計測関連用語集

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ピエゾアクチェーター(ぴえぞあくちぇーたー)

電気エネルギーを変位・力などの機械エネルギーに変換する素子。

光アイソレーションプローブ(ひかりあいそれーしょんぷろーぶ)

オシロスコープのプローブの1種。テクトロニクスが有名だが、テレダイン・レクロイや岩崎通信機、HBK(旧HBM)などもラインアップがある。オシロスコープに電気信号を取り込む際に、DUTにプローブ先端を接触した後で、電気から光に変換して伝送し、オシロスコープの入力コネクタの近傍で光から電気に再変換して入力する。たとえば強電磁場やノイズが多い工場内などで電気信号を観測する際に有用である。 テクトロニクスのA6906シリーズは大変重宝された名器だったが、部品の製造中止などの諸般の事情で生産中止となり、適切な代替え製品が無い状況が続いた(その間はHBK(※)や岩崎通信機の製品が流通した)が、テクトロニクスは2016年頃にTIVM/TIVHシリーズを発表して、市場でのシェアを高めている。 岩崎通信機はテクトロニクスが製造中止にしたカーブトレーサを自社開発するなど、2000年以降にパワエレ関連製品に注力している。光アイソレーションプローブも、(オシロと一体型で、オシロに入力できる構成ではないが)2モデルをラインアップしてきた(現在はアイソレーション ・プローブ SE-6000シリーズのみ)。オシロにつながるプローブとしては海外のPMK社とて提携して、高いCMRRの広帯域プローブを取り扱っている。 (※)トルク計測などで有名なHBM(HOTTINGER BALDWIN MESSTECHNIK)は光アイソレーション製品をラインアップしている。HBMは同じスペクトリス社参加のB&K(音・振動計測のブリュエル・ケアー)と合併し、2020年にHBK社(正確には、スペクトリス社のホッティンガー・ブリュエル・ケアー事業部) となった。 参考用語:光絶縁プローブ 参考記事:【イベントレポート】テクトロニクス イノベーション・フォーラム2018 Part1の2ページ目・・光絶縁プローブを取材。 計測器情報:「光アイソレーション」が品名に付く製品例

光アッテネータ(ひかりあってねーた)

光信号を減衰させる機器。ダイヤル式の可変モデルの測定器と固定型(見た目は部品)がある。 (=光減衰器)

光海底ケーブル(ひかりかいていけーぶる)

(optical submarine cable) 海底に敷設された光ファイバケーブルで海外と通信するインフラのこと。海岸沿いの送受信装置や、海底ケーブルに一定間隔で挿入される中継器(アンプ)などで構成される。1988年に実用化されると、北米とEUや日本など、世界の主要先進地域が複数本のケーブル網でむすばれ、1990年代以降のインターネットの基幹インフラとなった。当時は国内の電話はNTT、海外との通話はKDD(国際電信電話、現在はauを運営するKDDI)が行っていた。KDDは光海底ケーブルを使い米国と電話をつないだ。 ケーブルの新設には莫大な費用がかかるため出資者を募り配当する。通信容量の増加をはるかに超える規模の敷設計画が投機として加熱し、2000年に光通信バブルが起こった。バブル崩壊によって光通信測定器の世界No1だったキーサイト・テクノロジーは3つあった工場が1つになり、光測定器のラインアップを大幅に減らした(多くの光測定器のモデルを生産終了)。No2だった安藤電気は会社自体が存続困難になり、横河電機に身売りした(同社の光スペクトラムアナライザは横河計測の1製品群として残り、世界No.1を堅持している)。2000年以降のデータセンタの通信量の増大(IoT、ビッグデータ)などにより、太平洋に新しいケーブル敷設の入札があったが、安全保障上の懸念から中国企業の入札無効が2021年3月に報じられた。 最盛期(1990年代)には日本の通信メーカ各社(NEC、富士通、三菱電機、日立製作所など)は陸揚げ局などの各種通信装置(光伝送装置)の受注にしのぎを削り、光ファイバを手掛ける電線大手メーカ(フジクラ、古河電工、住友電工)は海底用の増幅器(アンプ)の開発・増産に追われ、KDDは敷設船を保有して、ケーブル敷設事業が活況だった。限られた一定期間に大量の高額な専用測定器が必要なため、上記の計測器メーカと計測器レンタル各社は新しい敷設案件(海底ケーブルプロジェクト)の情報収集に奔走した。2000年のバブル崩壊で計測器メーカだけでなくレンタル会社も傷を負った(レンタル受注を見込んで購入してしまった大量の計測器は特殊用途向けなので、不良資産となった)。 現在では敷設事業は日本のNECと、サブコム(米国)、アルカテル・サブマリン・ネットワークス(フランス)の3社で寡占しているが、世界の通信網の覇権をめざして中国企業が台頭している。 光海底ケーブル新設用の通信計測器と、国内の携帯電話メーカ用の製造ライン向けの移動体通信用測定器は、1990年代から2000年代にかけて活況にレンタルされたので、計測器を取り扱うレンタル会社は8社あったが、2020年代には3社に減っている。光海底ケーブルバブルのように突然ではなかったが、国産の携帯電話メーカも2000年には10社以上あったが、2020年にはほぼゼロになった(iPhoneの普及によって国内の家電メーカはほとんど携帯電話端末の設計・製造から撤退した)。このように、光伝送や移動体通信用の計測器は、時代と共に需要が激変するビジネスである。

