計測関連用語集

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横浜画像通信テクノステーション(よこはまがぞうつうしんてくのすてーしょん)

正式な会社名は「株式会社横浜画像通信テクノステーション」(略記:YTSC)。住所は神奈川県横浜市神奈川区新浦島町1-1-32 ニューステージ横浜1階。品質マネジメントシステムISO 9002の認証をJSA(日本規格協会)で取得していた(2001年現在)。「高度画像通信の研究開発を支援する」として1994年頃に設立した。 計測器レンタルとして通信計測器に特化した品ぞろえを行った(アンリツからの出向者など、人的な支援があった)。1990年頃に普及したISDNに対応したアドバンテストのD5111R、D5112AなどのISDNプロトコルアナライザなども揃えていた。1990年代から2000年代にかけては携帯電話のデジタル化や光海底ケーブルの新設など、通信インフラの拡充があり、高額な通信計測器のレンタルは大きな売上が見込めるビジネスだった。 会社は2006年9月30日に解散した様子で、いまとなっては概要不明である。毎年、総務省が発行する通信白書(「情報通信に関する現状報告」、略記:情報通信白書)の平成8年版には「通信・放送機構の出資により設立された(株)横浜画像通信テクノステーションは、NHKと共同で平成7年にMPEG-2確認実験を行い、MPEG国際標準化会合へ寄与文書を提出した」旨の記述がある(平成6年版の通信白書にも横浜画像通信テクノステーションのMPEGに関する記述がある)。また、NICT(国立研究開発法人 情報通信研究機構)の決算書類には「平成17年度までは横浜画像通信テクノステーションを連結対象としていた」旨の記述がある。同社は単に「アンリツがつくった計測器レンタル会社」という訳ではないようである。 同社の設立背景がどうだったかはさておき、1995年頃の同社は「アンリツからの人的支援があり、アンリツを中心とした通信計測器をラインアップする」、「通信計測器に特化したレンタル会社」だったのは事実である。約10年間、通信計測器専用レンタル会社として存在し、消えた、(いまとなっては)幻の計測器レンタル会社である。

ラジオコミュニケーションアナライザ(らじおこみゅにけーしょんあならいざ)

無線機テスタの別称。安藤電気のAH-5432などの品名。無線機テスタとは、アナログ無線時代に、SG(Signal Generator)、PM(RF Power Meter、高周波電力計)、SA(Spectrum Analyzer、スペクトラムアナライザ)などが1台になった無線機の総合試験器。評価したい無線機と1回接続すれば、送信試験も受信試験もできるため、大変重宝された。 製品シェアは圧倒的にアンリツのMS555が高く、安藤電気の無線機テスタは限られた顧客にしかファンがいなかった。アンリツと安藤電気はNTTに通信測定器を納品する2社だが(電電ファミリー)、高周波、無線はアンリツが強く、安藤電気はデータ通信などの有線が強い(ただし高速のビット誤り率測定器などは安藤電気よりアンリツが強い)ことを物語っている。有線通信の1種である光通信測定器では安藤電気(現横河計測)は筆頭メーカである。逆を言えばアンリツは光通信よりは無線通信に注力して、デジタル無線時代のNo.1無線通信測定器メーカの地位を築いたといえる(光通信より無線通信測定器のほうが市場規模は大きい)。安藤電気(現横河計測)も光測定器に特化して世界No.1の光スペクトラムアナライザメーカになった(無線や、電気の高速通信ではかなわないので、光通信を選んだ)といえる。 NTTドコモが3G(デジタル無線)を2001年から運用開始すると、デジタル無線機テスタはワンボックステスタと呼称されるようになっていき、無線機テスタというとアナログ方式という認識になった(古い名称という感覚)。ただし2000年代にはアンリツからMT88xxラジオコミュニケーションアナライザというワンボックステスタのシリーズが発売されている。そのため、「ラジオコミュニケーションアナライザ」の解説としては「デジタルの無線機テスタであるアンリツMT8800シリーズの品名」ともいえる。どちらにしてもラジオコミュニケーションアナライザとは無線機テスタの別称である。 計測器情報:品名に「ラジオコミュニケーション」が付く製品の例

ルータ(るーた)

