計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
計測・測定に関連する用語全般が収録されており、初めて計測器を扱う方でも分かりやすく解説しています。
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フォトカプラ(ふぉとかぷら)

(photocoupler)電気-光変換によって、回路を電気的に絶縁したいときに使う電子部品。フォトカプラ内部では入力電気信号を発光素子で光信号に変え、その光信号を受光素子で再度電気信号に戻して出力する。FA、OA、家電など多くの電気機器では、動作上の安全を担保する目的でフォトカプラを使用している。optocoupler、opto-isolator、optical isolatorなどの表記もされる。「光で(photo/opto)、つなぐもの(coupler)」という意味。アイソレータは「アイソレーション(絶縁)する物」という意味。

フォトダイオード(ふぉとだいおーど)

(photodiode) 光検出器(光センサ)として使用される半導体。光を受けると電流を発生する受光素子。略記:PD。 光ファイバ通信は送信部にレーザー(LASER)やレーザーダイオード(LD)が、受信部にフォトダイオード(PD)が使われる。入力(照射された)光の強さと出力(電流)にリニアリティー(直線性)があるため、O/Eコンバータ(光-電気変換器)に使われる。 参考記事:「光スペクトラムアナライザの基礎と概要 (第1回)」 ・・光ファイバ通信システムの構成図がある。 計測器情報:品名に「フォトダイオード」が付く製品の例

フォトニクス(ふぉとにくす)

(photonics) 日本語は「光工学(ひかりこうがく)」。エレクトロニクス(電子工学)がエレクトロン(電子)の学問であるように、フォトン(光子)を扱う工学のこと。両方を総称したオプトエレクトロニクス(光エレクトロニクス)ということばもある。 「フォトニクス」や「オプトエレクトロニクス」の名前で、光通信装置や、光学部品を扱う複数の展示会が催されている。たとえば2018年12月開催の第18回光・レーザー技術展(Photonix-フォトニクス)はレーザー加工専門展と、光計測・分析機器展、オプティクスEXPOの3つで構成されていた。似た展示会に光ファイバ・光学部品・光通信システムなどが出展する「光通信技術展(通称FOE:Fiber Optics Expo)」がある。FOEには光通信測定器メーカのほぼ全社が出展している(2023年からCOMNEXT [次世代]通信技術&ソリューション展を構成する1つにFOEはなり、単独の展示会ではなくなった)。具体的には、メーカ(商社):EXFO(オプトサイエンス、サンインスツルメント)、VeEX(メインテクノロジー)、Viavi、アルネアラボラトリ、アンリツ、santec、横河計測(旧安藤電気)など。 光電子増倍管で有名な浜松ホトニクスも、社名はphotonicsからとっている。同社は、日本のテレビ技術研究の先駆者、高柳健次郎の門下生(浜松高等工業学校電気科の堀内平八郎)が1948年に静岡県浜松市に設立した。当時のテレビは普及前の研究段階で、最先端技術だった。1953年の同社の社名は「浜松テレビ(株)」。1983年に現在の「浜松ホトニクス(株)」になった。現在の同社は光に関する広範な製品(イメージ機器、光源、光半導体素子、画像処理・計測装置など)のトップベンダである。 参考用語:光ファイバ通信、光測定器、通信計測器 参考記事(会員専用): 【展示会レポート】OPIE’19(レーザーEXPO)Part1 計測器・・レーザー干渉計、日置電機のRGBレーザ測定器、レーザーのFFP/NFP測定器を取材。 【展示会レポート】OPIE’19(レーザーEXPO)Part2 装置・・ファイバーレーザー、BERT、光のワイヤレス給電を取材。 【展示会レポート】第18回光・レーザー技術展(Photonix - フォトニクス) ・・レーザー加工技術展から古河電工の高出力マルチモードファイバレーザと、キヤノンプレシジョンのエンコーダを、計測・分析コーナからは蛍光(けいこう)で分光計測をする光度計を東京インスツルメンツのブースで取材。

偏光計(へんこうけい)

