと表示していることが多い。オシロでトリガというと、エッジトリガやパルス幅トリガなどの良く使われるトリガ名が思い浮かぶが、これらは正式には「トリガタイプ」(トリガの種類、トリガ名称)である。トリガにはトリガタイプのほかに、トリガモードやトリガカップリング、トリガホールドオフ、ライントリガなどの機能がある。 ミドルクラス(周波数帯域500MHz~2GHz)のモデルに標準装備しているトリガタイプは以下の種類である。:の後は代表的なモデル(キーサイト・テクノロジー InfiniiVision 3000G X、テクトロニクス 3シリーズMDO、横河計測 DLM3000)の各マニュアル(データシート、ユーザーズマニュアル[機能編]) に記載されているトリガタイプの名称である(2024年1月現在)。同じ機能のトリガタイプでも、メーカやモデルによって名称は統一されていない。各メーカの自由、つまりそのメーカが一番良い、妥当と思う名称で命名している。基本的なトリガタイプから順番に以下に列記する。 1. エッジ:エッジ、Edge 2. パルス幅:パルス幅、Pulse Width 3. パターン:パターン、Pattern、ロジック 4. 立ち上がり/立ち下がり時間:立ち上がり/立ち下がり時間、立上り/立下り時間、Rise/Fall Time 5. ラント:ラント、Runt 6. ビデオ:ビデオ、TV 7. Bトリガ:Bトリガ、シーケンス(Bトリガ)、エッジ後のエッジ(Bトリガ)、時間遅延トリガ、イベント遅延トリガ 8. ウィンドウ:Window、Window OR、ゾーン、ゾーン修飾 9. シリアル:シリアル、Serial No.7とNo.8はトリガ名称がメーカによって異なる。「Bトリガ」は2つめのトリガのことだが、「Bトリガを使う機能」が進化しているため、トリガタイプ(トリガの名称)としてBトリガと呼称しない場合も多い。「ウィンドウ」はタッチパネルの普及によって最近登場したトリガタイプで、現在も発展途上にあると筆者は感じる。No.9「シリアル」は現在のミドルクラスの大きな特長で、各社が注力している(詳細は以下の参考記事の「シリアルバス解析」が詳しい) より高機能なモデルには、もっと高度(複雑)なトリガ機能がある。オシロのトップベンダ、テクトロニクスの入門書「トリガ入門」は、同社の主に広帯域オシロスコープの機能を説明しているが、以下のようなトリガ名が解説されている(上記のNo.1~9以外を列記)。 ・拡張トリガとして、グリッチ・トリガ、タイムアウト・トリガ、トランジション時間トリガ、セットアップ/ホールド・トリガ、ロジック・クオリフィケーション、ロジック・パターン・トリガ、ロジック・ステート・トリガ、遅延トリガ、A→Bシーケンス・トリガ、リセット・トリガ、シーケンシャル・ロジック・トリガ。 ・アプリケーション特有のトリガとして、コミュニケーション・トリガ、メモリ・バス・トリガ、ロー・スピード・シリアル・プロトコル・トリガ。 ・高速シリアル・バス設計の検証、として、シリアル・パターン・トリガ、パターン・ロック・トリガ、シリアル・レーン違反トリガ、ビーコン幅違反トリガ、8B/10Bプロトコル・トリガ。 このように、ミドルクラスのモデルにはない種類のトリガタイプが多く説明されている。同資料では「従来最大でも17通りの組合せだった標準トリガの選択肢は、1400通り以上に増えている」とある。 需要に応えてオシロは機能(トリガタイプ)を増やしてきた。今後も新しいトリガタイプが登場すると思われる。

トリガディレイ(とりがでぃれい)

(trigger delay) デジタルオシロスコープでは、トリガ点(トリガ条件の成立)から一定時間(遅延時間)離れた位置をトリガポジションとすることができる。トリガ点からの遅延時間をトリガディレイといい、+/- 両方の値を設定できる。マイナスの値の場合は、トリガ点よりも以前の時間を意味し(プリトリガ)、プラスの場合は、トリガ点以降の時間を指す(ポストトリガ)。

