計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
計測・測定に関連する用語全般が収録されており、初めて計測器を扱う方でも分かりやすく解説しています。
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負荷変動(ふかへんどう)

計測用電源の定電圧精度を規定する際の仕様で、出力電流を規定の範囲内で変化させた時に生じる出力電圧の変動分をいう(定電圧特性)。定電流精度を規定する際の仕様で、出力電圧を規定の範囲内で変化させた時に生じる出力電流の変動分をいう(定電流特性)。(菊水電子工業の製品総合カタログ・用語集より)

複製(ふくせい)

信号発生器で発生する波形を生成する手法の一つ。オシロスコープで取りこんだ既存の信号を信号発生器に転送し出力する。(テクトロニクスの冊子「信号発生器のすべて」の用語解説より)

輻輳(ふくそう)

(convergence)ネットワーク設備で通信が混雑した状態。輻輳が起きると電話などがかかりにくくなり、通信障害となる。KDDIが運営するauでは、2022年7月に大規模な通信障害が起き、完全復旧宣言は約86時間後という異例の事態となった。原因の1つは輻輳であった。2022年9月4日には楽天モバイルでも昼の約2.5時間にわたり約130万回線で音声やデータ通信がつながりにくい状態になり、総務省は「電気通信法上の重大な事故に該当する」と発表した。楽天モバイルは原因を輻輳と報告している。 電気機器に不具合が起きると、計測器は障害の起きている機器や部位を特定するために、障害の切り分けに使用される。ただし、輻輳はそのメカニズムがか必ずしも明確ではなく、計測器によって原因究明や復旧をすることは困難と思われる。保守や運用維持のために計測器は必須で、必ず常備されているが、輻輳の対応に活躍しているという話は聞かない。通信装置はほとんどコンピュータである。コンピュータは不具合が起きると、故障した部位や、怪しいと思われる箇所をユニットごと(たとえばプリント基板など)交換して、正常な動作に戻す。通信機器の不具合も解決が困難になっていると推測される。 日本の通信インフラの脆弱性が露呈している。今後、サイバー攻撃などで通信インフラが遮断されることはおおいに想定される。2022年2月に起きたロシアのウクライナ侵攻では、ロシアはウクライナの基幹通信網を麻痺させたが、ウクライナの情報システム管理当局は個人のスマホやSNSを使った情報伝達の仕組みを準備していて、国民に正確な情報が伝わり、また戦地の状況もリアルタイムに共有されたという。このような有事に対する事前の備えが、数日でウクライナを占領できるとしたロシアの思惑を挫き、戦闘の決着を開戦当初の予想とは違う展開にしている。中国による台湾有事には同じことが日本に起こらないという保証はまったくない。日本の社会インフラは通信だけでなく水道や電力もサイバー攻撃に弱いことがすでに報じられているが、具体的な対策はこれから始まろうとしている(2022年9月)。通信網を不通にして、国民に情報が伝わらなくして戦争を有利に展開する手法が、現実的に使われるようになっただけでなく、(有事ではない)平時でも認知戦による攻撃が日常化している。

複素平面(ふくそへいめん)

電子回路理論では、インピーダンスを複素数(実数部と虚数部の和)で表す。実数部を横軸、虚数部を縦軸にしてインピーダンスを記載したものを複素平面と呼んでいる。複素平面の原点から、インピーダンスの値をプロットした点に線を引いたものをベクトルといい、その長さ(インピーダンスの絶対値、振幅)と、横軸(実軸)との角度(位相)によって交流信号を数式で表現できる。複素平面の横軸(実軸)は周波数によらないR(抵抗)成分で、縦軸(虚軸)はリアクタンス(コンデンサやコイルなど、静電容量やインダクタ)成分による。複素平面に実部が一定、また虚部が一定の値の軌跡を描くと円になる。円が書かれた図をスミスチャートという。周波数やリアクタンスを変化させたときにスミスチャート上でどのような軌跡(グラフ)になるかを、ネットワークアナライザは測定して表示する機能がある。

復調(ふくちょう)

