計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
計測・測定に関連する用語全般が収録されており、初めて計測器を扱う方でも分かりやすく解説しています。
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カレントプローブ(かれんとぷろーぶ)

オシロスコープと測定対象を接続するためのアクセサリ。(=電流プローブ)

カレントモニタ(かれんともにた)

クランプセンサと組み合わせてレコーダやオシロスコープに接続し、電流波形を記録・観測する機器。

輝度グレーディング(きどぐれーでぃんぐ)

発生頻度を表す情報で、波形が実際にどのように変化しているかを知るために有効。(テクトロニクス「オシロスコープのすべて」(2017年4月発行)より)

グリッチ(ぐりっち)

(glitch) 日本語にすると「機械の欠陥」や「突然の異常」の意味。電子回路の設計にマージンがないときなどに、鋭いパルス状の髭のような波形がときどき発生することがあり、電子機器の誤動作の原因になる。バグ(bug)は決定的な欠陥で必ず不具合を起こすが、グリッチは一過性の短期間の障害で、不定期に発生することが多く対処(発見や対策)が難しい。計測器(特にオシロスコープ)の用語として、この異常波形をグリッチと呼んでいる。「グリッチとは、回路内で発生する間欠的で高速な不良信号」(2017年発行 テクトロニクスの冊子「オシロスコープのすべて」より)。 オシロスコープで電子回路のデバッグをする際には「グリッチ」を見つけ出して改善を行い、機器の動作を安定化させ、機器の品質を向上して、販売可能な製品(商品)として作り上げることが重要である。そのためオシロスコープ各社の製品には、トリガのかけ方などの多くの手法を駆使してグリッチを発見できることが、カタログや技術資料でPRされている。「方形波でパルス幅が規定以下の短いものがグリッチ」と考えて、パルス幅トリガを使ってグリッチを検出をするのが一般的である。高速デジタル回路の解析を主眼にした高速オシロスコープでは、パルス幅トリガを高機能にしてグリッチトリガと命名していることもある。 DSO4000 Xシリーズなど、波形更新レートが速いことを売りにしているキーサイト・テクノロジーは「オシロスコープには波形を捕捉しないデッドタイムがあり、波形の更新速度が上がると、発生頻度のまれなグリッチを捕捉できる」、と解説している(2018年3月発行 WHITE PAPER「そのオシロスコープは、発生頻度 の低いイベントを捕捉できますか? オシロスコープの波形更新速度」)。 グリッチを発見して、原因を究明し、設計変更によって撲滅することはオシロスコープによるデバッグの真骨頂である。オシロスコープの重要な機能の1つであるトリガを使いこなせるようになると、オシロスコープについて習熟したといえるのは、グリッチ発見にトリガが有効なためともいえる。ゲームでは、ゲーム中に起きた不具合を意図的に利用する手法(不正行為)を「グリッチ」と呼んでいるが、計測器の用語としては、設計不良を発見し、電子機器の品質を高めるための指標の1つがグリッチである。 使い方動画(会員専用) [計測入門講座 Isee!]第11回 複雑な信号にトリガをかける ・・・パルス幅トリガでグリッチを発見する例。

クレバースコープ(くればーすこーぷ)

(clever scope) ニュージーランドのメーカが作る、USB接続型のオシロスコープ(オシロ)の名称。FRA機能があるモデルもある。2013年には技術雑誌に「高性能・高解像度・多機能PCオシロ」として紹介されている。最近は大手計測器メーカもラインアップを増やしているUSB計測器である。 PC接続型の計測器では、英国のPico Technology(ピコテクノロジー)が老舗だが、クレバースコープもキーサイト・テクノロジーなどの大手海外メーカがラインアップを揃える以前に発売されている。2024年には大手のエレクトロニクス雑誌に、CS328Aシリーズの広告がある。「FRA分析可能、高解像度・多機能、ミックスド・ドメイン、クレバースコープ」と記載されている。ミックスド・ドメインとはスペクトラムアナライザの機能があるということ(MDO)で、FRAだけでなく多機能であることをPRしている(当然、ロジアナ機能があるMSOでもある)。賢い(clever)オシロスコープ(scope)というネーミング。 オシロスコープの電源解析オプションを充実させているテクトロニクスは、オシロで電源のFRA分析をする手法を提案している(以下の参考記事が詳しい)。その意味では、クレバースコープは、ピコテクノロジーほどの豊富なラインアップはないが、オシロの雄、テクトロニクス同様に特長ある提案をしているといえる。 日本ではTUI Solutions(トゥイ・ソリューションズ)株式会社が輸入販売をしている。

