巻き取り
NTTの用語。携帯電話などの通信サービスで、古いサービスの契約者に新しいサービスに契約変更してもらうこと。たとえばアナログの携帯電話(2G)からデジタル(3G)に契約者の移行を促進して、古いサービスを終了させるなど。800MHz帯域のサービスをやめて1.5GHz帯で新しいサービスを始めるときは、「800Mを1.5Gで巻き取る」という言い方をする。
無線の通信計測器メーカの営業マンは計測器レンタル会社の購買部門に訪問して「モデル〇〇は巻き取り需要があります」という情報提供を行う。このことばの意味は「モデル〇〇の品揃え(在庫状況)に注意してください。巻き取り需要でこのモデルの急な引合がきても在庫が無いと対応できなくて、他のレンタル会社(競合)に受注されてしまいますよ。モデル〇〇の発注を(他社に先駆けて)検討してください。当社は御社にだけ情報提供していないので、納期は発注順ですよ。」である。無線通信計測器にはこのような巻き取り需要がある。
NTTの用語ではあるが、無線通信の関係者は良く知っているため、一般的なエレキの技術誌でも使われている。たとえば「地上波放送は5Gに巻き取られる」という趣旨のタイトルの記事が2022年にある。総務省が4Kや8Kの次に次世代地デジ放送の技術を検討中だが、8Kは事実上は失敗していて、このままだと放送は通信の5Gに取って代わられてしまいそうだ、という内容の記事を、巻き取るという用語を使ったタイトルにしている。
無線通信の分野でNTTが使っている方言である「巻き取る」を記事に使う場合は脚注をつけて説明するのが望ましいと思える。無線通信の分野では、上記のように計測器メーカが使うので当用語集では説明しているが、「巻き取り」はニッチな方言で、計測器の技術者が全員知るべき基礎用語ではない。