(polarimeter) 光通信などで使われる光信号は電磁波の1種なので偏波である。偏光計は光信号の偏波(偏光)状態の計測器。英語をカタカナにした「ポラリメータ」という表記も多く見かける。 直線偏光や楕円偏光などの偏光の状態(SOP:State Of Polarization)や、偏光している光と偏光していない光の割合である偏光度(DOP:Degree Of Polarization)を算出し、結果をポアンカレ球やストークスパラメータで表示する。偏光状態が未知の光を偏光フィルタ(偏光子、ポラライザ)によって任意の偏光成分に分離し、測定部で受けて、校正式を使って偏光状態や偏光度を計算している。 光コンポーネントの偏波依存性損失(PDL)などの評価に使われる偏波アナライザや偏波シンセサイザ、偏波スクランブラは偏光計を内蔵しているものが多い。 ここまで読んで、偏光と偏波の使い分けがあることに気がつかれただろうか。技術書籍では「電磁波の特性である偏波は、電波は偏波、光は偏光と呼ばれる」と解説されている。ところが光測定器では偏光と偏波の両方が製品名に使われる。偏光計は光測定器であることが初心者にもイメージしやすいが、偏波シンセサイザは光測定器で、偏波アンテナは無線(映像信号や高周波)の機器であることは、知識がないとわからない。

偏波(へんぱ)

(polarization) 電磁波や光は進行方向に垂直な面内で、電界と磁界が時間的・空間的に規則的な振動をする。振動の軌跡には偏りがあり、この状態を電波は偏波、光は偏光と呼ぶ(※)。偏波とは電波の空間に対する向きを表し、直線偏波と円偏波の2つがある。電界が常に1つの平面内に存在するのが直線偏波、電界が進行方向に向かって回転する場合を円偏波と呼ぶ。 テレビの電波を良好に受信するには受信したい中継局の電界の振動方向(つまり偏波状態)に合わせてアンテナを設置しないといけない。地上波デジタル放送(地デジ)などは一般には水平偏波が多いが、地域によって違う場合がある。地デジやFM放送は直線偏波だが、衛星放送は円偏波。TVやFMラジオなどのVHF、UHFの電波の受信は八木・宇田アンテナが使われることが多い。このアンテナはエレメントの向きが偏波面からずれると感度が低下するので、エレメントの向きを放送波の偏波面に合わせることが重要。電気工事の作業者の常識である。 シングルモードファイバは、その名の通り1つのモードだけを伝搬しているが、実際には直交する2つの偏光モードが伝搬する。光ファイバのコアは理想的には真円だが、側面からの外圧などにより真円ではなくなり、僅かな複屈折が発生する。この影響で直交する2つの偏光モードの伝搬速度に差が生まれ、信号波形が劣化する。この現象を偏波モード分散(PMD:Polarization Mode Dispersion)と呼び、高速光通信(10Gb/s以上)では問題となる。電磁波の1種である光が偏波なので起きる現象である。 PMD以外に光ファイバの重要なもう1つの特性に「波長分散」がある。光は波長が違うと、光ファイバの中を伝搬する速度が違うため、伝搬時間の差(遅延)が発生する。光通信用の光源の波長にはわずかな幅があるため、単一の光パルスが光ファイバを伝搬していくと、波長分散によって、時間と共にパルス幅が広がっていく。この現象を波長分散と呼ぶ。偏波モード分散と波長分散は光ファイバ通信の重要な評価項目である。 電気を使わずに光で処理を行う光集積回路(光半導体)が、インテルなどの大手デバイスメーカで研究されている(シリコンフォトニクス)。NTTが2019年に発表したオール・フォトニクス・ネットワーク構想であるIOWN(アイオン)でも光半導体はキーデバイスである。光半導体からの光を受ける側の光導波路をプリント基板などに生成しないと、オール・フォトニクス・ネットワークは普及しないと考えられている。光導波路の特性は偏波に大きく依存する。そのため偏波依存性損失(PDL)を波長可変光源や偏波コントローラ、光パワーメータなどによって評価することが重要である。 (※)実際は光も偏波という表現を使うことが多い。たとえば上記の偏波依存性損失や偏波コントローラなど。ただし光の偏波の度合い(偏光度)の測定器は偏波計ではなく「偏光計」と呼ばれている。また偏波コントローラを偏光コントローラと呼称する場合もある。英語のpolarizationを翻訳時に、光の場合は偏波と偏光が、統一されずに日本語になっている(明確な定義を筆者は見たことがない)。解説者によって不統一なので、偏波コントローラが電波ではなく光の測定器であることは初心者にはわかりにくい。偏光コントローラならば、光測定器をイメージしやすい。計測器はまったく、知っている人達だけのニッチな村世界である。