光減衰器(ひかりげんすいき)

光信号を減衰させる機器。ダイヤル式の可変モデルの測定器と固定型(見た目は部品)がある。 (=光アッテネータ)

光コネクタ(ひかりこねくた)

光ファイバを使い通信するためのコネクタ。単心ではSC、FCなど、多心ではMT、MPOなどが代表例だが、大変種類が多い。光通信用のコネクタは電気と同様にケーブル(光ファイバ)側のコネクタの先端に突起があり(オス)、機器側の嵌合するコネクタに穴がある(メス)。ただし通常はオスやメスの表現はしていない。製品カタログでは、光ファイバ側を「コネクタ」、機器側でコネクタに嵌合する側を「アダプタ」と表現しているケースをみかける。オーディオ機器業界の「プラグ」と「ジャック」のように、光通信では「コネクタ」、「アダプタ」と使い分けている例だが、光ファイバ側を「プラグ」と記載しているメーカもある。 光コネクタはその性格上、光ファイバ端面の研磨状態や、angledなどの嵌合方向、キー幅(narrow key/wide key)などの条件によりモデルがたくさんある。コネクタメーカからも新しいコネクタが発売されるなど、まだ(電気コネクタに比べて)発展途上といえる。光通信は初めに導入された基幹通信網での長距離伝送だけでなく、映像機器や家電製品、家庭内通信などの短距離にも用途が広がり、それに伴ってより安価、簡便なコネクタがいくつも生まれ、これからも用途によって生まれる。 光通信の機能がある新製品のカタログの適応コネクタ欄には、新しい形名のコネクタが記載され続けている。その表現(記載の仕方)も1通りに統一されていないので素人にはわかりにくい。たとえば、APC-FC、FC-APC、FC(APC)、これらは同じものだが、まるで「APC-FC」という新しいコネクタが誕生したように誤解されるかもしれない。形名も「HMS-10/A」や「DIN47256」など様々である。反対にすたれて使われなくなったコネクタもある。古い製品カタログにコネクタ名の記載があっても、現在は事実上、対応していない、というケースもある。光コネクタの種類は日進月歩である。

光コム(ひかりこむ)

(Optical Comb) 位相が高精度な「くし状」になっている特殊なレーザー光。 通常のレーザーは1波長だが複数の波長が等間隔に並んでいるのが特徴。それで、櫛(comb)にたとえて光コムと命名された。世界で最も精度が高い物差しといわれる。2005年に米国物理学者がノーベル賞を受賞した原理を、株式会社XTIA(クティア、旧社名:株式会社光コム)が非接触・三次元形状測定器として製品化している。

光サンプリングオシロスコープ(ひかりさんぷりんぐおしろすこーぷ)

