計測関連用語集

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オープン/ショート補正(おーぷんしょーとほせい)

(open&short compensation)LCRメータの誤差は測定器本体だけではなく、試料(DUT)との接続を行う測定治具であるテストリードやテストフィクスチャを含めて考慮しないといけない。LCRメータは測定誤差を少なくするために補正機能が搭載されている。測定治具が持つインピーダンス成分を除くため、試料が取り付けられる点(補正の基準面)でインピーダンスがゼロ(短絡)と無限大(開放)の状態を作って、測定前に補正を行う。これをオープン/ショート補正と呼んでいる。 参考記事:LCRメータの基礎と概要 (第2回)の2回目・・補正について図解。

大松電気(おおまつでんき)

1954年に東京都目黒区に設立した計測器メーカ。同年、テストオシレーターLSG-100を開発。翌年開発のオーディオ発振器LAG-55は名器で、ロングランを続けたといわれる。オーディオやアマチュア無線など、当時の流行りの電子機器を評価する計測器をつくった。1965年には放送・映像分野へ、パターンジェネレータLCG-388(家庭に普及が始まったテレビの試験をする信号発生器)を開発し参入、1966年に社名をリーダー電子株式会社に変更し、現在に至る。 1990年頃のオーディオ・ビデオ測定器(当サイトではカテゴリー名「テレビ・オーディオ測定器」)はTV放送向けの映像・ビデオ関連測定器が主流で、国産のシバソクとリーダー電子が競っていた。アストロデザインはデイスプレイを評価するプログラマブルビデオ信号発生器など放送向けの映像信号発生器があった(1980年に初号器をリリース)。世界的にはテクトロニクスの映像用測定器はラインアップが充実していた。TV放送は大きなインフラ投資である地上波のデジタルへの切替(地デジ)が導入され、NHKと民放の設備導入は2001~2003年にほとんどが終わり、2011年までに各ユーザの受信機器(TVなど)の普及も完了した(2011年7月に地上波のアナログ放送が完全修了)。 2015年にシバソクは計測器をアサカに移管し、ATE(半導体テスタ)に集中した(映像関連計測器から撤退)。2019年に(世界的な投資会社であるダナハーの傘下になっていた)テクトロニクスはビデオ事業部(映像関連計測器の開発部門)を売却し、同様に映像関連計測器から撤退した。現在では映像用の信号発生器は主にアストロデザインが、信号を測定する波形モニタは主にリーダー電子が担っている。リーダー電子は2018年には、2020年東京オリンピックを見据え、4K/ 8Kの製品群(ラスタライザなど)を発表している。また、フィールド用のシグナルレベルメータ(電磁界強度計)も2019年にはリニューアルして4K/8Kに対応している(モデルLF965)。 1964年9月創刊の月刊トランジスタ技術には、大松電気のディップメータの広告が表3(裏表紙の内側ページ)にある。「LEADER TEST INSTRUMENTS」(リーダーのテスト機器)や「リーダーの測定器」という表記がある(会社名は大松電気株式会社)。1966年に大松電気はリーダー電子に社名変更しているが、それ以前から「LEADER(リーダー)」と呼称していたことが伺える。大松電気とリーダー電子の社名の由来について、同社HPには何も記載されてはいない。

オーム(おーむ)