偏波依存性損失(へんぱいぞんせいそんしつ)

(polarization dependent loss) 光通信で使われる用語。光デバイス(DUT)は偏波に影響される(依存性がある)ため、光コンポーネントの重要な性能指標の1つ。入射光をすべての偏光状態にわたり変化させたときの、DUTの挿入損失の最大値と最小値の差(単位:dB)。 光導波路などの光デバイス(光コンポーネント)は偏波状態が変わると損失が変化して、出力(光パワー)が変動する。そのため、偏波を考慮した損失を定義して、デバイスの性能を規定する。英語の略記「PDL」も表記としてよく使われる。 技術書籍では「電磁波の特性である偏波は、電波は偏波、光は偏光と呼ばれる」と解説されている。ところが光分野の話である偏波依存性損失は偏光依存性損失とは呼ばれない。PDL測定に使う光測定器の名称も偏波コントローラや偏波スクランブラで、「偏光」とはいわないことが多いので、初心者は電波の測定器と区別がつきにくい(偏波アンテナなど、無線のカテゴリーの偏波関連機器もある)。光の偏波の具合(偏光度)の測定器は偏波計ではなく「偏光計(ポラリメータ、polarimeter)という。光通信測定器の偏波と偏光の使い分けは難しい。

偏波コントローラ(へんぱこんとろーら)

(polarization controller) 光測定器の1種。偏波を制御できる素子を使い、光信号を任意の偏波状態に設定できる。光源とDUT(光コンポーネント)の間に入れて、偏波依存性損失(PDL)などの測定に使用する。メーカによっては偏光コントローラという呼称もある(※)。 General Photonics (ジェネラル・フォトニクス、2019年3月よりLuna Innovations Incorporated)社は偏波依存性損失や偏波モード分散(PMD)などの、偏光を制御する製品を開発・製造している。日本で販売している商社は、これらの製品群のページタイトルを「偏波の制御:シンセサイザ/アナライザ/スタビライザ/スクランブラ/コントローラ」と表記している。偏波シンセサイザ、偏波アナライザ、偏波スクランブラ、偏波コントローラなどの各種の製品が各メーカにあるが、それぞれの定義は統一されていないので、各モデルの仕様を良く確認することが肝要である。 (※)技術書籍では「電磁波の特性である偏波は、電波は偏波、光は偏光と呼ばれる」と解説されている。ところが光通信測定器で偏波関連製品は偏波と偏光の2つの名称が使われる。一般にPDL測定に使われる偏波コントローラや偏波スクランブラなどは「偏波」、偏光の度合いを測定するのは偏波計ではなく「偏光計」(polarimeter、ポラリメータ)と呼称される。英語のpolarizationを翻訳時に、解説者によって偏波と偏光が統一されずに使われている。偏光からは光測定器がイメージしやすいが、偏波だと電波(ミリ波などの高周波無線)の製品もあり、偏波コントローラが光測定器であることは初心者にはわかりにくい。

偏波シンセサイザ(へんぱしんせさいざ)

