トリガタイプ
(trigger type)
オシロスコープ(オシロ)のトリガを設定する場合、機器の設定画面ではトリガの種類をtrigger typeと表示していることが多い。オシロでトリガというと、エッジトリガやパルス幅トリガなどの良く使われるトリガ名が思い浮かぶが、これらは正式には「トリガタイプ」(トリガの種類、トリガ名称)である。トリガにはトリガタイプのほかに、トリガモードやトリガカップリング、トリガホールドオフ、ライントリガなどの機能がある。
ミドルクラス(周波数帯域500MHz~2GHz)のモデルに標準装備しているトリガタイプは以下の種類である。:の後は代表的なモデル(キーサイト・テクノロジー InfiniiVision 3000G X、テクトロニクス 3シリーズMDO、横河計測 DLM3000)の各マニュアル(データシート、ユーザーズマニュアル[機能編])
に記載されているトリガタイプの名称である(2024年1月現在)。同じ機能のトリガタイプでも、メーカやモデルによって名称は統一されていない。各メーカの自由、つまりそのメーカが一番良い、妥当と思う名称で命名している。基本的なトリガタイプから順番に以下に列記する。
1. エッジ:エッジ、Edge
2. パルス幅:パルス幅、Pulse Width
3. パターン:パターン、Pattern、ロジック
4. 立ち上がり/立ち下がり時間:立ち上がり/立ち下がり時間、立上り/立下り時間、Rise/Fall Time
5. ラント:ラント、Runt
6. ビデオ:ビデオ、TV
7. Bトリガ:Bトリガ、シーケンス(Bトリガ)、エッジ後のエッジ(Bトリガ)、時間遅延トリガ、イベント遅延トリガ
8. ウィンドウ:Window、Window OR、ゾーン、ゾーン修飾
9. シリアル:シリアル、Serial
No.7とNo.8はトリガ名称がメーカによって異なる。「Bトリガ」は2つめのトリガのことだが、「Bトリガを使う機能」が進化しているため、トリガタイプ(トリガの名称)としてBトリガと呼称しない場合も多い。「ウィンドウ」はタッチパネルの普及によって最近登場したトリガタイプで、現在も発展途上にあると筆者は感じる。No.9「シリアル」は現在のミドルクラスの大きな特長で、各社が注力している(詳細は以下の参考記事の「シリアルバス解析」が詳しい)
より高機能なモデルには、もっと高度(複雑)なトリガ機能がある。オシロのトップベンダ、テクトロニクスの入門書「トリガ入門」は、同社の主に広帯域オシロスコープの機能を説明しているが、以下のようなトリガ名が解説されている(上記のNo.1~9以外を列記)。
・拡張トリガ
として、グリッチ・トリガ、タイムアウト・トリガ、トランジション時間トリガ、セットアップ/ホールド・トリガ、ロジック・クオリフィケーション、ロジック・パターン・トリガ、ロジック・ステート・トリガ、遅延トリガ、A→Bシーケンス・トリガ、リセット・トリガ、シーケンシャル・ロジック・トリガ。
・アプリケーション特有のトリガとして、コミュニケーション・トリガ、メモリ・バス・トリガ、ロー・スピード・シリアル・プロトコル・トリガ。
・高速シリアル・バス設計の検証、として、シリアル・パターン・トリガ、パターン・ロック・トリガ、シリアル・レーン違反トリガ、ビーコン幅違反トリガ、8B/10Bプロトコル・トリガ。
このように、ミドルクラスのモデルにはない種類のトリガタイプが多く説明されている。同資料では「従来最大でも17通りの組合せだった標準トリガの選択肢は、1400通り以上に増えている」とある。
需要に応えてオシロは機能(トリガタイプ)を増やしてきた。今後も新しいトリガタイプが登場すると思われる。