(ohm) 抵抗の単位。記号:Ω。国際単位系(SI単位)。電気抵抗(resistance、レジスタンス)だけでなく、インピーダンス(impedance)やリアクタンス(reactance)の単位である。抵抗の反対に「電気の流れやすさ」を示す単位、ジーメンス(記号:S)は1/Ω(オームの逆数)である。アドミッタンス(admittance)やコンダクタンス(conductance)の単位はジーメンス。 抵抗器の値であるR(resistance)とコンデンサの値C(Capasitance、キャパシタンス、単位:ファラッド)、コイルの値L(inductance、インダクタンス、単位:ヘンリー)を測定するのがLCRメータやインピーダンスアナライザなどの回路素子測定器(電子部品の値を測定する測定器)である。レジスタンスやキャパシタンスの接尾語のタンスは「~している状態、~する数量(程度)」という意味で、「性質、状態、行為」を示す。電気の基本量はタンスだらけである。 オームはオームの法則を発見したドイツの物理学者ゲオルク・ジーモン・オームに由来する。記号にギリシャ文字のΩ(オメガの大文字)が使われるのは、オームの頭文字O(オー)だと数字の0(ゼロ)と混同するためといわれている。ゲオルグ・オームはギリシャ文字ではκέοργκ Ωμ。 電気関連の業界ではオームは良く使われるワードである。1914年創業の出版社であるオーム社は、電気を含む自然科学の理工学専門書や資格試験書(電検3種など)、雑誌4誌を発行している。理工系の学生なら教科書としてオーム社の書籍を使ったことがない者は少ないはずである。大手の電気計測器メーカのOB会に「オーム会」があるが、1995年(平成7年)3月に起きた地下鉄サリン事件がオウム真理教によることが判明すると、宴会の予約を店に電話する際には訝しがられたという笑い話がある。電話では「オーム」と「オウム」は判別が難しい。

オームの法則(おーむのほうそく)

( Ohm's law) 「電流 の強さは電圧 に比例し、抵抗 に反比例する」という法則。電流(A:アンペア)=電圧(V:ボルト)/抵抗(Ω:オーム)。電気回路の1丁目1番地の法則。中学校の理科で習う。電気工学の最も基本の公式。ドイツの物理学者、ゲオルク・オームが1826年にこの法則を発表したことによる。 電気業界にはオームを冠した会社がある。オーム出版は電気を含む自然科学の書籍を出版していて、理工系の学生が教科書として使う本が多い。オーム電機(Ohm Electric)は照明を始めとする電気器具のメーカである。

オクターブ分析(おくたーぶぶんせき)

(Octave Analysis)パワースペクトルが分析周波数を一定の幅に分割して(定幅型)各帯域毎のパワーを表すのに対し、音響分野での周波数分析器では周波数軸を対数スケールにとり、対数スケール上で等分に分割する定比幅の帯域フィルタを通過させることにより、周波数分析を 行う場合が多くある。帯域幅は1オクターブ幅および1/3オクターブ幅が一般的で、このような分析をオクターブ分析という。IEC 61260(JIS C 1514)の規格では、オクターブバンドの中心周波数、およびフィルタ特性が定められていて、アナログまたはディジタルのオクターブ分析器はこれに統一されている。(小野測器の「FFT解析に関する基礎用語集」より。詳しい数式は小野測器HPを参照。)

Octal SPIフラッシュ(おくたるえすぴーあいふらっしゅ)

SPIフラッシュ(SPI:Serial Peripheral Interface)は、シリアルバスによる通信方式モードを採用したNOR型フラッシュメモリ。外部メモリとして使う場合でも、少ないピン数でマイコンと接続するので、パッケージサイズを小型化し大容量を通信できるのがメリット。通信方式として、single(バス幅:1bit)、Dual(2bit)、Quad(4bit)があったが、近年Octal(オクタル)モードが追加された。Octalモードはデータ線を8本使い、1クロックで8bit(1byte)を1度に送信するため、singleモードより8倍速い通信が可能。デバイスメーカ各社からはすでに商品化され、車載や産業機器を中心に拡がりを見せている。東亜エレクトロニクス株式会社 フラッシュサポートグループカンパニーでは対応したROMライタを順次進めている。(同社の「書込みやプログラマに関する用語集」より。SPIフラッシュの通信イメージが上記用語集には掲載されている。)

オシレータ(おしれーた)

(Oscillator) 発振器や発振回路のこと。発生器(Generator、たとえばSG:Signal Generator信号発生器や、電圧電流発生器)との違いは説明が難しい。発振器はRC発振器のように、1MHz以下の可聴周波数、信号発生器は主にRF帯の高周波で使われる。発振器は高周波でない(低周波)信号の発生源といえる。オシロスコープのオシロの語源は「発振」という説がある。「発振(Oscillation)電圧を観測する機器」をオシロスコープと命名したという説である。