(polarization synthesizer) キーサイト・テクノロジーの光測定器、N7786の品名。同社は光コンポーネント評価用途の光測定器に以前から注力している。N778x偏波解析/制御シリーズは、2020年頃にN778xC 偏波試験製品群(偏波アナライザ/偏波コントローラなど)というCシリーズになっている。N7786C偏波シンセサイザは、偏波コントローラと偏波アナライザの機能を持った製品である。偏波コントローラは任意の偏波状態をつくるが、その出力の偏波状態をモニタしてフィードバックし、より精度の高い安定した偏波状態にするアナライザ機能がついている。今後、光集積回路(光半導体)の実用化で開発される光導波路など、光電融合デバイスの評価には単に偏波コントローラだけではなく、偏波シンセサイザが有効である、とPRしている。 Luna Innovations(旧General Photonics)製のPolarization Synthesizer/Analyzer(偏波シンセサイザ/アナライザ)PSY-201は、「偏波を発生させたり、あらゆる状態で偏波を維持させたりできる。偏波コントローラと偏光計で構成され、アルゴリズムを使って制御している」と解説されている。基幹通信網に光通信の技術(たとえばWDMなど)が導入されていった1990年代には偏波スクランブラや偏波コントローラという製品群があったが、2023年現在は、偏波アナライザや偏波シンセサイザという名称(品名)のモデルを多く見かける。PSY-201は偏波を発生させる、という機能から偏波発生器 → 偏波シンセサイザ、というネーミングと思われる。 偏波シンセサイザに限らず、偏波アナライザ、偏波スクランブラ、偏波コントローラ、偏波スタビライザなどの各種の製品が各メーカにあるが、それぞれの定義は統一されていないので、各モデルの機能を良く確認することが肝要である。たとえば偏波シンセサイザという品名でも、光源を内蔵していたり、いなかったりするので、名称から仕様を判断することがむずかしい。 N778xCのラインアップと概要(メーカのホームページから抜粋、2023年11月) N7781C偏波アナライザ:光信号の偏波特性を解析する包括的な機能を備える。ポアンカレ球上(ストークスパラメータ)に偏波状態(SOP)を表示する。最大1MS/sの高速動作。 N7785C偏波スクランブラ:入力と出力の両方のトリガ機能を使用して、一連の偏波状態(SOP)を繰り返し切り替えることができる高速同期スクランブラ。 N7786C偏波シンセサイザ:選択された出力偏光状態のシーケンスを設定および安定化するためのモニタリングおよびフィードバック用の偏光計を内蔵した高速の偏光コントローラ。 N7788C光コンポーネントアナライザ:偏光計と偏波コントローラを内蔵。同社の波長可変光源のシングル掃引を併用し、光コンポーネントや光ファイバの偏波モード分散(PMD)/群遅延時間差(DGD)や偏波依存性損失(PDL)の測定が可能。

偏波スクランブラ(へんぱすくらんぶら)

(polarization scrambler) 光通信に使われる光コンポーネントを評価するには偏波を制御する必要がある。偏波コントローラと呼ばれる製品(光測定器の1種)は、あらゆる偏光状態を任意の偏光状態に変換する。一方、偏波スクランブラは、偏光をランダム化する。偏波状態を高速(MHz)に変化させて、その影響を平均化する。光源とDUT(光コンポーネント)の間に入れて、偏った偏波状態にしないようにするのが偏波スクランブラ。 アドバンテストが通信計測器に注力していた1990年~2000年代には、光通信だけでなく光デバイス試験システムもラインアップしていた。偏波依存性損失(PDL)の測定用にQ8163偏波スクランブラ(1995年発売)などがあった。Q8163は同社独自の偏波可変方式を使い、偏波制御を行っていた(同社は2003年頃に光通信測定器から撤退したので、現在は生産中止)。アンリツや安藤電気ではなくアドバンテストやHP(現キーサイト・テクノロジー)の偏波関連の中古計測器がWeb上(ECサイト)に掲載されている。アドバンテストやHPは光部品評価に注力したが、アンリツや安藤電気(現横河計測)はOTDRなどの光通信用途のラインアップを継続してつくり続けている。アンリツと安藤電気は光ファイバ以外の光コンポーネントの評価測定器をほとんどつくっていない(光ファイバ用では波長分散の測定器などをつくった)。 PDL測定には偏波コントローラを使う場合もあり、メーカによって製品や名称が異なる。キーサイト・テクノロジーの偏波スクランブラN7785Cは「入力と出力の両方のトリガ機能を使用して、一連の偏波状態(SOP)を繰り返し切り替えることができる高速同期スクランブラ」と説明されていて、PDL測定には別モデル(N7786C 偏波シンセサイザやN7788C 光コンポーネントアナライザ)を使用する旨が解説されている。 偏波スクランブラだけでなく、偏波シンセサイザ、偏波アナライザ、偏波コントローラ、偏波スタビライザなどの各種の製品が各メーカにあるが、それぞれの定義は統一されていないので、各モデルの仕様を良く確認することが肝要である。

