計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
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Bluetoothアナライザ(ぶるーとぅーすあならいざ)

(bluetooth analyzer) Bluetoothは無線の通信規格のため、無線(RF)の測定器と、プロトコルの測定器の2種類がある。代表的なモデルを紹介すると以下。 1. RF関連 アンリツ ・MT8852B Bluetooth テストセット ・MT8870A ユニバーサルワイヤレステストセット 2. プロトコル関係 テレダイン・レクロイ ・ComProbe Sodera LE Wideband Bluetooth Low Energy Protocol Analyzer ・ComProbe Sodera Wideband Bluetooth Protocol Analyzer ただし国内販売の代理店は、オシロスコープなどを販売するテレダイン・ジャパンではなく、コーンズテクノロジー株式会社が取り扱っている。 ELLISYS(日本総代理店 ガイロジック株式会社) BEX400-STD-EDR Bluetoothエクスプローラ400プロトコルアナライザなど。 参考情報:商流のお問合せの事例

ブルートゥースローエナジー(ぶるーとぅーすろーえなじー)

(Bluetooth Low Energy)ボタン電池程度の低電力で動作する無線通信規格。小型センサやウエアラブル端末で使われる。 IoTに活用できる技術として注目されている。

ベクトルシグナルアナライザ(べくとるしぐなるあならいざ)

(Vector Signal Analyzer)キーサイト・テクノロジーの89600シリーズの名称。略記:VSA。デジタル無線などで使われるベクトル変調信号の解析を主眼にした測定器。PCに接続して使用する。各種の解析ソフトウェアがオプションで用意されている。スペクトラムアナライザが変調解析機能を搭載したシグナルアナライザになる以前は、デジタル無線に使われる変調方式の解析に使われた。現在は製造中止。略してシグナルアナライザ(変調解析ができる測定器)とも言われたが、現在はシグナルアナライザというと最近のスペクトラムアナライザの名称である。

ベクトル信号発生器(べくとるしんごうはっせいき)