オシロ(おしろ)

電気信号(電圧や電流)の時間的な推移(変化のグラフ、波形と呼ばれる)を観測して表示するオシロスコープ(oscilloscope)の略称。電気計測器のカテゴリー(機種群)の中で最も販売額が大きい(他のカテゴリーに比べて突出してNo.1)。周波数帯域100MHz程度(エントリークラス)から、1GHz程度(ミドルクラス)のオシロは、電気技術者が1台/人保有しているといわれるくらい普及している(電気エンジニアの普段使いのオシロ、という表現をされる)。 1960年代頃まではオッシロという呼称もされていたが、現在は「オシロ」のみが略称として使われている。 計測器は関係者の間では略称で呼ばれることが多い。他にはスペクトラムアナライザをスペアナ、ネットワークアナライザをネットアナ、プロトコルナライザをプロアナと呼称する。また、スペアナはSA、ネットアナはNA、信号発生器(Signal Generator)はSG、ファンクションジェネレータ(Function Generator)はFGなどの略記が頻繁に使われるが、オシロはOSなどの略記をされることはない。そのかわり、デジタルストレージオシロスコープ(Digital Storage Oscilloscope)の略記「DSO」 やミックスドシグナルオシロスコープ(Mixed Signal Oscilloscope)の略記「MSO」などは大変よく使われる表記である。 絶縁抵抗計をメガーと呼ぶのは、別名である。

オシログラフ(おしろぐらふ)

(oscillograph) 電気信号の波形を観測・記録する装置として、米国のウエスチングハウスは1920年に携帯型の電磁オシログラフを発売していた。1924年に横河電機は日本初の電磁オシログラフを国産化している(電磁型オッシログラフ)。オシログラフは記録計(レコーダ)の昔の名称といえる。波形観測の機器としてオシロスコープ(アナログオシロスコープ)が登場するが、これを「ブラウン管(CRT、陰極線管)を使ったオシログラフ」と解説してる文献がある(※)。oscillographとは「oscillation(発振)やoscilator(オシレータ、発振器)のgraph(図、形状)」という意味で、「発信している波形」のことから「信号の波形を観測・記録する」機器のことを指すようになったと推測される。 (※) オシロスコープをオシログラフと呼ぶ文献の例。 オシロスコープの歴史は古く,1897年(明治30年)にドイツ人ブラウン(Karl F.Braun)が大学の学生に電流波形を見せようとして考案した陰極線管(以下,ブラウン管またはCRT:Cathode-Ray Tube)により,電気現象を電子ビームに変換してブラウン管の蛍光面に描かせたときにさかのぼる。現在のような形のオシロスコープができたのは,1932年(昭和7年)11月に発表されたCRTを使った最初のオシロスコープ「CRTオシログラフ」と言われている。 (IEEJ Journal,Vol.124,No.5,300~303ページ、2004年。岩崎通信機でオシロスコープの開発に従事した成田芳正著) IEEJは一般財団法人 日本エネルギー経済研究所。 電磁オシログラフは、長い周期の波形を紙に記録する機器で現在のカテゴリー(機種分類)では記録計(レコーダ)である。オシロスコープは短い周期の波形を観測・記録することに優れている(記録計とは別の、波形観測機器であるオシロスコープというカテゴリーになっている)。レコーダは長時間の記録ができる(たとえば紙を補充すればいつまででも記録できる)。反対にオシロスコープは変化が速い(周波数が高い)信号を観測できるが、記録できる時間は短い。現在でも記録計(メモリレコーダなど)とオシロスコープは、基本の仕様の項目は同じだがその数値は異なり、使い方(アプリケーション)がまったく違っている。それは電磁オシログラフとアナログオシロスコープの時と変わらない。 横河電機は日本初の電磁オシロフラフを開発したことが、後の計測器部門(現在の横河計測)に影響したかはわからないが、1990年頃に「オシログラフィックレコーダ」という品名の記録計(メモリレコーダ)をつくっていた。またメモリレコーダのことをメモリオシログラフと呼称する人が当時の横河電機の計測器部門にいた(当サイトのメモリレコーダのカテゴリー名が「メモリオシログラフ」なのはそれが理由である)。三栄測器や渡辺測器(現グラフテック)という「わが社こそ記録計の老舗、王道メーカなり」と自負している2社はオシログラフに特別な愛着はないが、横河電機にはオシログラフは特別であるようだ。上記の3社よりも後の1980年代にメモリレコーダに参入し、現在ではメモリレコーダのトップシェアとなった日置電機に、オシログラフ製品がないことはいうまでもない。 株式会社近計システムは保護継電器向けの3相デジタルパワーメータPHAシリーズをラインアップする計測器メーカだが、主力は電力会社向けの計測・監視装置である。同社ホームページの製品ページのトップのサブタイトルは「自動オシログラフ(じょう乱記録)」である。具体的な製品としては、ネットワーク対応型総合計測装置 NEO-5000は、「入力変換器(ISO-3032)と組み合わせて使用する多機能型総合計測装置で、オシロ波形解析ソフトで故障解析ができる」とある。デジタル自動オシロ AMX-2000/2200は「入力変換部、演算部、波形記録部、通信部で構成したオールインワン型の自動オシロ装置で、波形解析ソフトを使用して故障解析ができる」とある(2024年4月現在)。ここでいうオシログラフやオシロの定義は不明であるが、電力会社の意向に沿って名称は命名されていると思われる。 計測器情報: 横河電機のオシロフラフィックレコーダの製品例