ゲイン確度(げいんかくど)

オシロスコープの垂直システムが信号の減衰または増幅をどれだけ正確に実行できるかの指標。通常、パーセント誤差で表す。(テクトロニクス「オシロスコープのすべて」(2017年4月発行)より)

ケンウッドティー・エム・アイ(けんうっどてぃーえむあい)

(KENWOOD TMI CORPORATION.) ケンウッド(KENWOOD、旧トリオTRIO)の計測器を設計・製造・販売していた部門が分社化(1996年~2006年に存在)。横河電機の計測器事業部門が横河計測になったようなもの(岩崎通信機の計測器部門も2000年頃は岩通計測という子会社だった)。アンリツが「アンリツ電子」、松下通信工業(パナソニック)が「首都圏パナソニックFA」などのように、計測器メーカが1980~1990年代に営業部門を販売子会社にしていたのとは違い、ケンウッドの計測器事業部が分社したもの。文教市場向けのオシロスコープと直流電源でシェアが高かった。 ケンウッドの計測器は会社名が何度も変わっているので、以下に沿革を述べる。1946年、有限会社春日無線電機商会が設立される。1954年、測定器に参入。1960年、トリオ株式会社に社名変更(TRIOといえば老舗のオーディオブランドだった)。1965年にオシロスコープを販売開始、1973年に直流安定化電源を開発。1986年 、株式会社ケンウッドに社名変更。1996年に計測器部門は株式会社ケンウッドティー・エム・アイとなる(親会社のケンウッドは2011年に日本ビクターと合併し株式会社JVCケンウッドとして存続している)。2002年にニッケグループがケンウッドTMIの株式を取得しニッケグループ傘下となる。ニッケとはウールで有名な日本毛織のこと。2006年、株式会社テクシオと社名変更。2009年、株式会社ニッケテクノシステム/テクシオ事業部となる。2012年、Good will Instrument Co.,Ltd.(台湾の計測器メーカ)がニッケテクノシステムからテクシオの計測事業を譲受し、株式会社テクシオ・テクノロジーを設立(ブランド名はTEXIO)。2014年、テクシオ・テクノロジーは株式会社インステック ジャパン(Good Willの日本法人)と合併し、GWInstekブランドを継承。 現在のテクシオ・テクノロジーには開発部門は無く、技術者は保守・サービス部門にしかいない。Good WillではなくTEXIOブランドの製品群もあるが、開発はすべて台湾で行っている。純国産企業で計測器の老舗であるケンウッドは、中華資本に買収され、台湾計測器メーカの日本での販売店となった。家電メーカのシャープが中華系企業になったように、計測器市場でも中華系の資本参加が起きたという事例といえる。テクシオ・テクノロジー(というかGood Will)は安価なオシロスコープから始まり、RFのスペクトラムアナライザや、安全試験の耐圧試験器、LCRメータなど様々なカテゴリーの新製品を発売している。同様に中華系のRIGOL(リゴル)がオシロスコープを中心にラインアップを広げているのとは違う戦略がうかがえる。 英語社名KENWOOD TMI Corp.のTMIはTest Measure Instrumentsの略称と思われる。日本語にすると「テスト・測定機器」で、つまり測定器(計測器)のことである。海外では計測器の事をT&Mと略記することが多い。日本の計測器業界ではT&Mなどどいう表記はほとんどされてこなかったが、最近は一部の国内計測器メーカが使っている例がある。ケンウッドが計測器を分社化した時にTMを社名に入れたのは海外ビジネスを視野に入れていたと考えられる。日本で社名に「ティー・エム」とあっても計測器をイメージする人は当時はほとんどいなかったと思われる。 ケンウッドは1987年に昭和リース株式会社と昭和ハイテクレント株式会社を設立し、計測器レンタルに参入した。略記:SHR(Syowa High tech Rent)。計測器レンタル会社としてはオリエント測器レンタル(現オリックス・レンテック)、テクノレント(三井物産のリース事業部門として発足、現在はリコーリースの子会社)、マイテック(リコーの子会社、1991年に横河レンタ・リースに統合)、日本エレクトロレント(USのレンタル会社エレクトロレントの日本進出、というキャッチフレーズで1986年頃に営業開始)、東京リース(日本勧業銀行、現みずほ銀行のリース会社)のレンタル事業本部、日立キャピタル株式会社(現日立リース)のレンタル営業本部などに続く7社目がSHR。昭和リースは協和銀行(現りそな銀行)系のリース会社なので、銀行系のリース会社と計測器メーカでつくった計測器レンタル会社である。同じく1987年に横河電機と芙蓉総合リース(富士銀行、現みずほのリース会社)が出資して、8番目の計測器レンタル会社、横河レンタ・リース株式会社(略記YRL:Yokogawa Rental & Lease)が設立される。SHRとYRLはその設立母体(親会社の構成)が似ている。ケンウッドティー・エム・アイの技術部門からSHRに出向者があったり、岩崎通信機の営業部門からSHRに複数名の転職者があったりしたが、2007年にSHRは昭和リースに吸収され、事業としての計測器レンタルからは撤退している。