(vector signal generator) 信号発生器の分類方法の1つに、アナログ信号発生器とデジタル信号発生器があり、後者をベクトル信号発生器と呼称する。無線通信で使われるデジタル変調方式に対応した高周波の信号発生器。 国産のアンリツは無線通信計測器の世界的チップベンダで、2024年4月現在の信号発生器のラインアップは以下の3モデルである。 ・アナログ信号発生器 MG3740A(100kHz~6GHz) ・ベクトル信号発生器 MG3710E(100kHz~6GHz) ・RF/マイクロ波信号発生器 MG362x1A(9kHz~70GHz) まだアナログの無線通信が主流だった1980年頃の同社の信号発生器の品名は「標準信号発生器」だったと筆者は記憶しているが、現在ではデジタル無線通信用途のモデルの名称は「ベクトル信号発生器」であることがわかる。 キーサイト・テクノロジーは汎用のファンクションジェネレータ(Trueform)から任意波形発生器、パルス発生器まで、低周波から高周波のほぼすべての信号源をラインアップする老舗で、計測器メーカの中で信号発生器のラインアップが一番豊富である。無線通信用途のモデルの品名は、「アナログ信号発生器」と「ベクトル信号発生器」に統一されている(2024年4月現在の同社ホームページより)。 アンリツ、キーサイト・テクノロジーと並ぶ無線通信計測器3大メーカの1社、ローデ・シュワルツの信号発生器は9分類されているが、主要なタイトルは以下である(2024年4月、同社ホームページ)。 ・アナログ信号発生器(SMA100B RF/マイクロ波信号発生器など) ・ベクトル信号発生器(SMBV100B ベクトル信号発生器など) ・ベースバンド信号発生器 ・放送信号発生器 同社のアナログとデジタルの信号発生器の品名の名称も前2社と全く同じである。 1μHz(モデルAFG1002/1062)~20GHz(AWG7001B)と、低周波から高周波まで、汎用のファンクションジェネレータから無線通信用途の任意波形発生器まで、FGとAWG(両方の機能があるAFG)を広くラインアップするテクトロニクスは、通信・高周波(ワイヤレス)用途の信号発生器として次の2種類があると解説している(同社ホームページ、2024年現在)。 ・RF signal generator(日本語訳:RF信号発生機):ワイヤレス・アプリケーションに使用され、AM、FM、PMなどのアナログ変調も提供する信号発生器。 ・RF vector signal generator(日本語訳:RFベクトル信号発生器):デジタル通信アプリケーションのRF キャリア上でアナログとベクトルの両方の変調をサポートする信号発生器。 上記を筆者なりに説明すると、「RF信号発生器とは、標準信号発生器などの従来からの高周波(無線)の信号源で、アナログ変調(AM変調、FM変調、PM変調)機能のあるモデルも含む」。RF(Radio Frequency)とはMHz(~GHz)の無線通信に使われる周波数を指す。「RFベクトル信号発生器とは、アナログ変調だけでなく、現在の携帯電話などの移動体通信で使われているデジタル方式の無線に対応した、ASKやFSK、PSKなどのデジタル変調の信号も出力できる信号発生器」。つまり、ベクトル信号発生器とはデジタル変調機能があるモデルのこと、といっている。同社のTSG4100Aシリーズの品名は「ベクトル信号発生器」で、特長の1番目は「アナログおよびベクトル/デジタル信号生成機能」とある。(同社ホームぺージ)。なので、品名はRFベクトル信号発生器ではなく、ベクトル信号発生器となっている。 このように、主要な大手計測器メーカの無線通信向け信号発生器で、現在流行りのデジタルに対応したモデルは「ベクトル信号発生器」という名称になっている(驚くべきことだが、品名が統一されている)。1990年代にデジタル方式が登場・普及し始めたときはI/Q変調信号発生器やI/Qジェネレータという、I/Qという表記が多かったと筆者は記憶しているが、現在は信号発生器の名称としてはI/Qは過去のものになったようである。同様に、標準信号発生器という名称もほとんど見かけなくなった(標準信号発生器とは、高精度であることを「標準」という表記で表す、無線通信用途の信号発生器の代表的な名称・品名だった)。通信計測器は時代とともにある専用器が多く、信号発生器のような基本測定器でも、品名は10年もすると変わってしまい(流行がある)、オシロスコープやマルチメータのような往年の長く続く名称・品名ではない。 直交座標でベクトル表示をするときの2成分をI(あい)、Q(きゅう)と呼ぶ。I:In-Phase(同相)、Q:Quadrature-Phase(直交位相)。つまり、I/Qと「ベクトル」は同じことを意味している。表記はメーカによってI/QとIQの2通りがあった。同じメーカでもモデルや技術資料によって、ベクトル信号発生器やI/Q変調信号発生器、IQ信号発生器、などの複数の表記や品名が2000年代まではあったと筆者は記憶している。 計測器の品名には使われなくなったが、I/Q信号やI/Q変調ということばは、デジタル無線(デジタル変調)の基礎なので、いまでも良く使われる用語である。

変調(へんちょう)

(Modulation) 伝達したい情報(映像、音声、データ等の電気信号・変調信号)に応じて、搬送波の振幅・周波数あるいは位相を変化させることを「変調」という。参照用語:復調

変調指数(へんちょうしすう)

(Modulation index) FM変調(周波数変調)において、変調信号の周波数と周波数偏移(搬送波の周波数が無変調時から変調信号によって変化した変化分)との比。変調信号の周波数が1kHzで周波数偏移が5kHzなら変調指数は5となる。

変調度(へんちょうど)

(Degree of Modulation) 振幅変調において、搬送波の振幅に対する変調信号の振幅の比。変調度mの値は0~1の間であるが、普通は100を乗じてパーセントで表す。100%を超えるとき過変調という。参考用語:AM変調

変調歪み(へんちょうひずみ)