オシログラフィックレコーダ(おしろぐらふぃっくれこーだ)

横河電機(現横河計測)のOR1400やORM1300などの品名。 オシロスコープが半導体メモリを備えサンプリングによるデジタル式(デジタルオシロスコープ)になったように、アナログのメータで表示していたレコーダもデジタル式のメモリレコーダとなった。記録計の主流がメモリレコーダになっていく1980年代~1990年代に、計測用レコーダの老舗である同社がデジタル式のレコーダとして世に問うた製品群だった。現在の横河計測にはこの品名の製品は無いが、DL708からDL950、DL350へと続くスコープコーダ(同社のオシロの通称である「DL」を冠したレコーダ。同社オシロの形名はDL1600やDLM3000のように数字4桁だが、レコーダであるスコープコーダは数字3桁)にそのDNAは継承している。 日置電機のメモリハイコーダや、三栄測器(旧NECアビオニクス、現エー・アンド・デイの工業計測機器部門)のオムニエースのように、横河計測のメモリレコーダの1種である。OR1400は2001年4月1日に販売終了し、後継機種はDL950やDL350(2021年3月現在)。 ORM1200/1300の製品カタログの表紙には「高速ユニバーサルレコーダ」と記載されている。カタログには「ORMシリーズは高速ユニバーサルレコーダの最新の進歩である。複数の絶縁アナログチャネルを装備し、ロジックチャネルもオプションで追加できる」旨が記載されていた。 オシログラフィックレコーダと同時期に発売されていたAR(アナライジングレコーダ)の正式な後継がスコープコーダである(参考記事を参照)。オシログラフィックレコーダもARも「レコーダのようなオシロ」という位置づけで登場したが、両者の正確な違いは、今ではわからない。オシログラフックレコーダの設計コンセプトを知ることができるような文献はほとんどない(国立国会図書館によれば、所蔵の1992発行の横河技報36(2) 85~88ページにはOR2300の解説がある)。

オシロスコープ(おしろすこーぷ)