(opto sampling oscilloscope) サンプリングオシロスコープ(サンプリングオシロ)はリアルタイムオシロスコープよりも周波数帯域が高いので、2000年代に広帯域オシロスコープ(高速オシロスコープ)が登場する以前は、アイパターン測定に重宝された。通常のオシロスコープ(オシロ)の周波数帯域が最高4GHzまでだった2000年頃には、高速なデジタル通信の品質評価はキーサイト・テクノロジーのDCA(83480Aや86100シリーズ)、テクトロニクスのDSA8000シリーズなどのサンプリングオシロでアイパターンの波形を確認していた。当時の高速デジタル信号は電気ではなく光が多く、サンプリングオシロは光コネクタを備えて、光信号で入力できた。キーサイトのDCAはオシロであり、かつ光信号解析装置(光測定器)でもあった(当時の同社ショートフォーム・カタログではオシロと光測定器の両方に掲載されていた)。 一般のオシロは電気入力が標準(当たり前)だが、光信号が入力できるのだから「光オシロスコープ」と呼称しても良いではないか、と筆者は1990年当時から思っていたが、サンプリングオシロを光サンプリングオシロと呼称する計測器メーカはほとんどいなかった。アンリツは2017年に、BERT(バート)の新製品でアイパターン解析機能があるBERTWave MP2110Aを発売した。サンプリングオシを内蔵しているが、その説明資料の中に「光サンプリングオシロスコープ」という表現がある。 光通信測定器メーカのアンリツや安藤電気は2000年頃に、すでに光サンプリングオシロスコープをつくっている。アンリツは1999年9月の技術報(アンリツテクニカル No78)で「分解能1THz(テラヘルツ)でアイダイアグラム測定を実現した光サンプリングオシロスコープSJE9203A」を解説している。安藤電気は横河技報Vol.47(2003年)の新製品紹介で「AQ7750光サンプリングオシロスコープは測定帯域500GHz以上を実現し、伝送速度160Gbpsの光波形をクリアかつ正確に測定。アイ波形の開口度を評価するアイ波形解析が可能」と述べている。光信号を入力でき、アイパターン測定ができるオシロスコープを上記2社は「光サンプリングオシロスコープ」と呼んでいる。 光電子増倍管などの光デバイスや光機器で有名な浜松ホトニクスは、応用物理学科の会誌に「O/E変換器で光を電気に変えて広帯域なオシロで観測するのではなく、サンプリングストリーク管により光信号を直接測定できる自社製品(オシロ)」について寄稿している(「光学」第22巻14号、1993年4月)。そのタイトルは「光オシロスコープ」である。つまり、光信号を直接受けられるオシロは通常のオシロではなく、特別な光入力可能なオシロなので、「光オシロ」と呼称するのが適切(当たり前)という認識である。 通常のオシロスコープ(リアルタイムサンプリング、実時間サンプリング)ではない、等価時間サンプリング方式のモデルは「サンプリングオシロスコープ」と呼ばれ、光入力が可能なモジュールがある(サンプリングオシロはモジュール式が多い)。オシロスコープメーカ(テクトロニクスやキーサイト・テクノロジー)は、方式が違うのでサンプリングオシロと呼称している。広帯域なので高速な信号(光)が受けられるが、電気入力もあるため、特別に「光オシロ」などとは呼ばない。 ただし前述のように、2000年代からリアルタイムオシロが広帯域化し、サンプリングオシロだけが広帯域ではなくなった。現在のサンプリングオシロはほとんど光入力が主で、限定された特定の顧客に使われている。そのため、実態は「光サンプリングオシロスコープ」や「光オシロ」である。オシロスコープメーカと光通信測定器メーカで、認識の差異(測定器の名称についての温度差)が感じられる事例である。

光スペクトラムアナライザ(ひかりすぺくとらむあならいざ)

(Optical Spectrum Analyzer) 光通信やDVDなどに使う光信号の、波長ごとのパワースペクトルを測定して表示する測定器。光通信測定器の代表的な基本測定器。オシロスコープ(時間-電圧グラフを表示)、スペクトラムアナライザ(周波数-パワーのグラフを表示)と同じように、光通信では光スペクトラムアナライザが波長-パワーのグラフを表示する。無線通信では周波数特性(f特)が重要な指標なように、光通信では波長特性が重要になる。単に波長のパワーを測定するだけなら光波長計があるが、光スペクトラムアナライザの方が大変良く使われる。 原理(構造)は回折格子(グレーティング)を使ったモデルが多いが、他の方式もある(アドバンテストは以前、ファブリペロー共振器を使ったモデルをつくっていた)。用途やアプリケーションによって複数の種類がある。通信で使う1300~1500nmの波長にフォーカスしたモデルや、Blu-ray Discなどの300~500nm向けなどがある。計測器メーカは横河計測 (旧安藤電気 )のAQ6300シリーズが有名。海外ではEXFO(エクスフォ)などがラインアップしている。以下の入門記事が詳しい。 参考用語:光通信測定器に関する用語