(Modulated distortion) 振幅変調(AM変調)をかけたときに何らかの原因で変調信号波の高調波が発生することがある。これを変調歪みといい、変調信号波の高調波を第2側波帯・第3側波帯・・・・と呼び、第1側波帯との電圧比から「変調歪み率」を測定できる。第1側波帯と第2側波帯のレベル差を-ΔdB [dB]とし、この時の歪み率(D)を%表示にすると、下式のようになる。参考用語:側波帯

偏波(へんぱ)

(polarization) 電磁波や光は進行方向に垂直な面内で、電界と磁界が時間的・空間的に規則的な振動をする。振動の軌跡には偏りがあり、この状態を電波は偏波、光は偏光と呼ぶ(※)。偏波とは電波の空間に対する向きを表し、直線偏波と円偏波の2つがある。電界が常に1つの平面内に存在するのが直線偏波、電界が進行方向に向かって回転する場合を円偏波と呼ぶ。 テレビの電波を良好に受信するには受信したい中継局の電界の振動方向(つまり偏波状態)に合わせてアンテナを設置しないといけない。地上波デジタル放送(地デジ)などは一般には水平偏波が多いが、地域によって違う場合がある。地デジやFM放送は直線偏波だが、衛星放送は円偏波。TVやFMラジオなどのVHF、UHFの電波の受信は八木・宇田アンテナが使われることが多い。このアンテナはエレメントの向きが偏波面からずれると感度が低下するので、エレメントの向きを放送波の偏波面に合わせることが重要。電気工事の作業者の常識である。 シングルモードファイバは、その名の通り1つのモードだけを伝搬しているが、実際には直交する2つの偏光モードが伝搬する。光ファイバのコアは理想的には真円だが、側面からの外圧などにより真円ではなくなり、僅かな複屈折が発生する。この影響で直交する2つの偏光モードの伝搬速度に差が生まれ、信号波形が劣化する。この現象を偏波モード分散(PMD:Polarization Mode Dispersion)と呼び、高速光通信(10Gb/s以上)では問題となる。電磁波の1種である光が偏波なので起きる現象である。 PMD以外に光ファイバの重要なもう1つの特性に「波長分散」がある。光は波長が違うと、光ファイバの中を伝搬する速度が違うため、伝搬時間の差(遅延)が発生する。光通信用の光源の波長にはわずかな幅があるため、単一の光パルスが光ファイバを伝搬していくと、波長分散によって、時間と共にパルス幅が広がっていく。この現象を波長分散と呼ぶ。偏波モード分散と波長分散は光ファイバ通信の重要な評価項目である。 電気を使わずに光で処理を行う光集積回路(光半導体)が、インテルなどの大手デバイスメーカで研究されている(シリコンフォトニクス)。NTTが2019年に発表したオール・フォトニクス・ネットワーク構想であるIOWN(アイオン)でも光半導体はキーデバイスである。光半導体からの光を受ける側の光導波路をプリント基板などに生成しないと、オール・フォトニクス・ネットワークは普及しないと考えられている。光導波路の特性は偏波に大きく依存する。そのため偏波依存性損失(PDL)を波長可変光源や偏波コントローラ、光パワーメータなどによって評価することが重要である。 (※)実際は光も偏波という表現を使うことが多い。たとえば上記の偏波依存性損失や偏波コントローラなど。ただし光の偏波の度合い(偏光度)の測定器は偏波計ではなく「偏光計」と呼ばれている。また偏波コントローラを偏光コントローラと呼称する場合もある。英語のpolarizationを翻訳時に、光の場合は偏波と偏光が、統一されずに日本語になっている(明確な定義を筆者は見たことがない)。解説者によって不統一なので、偏波コントローラが電波ではなく光の測定器であることは初心者にはわかりにくい。偏光コントローラならば、光測定器をイメージしやすい。計測器はまったく、知っている人達だけのニッチな村世界である。

PON(ぽん)