トリガホールドオフ(とりがほーるどおふ)

(trigger hold off) オシロスコープで、有効なトリガの後、一定時間トリガがかからないようにする機能(2017年発行 テクトロニクスの冊子「オシロスコープのすべて」より)。 意図したタイミング(イベント)で信号を捉え、オシロスコープの画面に波形表示させる機能であるトリガには、トリガを無効にするホールドオフ機能がある。不定期に起こるバースト信号を安定してトリガしたい(信号を捕捉して、安定した表示をさせたい)ときにホールドオフ機能は有効である。この機能を使わないと、バースト信号のすべてのエッジでトリガがかかり、波形表示が安定しない。ホールドオフ時間は下限値と上限値を設定して、この2値の間の時間はトリガがかからないようにすることができる。 トリガホールドオフを発展させたトリガとして、キーサイト・テクノロジーのInfiniiVision 3000G Xシリーズには「第Nエッジ・バースト」トリガがある。アイドル時間を指定し、パルスバースト列のN番目のパルスのエッジでトリガすることができる。パルス列のバースト信号にトリガをかけるユニークなトリガタイプ(トリガの種類)である。

トリガポジション(とりがぽじしょん)

(trigger position) デジタルオシロスコープのトリガポジションとは、通常、画面の中央(水平方向 50%)である。下図のように中央の垂直軸の上部にトリガ点を示す「T」が表示される。トリガの調整つまみ(操作部の水平ポジション・ノブ)で表示位置を左右に変えられる。トリガ点以前のデータをプリトリガ、トリガ点以降のデータをポストトリガと呼ぶ。トリガポジションを変更することにより、ポストトリガとプリトリガの量を変えることができる。トリガポジションは、メモリ長に対し0~100%の範囲で設定できる。

トリガモード(とりがもーど)

(trigger mode) オシロスコープ(オシロ)の重要な機能であるトリガには通常3つのモードがある。 1. オート(auto) 一定時間内にトリガが発生した場合は、トリガに同期して波形を表示する。この一定時間をタイムアウト時間と呼ぶ。タイムアウト時間は50~100 msである。タイムアウト時間内にトリガが発生しなかった場合は、タイムアウト時間だけ経過してから波形を取り込み表示する。 オート・モードでは、必ず、何かしらの波形が表示される。ただし、タイムアウト時間より長い周期を持つ波形は正しく観測できないので次のノーマル・モードで測定する。つまり、変化の速さがわからない信号をとりあえず捕まえるのに役立つ、便利なモードだが、万能ではない。 2. ノーマル(normal) トリガ信号がある場合のみ波形を取り込んで表示する。トリガが発生しない場合は何も表示しない。これが一般的なモードで、このモードで波形観測ができるようになると、オシロの使い方に習熟してきたといえる。 3. シングル(single) ノーマル・モードと同じようにトリガ信号がある場合だけ波形を取り込んで表示する。ノーマル・モードとの違いは、シングルでは、トリガを受け付けるのが1回だけである。2回め以降のトリガには反応しない。ただし、一部の機種ではトリガを受け付ける回数(N)を設定できる。たとえば横河計測のDLM2000シリーズはこの回数がデフォルト(初期設定)では2回に設定されている(N=2)ため、設定を1回に修正しないと、シングル・モードにならない。そのためメーカは「シングル」ではなく「Nシングルモード」と呼称している。 オシロスコープの測定開始/停止ボタン(通常はstart/stopと表示)は本体前面の右上に配置されていることが多いが、そのボタンの隣に「single」ボタンがあるモデルが多い。トリガモードがautoやnormalに設定されて測定しているときにsingleボタンを押すと、モードがシングルに切り替わる。1回トリガがかかり、測定は停止(stop)状態になり、singleボタンは点灯したままとなる。この状態でstart/stopボタンを押すと、singleボタンは解除され、元のauto(またはnormal)でstart(測定開始)となり、start/stopボタンが点滅して、トリガがかかるとボタンの点滅は点灯状態となる。 つまり、オシロの使い方の基本は、トリガの設定をしてから測定開始する(startボタンを押す)。トリガモードはオシロ使用者の基礎知識である。 オシロの使用者はノーマルとオートの2つのモードを使い分けて、捕まえたい波形を観測する。オートはカメラのオートのように機械が自動で条件設定をしてくれるので便利だが、場合によっては波形を捕まえられないときがあり、通常はノーマルで使うことが望ましい。そのためノーマル(通常)と呼称している。オシロではほとんどの機種でオート、ノーマル、シングルと命名していてメーカが違っても、ほとんどこの呼び方に統一されているので、利用者は安心である。 テクトロニクスの冊子「オシロスコープのすべて」(2017年発行)では次の説明がある。 トリガ・モード :トリガが検出されなかった場合の波形の表示方法を設定するモード。一般的なトリガ・モードとしては、「ノーマル」と「オート」がある。 参考用語:トリガ機能 ・・FFTアナライザではトリガの種類はシングル、リピート、ワンショットの3つであることが解説されている。機種群(カテゴリー)が違うと、トリガのモードの名称が違う(メーカが自由に機能名称を命名する)ことがわかる恒例である。

