計測関連用語集

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詳細説明

器差

読み方:

きさ

カテゴリー:

#その他

(instrumental error)
測定器が示す値(指示値など)と、本来示すべき正確な値(真の値)との差。JIS(日本産業規格)では「器差:1.測定器の示す値から示すべき真の値を引いた値。2.標準器の公称値から真の値を引いた値」と定義している。
個別の機器がもつ誤差のことを「その器の(真値との)差」という意味で器差と呼んでいるようだが、通常、電子計測器の業界では誤差や精度、確度などの用語が使われ、「器差」なる表現は限られた機種群だけで使われている(多くの電気計測器メーカの用語解説には「器差」は無い)。色彩計測(照度計、輝度計、測色計など)のトップメーカのセミナー(2026年)で、「器差」が誤差(確度、精度)と推測される意味で使われていた。セミナーでは器差の定義などの説明はまったくない。つまり説明の必要がないくらい常識の(このメーカや業界で使われる)用語とでもいう扱いである。受講者からも器差について質問はない。
他にもノギスマイクロメータなどの寸法測定器は器差という用語を使っているようである。寸法測定器メーカのホームページで、「測定機器が持つ精度のことを器差という」という解説があった。医科器械メーカの用語解説にも器差があるので、医療器具でも誤差や精度のことを表しているようである。これら色彩計測、寸法計測の計測器は厳密にJISや計量法の規定に倣って「器差」と表現していると思われる。

計測器専門の情報サイト TechEyesOnlineのお問い合わせに「温度計のモデル○○の器差はいくつですか?」という技術相談があり、○○の製品カタログなどの資料にはどこにも記載がないので、メーカに確認したら、「器差は仕様で規定していません、精度は△△です」という回答だった。つまり電気計測器である温度計には器差なる概念は無いのである。一般に計測器には精度や確度、分解能などの仕様の規定はあるが、器差を明記しているメーカや機種はほとんどない(上記のように寸法計測器ではしているようである)。
筆者は新卒で電気計測器業界に就職して以来、約40年以上を計測器関連の仕事に従事しているが、上記の質問で初めて「器差」について真剣に調べた。つまりそれまでなんとなく耳にしたことはあった、という程度である。上記の温度計メーカの回答が電気計測器メーカの見解を明確に示している。個品(同じモデルでも個々の製造番号をもつ個別の品物)の器差は寸法計測器や医科機器・医療器具では重要な用語になっている。器差と誤差・精度との違い(定義)は不明確である。ガス計量器メーカが「器差は比較した機器(標準器など)との差で、誤差は真の値との差」と解説している例がある。計量器業界では原器との差を器差と呼んでいるのは、JISの規定に忠実に従っているといえる。
環境計測器の代表である騒音計には「検定」なる制度がある。検定付きの騒音計による「計量証明」を事業(有料で行うビジネス)にしている会社が多く存在する。検定は計量法で規定されている。騒音計のトップメーカであるリオンの技術資料には「器差」という表記がある。計量法に規定されている器差なる用語を忠実に使っている事例といえる。ただし、くどいがマルチメータオシロスコープなどの電気計測器では器差という用語はほとんど使われていない。騒音計と同じ物理量測定器の温度計でも同様であることは前述のとおりである。

JISの計測用語で誤差のことを器差と規定しているため、「校正とは、器差を知って、計測器と真値の差を・・・」といいたくなるが、ほとんどの計測器の校正事業者は器差なることばは使っていない。計測器の精度/品質管理である校正でも、器差という表現は使われていない。電気計測器全般ではなく、ごく限られた機種群で使う用語といえる。JISに器差の規定があるのに電気計測器では使われていない理由は不明。JISで規定している用語(表現)と実際の業界団体(各メーカ)が使うことばが違っていることがあり、器差は恒例かもしれない。電気計測器が誤差や精度、確度などの表現を使い、JISや計量法に準じた器差という用語を使用しない理由をご存じの識者がいらしたら、ご教授いただけると嬉しい。
一口に計測(や測定)といっても、業界によってJISのどの範囲を参照するか同じではないと推測される。計測(測定)の分野は細分化されていて、各村では流儀(用語などの使い方)が違うので、どの村のことばなのか把握することが肝要である(素人にはめんどくさい話である)。たとえば電気計測器と科学分析機器では使われる用語に違いがある。

器差の英語はinstrumental error(またはinstrument error)なので、誤差とほぼ同義と思われる。器差を自動翻訳するとinstrumental differenceになる。つまり日本語の熟語は「個品ごとの差」という意味を表しているが、実態は誤差である。器差ということばは止めて誤差(または精度)に統一するほうが誤解を生まないと筆者は思うが、すでに長く使用されていて無理であろう。

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