光絶縁プローブ(ひかりぜつえんぷろーぶ)

オシロスコープ(オシロ)のプローブの1種。DUTの近くに置いたセンサ/プローブヘッドと、オシロスコープ近くに置いたコントローラ部を光ファイバで伝送するプローブ。テクトロニクスのA6906シリーズは長年デファクトであったが製造中止になった。海外のHBK(※)社が光伝送をデジタルで行う製品を発売したがA6906より帯域が低かった。岩崎通信機は光ファイバを使ったアイソレーション・システムをつくったが、オシロと一体となった装置(PCで制御する箱で画面は無い)で、一般のオシロスコープに入力することはできない(つまりプローブではない)。 そんな中、テクトロニクスは2016年に(旧モデルが周波数帯域100 MHzだったのに対して)1 GHzに性能アップした新製品の光アイソレーションプローブを発売した(伝送方式はアナログ)。2020年にはラインアップは12機種まで増えた。レクロイにもテクトロニクスと同じような外観・寸法の製品がある。岩崎通信機には(前述とは違う)光アイソレーションプローブがあるが、外観がテクトロ、レクロイとは異なる。 光絶縁プローブは高電圧差動プローブと同様の目的で作られたプローブだが、高電圧差動プローブに比べてCMRR(同相信号除去比)の仕様が優れているので、コモンモード電圧が印加された信号の正確な波形観測ができる。製品の構造が複雑なため、価格は高電圧差動プローブに比べて高額になる。ノイズが多い工場内でオシロスコープの測定に使用されている例がある。機器の電気信号が高速になると、光絶縁プローブの周波数帯域が高くないと、オシロスコープで正確な波形測定ができないが、テクトロニクスの現役モデルの仕様は現状のニーズに対応しているといえる。 メーカによっては「光アイソレーションプローブ」を品名にしている。岩崎通信機の光絶縁プローブの現役モデル名は「アイソレーション ・プローブ SE-6000シリーズ」である(品名には「光」は無い)。 (※)トルク計測などで有名なHBM(HOTTINGER BALDWIN MESSTECHNIK)は光アイソレーション製品をラインアップしている。HBMは同じスペクトリス社参加のB&K(音・振動計測のブリュエル・ケアー)と合併し、2020年にHBK社(正確には、スペクトリス社のホッティンガー・ブリュエル・ケアー事業部) となった。 参考記事:【イベントレポート】テクトロニクス イノベーション・フォーラム2018 Part1の2ページ目・・光絶縁プローブを取材。 計測器情報:「光絶縁」が品名に付く製品例

光センサ(ひかりせんさ)

光パワーメータと一緒に使用するセンサー。

光測定器(ひかりそくていき)