(oscilloscope) 電気信号の波形を映し出し、電圧の時間変化を観測する測定器。電気計測器の代表機種群で、日本だけでなく全世界で最も市場規模(生産額・販売額)が大きい機種群の1つ。デジタルオシロスコープとアナログオシロスコープがあるが、現在はほぼデジタル。略称:オシロ。 デジタルオシロスコープは1980年代に登場し、2000年代以降に主流になった。測定できる周波数の上限(周波数帯域)はMHzからGHzに伸びた。2000年代初頭は周波数帯域4GHzが最高機種だったが、2005年に、情報家電分野の高速デジタル市場向けに6GHzの広帯域モデル(キーサイト・テクノロジーの54855A)が発売されて以降、オシロ3メーカ(テクトロニクス、キーサイト、レクロイ)による上位モデル競争が続き、2018年には110GHzモデル(約1億円/台)が発売されている。これら広帯域オシロスコープは便宜的に高速オシロと呼ばれ、従来のオシロとは区別されている。約2~4GHzで区分され(メーカによって異なる)、従来オシロは便宜的に汎用オシロと呼ぶ(メーカはこの呼び方はしていない、広帯域オシロと区別するための便宜的な呼び方である)。 デジタルオシロのA/Dコンバータ(ADC)は長らく8ビットだったが、2012年に高分解能の10ビットモデルが発売され、2018年以降は汎用オシロの高分解能機種が1つのトレンドになりつつある。たとえばテクトロニクスは1GHz帯域の高性能モデル(4シリーズMSO、5シリーズMSO、200MHz~2GHzをカバー)と、広帯域モデルの5シリーズMSO(高速デジタル回路の評価用、1GHz~10GHzをカバー)(※)は分解能が標準で12ビットである。 当初は自動車などのパワーエレクトロニク分野向けに「時間波形だけでなく電圧も精度良く測定する」需要に応えて登場した高分解能モデルだが、周波数がGHz帯域の信号は、ダイナミックレンジが広い高分解能モデルで電圧値を測定しておくことが多くなってきている。高分解能モデルの登場によって、オシロは波形の観測器(scope)から(時間と電圧が正確に測定できる)測定器(meter/tester)にやっと進化したが、電圧値をDMM並みの精度で測定することがオシロの常識になったのかもしれない。 オシロスコープのことばの由来は、「オシロスコープのすべて(2017年テクトロニクス発行の冊子)」に「オシレート(発振)が語源で、発振電圧を測定するところから」とある。 発振(Oscillation)の観測器(Scope)という造語といえる。 (※)オシロを用途別に分類し、一般的な回路基板評価用途(~2GHzまで)を1G帯域のモデル、広帯域モデルの中で1GHz~10GHzに対応したモデルを高速デジタル回路の評価用と称している。以下の表1が詳しい。 参考記事:オシロスコープの動向と、最新1GHz帯域モデルの各社比較

オゾン濃度計(おぞんのうどけい)

大気内のオゾンの濃度を測定する機器。

オッシロ(おっしろ)

オシロスコープや電磁オシログラフ(アナログオシロスコープ以前の1920年頃から使われていた波形測定器で、レコーダの1種)に「オシロ」という表記があるが、オシロではなく「オッシロ」という表現(表記)が1960年頃は一般的だった。1964年9月に創刊されたエレクトロニクスの月刊誌「トランジスタ技術」10月号にはラジコン(※)の記事がある。トランジスタの採用によってラジコン装置がオーディオトーン式になった。オーディオトーン信号をアナログオシロスコープで測定した画像が掲載されている。その画像のキャプションは「オーディオトーンの波形をオッシロで見る」と書いてある。当時はオシロスコープのことをオッシロスコープと呼称していたことがわかる。 同じ号に、岩崎通信機から発売された新製品のアナログオシロスコープSS-3101の紹介記事を岩崎通信機の技術者が書いている。同社の当時のオシロスコープは「シンクロスコープ」と呼ばれ、記事には一言も「オシロスコープ」ということばが使われていないので、同社が他社の製品をオッシロスコープと呼んでいたかはかわらない。 同号のニュースページのEquipmentsコーナに、タイトル「オシロ用直流増幅器」で、三栄測器のDA-842/DA-422が紹介されている。説明文には「インク書きオシログラフ、電磁オシログラフまたはビジグラフと組み合わせて使う」とある。表現はオッシログラフではなく現在と同じオシログラフである。 1960年代にはオッシロとオシロが混在して使用されていたと推測される。1924年にYEW(株式会社横河電機製作所、現在の横河電機)は、逓信省電気試験所(当時)から国産化の要請を受け、「3要素型N-3」を開発したが、その名称は「携帯用電磁型オッシログラフ」といい、オシログラフではなくオッシログラフである。1920年当時はオシロではなくオッシロと呼称していたのかもしれない。オッシロスコープがいつ頃からオシロスコープに統一されたかは不明である。 そのほかの使用例としては、1967年に「自作できる測定器―バルボルからオッシロまで」が誠文堂新光社から刊行されている。 (※)ラジコンとはラジオコントロール(Radio Control)の略称で、R/Cなどと略記される。無線機を使って模型飛行機を操作し、離着陸や飛行を楽しむ趣味。ラジコン飛行機やラジコン操縦器ということばがある。日本では1950年頃から模型愛好家の間で普及した。トランジスタなどの半導体の進歩、普及によって操縦器は小型化、高性能化した。アマチュア無線ほどの専門知識がなくても楽しめるので、子供から大人まで(特に男性)、愛好家が多かった。1960年代のTVアニメの草分けである鉄人28号は少年が操縦器を操作して、電波を使って巨大なロボット(鉄人28号)を操り、悪人を懲らしめるというストーリーで、男子の子供たちに人気だった。アニメに登場する操縦器はラジコン操縦器を連想させる。つまり当時のラジコンは最先端のハイテクを楽しむ趣味である。