トリガレベル(とりがれべる)

(trigger level) オシロスコープのトリガで、トリガソース信号がそのレベルに達することで水平掃引を開始する電圧レベル。(2017年発行 テクトロニクスの冊子「オシロスコープのすべて」より) アナログオシロスコープにトリガ機能が備わったとき、トリガレベルとスロープ をキーにした。スロープとは信号の値が増加(または減少)していく、波形の傾斜(勾配)を指す。増加するスロープを立ち上がり、減少するスロープを立ち下がりと呼ぶ(トリガスロープ)。トリガの基本機能(種類)であるエッジトリガは、スロープとレベルを設定し、信号がこの条件を満たすとトリガがかかる。トリガレベルをしきい値とみなして、これをスレッショルド・クロスとも呼ぶ。 トリガレベルは通常、オシロスコープ表示画面内の右端に小さな矢印で示される。矢印の色は選択されたトリガソースのチャンネルの色に対応している(現在のオシロスコープは入力チャンネルごとに色があり、色表示によって視覚的に何chの波形か、判断を容易にしているモデルが多い)。トリガレベルはピークツーピーク電圧の50%に設定するとH/Lのしきい値に近くなるが、使用者の意図によって自由に設定される。 現在の電子デバイスは駆動電圧が低電圧化(省エネ)し、H/Lの電圧値が異なるデバイスが多く混在する。そのため、それぞれにスレッショルド電圧を設定しないといけない。オシロスコープのトリガレベル設定は1つで、トリガソースを何の入力信号に選択しても共通の1つの値である。そのため、スレッショルド電圧が異なるデバイスを観測している別の入力チャンネルをトリガソースに選択したら、トリガレベルを変更しないといけない。高機能なモデルでは、入力チャンネルごとに異なるトリガレベルを設定できるものもある(すべてのチャンネルで共通の設定にすることも可能)。

ドリフト(どりふと)