(router) ネットワークにつながったコンピュータのデータを、2つ以上の異なるネットワーク間に中継する通信機器。データをどのルートで転送するかを判断するルート選択機能を持つことから、この呼び名がある(ルートをする物 → ルートを決める機器、ルーティングをする機器、という意味)。OSI参照モデルのレイヤ3(ネットワーク層)の機器なので「レイヤ3スイッチ」とも呼ばれる。インターネット(通信プロトコル:TCP/IP)の拡大と共に、ルータも普及した。 1970年代後半にコンピュータ同士の接続(ネットワーク相互接続)が試された時代はゲートウェーと呼ばれたが、1980年代にはルータといわれるようになった。Wi-Fiが普及した現在ではルータというとWi-Fiの接続機器( Wi-Fiルータ)を指すことが多くなり、ネットワーク上のルーティングをする機器はサーバと呼称されるようになった。たとえば「サイバー攻撃が複数のサーバを経由しているので、発信元を特定できない」など、ルータという表現は使われない(ルータの機能がサーバに備わったともいえる)。 ルータのメーカとしては米国のシスコシステムズ(Cisco)やジュニパーネットワークス(Juniper Networks)が有名。ベストエフォート型のインターネットが普及する以前は、基幹通信網は交換機によって2点間のデータ通信を行っていた(ギャランティ型)。1990年代にLANやインターネットが普及していくと、ハブやルータなどの機器が普及し、基幹系ルータが交換機の代わりをするようになっていった。大手交換機メーカである日本電気はシスコシステムズと提携して、国内の販売店をしている。 2004年に日本電気は日立製作所との合弁によりアラクサラネットワークス株式会社(ALAXALA Networks Corporation)を設立し、基幹系ルータ/スイッチ製品AXシリーズを発表した。これは電電ファミリーとしてNTTに交換機を納品してきた2社が一緒になりCiscoのようなルータのメーカをつくったことを意味する。日本電気の我孫子(あびこ)事業場(千葉県)で交換機をつくってきた技術者の多くが、日立製作所の交換機部門(横浜事業所)に異動した。インターネットの登場によって交換機はルータに取って代わられた。

レシーバ(れしーば)

(receiver)有線・無線通信で受信機や受信部品のこと。受信データはRx( Received data 小文字のxはデータの意味)と略記される。レシーバ(受信機)をRxと記述している例もある。

ローカル5G(ろーかるふぁいぶじー)

次世代無線通信規格の5G (ファイブジー)を(基幹通信網ではなく)特定の地域や、限定された建物内だけで使うことで、高速通信を実現するもの。国内では中小企業などへの導入が期待されている。公共通信として4Gから5Gに乗り換えるには、価格面やサービス面などでまだ普及に難があり、ローカル5Gによる5G規格の導入で、5Gの技術革新(機器の低価格化など)や普及を促進する狙いが伺える。ただし2020年現在、導入のための詳細や、具体的な運用などが未整備(官報で次々と発表される内容を専門家が読み込まないと理解できないという状況)で、通信関連企業でもコンサルテイングビジネスを模索している。東京都はローカル5G基地局の敷設・運用経費の補助を行うが、設置には総務省からの免許交付が必要になる。

LoRa(ろーら)

(Long Range)少ない消費電力で広いエリアをカバーする無線通信方式のLPWA(Low Power, Wide Area)の1種で、IoT向けの通信に有望視されている。

YHP(わいえっちぴー)