(Demodulation) 変調の逆。伝達したい情報に応じて変化させられた搬送波(被変調波)からその情報を取り出すこと。復調のことを「検波」ともいう。参考用語:変調

フジソク(ふじそく)

2007年まで存在した、無線通信の計測器メーカ。正式名称:株式会社フジソク。1947年設立。本社住所(2007年当時):神奈川県川崎市中原区木月住吉町1890番地。主力事業は産業用機器向けスイッチだが、電子機器やその応用製品として無線測定器をつくっていた。産業用機器向けスイッチ事業を強化したい日本電産が、2007年にスイッチ事業の子会社、日本電産コパル電子の100%子会社にフジソクをした。2007年にフジソクは無くなり、フジソク製品は日本電産コパル電子製品となったが、計測器は2020~2021年にかけて生産中止を発表し、2022年にはすべての計測器の受注を中止した。フジソクの無線測定器は創業期からの歴史があり、高周波電力計(終端型や通過型のRFパワーメータ)、無線機テスタ(アナログ無線用)、電波測定器(メジャリングレシーバ)などである。2000年代に基幹通信網である公衆回線は、アナログ無線からデジタルに切り替わった(3G、第3世代システム)。アナログ無線用の無線機テスタやメジャリングレシーバは需要が激減していった。デジタル無線時代の無線機テスタは、ワンボックステスタと呼称され、アンリツ、キーサイト・テクノロジー、ローデ&シュワルツが3強として競い、アドバンテスト、横河電機、安藤電気、日本無線などは撤退していった。フジソク製の無線機テスタが2020年まで残ったのは、古いアナログ無線インフラのメンテナンスの為だったと想像する(アンリツもキーサイト・テクノロジーもフジソクよりかなり早い時期にアナログの無線機テスタを生産中止にしている)。 アナログ表示のRFパワーメータは、アンリツやキーサイト・テクノロジー、ローデ・シュワルツにはないので、フジソクは数少ないメーカだった。国産の日本高周波(株)と海外のBIRD(バード、国内の販売は丸文株式会社)が、アナログ表示のRF電力計をつくっている(2024年1月現在)。 計測器情報:フジソク(日本電産コパル電子)の製品例

付属ケーブル(ふぞくけーぶる)

(Supplied Cable)変換器から取り外しのできるケーブルで、標準として付属している入出力用のケーブル。参考「入出力ケーブル:変換器から取り外しのできない結線されたケーブル。」(株式会社東京測器研究所の「びずみ測定用の変換器の用語」より)

付属品リスト(ふぞくひんりすと)

(accessories list、included items list、bundled items list) 機器に添付される物の一覧表。別名、同梱品一覧表、付属品一覧。計測器を購入すると色々な物が同梱されている。電源ケーブル(ACコンセントとの接続ケーブル)、NEMAプラグ(電源ケーブルのコンセントへの差し込み側を3極から2極に変える3P-2P変換アダプタ)、取扱説明書(マニュアル)、接続ケーブル(DUTと計測器をつなぐケーブル、マルチメータなら黒色と赤色の2本セット、オシロスコープならチャンネル数分のパッシブプローブなど)、接続ケーブルの付属品(ケーブルの先端の変換アダプタ、プローブの先端のソケットなど)、広帯域オシロスコープではアクティブプローブ用の抵抗(消耗品)なども一式添付されてくる。 本体の外観に大きな影響がないような、突起物の形状や素材、コネクタの接続方法など、些細な変更はメーカも形名変更などは(通常は)行わない。よく観察すると、購入時期によって操作部のボタンの形状が違っているようなことは普通にある。ましてや付属品などは購入時期によってまちまち(メーカの自由)である。 計測器レンタル会社は長い期間にわたり同じ形名のモデルを複数台数購入して運用する。購入時に同梱されてきた各種の部品(消耗品など)や資料(説明書や操作ガイダンス、使用前に読んでほしい注意書きのチラシやCD、DVDなど)は、メーカがどのような意図で添付しているのかわからないので、勝手な判断で捨てるわけにはいかない。原則、レンタル品として商品化する際はすべてを添付した方がトラブル防止になる。そのため1台ごとのモデルに付属品リストを作成して同梱する。同じモデル(形名)でも付属品の内容は千差万別に違っていることは普通である。たとえばキーサイト・テクノロジーのDMM、34401Aは販売期間が長いため、横河レンタ・リースでは10種類以上の付属品リストがある。 長い販売期間の間に付属品は様々に変わっていく。計測器の購入者にとっては、前回購入した時と付属品が違っていても、(メーカが考える)現在の最善の付属品であることで了解するため、ほとんどトラブルにはならない。たった1種類のモデルでも複数台を長期間に運用・管理する計測器レンタルの業務は、意外と面倒でランニングコストのかかるビジネスである。