高速オシロスコープ(こうそくおしろすこーぷ)

従来のオシロスコープ(オシロ)と、2005年以降に発売された広帯域オシロスコープを区別するために、(従来の)一般的なオシロを汎用オシロ、広帯域オシロを高速オシロと便宜的に呼ぶ。周波数帯域2GHzまでを汎用オシロ(OSはメーカ独自が多い)、それ以上を高速オシロ(OSはwindowsが多い)とするメーカが多い。正式には広帯域オシロだが、高速デジタル回路の評価用途のため、高速オシロスコープとも呼ばれる(以下の参考記事「オシロスコープの動向と、最新1GHz帯域モデルの各社比較」に周波数帯域別の主要モデルを掲載)。 2000年代初頭のオシロの主流はミッドクラスの周波数帯域100MHz~500MHzモデル(いわゆるミドルクラスと呼称されている)で、1GHzモデルは高級器、最高機種は4GHzモデルだった。技術の進歩によってシリアル通信の規格は高速化され、勃興する新情報家電の製品群に搭載されていった。これらの高速伝送インタフェースの評価向けに、キーサイト・テクノロジーが新しいコンセプトの6GHz帯域のモデル54855Aを2005年に発売した。これが広帯域オシロ(高速伝送評価用アナライザ)で、以降テクトロニクス、レクロイ(現テレダイン・レクロイ )のオシロ3社による最高周波数モデルの開発競争が激化し、周波数帯域は10GHz、30GHzと高くなっていった。2018年にはキーサイト・テクノロジーから110GHzのモデル(価格約1億円)が発売されている(以下の参考記事「キーサイト・ワールド2018」で、世界初公開を取材)。 2018年にローデ・シュワルツが高速オシロに参入し、現在は海外の4社がラインアップしている。国産では唯一、岩崎通信機が1GHzのDS-8000シリーズを販売している。DLシリーズでデジタルオシロに参入して日本市場ではテクトロニクスに次ぐシェアの横河計測は500MHzまでしかラインアップがなく、高速オシロはつくっていない。つまり、高速オシロは海外メーカの独壇場である。RFなどの高周波の測定器の要素技術があるメーカにしかつくれない高周波の計測器といえる。たとえば国産のアンリツには高周波技術があるが、同社は自動車市場を新しいターゲットにして高砂製作所を2022年に傘下にするなど、更なる通信分野(高速オシロ)に参入する意向は感じられない。 高速オシロは構造はオシロ(機種群はオシロ)だが、汎用オシロ(いわゆる一般的なオシロ)とは使い方が全く異なる。汎用オシロの上位機種ということではなく、スペクトラムアナライザ(スペアナ)のような高周波のアナライザといえる。オシロという名前なので誤解されるが、特定用途向けの通信アナライザである(サンプリングオシロスコープが周波数帯域が広いために、アイパターン測定で通信の伝送品質の評価に使われたのに似ている)。 オプションとして各種の規格の解析ソフトウェアやメモリ増設が用意されている。次々と規定される新しい規格の評価をすることが主眼である点は移動体通信用の測定器やプロトコルアナライザと同様で、製品寿命が長くない専用器である。ユーザはオプションを適切に選択しないと目的にあう仕様にはならない。そのため、良く使う解析ソフトウェアやメモリ増設などをバンドルしたアナライザタイプが用意されている(DSAオシロスコープ)。 オシロの形名は頭のアルファベット3文字と次の数字がシリーズを表し、下3桁の数字が周波数と入力チャンネル数を示していることが多いが(以下の参考記事「計測器の形名が詳しい)、以前のアナライザタイプは頭のアルファベットがシリーズのアルファベットと全く違い、同じシリーズだと判別しにくかったが、現在はわかりやすいように改善された。たとえば2008年発売のキーサイト・テクノロジーDSO90000AシリーズのアナライザタイプはDSA90000Aだった。DSOはDigital Storage Oscilloscopeが由来の形名、DSAは「DSOのアナライザタイプ」とでもいう意味。 計測器メーカは高速オシロや汎用オシロという分類(表現)をしていない。下位モデルから、ハンドヘルド、ベンチトップのローエンドとミドルクラス(通常はこの2つが汎用オシロに相当)、ハイエンド(これが高速オシロに相当)などの分類である。広帯域オシロという呼称も各オシロスコープメーカの品名にはほとんど使われていないが、「広帯域オシロスコープ入門」(2015年出版、CQ出版社、トランジスタ技術の増刊、RFワールドNo.29)では高速オシロで最高周波数帯域の競争をした前述3社が記事を満載している。そのため広帯域オシロという呼称は各社に認知されている公式な用語といえる。 [オシロの分類(種類の表記)の例] ローデ・シュワルツはベンチ、高性能などである。 高速オシロに本格参入 (R&S RTP ハイパフォーマンス・オシロスコープ発表会) キーサイト・テクノロジーの6000Xシリーズは十分に高速オシロの周波数帯域だが、下のモデル(InfiniiVisionシリーズ)に分類されている。 キーサイト・テクノロジーの“見える”オシロ InfiniiVision 3000T Xシリーズ