(Yokogawa Hewlett Packard) hp(ヒューレット・パッカード)が日本につくった合弁会社(1963年~1998年)。YHP設立以前は、無線機器を取り扱う商社のセキテクノトロン株式会社(旧関商事株式会社)がhp製品を輸入販売していた。 1939年に、ウィリアム・ヒューレットとデビッド・パッカードは米国カリフォルニア州でhp(Hewlett-Packard Company、エイチピーと呼称)を創業し、世界No.1の電子計測器メーカとなった。日本のYEW(横河電機製作所)は1963年にhpと合弁でYHP(横河ヒューレット・パッカード)を設立した。YEWは国産初の電磁オシログラフをつくるなど、日本を代表する老舗計測器メーカだった。高周波(RF)測定器はYHPがつくり、YEWはDC~低周波の記録計などをつくるという棲み分けをした(競合しないように機種群の分担を決めた)。当時のYEWはブリッジをラインアップし、回路素子測定器の要素技術を持っていたが、それらはすべて技術者とともにYHPに移ったと推測される。YHPはhpの日本法人(販売会社)でhp製品を販売したが、国内に開発拠点を持ちYHPとして計測器の開発も行った。回路素子・材料の測定器(LCRメータやネットワークアナライザなど)の開発拠点が神戸にあったと筆者は記憶している。1980年代に筆者は国内大手計測器メーカの技術部門にいたが、各計測器メーカの特許出願情報が回覧された。そこには「横河HP」という会社名でインピーダンス測定の多くの特許が掲載されていた。YEWのブリッジは生産終了し、後継機種となるLCRメータなどはつくられていない。インピーダンス計測器は、YEWではなくYHPが開発を行った。 高周波計測器を手掛けるYHPと、「レコーダ、低周波の電力計(デジタルパワーメータ)、ミドルクラスのオシロスコープ」をつくる横河電機(1986年に社名変更)との差は30年間で大きく開いた(YHPは計測器のトップメーカになっていた)。1995年に横河電機はYHPへの出資比率を下げ、高周波測定器の開発に着手した。時は携帯電話の3Gが商用開始する前夜で、1998年にはYHPから完全に資本を引き揚げ、携帯電話評価用の信号発生器を中心に、次々と通信計測器を発表した。 YHPは会社名を日本HPに変更していたが、2000年にhpがIT機器以外の事業(計測器と科学分析機器、ライフサイエンス事業)を分社し、Agilent Technologiesを設立したので、日本HPもアジレント・テクノロジーとなる。さらに2014年にはAgilent Technologiesは科学分析機器のみとなり、計測器はKeysight Technologies(キーサイト・テクノロジー)となり、現在に至る。 世界No.1の総合計測器メーカhpは日本では、高度経済成長期に設立したYHPに始まり、1998年以降に日本ヒューレット・パッカード、アジレント・テクノロジー、キーサイト・テクノロジーと社名が変わった。横河電機は2002年に幸運にも通信計測器大手の安藤電気を吸収し、安藤電気がアジレント・テクノロジーとシェアを競った光通信測定器をラインアップに加え、高周波測定器を強化した。ただし、2000年代後半には光通信以外の通信計測器はすべて中止し、2010年には横河メータ&インスツルメンツ(現横河計測)に計測器部門を移管した。これによって横河電機は(計測器をつくらない)計装(工業計器)のメーカに名実ともになり、(メモリレコーダなどの計測器ではない)計装ユースのDAQ(データロガーなど)をラインアップしている(計測器の記録計か、計装の記録計かは素人には判断が難しい)。 マイクロウェーブ展2022(2022年11/30~12/2、パシフィコ横浜)に、キーサイト・テクノロジーはPXIネットワークアナライザM983xA(新製品)を出展した。「Keysight TechnologiesのR&D拠点の1つであるキーサイトの事業所(兵庫・神戸市)で開発した製品である」ことが、展示会を取材した日経誌で報じられている。

Wi-SUN FAN(わいさんふぁん)

(Wireless Smart Utility Network for Field Area Network profile)次世代スマートメーター、流通オートメーション、家庭用エネルギー管理などのアプリケーションに使われる無線規格。Wi-SUNは日本のNICT(情報通信研究機構、ニクトと呼称)が開発した無線通信技術で、すでにWi-SUNデバイスは世界で約1億個出荷されたといわれる。Wi-SUNの通信速度と通信距離はLPWA(Low Power Wide Area)の1種だが、FANはフィールドエリアネットワークなので、広い屋外の通信である。Wi-SUN FANはLPWAを使って広域で通信する仕組み。日本発の広域IoT無線規格として、2.4Mbpsの仕様策定が進んでいる(2021年3月現在)。

Wi-Fi(わいふぁい)

無線LANの規格名称。語源はWireless FidelityやHi-Fi(High Fidelity)という説がある。無線LAN、IEEE802.11規格とほぼ同義に使われている。正確にはWi-Fi Allianceに認定されたIEEE802.11規格で、無線LANの1種。

Wi-Fiルータ(わいふぁいるーた)