(drift) JISの規定Z8103には計測に関する用語解説が多くあり、機器のドリフト(instrumental drift)について以下のように説明している。 測定器の特性の変化による、指示値の連続的又は漸進的な経時的変化。(注:機器のドリフトは、測定される量の変化にも、認識されたいかなる影響量の変化にも関係しない。) 簡単に言うと、測定器の値が緩やかに変動することである。原因は内部の部品の経年劣化などが考えられる。周囲温度の変化による温度ドリフトや、スペクトラムアナライザの周波数ドリフトなどが、計測器メーカの用語解説にある。driftを和訳すると「漂う、流される」。 絶縁抵抗計などの現場測定器メーカの共立電気計器株式会社は用語解説で以下がある。 「ドリフト:すべての状態が一定に保たれているとき、規定された時間中の機器の指示値、表示値または供給値の一般に緩やかで継続的な好ましくない変化をいう。」 計測用電源でも「ドリフト」について解説している計測器メーカがある。 電気製品が安定動作するまで一定時間、動作させることをエージングという。ドリフトやエージングは電子機器の安定動作に関係する用語である。 計測器などの電子機器ではなく、一般にドリフトというと「ドリフト走行」(drifting)がある。自動車や二輪車を意図的に横滑りさせてコントロールする走行技術のことである。 「ドリフトする集団」はドリフターズ(drifters)。1953年に米国でコーラス・グループのThe Drifters(ザ・ドリフターズ)が結成されている。ザ・ドリフターズといえば、日本ではいかりや長介(リーダ)、高木ブー、中本工事、加藤茶、荒井注(または志村けん)の5人組(1980年代)が有名である。1956年に音楽バンドとして結成され、「いい湯だな」など多くの楽曲がある。1966年6月30日と7月1日のビートルズ日本公演の前座を務めたことが知られている。1970年代以降はコントグループ(通称:ドリフ)として活動し、1980年頃のTV番組「8時だョ!全員集合」は怪物的な高視聴率の長寿番組となった。後にいかりや長介は俳優として時代劇に出演し、1997年放映のTVドラマ『踊る大捜査線』ではベテランのたたき上げ刑事を演じた。志村けんが2020年に新型コロナウイルス感染で亡くなるなど、生存しているのは高木ブーと加藤茶の2人となった(2023年現在)。加藤は歳の離れた年下の女性と結婚し、円満な夫婦生活をおくり、話題となっている。

トリマ(とりま)

(trimmer)電子部品の半固定抵抗器や半固定コンデンサをトリマ(またはトリマー)と呼称する。通常、形状は正方形で、プリント基板側に接続する端子(リード線)は3本あり、上面にはプラス(またはマイナス)ドライバで抵抗値(またはキャパシタの値、静電容量)を可変できる溝(つまみ)がある。トリマの抵抗値(または静電容量)は決まっている(固定)が、その値を微調整できる。部品のばらつきの調整や、回路の微調整が必要な箇所に使われ、調整が終わったら固定され、使用中に可変することは無い。そのため可変(たとえば可変抵抗器)と言わずに半固定と呼んでいる。トリマのことを「微調整用可変素子」と説明している例もある。 英語のtrimはととのえる/調整するの意味。trimmerは調整する物(整える/調整する、はarrnge/adjustで、trimとの違いは不明だが、動物の毛を刈りそろえる職業である犬・猫の美容師はトリマーと呼ばれている。この場合トリマーは「整頓する/手入れする人」の意味である)。半固定抵抗器は「トリミング抵抗器」、「トリマポテンショメータ」、「トリミングポテンショ」などとも呼ばれ、「抵抗」より「トリマ」や「トリミング」という表現が良く使われている。半固定コンデンサも別名トリマコンデンサと呼ばれる。

Trillion Sensors Universe(とりりおんせんさーずゆにばーす)

翻訳すると「1兆個のセンサを使う宇宙(社会)」。2013年頃に米国で提唱された「(10年後の)2023年には年間1兆個を超すセンサを活用し、あらゆるものをセンサにつなげ、ICT活用により、さまざまな分野で変革をもたらそう」とする構想。 各種の物理量を検知するセンサはIoTの重要な要素である。EV(電気自動車)などは多くのセンサをすでに搭載し、これから実現する自動運転(ADAS)ではよりセンサが増える。2023年に1兆個になるかは不明だが、Trillion Sensors Universeは、センサ技術がIoTなどの近未来のインフラに活用されることを象徴することばである。

トルク(とるく)

(torque)軸をねじる方向の(回転させる)力。単位はN・m(ニュートン・メートル)。 トルクの計測には、軸にかかるねじれをひずみゲージを使ってひずみを測定することでトルクを算出するなど方法がいくつかある。トルクの計測器はトルクメータ、トルク計、トルク検出器、トルクセンサ、トルク角度測定器など、呼称が多い。 参考記事(会員専用):【展示会レポート】人とくるまのテクノロジー展2019横浜の2ページ目 ・・ひずみを計測してトルクを算出する東京測器研究所の摩擦型トルクセンサシステムを取材。

トルク計(とるくけい)

(torque meter) モータなどのトルクを測定する機器。別名:トルクメータ。 参考用語:トルク検出器