高速デジタル(こうそくでじたる)

(high speed digital) 「高速デジタル信号」、「高速デジタル伝送」、「高速デジタル信号伝送」などの略記。NTT東/西日本とNTTコミュニケーションズが提供する64k~6Mビット/秒のデジタル信号を伝送する専用回線を「高速デジタル専用線」、この回線の使用プランの名称を「高速デジタル伝送サービス」という。 オシロスコープ(オシロ)のトップベンダであるテクトロニクスはオシロの解説書などで「高速デジタル信号の解析には広帯域オシロスコープを使い」などの表現がある。キーサイト・テクノロジーが2023年に開催したKeysight World(プライベートショー)の2日目のタイトルは「高速デジタル 光電融合トラック」で、高速デジタルに該当する展示コーナは「PCI Expressのプロトコル試験」、「Rx試験 ケーブル試験」、「Tx試験 電源ノイズ評価」、「送信波形評価」、「BER特性評価」、「高分解能TDR測定環境」などがあった。展示された計測器は高速オシロスコープ(周波数帯域33G~110GHz)、サンプリングオシロスコープ、BERT(PAM4/64G baud)、AWG(256G S/s)などである。すべて高速デジタル信号の評価に関係するモデルである。 このように、大手計測器メーカのキーワードに「高速デジタル」は頻繁に使われる用語である。 高速デジタル信号とは具体的な数値で、何bpsの信号速度を指すのか、は説明が難しい(時代とともに、現在のホットな最先端の高速デジタルの仕様が話題となる)。高周波とは何Hz以上の周波数を指すのかを示すのが困難(説明者や内容によって「高周波」と表現している周波数の値が異なる)ことと似ている。技術用語は、あるレベル以上の知識がある人たちで共有され、理解されているので、まったくの素人に説明することが難しい。

広帯域オシロスコープ(こうたいいきおしろすこーぷ)