(Wi-Fi router) PCやスマホなどの端末をWi-Fi経由でネットワークにつなぐ通信機器。各家庭へのWi-Fi環境の普及率は2020年代に約90%に達した(つまりその数だけWi-Fiルータが各家庭にある)。Wi-Fiは2000年代初頭から普及が始まり、通信速度は2009年に600Mbps、2013年には1Gbps以上になった。 ONU(やモデム※など)のデータをWi-Fiルータは受取り、パソコンやタブレット、携帯電話などの複数の端末に割り振って、同時にインターネットに接続している(各端末との通信は無線)。つまり、1つの回線で複数の端末を同時接続している。 ※ モデム(modem)は電話回線(アナログ信号)を使ってインターネットに接続する機器。 ルータ(router)は元来、ネットワークを経由して2つのコンピュータでデータを送受信するためのルート(通信経路)を制御する機器(異なるネットワークを中継する機器)を指した。インターネットの普及と共にルータも普及した。コアネットワークに設置される基幹ルータから、アクセス網のエッジルータまであり、Wi-Fiルータは後者の1つ。ルータと似ているが、ハブは複数のケーブルを集約して接続し、接続できる機器を増やす機器で、ネットワークを経由して端末(デバイス)をつなぐことはしない。ルータは複数の端末をインターネットに接続するために使われる。 各家庭(宅内)だけでなく、屋外にもWi-Fiルータは設置されるようになった。イベント会場や喫茶店にあるWi-Fiルータは通信範囲が広い場合は屋外でも携帯電話とつながる。Wi-Fiルータが非常用の電池を常備すれば、大規模な震災で停電になっても止まらない。各人が持っている携帯電話も電池がある限りは通信できる。そこで、基幹網(インターネットなど)がダウンしてWi-Fiルータはネットワークに繋がらない状態でも、ピアツーピアで携帯電話同士を通信することはできる。Wi-Fiルータが密に設置されているエリアなら、Wi-Fiルータによる広範囲なネットワークができる(※)。 (※) Wi-Fiの電波が届く距離は50m~100mといわれるが、屋外で障害物がなければ500m。場合によってはそれ以上も可能。 iPhoneに無料のアプリ(コグニティブ・フォートトーク)を入れて、携帯電話同士で通信する仕組み(レスキューリンク)を、コグニティブリサーチラボ株式会社(代表取締役CEO苫米地英人、とまべちひでと)が発表した(2024年3月25日 AI緊急通信網機能「レスキューリンク」の無償提供を開始)。2024年1月1日に「令和6年能登半島地震」が発生し、被災者の迅速な救助への利用を想定し、レスキューリンクをユーザ(携帯電話の使用者)向けに無償提供することを決めたという。

ワイヤレス(わいやれす)