(Passive Optical Network) NTTが2000年頃に提唱したFTTH(Fiber To The Home、家まで光ファイバを届かせる)を実現する方式(通信規格)の1つ。NTTが考案した。光信号の分岐・合流によって、1本の光ファイバで複数の加入者に光回線サービスを提供する。次の3つで構成される。OLT(Optical Line Terminal):通信事業者の局側に設置された終端装置。光信号の送受信を行う。SPL(光スプリッタ):光信号を合分波するために設置された機器。ONU(Optical Nertwork Unit):加入者(家庭の個人などの利用者)側の光回線終端装置。光信号と電気信号の変換を行う。インターネットを利用した画像検索、対戦型ゲームなど大容量の高速通信の普及によってアクセス網は光ファイバの敷設が進んだ。NTTやソフトバンクの光通信サービス(フレッツ光など)のユーザが増えたので、ネット検索ではONUや光モデムということばが数多くでてくる。

マイクロウェーブ(まいくろうえーぶ)

(Microwave)300MHz~30GHzの周波数の電波をマイクロ波やマイクロウェーブと呼んでいる。現在の携帯電話で利用されている周波数である。本用語集の「マイクロ波」の項目を参照されたい。無線通信関連企業には「マイクロウェーブ」を会社名に使う企業が多くある。

マイクロストリップライン(まいくろすとりっぷらいん)

(Microstripline)高周波信号をプリント基板上で伝送するために、部品実装面側に線状の信号パターンを作成し、裏側のグランド導体との間で電磁界を形成することで、同軸ケーブルと同様の効果をだすもの。ストリップラインとはプリント基板内に形成する信号経路のこと。

マイクロウェーブ展(まうくろうぇーぶてん)

(Microwave Exhibition) 電子情報通信学会のAPMC国内委員会が主催する、マイクロ波技術関連イベントの展示会を指す。正式にはMicrowave Workshop&Exhibitionで、略記のMWEという記述を多く見かける。学会が開催するワークショップと併設する展示があり、毎年11月末にパシフィコ横浜を会場として展示会は開催される。RFに関係する計測器メーカはほとんど出展する。 一般法人などの業界団体ではなく学会が主催していることが特長。無線通信の新しい技術などが展示される(たとえば2018年には自動車に無線給電する展示があった)。コロナ禍で2020年~2022年はオンライン開催となった。2023年にはCeyear社(中国山東省青島)やSiglent Technologies(シグレント)などの中華系計測器メーカがネットワークアナライザなどの高周波のモデルを出展している。EMCアンテナやシールドボックス(電波暗箱)などの計測器周辺機器(計測用途で使われる機材)や導波管、高周波プローバなどの部品を、国内、海外メーカが出展している。 展示会の出展品目は(展示会の案内によると) ①材料・基板、➁半導体素子、➂通信用モジュール、部品、④電子部品、 ➄測定装置・加工装置(オシロスコープ、スペクトラムアナライザ、デジタル信号発生器、ネットワークアナライザ、RFパワーメータ、テストフィクスチャ、自動測定システムなど) ⑥ソフトウェア・シミュレータ(高周波の電磁界解析、高周波回路シミュレータ、フェージングシミュレータ、ノイズ解析など) ➆エンジニアリング・製造委託(フィルタ・アンテナ等各種マイクロ波回路設計・製造、材料評価、EMC評価 など)

巻き取り(まきとり)