(wideband oscilloscope/broadband oscilloscope) 2000年代に登場した周波数帯域がGHzのオシロスコープ。それ以前にも4GHzのモデルはテクトロニクスやhp(現キーサイト・テクノロジー)も発売していたが、高速シリアル通信などの評価をするアナライザとして2000年代中頃から登場したキーサイト・テクノロジーの54855AやテクトロニクスのTDS7000シリーズ以降の6GHz以上の帯域の機種群が代表的なモデルである。 広義には1GHz以上の帯域のモデルを指しているとする文献もあるが、各オシロスコープメーカのシリーズを見ると、2GHzあたりを境にしているので、筆者は2GHz以上が広帯域オシロスコープ(通称:高速オシロスコープ)と考えている(以下の参考記事「オシロスコープの動向と、最新1GHz帯域モデルの各社比較」に主要メーカのモデルを分類)。広帯域オシロスコープは単に周波数帯域が高いだけでなく、半導体デバイスなどに採用される、各種の通信規格の評価ができることが特長(たとえばDDRや、高速なシリアル通信のバス解析など)。そのため解析ソフトウェアや大きなメモリをオプションで用意している(以下の参考記事「計測器の形名・・・第3回 オシロスコープPart2 ~ DSO、DPO、DSA、MSO」が詳しい)。 また、広帯域オシロスコープが登場する以前は、高い周波数はサンプリングオシロスコープで測定を行ったが、広帯域オシロスコープが普及するとサンプリングオシロスコープの主要な目的の1つであるアイパターン測定は、広帯域オシロスコープのマスクパターン(オプション)などで行われるようになっている。 2010年代初頭にはオシロ3大メーカのテクトロ、キーサイト、レクロイ(現テレダイン・レクロイ)が周波数帯域30GHzのモデルを発売して、最高機種を競っている。2018年にはキーサイト・テクノロジーが110GHzモデルを発表している(以下の参考記事「キーサイト・ワールド2018」で世界初公開を取材)。同じく2010年代に、分解能(ADコンバータのビット数)を向上させる方向に各社が製品開発を進め、高分解能オシロスコープが発表されている。2023年には多チャンネルオシロスコープを売りにしてきた横河計測も12ビットモデルを発売し、内外の主要なメーカ(テクトロニクス、キーサイト・テクノロジー、テレダイン・レクロイ、ローデ・シュワルツ、岩崎通信機 、横河計測)がラインアップした。中華系オシロスコープも続々と追従している(リゴルやSiglent Technologiesなど)。 広帯域オシロスコープは薄型TVやデジタルカメラ、携帯端末、などの情報家電機器に高速な通信インタフェース規格が搭載されるに従い、それを実現する半導体デバイスメーカや家電メーカの旺盛な需要によって2000年代以降に普及した。同時にWi-FiやMIMOなどの高周波の無線通信の評価にも不可欠となった。400Gbpsなどの高速な光コヒーレント通信の開発にも使われる。 上記のアプリケーションはすべて通信である。つまり広帯域オシロスコープは、電気技術者が1台/1人で使う(普段使いの)基本測定器ではなく、通信の専用器(アナライザ)である。

高電圧差動プローブ(こうでんあつさどうぷろーぶ)

(high voltage differential probe) 高い電圧を測定する時に使用する差動入力型の電圧プローブ。オシロスコープのモデルによっては別途、プローブ用の電源が必要となる。 オシロスコープのNo.1メーカであるテクトロニクスはP5202A、P5205A、P5210A、THDP0200、TDP1000などラインアップが多い。キーサイト・テクノロジー、テレダイン・レクロイ、横河計測など、オシロスコープの大手主要メーカは必ずつくっている。岩崎通信機は400MHz広帯域のモデル、BumbleBee(PMK社製)を取り扱っている。日置電機はレコーダのアクセサリとして高電圧に対応した「差動プローブP9000」がある。

高電圧プローブ(こうでんあつぷろーぶ)

高い電圧を測定する時に使用する電圧プローブ。

高分解能オシロスコープ(こうぶんかいのうおしろすこーぷ)