2つのカテゴリー(機種群)がある。1.照明などの可視光の測定器。照度計、輝度計、色彩計など(心理物理量の測定器)。2.レーザーの光などの測定器。光パワーメータ、光源、光スペクトラムアナライザ、OTDRなど(物理量の測定器)。 1つめのカテゴリーは画像を表示する機器(PCのモニタやTV)向けの測定器が活況。メーカとしてはコニカミノルタ、トプコンテクノハウスが有名。次々と開発される新しい方式のディスプレイに対応した、新しい輝度計が発売されている(たとえばカラーアナライザ)。色差計などの色の測定器も(「光・色の測定器」として)光測定器に包含している場合もある。堀場製作所のような科学分析機器メーカもつくっている。カテゴリーは当サイトでは物理量測定器ではなく科学分析機器に分類している。単位はlx(ルクス)やcd(カンデラ)。 2つめのカテゴリーは光通信やDVDなど(光ディスク)に使われる測定器。無線通信の周波数に相当するのは、光通信では波長になる。光通信測定器の主な仕様は波長とパワー(dB)。NTTが基幹通信網に光ファイバを導入するのに伴い各種の光通信測定器が開発された。通信用途の波長は850nm〜1.55μmで、その波長帯の測定器が多い。青色レーザー(400nm〜500nm)が開発され、Blu-ray Disc(ブルーレイディスク)などのDVD機器のために、通信用途より短い波長の測定器も増えた(DVD評価用測定器)。 一般に「光測定器」というと上記の1が思い浮かぶが、計測器としては2もある。2の実体は「光通信測定器」なのに各メーカは「光測定器」と称して「光通信」とはいわない。「光測定器といえば光通信の測定器」という暗黙の了解が伺える。1の分野の測定器メーカは「測光する装置として照度計、輝度計、積分球などの光計測器がある」と主張している。サブミリ波より高い周波数の電磁波は光と呼ばれる。可視光は周波数405~790THz、波長830nm〜360nmで、周波数が下は赤外線、上は紫外線。通信用途の波長は近赤外線の領域といえる。1と2の違いは以下の参考記事、光スペクトラムアナライザの基礎と概要 (第1回)に詳しい記述がある。 通常「光測定器」というと「人が感じる可視光の測定器」、つまり「照明の明るさを測定する照度計」などを想像する。光通信の計測器メーカはあたりまえのように「光測定器」というが、この分野を知らないと技術者でも光通信とは思わないことも多い。ここが計測器の難しいところである。

光チャンネルセレクタ(ひかりちゃんねるせれくた)

多数の光信号を1つに切り替える機器。略称:チャンセレ。

光通信測定器(ひかりつうしんそくていき)