NTTの用語。携帯電話などの通信サービスで、古いサービスの契約者に新しいサービスに契約変更してもらうこと。たとえばアナログの携帯電話(2G)からデジタル(3G)に契約者の移行を促進して、古いサービスを終了させるなど。800MHz帯域のサービスをやめて1.5GHz帯で新しいサービスを始めるときは、「800Mを1.5Gで巻き取る」という言い方をする。 無線の通信計測器メーカの営業マンは計測器レンタル会社の購買部門に訪問して「モデル〇〇は巻き取り需要があります」という情報提供を行う。このことばの意味は「モデル〇〇の品揃え(在庫状況)に注意してください。巻き取り需要でこのモデルの急な引合がきても在庫が無いと対応できなくて、他のレンタル会社(競合)に受注されてしまいますよ。モデル〇〇の発注を(他社に先駆けて)検討してください。当社は御社にだけ情報提供していないので、納期は発注順ですよ。」である。無線通信計測器にはこのような巻き取り需要がある。 NTTの用語ではあるが、無線通信の関係者は良く知っているため、一般的なエレキの技術誌でも使われている。たとえば「地上波放送は5Gに巻き取られる」という趣旨のタイトルの記事が2022年にある。総務省が4Kや8Kの次に次世代地デジ放送の技術を検討中だが、8Kは事実上は失敗していて、このままだと放送は通信の5Gに取って代わられてしまいそうだ、という内容の記事を、巻き取るという用語を使ったタイトルにしている。 無線通信の分野でNTTが使っている方言である「巻き取る」を記事に使う場合は脚注をつけて説明するのが望ましいと思える。無線通信の分野では、上記のように計測器メーカが使うので当用語集では説明しているが、「巻き取り」はニッチな方言で、計測器の技術者が全員知るべき基礎用語ではない。

mova(むーば)

1991年にNTTドコモが開始したPDCサービスと、それに対応する端末(携帯電話機)の名称。発売時の機種は4モデルあり、おのおの特徴的な形状をしていた。その後のガラケーの主流になる折り畳み式は日本電気が製造した。ほかに富士通と三菱電機、松下通信工業(後のパナソニック モバイルコミュニケーションズ)がつくった。 当時はアナログの無線方式の2Gの時代で、世界中の無線通信の方式が統一されていなかった。movaは現在のスマホにつながる小型の携帯電話機の走りである。3G時代の2001年にNTTドコモはFOMA(フォーマ)を発売するなど、同社(キャリア)のサービス(携帯電話などの機器を含む)の名称は英字4文字が続いた。 1993年3月に第2世代デジタル方式サービスが開始され、対応する携帯電話を「デジタル・ムーバ」と呼んだ。アナログ方式サービスは1999年3月まで続き(つまり従来のmovaは1999年3月まで継続し)、2001年10月に第3世代デジタル方式の新サービス、FOMAに対応する携帯電話が発売されている。 NTTドコモのサイトで、「歴史展示スクエア」の「ムーバ(アナログ)」と題したページには、「mova」の名称は英語の“movable(動かせる、移動する)“の 最初の4文字m・o・v・aから採ったもので、超小型携帯電話の大きな特長である携帯しやすい、すなわち“移動しやすい“を表現したものです、とある。また、4機種 「ムーバN、ムーバD、ムーバP、ムーバF」と表記された携帯電話の画像が掲載されている。Nは日本電気(NEC)、Dは三菱電機(三菱のロゴ、ダイヤから)、Pは松下電器(パナソニック)、Fは富士通を示している。携帯電話の機種名はこのようにメーカの略称を英文字で示すことが多い。また、このページの表記で分かるように、movaとムーバの両方の表記が混在している(使い分けの基準は不明)。

無線機テスタ(むせんきてすた)