(wireless) 日本語では「無線」。ただしワイヤレスはすでに日本語になっていて「ワイヤレスLAN」、「ワイヤレスイヤホン」など多くの無線機器の名称で使われている。計測器でもワイヤレスは基本用語である。 ワイヤレスとは「ワイヤ(wier)がない(less)」ということで、通信するための電線(や光ファイバ)などの線材がないという意味である。ワイヤレスを無線と翻訳したので、線を使った通信は有線といわれる。有線のことを英語ではwired(ワイヤード、ワイヤがある、線でつながっている)と表現するようで、通信計測器の世界的なベンダであるアンリツでは、光ファイバ通信などの有線通信(無線でない通信)を「ワイヤード」と呼称している。同社では製品群を大きくワイヤレスとワイヤードの2つに分類している(同社以外では「有線(通信)」や「光通信」という表現が一般的で、ワイヤードとはいわない)。ただし、一般には同社は通信の中でも特に「ワイヤレスの会社」と認識されている(※)。 株式会社リックテレコムが主催する展示会に「ワイヤレス・ジャパン」があり、毎年5月に東京ビッグサイトで開催されている。2023年は5G/ローカル5G、LPWA/IoT、ミリ波、産業DX、スペースICT、Beyond 5G/6Gなどがテーマだった。広く無線機器(計測器も含む)が出展するイベントである。同じく無線の展示会にマイクロウェーブ展(MWE)がある。こちらは学会が主催するワークショップに併設する展示会である。 ワイヤレスに近いことばに「モバイル」がある。Mobile(可動性の、移動可能な、という意味)は携帯電話やノート型パソコンで使われる移動体通信や、移動体通信の機器そのものを指す。モビリティ(Mobility:「体の動きやすさ、機動性」が元の意味で、「人やものを空間的に移動させる能力や機構」に使われる)は自動車を指すことばに使われ、自動車はこれからのワイヤレス通信の大きな市場になろうとしている。Automotive(オートモーティブ)は「自動車の、自動車に関する」という意味である。ワイヤレス(無線)、モバイル(移動体)、オートモーティブ(自動車)はそれぞれ関連していることばといえる。 (※)「アンリツの旧社名“安立電気株式会社”は1931年(昭和6年)の共立電機と安中電機の合併で設立。安中電機の36式無線電信機は、1905年(明治38年)の日本海海戦(日露戦争)で「敵艦見ゆ」の信号を発信。(アンリツのホームページ、沿革より)」 つまりアンリツは100年以上前から無線機をつくっていた会社が祖となっている、日本のワイヤレスのインフラと共に歩んだ会社である。NTTやNTTドコモが構築してきた日本の通信インフラを計測器の面で支え、インフラ構築と共に発展してきた通信専業の計測器メーカといえる。通信の中でも特にワイヤレスに注力し、キーサイト・テクノロジーやローデ・シュワルツという世界的な高周波(無線通信)の計測器メーカと伍している国産企業である。同社の無線機テスタやシグナリングテスタ、送信機テスタなどが、次々と登場する最先端の無線通信方式を試験・評価することで、日本の無線通信インフラは開発・製造から施工・保守までが行われてきたし、今後も続いていくといっても過言ではない。

ワイヤレス給電(わいやれすきゅうでん)

(Wireless Power Transmission) 有線ではなく無線によって電力供給する方式のこと。ワイヤレス電力伝送。小型の携帯機器から大型の自動車まで、各種の方式が研究されている。自動車の電動化に欠かせない要素技術の1つ。電力はmWからkWまで、用途はIoTからドローンまで、電力と距離によって、各種の方式がある。主な方式は、電磁誘導方式(従来型と磁界共鳴型)、電界結合方式、電磁波方式(マイクロ波を使用)、電磁波方式(レーザーを使用)がある。別名:無線給電。略記:WPT。

ワイヤレスコネクティビティテストセット(わいやれすこねくてぃびてぃてすとせっと)

