トリガモード
(trigger mode)
オシロスコープ(オシロ)の重要な機能であるトリガには3つのモードがある。
1. オート(auto)
一定時間内にトリガが発生した場合は、トリガに同期して波形を表示する。この一定時間をタイムアウト時間と呼ぶ。タイムアウト時間は50~100 msである。タイムアウト時間内にトリガが発生しなかった場合は、タイムアウト時間だけ経過してから波形を取り込み表示する。 オート・モードでは、必ず、何かしらの波形が表示される。ただし、タイムアウト時間より長い周期を持つ波形は正しく観測できないので次のノーマル・モードで測定する。つまり、変化の速さがわからない信号をとりあえず捕まえるのに役立つ、便利なモードだが、万能ではない。
2. ノーマル(normal)
トリガ信号がある場合のみ波形を取り込んで表示する。トリガが発生しない場合は何も表示しない。これが一般的なモードで、このモードで波形観測ができるようになると、オシロの使い方に習熟してきたといえる。
3. シングル(single)
ノーマル・モードと同じようにトリガ信号がある場合だけ波形を取り込んで表示する。ノーマル・モードとの違いは、シングルでは、トリガを受け付けるのが1回だけである。2回め以降のトリガには反応しない。ただし、一部の機種ではトリガを受け付ける回数(N)を設定できる。たとえば横河計測のDLM2000シリーズはこの回数がデフォルト(初期設定)では2回に設定されている(N=2)ため、設定を1回に修正しないと、シングル・モードにならない。そのためメーカは「シングル」ではなく「Nシングルモード」と呼称している。同社はDLM以前のDLシリーズの頃から初期設定をN=2にしているので、相応の理由があると推察するが、筆者にはまったく理由がわからない。
オシロスコープの測定開始/停止ボタン(start/stopやrun/stopと表示)は本体前面の右上に配置されていることが多いが、そのボタンの隣に「single」ボタンがあるモデルが多い。トリガモードがautoやnormalに設定されて測定しているときにsingleボタンを押すと、モードがシングルに切り替わる。1回トリガがかかり、測定は停止(stop)状態になり、singleボタンは点灯したままとなる。この状態でstart/stopボタンを押すと、singleボタンは解除され、元のauto(またはnormal)でstart(測定開始)となり、start/stopボタンが点滅して、トリガがかかるとボタンの点滅は点灯状態となる。
つまり、オシロの使い方の基本は、トリガの設定をしてから測定開始する(startボタンを押す)。トリガモードはオシロ使用者の基礎知識である。
通常はオシロのTRIGGER関連の操作部にはMODEのボタンがあり、トリガモードを画面上で選択する。岩崎通信機は2020年に1GHz/8ch/12ビットのDS-8000シリーズを発売した。このモデルはTRIGGERの操作部に「AUTO」、「NORMAL」、「SINGLE」の各ボタンがあり、右上の「start/stop」ボタンの横には「single」ボタンが無い。このようなボタン配置は同等クラスの他社オシロと比べて特異である。同社はアナログオシロスコープ時代からの老舗の国産オシロメーカなので、このボタン配置にも深い背景(深慮遠謀)があると思われるが、筆者には理由が想像すら及ばない。
テクトロニクスやキーサイト・テクノロジーのオシロを使い慣れている技術者は、横河計測のオシロを使うと最初は操作に戸惑う、という声を聞く。反対に、オシロを使い続けている従来からの電気・ハードウェア設計者ではなく、最近のデバッグ用途でオシロを使うソフトウェア技術者は横河計測の設計ポリシー(ボタン配置など)は使いやすいという声がある。オシロの老舗のテクトロニクスと1980年代にデジタルオシロに参入した横河計測、それぞれにファンがいる状況である。
オシロの使用者はノーマルとオートの2つのモードを使い分けて、捕まえたい波形を観測する。オートはカメラのオートのように機械が自動で条件設定をしてくれるので便利だが、場合によっては波形を捕まえられないときがあり、通常はノーマルで使うことが望ましい。そのためノーマル(通常)と呼称している。オシロではほとんどの機種でオート、ノーマル、シングルと命名していてメーカが違っても、ほとんどこの呼び方に統一されているので、利用者は安心である。
テクトロニクスの冊子「オシロスコープのすべて」(2017年発行)では次の説明がある。
トリガ・モード :トリガが検出されなかった場合の波形の表示方法を設定するモード。一般的なトリガ・モードとしては、「ノーマル」と「オート」がある。
FFTアナライザではトリガの種類はシングル、リピート、ワンショットの3つであることが解説されている(トリガ機能)。機種群(カテゴリー)が違うと、トリガのモードの名称が違うことがわかる恒例である。


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