不確かさ(ふたしかさ)

(Uncertainty) 計測値のばらつきの程度を数値で定量的に表した尺度。不確かさは通常、0以上の有効数字で表現され、不確かさの絶対値が大きいほど、測定結果として予想されるばらつきの程度も大きくなる。全ての測定は不確かさの対象となる。(フィッシャー・インストルメンツの膜厚測定、素材分析、材料試験、表面特性解析に関する用語集より) 従来、計測器の校正では、校正対象機器の仕様(測定値)が管理基準の範囲内にあることを標準器との比較で確認し、試験成績書(データシート)に測定データと合否判定(良や不良)を記述した(ISO 9001)。ところが校正の結果を不確かさで表記するISO/IEC 17025校正が普及し、合否判断はユーザ(計測器の使用者)が行うことになった。そのためISO/IEC 17025の認定を取得したメーカは、自身が使用する計測器の品質について校正証明書の内容を理解して使用することが求められる。不確かさについて計測器ユーザ全員が理解することはほぼ不可能なので、メーカの標準室(校正室)の技術員の力量や、その会社の品質マネジメントシステムへの理解・対応が重要になる。

普通騒音計(ふつうそうおんけい)

環境騒音測定など現場で使用することを目的とした騒音計。

プッシュプル(ぷっしゅぷる)

(push-pull)電子回路に使われる増幅器(アンプ)の1種。電子工学の回路の教科書にでてくる用語。名前の由来は不明。参考までに物を引っ張る力や押す力を測定するのがプッシュプルゲージなので、電子的に「押す・引く」が行われると思われるが、そのような解説はみあたらない。

プッシュプルゲージ(ぷっしゅぷるげーじ)

物を引っ張る力や押す力を測定する機器。(=デジタルフォースゲージ)

フの字保護(ふのじほご)

計測用電源が過電流状態になった時の復帰のタイプには「フの字保護」と「逆Lの字保護(自動垂下方式)」の2種類がある。フの字保護のタイプは、過電流状態になった場合は出力を停止する。原因を取り除いて、電源を再投入すると復帰する。高砂製作所のCVCC電源の保護方式はほとんどがこの方式。(株式会社高砂製作所の用語集より)

部分放電試験(ぶぶんほうでんしけん)

耐電圧試験や絶縁抵抗試験では判らない絶縁物内部の劣化を評価する試験。原理は、絶縁物内部のボイド(空隙)や不純物内で発生する放電を、電荷の移動で検出する。(菊水電子工業の製品総合カタログ・用語集より)

部分放電測定装置(ぶぶんほうでんそくていそうち)

絶縁体中に発生する微少な放電(部分放電)に伴うパルス電流を検出して、部分放電の放電電荷・最大放電電荷・放電発生頻度などを測定する機器。

不平衡(ふへいこう)