ホトマル(ほとまる)

(photomultiplier tube)光電子増倍管の通称。英語の始めの文字(フォトマルチプライヤ)の頭を取って「ホトマル」と呼称する(フォトマルでないのは、スマートフォンがスマホと略されるのに似ている)。光電子増倍管はPMTと略記されることもある。高感度な光センサとして現在も活躍する真空管の1種。 岐阜県の神岡鉱山の地下にあるスーパーカミオカンデには、約1万個のホトマルが設置されている。素粒子の1つであるニュートリノの振る舞いを捉えたことで、小柴昌俊氏などがノーベル物理学賞を受賞した。微弱なニュートリノを検知する高感度なセンサがノーベル賞につながった。 参考用語:フォトダイオード 計測器情報:フォトダイオードが品名に付く製品の例

PON(ぽん)

(Passive Optical Network) NTTが2000年頃に提唱したFTTH(Fiber To The Home、家まで光ファイバを届かせる)を実現する方式(通信規格)の1つ。NTTが考案した。光信号の分岐・合流によって、1本の光ファイバで複数の加入者に光回線サービスを提供する。次の3つで構成される。OLT(Optical Line Terminal):通信事業者の局側に設置された終端装置。光信号の送受信を行う。SPL(光スプリッタ):光信号を合分波するために設置された機器。ONU(Optical Nertwork Unit):加入者(家庭の個人などの利用者)側の光回線終端装置。光信号と電気信号の変換を行う。インターネットを利用した画像検索、対戦型ゲームなど大容量の高速通信の普及によってアクセス網は光ファイバの敷設が進んだ。NTTやソフトバンクの光通信サービス(フレッツ光など)のユーザが増えたので、ネット検索ではONUや光モデムということばが数多くでてくる。

マルチモード(まるちもーど)

光ファイバの種類の1つ。主にLANなどの中短距離の高速伝送に利用される。材料としてプラスチックを使っている場合が多く、安価で折り曲げにも強く加工しやすい。光ファイバは伝播するモードの数によってシングルモードとマルチモードの2つがある。 計測器情報:マルチモードの製品例

横河メータ&インスツルメンツ(よこがわめーたあんどいんすつるめんつ)