(wireless connectivity test set) 通信計測器(特に無線通信)の世界的トップベンダであるアンリツの無線LANのテスタ(無線LANアナライザ)MT8862Aの名称(品名)。 同社ホームページの電子計測器製品カテゴリーは以下の8分類(2023年11月)。 1. 光計測器 2. BERT 3. トランスポート/イーサネット関連計測器(IPやOTN/SONETなど) 4. モバイル/ワイヤレス通信⽤測定器(シグナリングテスタ、ワンボックステスタ、エリアテスタなど) 5. シグナルアナライザ/スペクトラムアナライザ 6. ベクトルネットワークアナライザ 7. 信号発生器 8. RF/マイクロ波⽤測定器(マイクロ波周波数カウンタ、RFパワーメータ、アンテナなど) 上記の1~3は光通信測定器や伝送交換・IP関連の有線通信測定器、4は無線/移動体測定器、5~7は無線(RF)の基本測定器であるSA、VNA、SG。1.~8.は有線通信、移動体通信(専用器)、無線通信(基本測定器)の順に並んでいる。 「モバイル/ワイヤレス通信⽤測定器」はその下の項目数が一番多く、「Bluetooth/WLAN用測定器」にMT8862Aは掲載されている。この項目はBluetooth(ブルーツゥース)や無線LAN用のワンボックステスタ(無線機器の総合試験器)である。WLANとは無線LAN(ワイヤレスLAN)の略記(※)。BluetoothテストセットMT8852BやユニバーサルワイヤレステストセットMT8870Aと並んでMT8862Aが掲載されている。MT8870Aは品名の後に(スマートフォン、IoT端末、通信モジュール用測定器)、MT8862Aは(WLAN用測定器)と但し書きがされている。つまり何を対象とした測定器かを補記している。「ワイヤレステストセット」はワンボックステスタ(無線機テスタ)の1種であるが、「無線通信機器/デバイスの生産ラインで、複数個のデバイスの検査に対応し、大量生産に貢献するためのモデル」、とメーカは説明している。そのため、MT8862Aの品名も「無線LAN用ワンボックステスタ」ではなく、ワイヤレスやテストセットということばを使ったと思われる。 MT8862Aは、IEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax/be(2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯)搭載機器のRF送受信特性測定器で、標準WLANプロトコルメッセージング(WLANシグナリング)を使用してDUTと接続し、送受信測定が可能となるネットワークモードを搭載している。 MT8862Aの品名は、「無線(wireless)のつながりやすさ・接続性(connectivity)を試験(test)する」というネーミングで、tester(テスタ)ではなく最後にsetとあるのは「単純な機能ではなく総合評価ができる」という主張のように伺える(品名の命名意図はメーカの自由で、その真意は社外には知らされないのであくまで推測)。この名称は測定器の概要を正しく表現しているが、品名だけを読んでも何の測定器か、瞬時には想像できない。まるで安藤電気の「データコニュニケーションアナライザ」がプロトコルアナライザであることがわかりにくいことと似ている。プロトコルアナライザは「データ通信(data communication)の分析・解析装置(analyzer)」である。 (※) 1990年頃にLANが登場すると従来の通信網を広域通信網としてWANと呼称したので、「WLANとはWAN&LAN、つまり基幹通信網~狭いLANまで全通信規格に対応する」ことだと勘違いしそうな略記である。アンリツでは無線LANが登場した2000年頃からW-LANという表記(略記)で無線LANを表現している資料が残っている。2023年現在、WLANは無線LANである、という説明は広く浸透している。 通信規格の表現は毎年のように更新され、猫の目のように新しいことばが生まれる。まるでJKの流行りことばのようである。通信の世界は新しい規格が次々と登場する日進月歩の世界で、通信計測器は時代と共にある専用器で、汎用計測器(基本計測器)とは根本的に異なる機種群(カテゴリー)である。

ワイヤレスLAN(わいやれすらん)

(wireless LAN) ワイヤレス(無線)通信でデータの送受信をするLAN。別名、無線LAN。Ethernet規格の一部である「IEEE 802.11b」規格のことを指す場合が多い。2010年頃からは一般家庭に普及したWi-FiがワイヤレスLANの最も普及した規格である。 元々、英語のwireless(有線の線材であるワイヤがない)を訳したことばが「無線」だが、英語をカタカナにした「ワイヤレス」もすでに日本語になっている。無線LANが普及する際に、従来のLAN(wired LAN、線でつながったLAN)ではないという意味で「ワイヤレスLAN」という表現がされたと思われる。ただし、前述のように無線LANやワイヤレスLANよりもWi-Fiという表現の方が大変良く使われている(2020年現在)。 ワイヤレスLANが登場したため、従来のLANを区別して有線LANと呼称することがあるが、通常はLAN、Wi-Fiといって、比較するときにしか有線LANという表現は使われない。英語でも無線(wireless)に対することばとして有線(wired、ワイヤード、ワイヤでつながった)ということばがある。wiredが先で、wirelessが生まれたわけではない。

ワンセグ(わんせぐ)

モバイル機器向けデジタル放送。地上デジタル放送の1つのチャンネルの中の1セグメントのみを使用する。

ワンボックステスタ(わんぼっくすてすた)