現在、世界の先進国では基幹通信網の有線通信は、電線に電気を流すのではなく、光ファイバにレーザー光を通すことで行われている。日本ではNTT(旧日本電信電話公社:略称、電電公社)が1970年代から実用化を始めた。現在ではインターネットを光回線で契約しているユーザも多い。世界の状況では、1990年代にはEU、北米、日本などは海底に敷設した光ファイバでつながり(光海底ケーブル)、インターネットの普及を支え、また最近でも新しい海底ケーブルの敷設によって世界中の通信需要をカバーしようとしている(2000年頃の光海底ケーブルバブルで敷設が中止になったが、データ通信量の増大で2020年代には新設がはじまった)。 携帯電話などのワイヤレス(無線)通信では周波数が基本だが、光通信は電磁波の波長が基本になる。光ファイバ通信は(ファイバの伝送損失が最も少ない波長を選び)1300nmと1500nm付近の2つの波長で実用化されている。もっと波長が短い400nm~600nm付近は、DVDなどの光記憶媒体に使われている。近年青色LEDという発光素子が開発され、Blu-ray Disc(ブルーレイディスク)が普及した。そのため、従来の光通信用測定器も波長帯域を1200~1600nmではなく、より短波長の300nm付近からカバーするような機種も増えた。 光源、光パワーメータ(略記:OPM)、光スペクトラムアナライザ(俗称:光スペアナ)、波長計などは、当初、一番の需要は光ファイバとそれを使った通信のために開発されたので、「光通信測定器」であるが、主要な計測器メーカ(アンリツ、安藤電気、キーサイト・テクノロジーなど)は当初から「光測定器」と呼称してきた。光測定器というと、輝度計、照度計、色彩計などの色・光の測定器(いわゆる照明機器や表示装置などの可視光の測定器)もあり、それらの計測器メーカも光測定器と呼称している。そのため、光測定器というとどちらを指すのか紛らわしいが、光通信用測定器のメーカは「光測定器」といって譲らないし、通信だけでなく短波長(DVDなどの家電製品)もカバーするので、いっそう光通信ではなく、光測定器という妥当性が増したといえる。当サイトの機種群(カテゴリー)も光通信測定器ではなく「光測定器」である(メーカの表現に倣っている)。 本稿では誤解が無いように光通信測定器と表記する。まずそのおおまかな種類を述べる。 基本測定器は 1.光源:波長が固定の安定化光源はLD(レーザーダイオード)光源とLED光源があり、可変波長光源はチューナブル光源とも呼ばれる。 2. 光パワーメータ (OPM:Optical Power Meterと略記される):ユニット式で光源モジュールが装着可能な「光マルチメータ」と呼称するものもある。 3.波長測定器:光スペアナ、光波長計。 4.その他:変換器(O/E、E/O)、光減衰器、光チャンネルセレクタなど。 専用測定器は 1. 光ロステスタ(光源とOPMの組み合わせ): IDテスタや光ファイバ心線対象器など。 2. OTDR(光ファイバの障害位置試験器、別名:光パルス試験器)。 3.光ファイバの特性測定器:波長分散や偏波などの測定器。 4.融着接続器。計測器メーカではく、光ファイバをつくる大手電線メーカが光ファイバ融着器をつくっている。光ファイバの工事には必須の機材。 5. DCA(デジタルコミュニケーションアナライザ)や光コンポーネントアナライザなど。 1の光ロステスタ、2のOTDR、4の融着器は主にフィールド用途(敷設や保守)である。5のDCAはキーサイト・テクノロジーの通称で、構造はサンプリングオシロスコープなので、純粋な光通信測定器ではない。 上記のほとんどすべての測定器を日本ではNTTをスポンサーとしてアンリツと安藤電気(2000年頃に横河電機に吸収されて現在は横河計測)がラインアップした。現在はアンリツも横河計測も光源、OPM、OTDRに注力し、ラインアップを広げていない(横河計測の光スクトラムアナライザは世界No.1である)。1980年代には横河電機やアドバンテストも光通信測定器に参入したが、ほとんど生産終了している(アドバンテストのRF以外のモデルを継承したエーデイーシーは、短波長帯のOPMをラインナップしているが、これはDVD評価用で、光通信用途ではない)。キーサイト・テクノロジーもアンリツや安藤電気を上回るほどラインアップがあったが、2000年の光海底ケーブルバブル以降に製品群を縮小し、現在は光部品測定用途に注力してOPM、光源、波長計、偏波アナライザをつくっている(2022年5月現在の同社ホームページの製品・サービスのページにはオシロスコープや信号発生器、ソフトウェアなどの項目が並ぶが、光測定器は「その他」にまとめられていてすぐには探せない)。 ベンチトップの高精度のOPMでなく、ハンドヘルドの現場・工事用OPMは、三和電気計器や日置電機をはじめとして数えきれないくらい多くのメーカがある。海外の光通信測定器メーカはM&AによってEXFO(エクスフォ)とViavi Solutions(ヴィアビ)に収斂されたが、光通信測定器よりもビット誤り率試験器(BERT)などの「有線通信の伝送品質評価測定器」に注力していて、それ等も含めて光通信と呼称している。 計測器情報:レーザーなどを扱う光通信測定器の例

光伝送装置(ひかりでんそうそうち)

(optical transmission equipment) 光通信でデータ伝送を行う装置(システム)のこと。すでに基幹ネットワークでは光ファイバを使って伝送速度40Gbpsの高速通信と数100kmの長距離伝送が実用化されている。2000年頃までには複数経路の光海底ケーブルで主要な先進国(EU、米国、日本など)はつながっていた。海底には光ファイバと中継器(光アンプ)などが敷設され、陸上の陸揚げ局には光伝送装置がある。NECや富士通は世界的な光伝送装置ベンダーである。富士通製品は北米に導入実績が多い。 参考用語:WDM、Open APN

光波長計(ひかりはちょうけい)

(optical wavelength meter)光の波長を測定する機器。光通信網がインフラとしてさかんに建設された時期に活躍した。光スペクトラムアナライザでも波長計測はできるが、もっと安価で、精度良く波長測定ができる。参考記事:光スペクトラムアナライザの基礎と概要 (第2回)3ページ目日本国内で販売されている光波長計の一覧が掲載されている。

光パルス試験器(ひかりぱるすしけんき)