(Yokogwa Meter&Instruments) 2005年から2017年に存在した、横河電機の計測機器関連の子会社。横河電機はグループ会社を英字の3文字(大文字)で略記する慣習があり、グループ内ではその略記が流通している(あくまで社内用語)。横河メータ&インスツルメンツはYMIと呼称されていた。余談だが、北辰電機を吸収する以前の横河電機は横河電機製作所でYEW(Yokogawa Electric Works)と製品に印字していたが、横河電機になってからはYHQ(Yokogawa Head Quarters、横河ヘッドクオータ)と呼ばれた。現在でもYJP(横河ソリューションサービス株式会社)、YRL(横河レンタ・リース株式会社)などの略記がある。 横河電機は計測と制御の会社で、電気計測器以外に工業計器(計装の機器)を数多くつくっている(横河には工業計器の記録計としてのデータロガーと、電気計測器の記録計であるメモリレコーダの2種類があり、前者は横河電機が、後者は子会社の横河計測がつくっている)。それらの機器のおおまかな変遷を述べる。 電気工事、保守点検で使う絶縁抵抗計(メガー)などのハンドヘルドのモデルや、PA(プロセスオートメーション)、FA(ファクトリーオートメーション)などの計装用途のプロセスキャリブレータなどを、横河電機では現場測定器という。現場測定器と指示計器(アナログのメータ式の電圧計、電流計、電力計など)は1995年に子会社の横河インスツルメンツ株式会社(1988年設立)に移管された。1996年には、横河エレクトロニクス株式会社から信号変換器(JUXTA)が移管され、横河インスツルメンツは横河エムアンドシー株式会社(YMC)に会社名を変更。1997年には横河電機から温調計などの制御機器が移管される。1990年代は、横河ブランドの計測・制御関連機器の会社は横河電機のT&M事業部(オシロスコープやデジタルパワーメータなどの電気計測器)と横河エムアンドシー(現場測定器)、横河エレクトロニクスの3社だった。 2001年に指示計器をYMCから横河電機に移管、2004年に信号変換器や温調計などの制御機器も横河電機に移管(指示計器と制御機器を親会社に戻した)。ところが、2005年に横河電機からYMCに指示計器がまた移管され、会社名を横河メータ&インスツルメンツ(YMI)に変更(社名のメータとは指示計器のことである)。 2010年に横河電機は電気計測器の事業をYMIに移管。波形測定器(オシロスコープ)、電力測定器(パワーアナライザなど)、圧力測定器(マノメータ)、光測定器(旧安藤電気)などがYMIに統合され、横河ブランドの計測器は1社体制が確立した(ただし前述のように、計装のデータレコーダは、横河電機が温調計や信号変換器などといっしょにつくっているので、「横河のDAQ」は横河電機と子会社の2社がつくる全く異なる設計思想の2系統の製品群があり、両者はユーザ層が異なる)。 2017年にYMIは横河計測株式会社に社名変更し、親会社との間で移管し合ったメータ事業(携帯用指示計器)を2020年に生産中止している。つまりYMIの社名の元になった「メータ」事業をやめ、社名からメータを取り除き、「唯一の横河の計測器の会社である」と表明する会社名となった。 1980年代から2010年代にかけて複数の国内大手計測器メーカは、子会社化と親会社への吸収を行っている(岩通計測など)。他社への売却(他社からの買収)や2社の合併も行われた(安藤電気や目黒電波測器など)。国産計測器メーカのM&Aは海外に比べると少なく、同じような製品群をつくる中堅企業が多く残る。1970年代までの高度経済成長期に、産業のマザーツールとして最先端だった電気計測器は、今世紀には最先端ではなくなった感がある。計測器は必ず必要で無くなることは無いが、ハードウェアとしての計測器の国内の販売額は減っている。EVなど、電動化で活況な自動車市場向けでも、計測器メーカのハードウェア製品の売上は伸びていない。今後計測器メーカの淘汰がさらに進むかは不透明である。 2021年7月にアンリツは高砂製作所を子会社化すると発表した。高砂製作所はNECが大株主の計測用電源メーカで、1950年設立の老舗である。自動車会社などに電池の評価システムを納品している実績がある。アンリツは中期経営計画「GLP2023」で「EVおよび電池測定」を重点開拓分野の一つに掲げた。2022年1月には、NECが保有する高砂製作所の株の取得を完了している。アンリツと高砂製作所の製品カテゴリ―はほぼ重複しないので、この子会社化は横河電機が安藤電気を吸収したケースに似ている。

横浜画像通信テクノステーション(よこはまがぞうつうしんてくのすてーしょん)