(one box tester) 携帯電話端末のRF送受信特性と呼接続試験を1台で一括に高速試験する測定器。アンリツ、キーサイト・テクノロジー、ローデ・シュワルツの製品に多い。標準信号発生器(SG)とスペクトラムアナライザ(SA、スペアナ)が1筐体に収まり、この1台で送受信試験その他ができることからネーミングされた。携帯電話が2G(アナログ)から3G(デジタル)になり、アナログ時代の無線機テスタという名称が、デジタル時代にワンボックステスタという名称になった。 アンリツの無線機テスタの形名はMS555で、形名の2文字目のSはスペアナを意味するが、ワンボックステスタはMT8801というように2文字目がTでテスタになっている。つまり、無線通信用測定器の雄、アンリツでは、アナログ無線時代の無線機テスタはスペアナの1種という位置づけだったのが、デジタル無線時代には総合試験機であるテスタという位置づけに変わったのである。トランシーバなどのアナログ無線機のテスタから、デジタル無線端末のテスタに位置づけが変化したといえる。 アンリツや安藤電気、日本無線などは無線通信がアナログ方式の時代に、携帯電話を含む無線機の総合試験器として「無線機テスタ」、「ラジオコミュニケーションアナライザ」という製品群をつくった。当時のキーサイト・テクノロジーの同等品はスペアナの1種のような品名だった。ところが3G(デジタル方式の無線通信)の時代になると、国産ではなく海外計測器メーカがone box testerといい始めた。そのため「ワンボックステスタ」は和製英語のようだが、正式な英語と思われる。ただし、計測器の品名に使われることはほぼなく、「無線機テスタ」、「ラジオコミュニケーションアナライザ」が品名である。そのため正式には無線機テスタの俗称という位置づけで、計測器の(事典などの)機種分類(カテゴリー名)は2005年頃は無線機テスタであり、ワンボックステスタという名称は見当たらない。キーサイト・テクノロジーは盛んに「ワンボックステスタ」と呼称したが、アンリツは品名などの名称には採用していない。2022年現在は、アンリツもカテゴリーとして「ワンボックステスタ」という表現をHPでもしているので、海外ではこの名称が定着したためと推測される(アンリツの売上は海外比率が高い)。 製品カタログ(会員専用):「ワンボックス」がタイトルに付く資料の例・・ワンボックステスタではない。

オープンRAN(おーぷんらん)

(Open RAN) 無線の送受信装置などの仕様を公開(オープンに)して、多くのベンダーの機器が相互接続できるようにした、標準化されたRAN(Radio Access Network、無線アクセスネットワーク)。RANは、各端末(スマートフォンなどの携帯電話)からの通信データを整理し、基幹通信網(バックボーン、コアネットワーク)に渡す無線通信の部分を指す。具体的にはアンテナや基地局、回線制御装置などが相当する。 RF(Radio Frequency)を「無線周波数」というようにRANも無線アクセスネットワークと呼ばれているが、きちんと説明を聞かないと、「無線はワイヤレス」なのになぜラジオが無線なのか?と瞬時にはRANと無線アクセスネットワークが結びつかず、腑に落ちない。 オープンRANというワードは2021年頃からいわれるようになったと筆者は感じる。NTT技術ジャーナルでは「NTT DOCOMOテクニカル・ジャーナル」(Vol.30、No.1、2022年4月)で解説されている。2024年3月6日の朝8時のNHKニュースでは、トレンド情報として、以下のような放送があった。「携帯電話の基地局の機器は1つのメーカに仕様が統一されている。利点は運用の安定性が高いことだが、改良の自由度が低く、コストが下がらないことが課題。通信大手各社(キャリア)は異なるメーカの機器でも接続できるオープRAN方式の導入に力を入れる。NTTドコモはNECと新会社を設立すると今年2月に発表した。オープンRANを海外の携帯電話各社(キャリア)にも広げるとしている。」 オープンRANは、理系ではない一般のビジネスマンが知るような、お茶の間の情報といえる。通信計測器は携帯電話などの移動体通信機器の開発から試験、修理まで深く関与しているので、オープンRANは計測関連用語である。 NTTドコモ、au、ソフトバンクに次いで通信事業者(キャリア)になった楽天モバイルは、従来の高額な通信機器を使わずにコンピュータとソフトウェアでシステムを構築して、設備の低価格化を実現しているといわれている。従来のように基地局に機器を置かず、クラウド上で通信処理を行う仮想化技術の導入を推進している。楽天グループは「仮想化Open RANネットワーク構築の知見を活かして国内外でOpen RANを展開している」と自社技術をPRしている。筆者は2022年4月から楽天モバイルの電話アプリ、Linkを携帯電話で使用している実ユーザだが、呼接続の安定性など、品質は他3社に比べて明らかに悪く、2024年4月現在もあまり改善されたと感じられない。通信機器(ハードウェア)の品質をコンピュータとソフトウェアで置き換えるのは並大抵ではないと想像する。 光伝送装置であるROADM(ローダム)の仕様公開(Open APN)など、最近の通信ネットワークはオープン化がはやりである。

ピアツーピア(ぴあつーぴあ)