(high resolution oscilloscope) オシロスコープ(オシロ)の歴史は周波数帯域を高くすることだった(2018年には110GHzの広帯域オシロスコープが発売されている。参考記事のキーサイト・ワールドを参照)。オシロは横軸(時間)の精度が良い波形観測器(スコープ)であり、電圧測定器ではない。1980年代にデジタルオシロスコープが登場して以降、ADコンバータは(数万円のローエンドから1億円のハイエンドまですべて)8ビットだった。8ビットだと、256分割でサンプリングしてアナログ信号をデジタル化する。1/256=0.4%のため、電圧の有効桁数は2桁までで、3桁めはほとんど信頼できない数値となる。表示桁数の少ない 可搬型(ハンドヘルド)のデジタルマルチメータ(DMM)の分解能に比べても明らかに精度が悪い。 デジタルオシロの歴史の中で、ADコンバータは8ビットであることは変わらない常識だった。ところが自動車などのパワーエレクトロニクス分野では、時間波形だけでなく電圧も精度良く測定するという需要に対応した、10ビットの高分解能モデルをレクロイ(現テレダイン・レクロイ)が2012年に発売した。2018年以降はテクトロニクスやキーサイト・テクノロジーという大手オシロメーカも高分解能モデルを発売したことで、高分解能対応はミドルクラス(1GHz帯域のモデル)の主要な仕様になりつつある。 アナログオシロスコープで国内No.1だった岩崎通信機は、2020年に高分解能でかつ多チャンネル(8ch)に対応したDS-8000シリーズを発売した(参考記事:多チャンネルのオシロスコープ特集)。周波数帯域350MHz~1GHzで、分解能は12ビットである。2023年現在、1GHzモデルが一番売れているらしい。つまり、当初はパワエレ向けで登場した高分解能モデルも、現在ではGHz帯域の信号の測定に使われるようになったといえる。テクトロニクスは1GHz帯域の高性能モデル(4シリーズMSO、5シリーズMSO、200MHz~2GHzをカバー)と、広帯域モデルの5シリーズMSO(高速デジタル回路の評価用、1GHz~10GHzをカバー)は標準で分解能が12ビットである(※)。つまり、同社は4シリーズMSOや5シリーズMSOというボリュームゾーン(売れ筋)モデルは高分解能オシロなのである(同社は品名にあえて「高分解能」とは付けていない)。ミドルクラスの高級器から、10GHzまでの広帯域オシロスコープ(高速デジタル回路の評価用途)は高分解能オシロスコープが主流になった、という説明もできる。 テクトロニクスとキーサイト・テクノロジーのモデルは、品名には「高分解能」の記載がないので、仕様を確認しないと該当機種はわからない。 2023年1月に当サイトが実施したアンケート調査で、「オシロで使っている他の計測器の機能は?」という質問に、マルチメータという回答が28%あった。つまり高分解能オシロの使用率は約30%といえる。約3人に1人はオシロで、DMMのように電圧値を見ていることになる。高分解能モデルの利用率を伺わせる結果となった。 みんなの投票 第2弾 オシロスコープの使用状況&主要メーカ比較記事[投票結果] (Question 7 で「オシロ以外の機能」を質問) 横河計測は分解能が12~16ビットのスコープコーダ(DL950などのレコーダオシロ)があるので、ここで解説している高分解能オシロスコープに該当するモデルはラインアップになかった(スコープコーダは日置電機のメモリハイコーダなどと競合するメモリレコーダと解釈される)。ただし2023年5月に初めての8ビット以上のモデルDL5000HD(12ビット分解能)を発売した。8chモデルの5代目モデルとして2020年5月に発売したDL5000の高分解能改良版(エンハンスド・モデル)である。 2010年にミドルクラスのモデルでオシロ市場に参入し、いまやハンドヘルド から広帯域モデルまでラインアップしたローデ・シュワルツは、2023年11月に多チャンネルオシロスコープMXO5を発売した。周波数帯域は100MHz~2GHzで、4chと8chモデルがあるが、ADCは標準で12ビット、高分解能モードで18ビット、と高分解能オシロである。前述の岩通のDS-8000のラインアップをカバーし、かつ上位の仕様になっている。同社は以前からオシロにスペアナ機能を付けているので、当然MXO5のRF測定機能も進化している。テクトロニクスやキーサイト・テクノロジーに続く、最新の高分解能モデルが発売されたといえる(2023年12月現在)。 (※)オシロを用途別に分類し、一般的な回路基板評価用途(~2GHzまで)を1G帯域のモデル、広帯域モデルの中で1GHz~10GHzに対応したモデルを高速デジタル回路の評価用と称している。参考記事の「オシロスコープの動向と、最新1GHz帯域モデルの各社比較」の表1が詳しい。

コンプライアンステスト(こんぷらいあんすてすと)

(compliance test) 規格に適合しているかチェックするための認証試験のこと。規格の要件に適合しているか確認するための試験なので、規格認証試験や規格適合試験、認証試験、規格試験などの呼称があるが、コンプライアンステストという表現が良く使われる。近年、デジタル通信は伝送速度の高速化、信号の低電圧化(省エネ)が進み、日々、多くの規格が誕生している。高速な電気信号は品質が悪いと誤動作の原因となるため、規格で定められた複数の試験項目により、適合性を判断する必要がある。各規格によって規格作成機関があるように、規格の認証試験をする機関がある。 たとえばアリオン株式会社はコンプライアンステストの会社として有名。30年以上の歴史があり(日本法人は2002年設立)、電子機器の包括的なテスト、設計品質の検証、技術コンサルティングなどを行っている(同社ブランドの計測器もあり、以下の計測器情報を参照)。 PCI Express(PCIe)やHDMI、100BASE-T1など、高速デジタルに注力している計測器メーカがコンプライアンステストの評価機材(具体的な計測器)を提案している。キーサイト・テクノロジーやテクトロニクスが毎年開催する自社イベント(Keysight Worldやテクトロニクス・イノベーション・フォーラム)には、これらメーカの機材を使い事業をするコンプライアンステストの会社としてアリオンも出展していることが多い。アンリツも2023年のテクトロニクスのイベントには機材提供と説明員派遣をしている。 コンプライアンスは法令順守など、企業の倫理規定、行動規範として使用される用語だが、complianceを翻訳すると、「追従」、「応諾」である。「認証」の英語はcertification(サーティフィケーション)なので、コンプライアンステストは単に認証だけではない範疇の用語といえる。「コンプライアンス・テスト」という表記もある。