正式な会社名は「株式会社横浜画像通信テクノステーション」(略記:YTSC)。住所は神奈川県横浜市神奈川区新浦島町1-1-32 ニューステージ横浜1階。品質マネジメントシステムISO 9002の認証をJSA(日本規格協会)で取得していた(2001年現在)。「高度画像通信の研究開発を支援する」として1994年頃に設立した。 計測器レンタルとして通信計測器に特化した品ぞろえを行った(アンリツからの出向者など、人的な支援があった)。1990年頃に普及したISDNに対応したアドバンテストのD5111R、D5112AなどのISDNプロトコルアナライザなども揃えていた。1990年代から2000年代にかけては携帯電話のデジタル化や光海底ケーブルの新設など、通信インフラの拡充があり、高額な通信計測器のレンタルは大きな売上が見込めるビジネスだった。 会社は2006年9月30日に解散した様子で、いまとなっては概要不明である。毎年、総務省が発行する通信白書(「情報通信に関する現状報告」、略記:情報通信白書)の平成8年版には「通信・放送機構の出資により設立された(株)横浜画像通信テクノステーションは、NHKと共同で平成7年にMPEG-2確認実験を行い、MPEG国際標準化会合へ寄与文書を提出した」旨の記述がある(平成6年版の通信白書にも横浜画像通信テクノステーションのMPEGに関する記述がある)。また、NICT(国立研究開発法人 情報通信研究機構)の決算書類には「平成17年度までは横浜画像通信テクノステーションを連結対象としていた」旨の記述がある。同社は単に「アンリツがつくった計測器レンタル会社」という訳ではないようである。 同社の設立背景がどうだったかはさておき、1995年頃の同社は「アンリツからの人的支援があり、アンリツを中心とした通信計測器をラインアップする」、「通信計測器に特化したレンタル会社」だったのは事実である。約10年間、通信計測器専用レンタル会社として存在し、消えた、(いまとなっては)幻の計測器レンタル会社である。

LiDAR(らいだー)

(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging) 日本語に翻訳すると「光検出と測距」、または「レーザ画像検出と測距」(「光による検知と測離」という解説が多い)。光を使ったリモートセンシング技術の一つ。近赤外光や可視光、紫外線を使って対象物に光を照射し、その反射光を光センサでとらえ距離を測定する。自動運転での導入が有望で、実用化が進んでいる。 日本メーカの製品開発の一例(2023年現在)。 京セラ(LiDARと画像センサを一体化)、小糸製作所(ヘッドランプ内蔵型の小型LiDAR)、コニカミノルタ(光学技術をLiDAR開発に応用)、東芝(高解像度の長距離測定技術を開発)、デンソー(トヨタの車種にLiDARを供給)

リターンロスメータ(りたーんろすめーた)

光のリターンロスを測定する機器。電気ではリターンロス専用測定器がないので、光を省略して呼ばれることが多い。

レイヤ1(れいやわん)

通信機能を階層構造に分割した「OSI(Open Systems Interconnection)参照モデル」は第1階層(物理層)〜第7階層(アプリケーション層)の7階層で規定される。第1階層をレイヤ1(ワン)と呼ぶ。「レイヤ1計測器」はケーブルテスタ、OTDR、IDテスタなどで、通信線路(銅線や光ファイバ)の接続状態や物理特性(導通、損失、反射などの物理的な数値)を測定する。第2階層(データリンク層)・第3階層(ネットワーク層)は「プロトコルアナライザ(プロアナ)」、「オンラインモニタ」で評価される。計測器の品名からはレイヤ1テスタかプロアナかは判別しずらい例も多い。たとえば「ケーブルテスタ」という名称で、プロアナの機能があるモデルもある。計測器は品名(名称)からは機種群や機能が特定できず、他社の同等品を探し当てることが素人には難しい。ユーザの仕様に合った計測器の機種を選定する作業は、広範な計測器の知識がある専門職の仕事である。

レーザー(れーざー)