汚泥界面計(おでいかいめんけい)

排水処理装置における汚泥界面を測定する機器。

汚泥濃度計(おでいのうどけい)

排水処理装置における活性汚泥(MLSS)濃度を測定する機器。

オパシメータ(おぱしめーた)

(opacity meter)自動車関連の測定器。オパシティメータ(光透過式黒煙測定器)の略称。正式名称(オパシティメータ)よりも広く使われているので、オパシメータがすでに正式名称といえる。ディーゼル車両の排出ガスに有害物質である粒子状物質(PM)がどれだけ含まれているかを検査する。具体的にはPMに含まれる軽油などの未燃焼分である可溶有機成分(SOF)を測定する。排気物質に光を照射して透過しなかった割合(オパシティ、不透過率)を計測する。従来の濾紙を使ったスモーク・メータよりも測定精度が高い。ディーゼル車の排出ガス規制の強化(平成19年7月~)によって黒煙の検査方法が変わり、自動車の整備用計測器として導入された。

オフセット(おふせっと)

(offset) オシロスコープで、入力信号の直流成分をキャンセルする機能。DC成分が重畳した波形を測定する場合に、DC成分をキャンセルして波形を拡大する(V/divを上げる)ことができる。ただし、調整できる電圧範囲は限られていて、信号に比べてDC成分が非常に大きい場合はキャンセルしきれない。その場合は入力カップリングをACに設定すれば解決する。反対にACカップリングの弱点は低周波である。ACカップリングは微分回路 として働くため、低い周波数では波形が歪む(波形への影響が大きい)。また、位相もずれる(※)。DC成分のキャンセルにはオフセットとACカップリングの使い分けが必要だが、2つとも長短があり万能ではない。 (※) 電子部品のコンデンサやコイル(リアクタンスのキャパシタやインダクタ)に交流信号を印加すると、電圧と電流には約90°の位相差がある。 offsetは日本語では「偏り」。DC電圧を加えて電圧値に下駄を履かせて高くするのが重畳で、下駄のことをバイアス(bisa、これも意味は「偏り」)という。バイアスをなくすことを(同じ「偏り」である)offsetと呼んでいる。日本語にすると同じ「偏り」だが、オフセットとバイアスは対になっている逆のことばといえる。 オシロスコープ以外でも、周波数オフセットや低オフセット、などのことばが計測器の品名に使われている(以下の計測器情報を参照)。 おなじく「偏り」を示す英語に、deviation(偏差、逸脱、偏斜)とpolarization(分極、偏光)がある。「FM変調のデビエーション」というと、音声を入力した時の周波数の変動範囲のことで、deviationは無線通信の用語。frequency deviationは「周波数偏移」と訳され、周波数変調における周波数変化の幅を示す。FM変調は、変調信号に対応して搬送周波数が変化している。 polarization(分極)は、電界や磁界内に置かれた物質に正・負の電荷が現れたり(電気分極)、磁極を生じたりする(磁化)現象。光は電磁波の1種なので偏波である。これを偏光と呼ぶが、英語はpolarizationである。光通信に使われる光信号を特定の偏光状態にするフィルタであるpolarizer(ポラライザ)は偏光子と呼ばれる。光デバイスの評価指標であるPDL(polarization dependent loss、偏波依存性損失)を測定する偏波コントローラ、偏波スクランブラなどの光測定器がある。 このように、英語の「偏り」を意味することばは、複数の英単語が計測器に関係している。