最大入力電圧(さいだいにゅうりょくでんあつ)

オシロスコープの入力端子に入力できる電圧の最大値を最大入力電圧と言う。この電圧値以上の電圧を入力すると誤動作するだけでなく入力回路を破損する場合がある。最大入力電圧には、周波数特性があり、高い周波数成分では、最大入力電圧値が低くなる。最大入力電圧は、下図のようにDC+ACpeakで規定する。

サイン補間(さいんほかん)

デジタルオシロスコープはサンプリングされた値だけを表示するのではなく、補間表示の機能がある。サイン補間とは sinX/X 関数で補間データを作成し、2点間を補間するもの。信号を正確に再現するためには、最高周波数成分の少なくとも2.5倍のサンプルレートが必要といわれている。

差動(さどう)

(differential) 電気信号の伝送方式には大きくシングルエンドと差動(ディファレンシャル)がある。信号線が1本で、グランドとの電位差によって信号を伝送しているのがシングルエンド(single-ended signalling、最後まで1本で伝送する方式)。2本の信号線を使い、1本にはプラスの信号を、もう1本にはマイナスの信号を送り、差分で1か0を表現するのが「差動」。2本の信号線はどちらも接地されない(信号がグランドレベルに左右されない)ため、シングルエンドに比べてノイズに強く、長距離、高速通信に向いている。具体的にはシリアル通信のRS-422、RS-485などの規格がある。技術の進歩によって従来より低い電圧で伝送が可能になり、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)のような省エネの低電圧差動伝送が普及した。 オシロスコープのプローブも大変良く「差動」という用語を使っているが、有線通信の分野では平衡とも呼ばれる(1本には伝送したい信号を、もう1本にはその信号の逆位相信号を送ると、信号が平衡関係にあるため)。1本の信号線は平衡していないので不平衡(unbalance)と呼ばれる(つまりシングルエンド=不平衡)。差動(differential)=平衡(balance)で、両方は全く同じことを違う表現をしている。「(2本の)差動(差分で送る)」と「シングル(1本で)エンド(最後まで伝送)」という表現が差動とシングルエンドの語源である。見方を変えると「(2本の線が)平衡(している)」、「(1本なので平衡していない、つまり)不平衡」という表現になる。 平衡/不平衡はまだわかりやすいが、差動/シングルエンドはもっと違う表現が無かったのだろうか(元の英語に原因があり、日本語への翻訳が問題ではない)。原理を正確に理解していないとこの2語が対になっていることは全く想像できない。オシロスコープメーカの資料には(何の前置きや注釈も無く)「シングルエンド」や「差動」という単語が出てくる(そんな単語は知っていて当然というか、知っていることを前提に説明が進む)。たとえば「1本伝送」、「2本伝送」(または1本通信、2本信号など)という言い方で、有線通信もオシロスコープも統一してくれたら、計測入門者(初心者)にはどれだけわかりやすいことか。計測は知識のある人でないと理解が難しい、同じ知識を共有している人たちのニッチな村社会である(逆に言うと、限られた人たちのツウな世界)。

差動プローブ(さどうぷろーぶ)

差動入力型の電圧プローブ。オシロスコープ本体によっては電源が必要となる。

サンプリングオシロスコープ(さんぷりんぐおしろすこーぷ)