光通信測定器の1種であるOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)で、アンリツ製品の品名。OTDRの測定原理を表現しているのでOTDRの別名として大変適切な名称である。光ファイバの伝送損失や断線箇所の特定ができるため、光ファイバの敷設や保守で電気工事会社が使う必須の測定器の1つ。NTT系の計測機器レンタル会社であるエヌ・ティ・ティ・レンタル・エンジニアリング株式会社(略称:NTTREC、呼称:エヌティティレック)は光の電気工事会社向けに多くのOTDRを保有している。計測器メーカは横河計測(旧安藤電気)とアンリツが2強だが、ベンチャーや海外の製品もある(EXFOなど)。安藤電気のOTDRの品名は長らく「光ファイバアナライザ」だった。光パルス試験器と光ファイバアナライザとOTDRは名称がまったく違うのに、全て同じ計測器であることは、光通信の素人にはわかりにくい。光ファイバの敷設や保守では光パルス試験器以外には、「光ロステスタ(またはOLTS)」や「光ファイバ心線対照器(IDテスタ)」が使われる。 計測器情報:光パルス試験器の製品例

光パワーメータ(ひかりぱわーめーた)

(Optical Power Meter) 光のパワーを測定する機器。OPMと略記されることもある。本体と光センサで構成される。チャンネル数を増やせるように本体が大きな筐体を用意している機種もある。ユニット式のものは光源ユニットも揃えて、光源&パワーメータの光通信計測システムとなっている。光通信の基本測定器である光パワーメータは電気のテスタに相当し、工事会社が必ず持っているが、光部品の価格などの諸般の事情により電気のテスタほど安価ではない。横河計測(旧安藤電気)、アンリツなどという大手通信計測器メーカだけでなく、電気のテスタメーカ(たとえば三和電気計器)や名の知れないメーカからたくさんのOPMが発売されている。光通信で使用される波長は0.85~1.5μmで、安藤電気(現横河計測)、アンリツのOPMはほとんどがこの波長帯域のセンサである。青色LEDの開発などでブルーレイディスクが登場した。このLEDの波長は0.4μmと、家電製品は通信より波長が短い。0.4~0.7μmの帯域にフォーカスしてOPMをラインアップしているのがエーディーシー(旧アドバンテスト)や日置電機、三和電気計器などである

光半導体(ひかりはんどうたい)

(opto semidonductor) 2つの意味がある。従来は以下の1.だったが、最近2.の意味でも使われている。 1. 半導体の中で、電気信号を光信号に変換する発光素子、光信号を電気信号に変換する受光素子、発光素子と受光素子を組み合わせた複合素子を、「光半導体」と総称する。その種類と用途は以下。 (1)電流を光に変換する光半導体(発光素子) ①LED:照明、信号灯、ディスプレイ、電子機器のバックライトなどに使用。 ➁レーザーダイオード:DVDの書き込み、光ファイバ通信、3Dセンサなど。 ➂赤外線LED:テレビのリモコン、防犯カメラ、車両カメラなど。 (2)光を電流に変換する光半導体(受光素子)・・光の検出をするので、光センサとも呼ばれる。 ①フォトダイオード:カメラの露出計、光通信システム、分光器、暗視装置など。 ➁フォトトランジスタ:自動ドア、カメラ、スマートフォン、光電センサなど。 光デバイスをopto device(オプトデバイス)と呼んでいる。opticalは日本語では「光学」になるので、optical semiconductorは「光学 半導体」である。ここでいう光半導体は英語では、opto semidonductor。 光半導体に関する国内メーカの対応は様々。総合半導体メーカのルネサス エレクトロニクスは、2020年5月に光半導体事業(半導体レーザーとフォトダイオード)から撤退し、製造拠点である滋賀工場の生産ラインを停止すると発表した。光デバイス専業メーカの浜松ホトニクス(通称:浜ホト)は、2019年6月に光半導体事業の生産能力向上のため、浜松市の新貝工場に新棟を建設すると発表した。 2. NTTは次世代の基幹通信網として、オールフォトニクス・ネットワークのIOWN(アイオン)構想を2019年に発表した。光を電気に変換しないで光のままで処理することで、電気よりも高速・大容量を実現する。そのためのキーは「チップ内で(電気を使わず)光で処理をする」光半導体である。ここでいう光半導体は前述の受光素子、発光素子ではなく、光電融合デバイスを指す。NTTは、「従来の半導体上で電子回路が担ってきた情報のやり取りを光回路に置き換える」、電子が通る銅配線の代わりに「シリコンに光を閉じ込めて通す道、光導波路を形成する」研究を進めている(プリント基板に安価に光導波路が形成される未来を想定している)。 IOWNグローバルフォーラムには世界中の先端企業が参画している。インテルは光半導体(光集積回路)の研究に世界で最も注力している企業である。電子ではなく、従来よりももっと高速の光を使って情報を伝えて処理することで、「これまでにない超低消費電力、超高速処理で動く半導体」の開発が進んでいる。 2022年1月21日の日本経済新聞には以下の内容の記事がある。 NTTは「光の半導体」で限界突破し、電気から技術転換。半導体チップに「光」の通る回路を作り情報を処理する。 2024年1月30日には「経済産業省はNTTが主導する次世代の「光半導体」の研究開発に最大452億円を支援する」ことが報じられた。 2000年以降に、半導体のシリコン基板上に、光導波路、光スイッチ、光変調器、受光器などの素子を形成する技術が研究されてきた。シリコン基板上に受光器などを集積するので、シリコンフォトニクスと呼ばれる。NTTは光送受信モジュールを開発できたことを成果としてIOWNを発表した。インテルは2020年12月開催のIntel Labs Day 2020で、シリコンフォトニクスの研究テーマとして、従来のサイズから1000分の1に小型化した変調器を紹介した。シリコンのCMOS集積回路の製造技術は確立しているので、シリコンフォトニクスによる超高速・小型・低消費電力の光半導体は、比較的に安価な製造コストで実現できると考えられている。