(laser) 「light amplification by stimulated emission of radiation」の頭字語(とうじご、acronym、アクロニム)。直訳すると「誘導放出による光増幅放射」。レーザー光は自然の光ではなくレーザー発振装置によって作られる。一般的な光(太陽光などの自然光や、蛍光灯などの人工光)は多くの波長(色)を含んでいるが、レーザーは特定の1つの波長を増幅する(単色)。指向性と収束性に優れ、高いコヒーレンス(可干渉性)があるため、様々な用途に応用されている。 赤い光が出るレーザーポインターなどが良く知られているように、「レーザー」はすでに一般的な日本語となっている。可視光だけでなく、それより短波長の紫外線、X線、長波長の赤外線のような光を出すレーザー装置もある。ミリ波より長波長のレーザーはメーザーと呼ばれる。 代表的な用途として、出力の大きいものは金属などを切断する加工装置になる。レーザー光が人の目に照射すると危険な場合があり、「危険」と書かれた黄色い警告ラベルが貼られている。レーダーのような探査や、望遠鏡にも使われる。公共の基幹通信網である光ファイバ通信システムにも使われている。つまり、高出力の加工装置から、通信用まであり、一口にレーザーといっても使い方によって市場がまったく異なる。 計測器としては、光通信測定器の光源の中に、レーザー光源がある。レーザー距離計はレーザーを使った距離の測定器だが、ゴルフ用に距離を知るためのレーザー距離計も販売されている(こちらは計測器というよりゴルフ関連商品である)。 日本語の表記は「レーザー」と「レーザ」の2つがあり、各企業や団体によってどちらかが使われている。外来語のカタカナ表記の指針(文部省)に従えば、「レーザ」が妥当だが、「レーザ○○」ではなく「レーザー○○」という表記が一般的に多く使われている(以下の参考用語など)。 例: ・一般社団法人 レーザー学会:(LSJ:The Laser Society of Japan) 1973年設立。「レーザ」でなく「レーザー」である。毎年4月に開催されるOPIE (OPTICS PHOTONICS International Exhibition)の構成展示会「レーザーEXPO」を主催。 ・レーザ協会:(The Japan Society of Laser Technology) レーザ加工装置の普及のために1972年設立。こちらは「レーザー」ではなく「レーザ」。展示会は、Photonix(フォトニックス、光・レーザー技術展、主催:RX Japan株)、InterOpto※(インターオプト、光とレーザーの科学技術フェア、主催:オプトロニクス社)に協賛。 ※ 光測定器は、1980年代にはInterOptoに多くの計測器メーカが出展していたので、年配のレーザー関連技術者には馴染みのある展示会である。オプトロニクス社が1981年に創刊した月刊OPTRONICSは、多くの光(レーザー)関係の技術者に購読されている。 ・日本鍛圧機械工業会:1948年設立。レーザ加工機の規格を策定。「レーザー」でなく「レーザ」。レーザ加工機なので、レーザ協会と表記を合わせたと推測。 このように学会とレーザ加工機の協会で表記が異なっている。メーカ各社の表記も統一されていない。筆者は「レーザ」より「レーザー」の方がやや多いと感じる。

レーザーダイオード(れーざーだいおーど)

(laser diode) ダイオード(半導体)によってレーザー(Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation、誘導放出による光の増幅)の光を出すので、日本語では「半導体レーザー」。略記はLD。電流に比例したレーザー光が出る、光素子。電気を光に変換するのでE/Oコンバータとして使われる。波長や位相の性質が全く同じ光が取り出せるため、干渉性が高い(コヒーレント)光である。レーザーやLDなどの発光素子と、受光素子であるPD(フォトダイオード)によって、基幹通信網の高速・大容量化(光ファイバ通信)が実現された。 計測器としては、光測定器(光通信測定器)の安定化光源に、LD光源とLED光源がある。LD光源はLED光源に比べて高額だが出力は大きいという特徴があり、両者は用途によって使い分けられる。波長可変光源はチューナブルレーザー光源などのLDを使った計測器が2000年代までは各社(キーサイト・テクノロジー、santec、安藤電気、アンリツなど)がつくっていたが、現在はライアップが減っている。 LDと書くと、オーディオ・映像機器のLaserDisc(レーザー・ディスク)の略記でもある。直径30cmの光ディスクに両面で最大2時間の映像を記録できるので、1980年代にはオーディオメーカのパイオニアのLDプレーヤは一世を風靡した(個人宅での映画鑑賞に最適だった)。DVDの普及により現在はLDもLDプレーヤも過去のものとなった。記録媒体の進化によるメディアの変遷は早く、特にオーディオの世界は生産中止になった古い規格による資産が個人宅に山のように眠っている(DAT、ベータ、VHS、MDなどなど)。 参考記事:「光スペクトラムアナライザの基礎と概要 (第1回)」光ファイバ通信システムの構成図がある。 計測器情報:品名に「レーザーダイオード」が付く製品の例

レシーバ(れしーば)

(receiver)有線・無線通信で受信機や受信部品のこと。受信データはRx( Received data 小文字のxはデータの意味)と略記される。レシーバ(受信機)をRxと記述している例もある。