オフセットアドレス(おふせっとあどれす)

マイコンは周辺デバイスを制御するためのI/O、レジスタが内部アドレス毎に割り当てられている。マイコンを動作させるプログラム開発後、動作検証、製品化するためには「FlashROM」にプログラムデータを格納(書込み)しなければならない。開発/検証ツールでの「FlashROM」領域へのプログラム格納には、これらツールが認識できる領域情報を含んだROMデータが必要となる。このROMデータはソフト開発ツールにて、Intel、MOTOROLAフォーマットのHEXファイルで生成、提供されることが一般的である。ROMプログラマを使用し「FlashROM」領域へROMデータを書込むには、まずROMデータをROMプログラマ内蔵のバッファメモリ(アルゴリズムカード)へ格納する必要がある。ただし、正しく格納するにはオフセットを設定する必要がある場合がある(バッファメモリを超える領域への格納)。オフセットの値は、ROMデータの領域(アドレス)情報と対象デバイスにより異なる。ROMデータの領域情報についてはデータ作成者への確認、もしくはデータの先頭数行を開示してROMライタのメーカに確認する必要がある。バッファメモリの0番地からの格納が基本となるが、対象デバイスによっては異なる場合もあり、これら情報についてはアルゴリズム説明書を参照することが肝要。(東亜エレクトロニクス株式会社 フラッシュサポートグループカンパニーの「書込みやプログラマに関する用語集」より。上記用語集には具体的な例が図解されている。)

オフセット・レベル(おふせっとれべる)

波形のゼロまたはグランド・レベルからの垂直変位(電圧V)。(テクトロニクスの冊子「信号発生器のすべて」の用語解説より)

オプティカルヘッド(おぷてぃかるへっど)

有線通信測定器の1カテゴリーである光測定器(光通信測定器)で、光パワーメータのセンサのこと。キーサイト・テクノロジーの光パワーメタ用センサの品名。8153、8163光パワーメータなどに使う815xx、816xxなどのモデルがある。国産メーカの安藤電気(現横河計測)やアンリツは光パワーセンサ、センサモジュールなどが品名。最近の横河計測のモデルにはAQ2200-232 光センサヘッド 、というように「ヘッド」の品名もあるが、普通はセンサと呼んでいる。キーサイトは昔からオプティカルヘッドといっていた。2000年当時、光通信は全世界の基幹通信網として整備・拡充され、光測定器の需要は倍増していた。キーサイト・テクノロジーは北米とドイツに光測定器の事業部(工場)があり、ほとんどの光測定器の機種群をラインアップする世界No.1メーカだった。No.2として安藤電気がキーサイトを追い上げていた。ところが2001年の光通信バブルによって両社は大打撃を受け、安藤電気は横河電機(現横河計測)に身売りし、キーサイトはほとんどの光測定器を製造中止にした(工場を売却した)。現在のキーサイトは光パワーメータと光源などがラインアップに残っているが、当時のような主力製品群という位置づけではない。光スペアナやOTDRはやめたが、パワーメータと光源はオプティカルヘッドなどのモジュールオプションを共有して、測定システムを構築できること、共に光の基本測定器であることから残したと思われる。横河に吸収された安藤電気は多くの通信測定器から撤退したが、光測定器だけは守り通し、AQ6370などの光スペアナは世界No.1モデルである。