(sampling oscilloscope) 高い周波数帯域の繰り返し信号を測定することを目的にしたデジタルオシロスコープ。略称:サンプリングオシロ。単発信号の測定はできない。ほとんどの機種が本体とモジュールを組合せる構成になっている。基幹通信網として高速の光通信が整備・拡張されていた1980年代から2000年代には、キーサイト・テクノロジーとテクトロニクスの製品が市場を2分していた。本体はメインフレームで、用途別の測定ユニット(計測モジュール)を装着するモジュール型である。 基幹通信網で使われる特定の通信方式に準拠した高速信号波形を観測するために、大手通信装置メーカ(NEC、富士通、日立、沖電気など)は設計・開発・製品検査などに特定の計測モジュール(高額な専用器)を使っていた。測定ユニットに光入力が多いことから「光サンプリングオシロ」と呼ばれたり、計測器メーカの総合カタログではオシロと光測定器の両方に掲載されたりしていた。高額であること、必要になる特定の短期間に使用することから、ユーザは自社設備を最低限にしてレンタルを活発に利用した。ただし大変ニッチな高額製品のためレンタル会社の保有台数も潤沢ではなく、ユーザから事前の利用期間をレンタル会社に打診して、レンタル会社は在庫調整をして、場合によっては(今後の見込みがあり、顧客の希望に納期が間に合えば)補充購入(発注)をする、という利用形態が多くみられた。 オシロという名前がついているが、有線通信用の専用器であり、低周波の基本・汎用測定器ではない。構造はオシロだが、アプリケーションの大半は特定の通信規格の波形測定用途である。アイパターンの評価にも使われるので、その用途では有線通信の基本測定器といえるが、2000年代中旬以降の高速オシロスコープ(リアルタイムの広帯域オシロスコープ)の出現・普及によって、アイパターン測定はサンプリングオシロからリアルタイムオシロスコープ(マスクパターンのオプションを使用)に移った。従来のモデル(86100やDSA8300など)は生産中止になったが、長らくサンプリングオシロで評価をしてきた光デバイスメーカ(たとえばNECの大月工場など)は、データの継続性から現在もサンプリングオシロでアイパターン評価を継続している。そのため計測器メーカ2社も、表示部が無く小型にしたサンプリングオシロをラインアップしている(参考記事の2社の製品例を掲載)。 サンプリングオシロとロジックアナライザは、ユーザによってキーサイト・テクノロジーとテクトロニクスにファンが分かれる。両社ともに、自社がトップブランドだと自負してラインアップしている。エヌエフ回路設計ブロックが「交流電源では菊水電子工業に負けたくない」と思っているように、2社はサンプリングオシロのライバルである。 テクトロニクスの冊子「オシロスコープのすべて」(2017年4月発行)では以下の解説がある。「デジタル・サンプリング・オシロスコープ:等価時間サンプル手法により信号のサンプルを取込み、表示するデジタル・オシロスコープ。信号の周波数がオシロスコープのサンプルレートよりも高い場合でも、正確に信号を取込むことができる」。つまり、オシロスコープの周波数帯域やサンプリングレートが今ほど高くない時代(2000年以前のデジタルオシロは4GHzが最高の高級品だった)に、もっと速いデジタル光通信の波形の品質を確認する手法として、繰り返し信号を補足するサンプリングオシロはアイパターン測定器として重宝された。 計測器情報:サンプリングオシロの製品例

サンプリング定理(さんぷりんぐていり)

(sampling theorem) サンプリングはアナログ情報をデジタル化する手法である。サンプリング定理は「アナログ信号をデジタル信号に正確に変換するには、元の信号の最大周波数の2倍のサンプリング周波数が必要」という理論。別名:標本化定理(物理・数学の世界ではサンプリングのことを「標本化」といっているが、計測器の世界ではもっぱら「サンプリング」という表現が使われる)。サンプリング周波数が高いほうが、精度良く元のアナログ波形を記録できるが、サンプリング後のデータ量は増える。どの程度のサンプリング周波数が適切かをサンプリング定理は示している。 サンプリング周波数の半分の値をナイキスト周波数(nyquist frequency)という。サンプリングでデジタル化された情報から元のアナログ情報を復元しようとするとサンプリング周波数の半分の周波数までしか正確に復元できない。つまり、再現可能な最大周波数がナイキスト周波数である(サンプリング定理は再現の限界を示している)。 小野測器の「FFT解析に関する基礎用語集」には以下の解説がある。 サンプリング間隔を⊿t秒(⊿t秒に一回サンプリング)とすると、サンプリング周波数は1/⊿t(1秒間に1/⊿t点サンプリング)になる。サンプリング定理は時間的に連続な信号とそれをサンプリングする速さの関係について情報が保たれる限界を示すもので、「信号に含まれる最高周波数成分の2倍以上の周波数でサンプルしなければならない」と定められている。サンプリング周波数が信号の周波数の2倍より低くなると、エリアシング(折返しひずみ)が生じる。