(unbalence) 電気信号の伝送方式には不平衡と平衡(balence)の2種類がある。信号線が1本で、グランドとの電位差によって信号を伝送しているのが不平衡。2本の信号線を使い、1本には伝送したい信号を、もう1本にはその信号のマイナスの大きさ(逆位相)の信号を送ると、信号が平衡関係にあるため、平衡と呼ばれる。不平衡は電線が1本で簡易だがノイズの影響を受けやすく、長距離、高速通信には向かない。たとえばシリアル通信の代表であるRS-232C規格は不平衡。 プロトコルアナライザなどの有線通信の分野では不平衡というが、別名、シングルエンドとも呼ばれる。オシロスコープ(オシロ)のプローブなどでは1本伝送を「シングルエンド」、2本の場合を「差動」伝送と呼んでいる。不平衡(unbalance)=シングルエンド(single end)で、両方は全く同じことを違う表現をしている。 シングルエンドはsingle-ended signalling(最後まで1本で伝送する方式)が語源と推測される。シングルエンドは、「ある電圧を基準として、それより電圧が高いか低いかで1と0を表現する」伝送方式とも説明されている。対して差動(differential signalling)は「2本の信号線を使い、2信号の差分によってデータを表現する」伝送方式である。「(2本の)差動」と「シングル(1本で)エンド(最後まで伝送)」という表現がシングルエンドと差動の語源である。見方を変えると「(2本の線が)平衡(している)」、「(1本なので平衡していない、つまり)不平衡」という表現になる。 計測器が機種群(カテゴリー)ごとに、測定原理による解釈で用語を命名している例である。有線通信の伝送方式の「不平衡」と、オシロのプローブの「シングルエンド」が同じ「1本伝送」のことを、違う用語にしているのは初心者には難しい話である。

浮遊容量(ふゆうようりょう)

(stray capacitance、stray capacity)電子部品のコンデンサなどの静電容量(キャパシタ)は2つの導体間の電荷である。そのため、機器内で近接する2枚の金属があると、その間には静電容量が発生する。この静電容量は設計では意図しない成分で、浮遊容量(または寄生容量)と呼ばれる。わざわざコンデンサなどの電子部品によって回路上に静電容量をつくるわけではなく、不要なキャパシタ成分である。 電子部品のリード線や、接続ケーブルにも浮遊容量があり、交流信号を扱うときは周波数によっては、意図しない浮遊容量が影響して、測定が正しくできない場合がある。たとえばLCRメータやネットワークアナライザで、DUTまでの2本の接続ケーブルが平行して並んでいると、2本のケーブルの間にはキャパシタが発生する。これは測定の邪魔になる意図しない静電容量、つまり浮遊容量である。

プラグ(ぷらぐ)

コンセントに差し込んで電気を取り出す、差し込み部分のこと。「プラグ」とは英語で「栓」という意味。

FLASHプログラマ(ふらっしゅぷろぐらま)

(flash programmer) ROMライタの国内トップベンダーである東亜エレクトロニクス株式会社 フラッシュサポートグループカンパニーでは、1個書きのROMライタを「FLASHプログラマ」と呼んで、複数個を同時に書き込む「GANGプログラマ」と区別していた。 AF9707、AF9708、AF9709などがFLASHプログラマだった(現在はすべて生産終了)が、フラッシュプログラマと呼んでいるモデルもある。

フラッシュメモリ(ふらっしゅめもり)

(flash memory)半導体メモリの不揮発性メモリ(電源を切っても記録されたデータが消えずに保持される)の1種。構造がEEPROMと同じため「フラッシュROM」とも呼ばれるが、消去と再書き込みができるのでRAMである。種類はNAND型とNOR型の2つがある。NAND型フラッシュメモリのことを略して「NAND」と説明している例もある。具体的にはSSDはフラッシュメモリである。東芝の技術者が開発した際、写真のフラッシュのように一瞬で消去できることから命名したとされる。東芝のメモリ事業は分社化され、現在はKIOXIA(キオクシア)がNAND型フラッシュメモリの専業メーカとなっている(エルピーダメモリが2010年代に経営破綻して売却されたので、現存する唯一の国産・大手半導体メモリメーカである)。 1980~1990年代に多くのメーカがあったROMライタはアドバンテストや安藤電気が撤退し、現在の国産メーカはミナト・アドバンスト・テクノロジーズ(旧ミナトエレクトロニクス)と東亜エレクトロニクス株式会社(フラッシュサポートグループカンパニー)の2社になった。東亜エレクトロニクスのROMライタには「FLASHプログラマ」という名称がある。フラッシュとROMが関係している例といえる。