(transceiver tester、radio tester) 無線通信測定器の1種(1カテゴリー名)。アンリツのMS555が有名なので、無線機テスタというとアンリツの品名ともいえる(同社が無線測定器の代表メーカであることを伺わせる)。アナログ無線通信時代(2000年頃まで)に、無線機の総合試験機として重宝された。SG(信号発生器)にPM(RFパワーメータ、高周波パワーメータ)やSA(スペクトラムアナライザ、スペアナ)機能などを付加し、送信と受信の両方を1台で測定できる。後のデジタル無線通信時代の携帯電話評価用のワンボックステスタの源流。 国産では日本無線(JRC)の計測器部門もラインアップがあった。安藤電気はラジオコミュニケーションアナライザの品名で無線機テスタ製品があった。海外のマルコーニ(旧AEROFLEX、現在はVIAVIの傘下)製品は菊水電子工業が現在でも取り扱っている。ローデ・シュワルツはアドバンテストの外販営業部門が販売していた(この部署が独立して現在の日本法人、ローデ・シュワルツ・ジャパンとなった)。 アンリツの形名がMSであることから、同社はスペアナの1種と位置付けていたと推定されるが、その後のデジタル通信時代にはMT8801ラジオコミュニケーションアナライザがある(ワンボックステスタのテスタからTをとったと推定。また品名も無線機テスタではない)。また同時期に スペアナをベースにしたMS8608デジタル移動無線送信機テスタという製品もある。これは「送信機テスタ」というスペアナの1種で、ワンボックステスタ(T)と送信機テスタ(S)の2系統の製品でユーザニーズに応えていた。 2000年代中期には無線機テスタの種類は次の4つといわれた。1.RFコンフォーマンステストシステム、2.シグナリングテスタ+プロトコルテストシステム、3.デジタル無線機テスタ、4.サービステスタ。この分類は(現在からみれば)大変広義の解釈である。無線機テスタとはアナログ方式の無線機の総合試験機で、デジタル時代になるとワンボックステスタとよばれ上記3と4がデジタル無線の無線機テスタといえる(4は保守用途に特化した小型のモデル)。シグナリングテスタ(呼接続試験機)は現在では別カテゴリーとして確立している。2000年代は携帯電話のデジタル方式が始まった黎明期で、その当時の解説といえる。 トランシーバなどの無線機(端末)を試験するには、信号発生器からスペアナ、パワーメータなどの各種のRF基本測定器が必要で、各試験によって測定器をつなぎ変えていた。そこで、無線機の評価に必須な機能だけを合体させた総合試験機をつくり、無線機とは1回だけつなぐことで試験を効率化した。これを無線機テスタと命名したのは自然である。なので英訳したら「無線機(transceiver、トランシーバ)のtester」である。1980年代に登場し、1990年代に爆発的に普及した携帯電話(ガラケー)は送信と受信をするアナログの無線機の1種である。無線機テスタは携帯電話(端末)に必須の測定器となった。 1990年頃のアナログ無線通信時代のキーサイト・テクノロジーの無線機テスタ、8923の品名は「Test Set」である。つまり、無線機テスタ(Transceiver Tester)とは日本の計測器メーカが命名した名称で、海外メーカのモデル名の翻訳ではない、と筆者は思う。無線機テスタと同等の品名にラジオコミュニケーションアナライザ(無線通信の解析器、という意味)という名称も使われた(ローデ&シュワルツのCMU200の品名は「Universal Radio Communication Tester」だった)。その後、デジタル無線の時代になると、「すべての試験ができるように、1箱(ワンボックス)に収まった試験器」という意味のワンボックステスタが、国内・海外メーカ共通の名称になった。 アンリツMS555が有名だが、これが「無線機テスタ」の元祖(はじめて世に出た無線機テスタ)かどうかは不明である。

無線給電(むせんきゅうでん)

(wireless power supply、Wireless Power Transmission) 電力は通常、ケーブルで供給されるが、無線によってそれを行う技術のこと。小型の携帯電気機器(スマートフォンなど)ですでに実用化されている。自動車の電動化(EV車)に伴い、各種の研究(方式や使用する周波数)が行われている。たとえば共振方式ではコイルに高周波で大電力を流すことが模索されている。 別名:非接触給電、ワイヤレス給電。Wireless Power Transmissionを略してWPTと記載している文献もある。 2030年代には世界市場の規模は1兆5000億円といわれる。信号の伝送は無線化が進んだが、電力の伝送だけはケーブルによる有線通信である。そのため、メディアではパワーエレクトロニクス最後のフロンティアなどとも書かれて取り上げられている。2021年度に総務省は無線給電に使用可能な周波数帯域の拡大のために、電波法の改正を検討している。