(peer to peer) 端末同士が直接通信すること。peerは「地位や能力が同等の人」。通信ネットワークは交換機やサーバ、ルータ、スイッチングハブなど、端末間の接続を仲介し、制御している機器がたくさんある。基幹システム(コアネットワーク)は、遠距離を通信するので、端末同士が直接会話することは不可能である。そのため、ピアツーピアは近距離無線の規格などで実現するものである。たとえば、Wi-Fiルータを使うレスキューリンクや、工場内のネットワーク(フィールドバス)規格の1つであるEtherCATなどが、ピアツーピアを行っている。 日本語のカタカナ表記は「ピア・ツー・ピア」や「ピア・ツゥー・ピア」もある。略記:P2P。

P2P(ぴあつーぴあ)

(peer to peer) ピアツーピアの略記。端末やデバイスがネットワークの制御機器(ルータやスイッチなど)を経由せず、直接つながって通信すること。ネットワークに接続されたコンピュータ同士がサーバなどを介さずに直接通信する方式もP2Pといわれる。英語のPeer to PeerはPtoPとも略される。日本語では「ピア・ツー・ピア」の表記もある。P2Pではなく、コンピュータ同士がサーバを介して通信する方式は「クライアント/サーバ方式」と呼ばれる。

レスキューリンク(れすきゅーりんく)

(rescue link) 災害で通信インフラが切断したときや、山岳地帯で全く電波が届かない地域でも、通信可能にするAI緊急通信網機能の名称。コグニティブリサーチラボ(CRL)(※1)は、iOSアプリケーション「コグニティブ・フォートトーク」内に、AIを活用したメッシュ緊急通信機能「レスキューリンク」の無償提供を2024年3月25日に開始した。このアプリを使うと、スマホ端末間でWi-FiやBluetoothによる端末間通信(ピアツーピア)ができる。Wi-Fiルータ、UWB(Ultra Wide Band)を活用してAIが自動的にメッシュネットワークを構築するため、大規模災害で携帯電話網やインターネット網が使えなくなっても、救助隊と被災者間などで互いに連絡を取り合える。原野や山岳地帯などの電波が届かない地域でも、トランシーバとしてアプリ利用者は連絡を取り合うことができる。CRLはより多くの人々の安心と安全を実現するために、「コグニティブ・フォートトーク」の無償提供を行った。 (※1) コグニティブリサーチラボ株式会社(Cognitive Research Labs, Inc.)、設立:2000年3月15日、代表者:苫米地 英人(とまべち ひでと)。 海の安全装備品として、遭難救助用発振器のARTEX C ResQLink 400(レスキューリンク400)日本仕様が、2022年にACR社(※2)から発売された。PLB(Personal Locator Beacon)と呼称される、個人で使う遭難信号発信機である。遭難信号を人工衛星で受信するため、空が見える場所なら24時間常に全地球をカバーする。「レスキューリンク400 日本語版PLB」は手のひらに乗る小型サイズながら、船舶で使う遭難信号発信機「イーパブ」と同じ5Wの高出力。本体にはGPSが内蔵され、遭難信号といっしょに遭難者の緯度経度と遭難者が誰だかわかる識別番号が送信される。PLB使用には、無線局免許の申請(別途4,250円)が必要だが、無線従事者等の資格は必要ない。PLBは、人工衛星を使った全世界的な救助システム「コスパス・サーサット」の一環として運用されている。携帯電話や船舶無線が通じないような海域でも人工衛星に向けて遭難信号を発信することができ、生還の可能性を飛躍的に高めている。 (※2) 会社名はACR Electronics, Inc.で、ブランド名がARTEX。そのため「ACR / PLB」(AVR社のPLB)や、A RTEX レスキューリンク400」(ARTEXブランドのモデル レスキューリンク400)などの表記が、様々な販売サイトで行われている。そのため、何が会社名で、何がブランドで、何が形名で、何が品名なのか、サイトによって表記が色々あり良くわからない。海外製品やコンシューマ(個人向け)商品には良くあることである。計測器のような企業向けの商品は、形名や品名がきっちりと決まっているものが多い(一部の、販売店を通じて不特定多数に売りさばく量販品には、キャッチ―な通称が形名や品名より前面に出る計測器もある)。