計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
計測・測定に関連する用語全般が収録されており、初めて計測器を扱う方でも分かりやすく解説しています。
フリーワード検索をはじめ、カテゴリー、索引から簡単にお調べいただけます。

フリーワード検索

詳細説明

擬似交換機

読み方:

ぎじこうかんき

カテゴリー:

#伝送/交換装置用測定器

(network emulator、exchange simulator)
有線通信測定器の1種。電話機などの端末の性能試験に使われる、交換機の代わりをする測定器のこと。別名、ネットワーク エミュレータ(network emulator)、ネットワーク シミュレータ(network simulator)、回線シミュレータ。
インターネットが普及する2000年代まで、電話機などの端末同士をつなぐのは交換機が担った。そのため、アナログの電話回線の代わりをする(通信回線と同じ機能を持ち、動作をする物)をアナログ擬似交換機、ISDNなどのデジタル回線の代わりをする物をデジタル擬似交換機と呼んだ。NTTが新しい通信サービスを開始するとき、それに対応した電話機などの、新しい機能を持つ端末を開発・試験するために擬似交換機が必要になる。1988年にNTTが「INSネット64」、「INSネット1500」というISDNサービスを開始する際は、そのサービスに対応するDSU(Digital Service Unit、ディーエスユー)やTA(Terminal Adapter、ターミナルアダプタ)などの端末機器が発売されたが、それら端末の開発・試験にはISDNに対応した擬似交換機が使われた。ISDNは2000年頃まで契約者数が増えたので、ISDN擬似交換機は複数メーカが発売した。

アナログ擬似交換器の老舗はアドシステムズで、X-4000シリーズ(X-4008 アナログ交換シミュレータなど)が有名。アナログ通信時代の通信計測器をラインアップしていた株式会社ニシヤマもEXCEL9204などを販売。三和無線測器研究所はAX267。これらはすべて生産終了(ニシヤマは2023年11月現在、EXCEL-N000シリーズを販売している)。現在は「松本無線パーツ株式会社岩国」が@約4万円で、電話回線疑似交換機(Network Simulator)TK-7598Wモジュラー縦置きタイプ、TK-7598WHモジュラー横置きタイプの2モデルを販売している。同社ホームページには「電話網のシミュレーションを行うための疑似交換機(ネットワークシミュレーター)で、各種電話機やFAX(ファックス)等の電話端末装置を、加入者回線に接続することなく試験やデモンストレーションができる。ナンバーディスプレイ対応。」とある(2024年5月現在)。
1988年に日本でISDNが開始されるまでは、擬似交換機はアナログの電話回線用が大半だったと筆者は推測する。ISDNが始まってISDN擬似交換機が計測器として各メーカから発売され、擬似交換機の主流はデジタルになったが、現在は主要な計測器メーカは擬似交換機をつくっていない。工場・防災・監視システムメーカの株式会社ハウは、アナログ電話回線用と「ISNネット64」用の疑似交換機をラインアップしている。有線電気通信機器メーカの甲賀電子株式会社はISDN擬似交換機を複数モデルつくっている。

emulateは「倣う」なので、「まねをする、代わりの動作をする」ものをemulator(エミュレータ)という(エミュレータの代表にICEがある)。simulation(シミュレーション)も「見せかけ、ふり、擬態」などの意味で、「模擬実験」の計測器をシミュレータと呼んでいることが多い。交換機の代わりをする擬似交換機はネットワーク エミュレータ(やシミュレータ)と呼ばれる。ネットワーク(通信回線)の代わりをする擬似通信網(擬似通信回線)という意味である。交換機は英語でexchangeなので、擬似交換機を単純に英訳するとpseudo exchangeになるが、計測器の擬似交換機は英語ではnetwork emulator(またはexchange simulator)が適切と筆者は思う。
ネットワーク機器に多くのアクセス(トラフィック、情報量)を与えて動作を評価する測定器を、負荷を与えるということで日本語では「負荷試験機」と呼ぶが、英語表記はtraffic generator(トラフィック発生器)で、負荷の英語であるloadではない。交換機に多くの電話機からアクセス(呼、call)が集中した際に正常な動作ができるか確認する測定器を疑似呼(ぎじこ、英語ではcall simulator、コールシミュレータ)という。多くの電話機が交換機につながろうとしてアクセスする(呼の負荷をかける)、多くの電話機(呼)の代わりをするのが疑似呼である。負荷試験機や疑似呼は通信回線にある機器(ネットワーク機器)に多くの機器からアクセスがある状況をつくり(トラフィックの負荷をかけて)評価し、擬似交換機は(交換機などのネットワーク機器ではなく)ネットワークにつながる端末(電話機など)を評価する測定器である。ただし、2000年代以降は交換機があまり新設されず、擬似交換機でなくネットワークシミュレータといういい方が増えている。また、負荷試験機をネットワークシミュレータと呼称するメーカもあり、品名からは両者の判別がつきにくくなっている。

余談だが、上記メーカはほとんど「擬似」交換機と表記しているが。「疑似」交換機という記載も散見する。日本語としては擬似より疑似のほうが良く使われるが、LISN(擬似電源回路網)、擬似音声発生器など、計測器は「疑似」より「擬似」が多い。ただし呼制御の測定器は「疑似呼」である。計測の技術用語は、微小と微少、擬似と疑似のように、メーカによって表現が違い、統一されていない。計測器はニッチな製品で、計測器業界は村社会のため素人が理解しにくい所以である。

参考用語
計測器情報
プレミアム会員様限定限定クーポンを手に入れよう !