無線LAN(むせんらん)

(wireless LAN) 無線通信によってデータの送受信をするLAN。別名、ワイヤレスLAN。Ethernet規格の一部である「IEEE 802.11b」で規定されたが、2000年代に無線LANの1種であるWi-FIが普及したため、現在ではWi-Fiは無線LANと同義。無線LANよりもWi-Fiの方が良く使われることばになった。たとえば、多くの家庭にはWi-Fiルータがあり、PCなどの情報機器と無線通信している。Wi-Fiルータは光ファイバやCATVなどの通信網でネットワーク(インターネットなど)につながっている。 LANは1980年代に銅線ケーブルを使い、建物内(限定された狭い範囲内)でネットワークを構築したのが始まり。1990年代の企業内へのOAパソコンの普及、インターネットの拡大によって、LANは企業内に広まった。その後、無線方式のLANが登場し、従来のLANは有線LANと呼ばれるようになった。従来のLANは設計開発や検証時にLANプロトコルアナライザを使用したので、LANアナライザというとプロトコルアナライザを指すことが多かったが、無線LANは無線の評価があり、無線機テスタのような「無線を使用する機器の、無線の総合評価」をする無線LANアナライザもある。そのため無線LANアナライザの範囲は広く、計測器の名称からはプロアナか無線機テスタか判別しにくい場合が多い。「無線LANテスタ」という呼称もあり、無線機テスタで無線LANに対応したモデルが各社から発売されている。LANケーブルメータ(ケーブルテスタ)は有線LANであることが名称から想像できる。 無線LANは2010年代に多くの電子機器に広がったため、無線通信測定器の雄、アンリツは「無線LANに詳しくない技術者でも使える」をコンセプトに、無線LANテスタMT8862A(品名はワイヤレスコネクティビティテストセット)を2017年3月に発売している。同社の形名でMTは無線機テスタ、ワンボックステスタを示している(2文字目のTはtesterからの命名といわれている)。つまり、MT8862Aは無線LAN用の無線機テスタである。 ハンドヘルドの無線LANテスタ、AirCheck G2はWi-Fiなどの接続試験ができるので電気工事会社で重宝されている。

無線LANアナライザ(むせんらんあならいざ)

(wireless LAN analyzer) 無線LANプロトコルアナライザの略称。LANプロトコルアナライザはLAN用のプロトコルアナライザ。有線だったLANが「IEEE 802.11」という規格で無線になった。「無線LAN」や「ワイヤレスLAN」と呼ばれる。この規格に準拠した無線LAN機器メーカの団体がWi-Fi(ワイファイ)という規格をつくった。そのため無線LANとWi-Fiは現在では同じことである。無線LANプロトコルアナライザはIEEE 802.11用のプロトコルアナライザといえる。Wi-Fiアナライザと呼んでいるメーカもある。 「プロトコル」が略されて「無線LAN(またはWi-Fi)アナライザ」という場合、スペクトラムアナライザなどのRFの測定器を指していることがあるので注意が必要。何の項目を測定するかの確認が大事である。Wi-Fiが広く一般家庭に普及したため、品名などの名称が「無線LANテスタ」と呼ばれる製品群も増えている。たとえばNetAlly(旧NETSCOUT)のAirCheck G2やアンリツのMT8862Aなどがある。

UWB(ゆーだぶりゅびー)

(Ultra Wide Band) 日本語にすると「超広帯域無線通信」だが、UWBという表現が一般的に広く使われている。数百MHz〜数GHzの広い周波数帯域を使用し、障害物による影響が少ないため、電子機器や自動車への実用化で研究が進んでいる。IEEE802.15.4aでは中心周波数:約3.5GHz〜約9.5GHzと規定されている。位置測定、レーダー、無線通信の3つの機能を合わせ持っているため、単なる無線通信方式の1つということではなく、特殊な無線応用技術といえる。2019年からスマートフォンに搭載したモデルが発売された。自動車への採用でも注目されている。