光ファイバ(ひかりふぁいば)

(optical fiber) 現在の有線通信網の主力のケーブル。線材が細いこと、電気でなく光なので電磁ノイズの影響を受けないことから、細い管の中を検査する内視鏡や、強磁場で使う温度計にも使われている。表記は「ファイバ」と「ファイバー」の2つがある。光は屈折率の異なる媒体を通過するとき、境界面で進路がわずかに曲がる性質がある。透明なコップに水と箸を入れ横から見ると、水面の上下で箸はわずかに曲がって見える。これは空気(水面の上)と水(水面の下)の屈折率が違うので光が曲がったためである。曲がり具合は2つの物質の組合せによって決まる固有値になる。光は境界面を通過するとき全て透過せずわずかに反射する。曲がり具合の大きな2つの物質を選ぶと、曲がる角度がだんだん大きくなってついには透過せず、ほとんどが反射するようになる。そのような組合せの2つ物質(ガラス)を筒状にして、一方の筒の外側にもう一方を筒状に被せた2重円筒形構造を作り、内側の筒(物質)に光を入射したら、光は外側の物質に閉じ込められて全反射し続け、遠方まで伝わり光通信を実現できる。この理論を日本人の西澤潤一氏が考案したが、あまりにも先進的な理論であったため、日本では特許は却下されてしまった。光ファイバの実用化はアメリカの大手ガラス会社のコーニング社が行い、現在も光ファイバの世界的なトップメーカである。国産の電線メーカ、住友電気工業、古河電気工業、フジクラがコーニングに続く光ファイバメーカである。内側の筒(物質)をコア、外側をクラッドと呼ぶ。材料がガラス製ではコア径は50(または62.5) μm、クラッド外径は125 μmの細さで、外側を被覆して強度を保つ。光ファイバの接続は融着によって行う。先述の電線メーカは光ファイバ融着器のメーカでもある。光ファイバを曲げるなどの外圧を加えると、通信パワーが減衰する。わずかな外圧による微量のパワー変化を検知できるので、ひずみセンサとしても使われる。山の斜面やトンネルなどに敷設して、地面のずれを検知して防災に役立てている。計測器メーカは横河計測(旧安藤電気、光通信測定器)、 共和電業(ひずみ測定器)、安立計器(温度測定器)などがある。 光ファイバ関連の計測器や機器の解説: OTDR、光パルス試験器、光ファイバアナライザOLTS、光ロステスタ、IDテスタ、光ファイバ心線対照器、光ファイバ温度計、ファイバースコープ、ファイバーレーザー 計測器情報: 横河計測の光測定器、光ファイバアンプ、安立計器の光ファイバ温度計