計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
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MPEG発生器(えむぺぐはっせいき)

MPEG信号を発生する機能があるMPEG測定器。

オーディオアナライザ(おーでぃおあならいざ)

オーディオ信号のひずみ率等を測定する機器。

オーディオ周波数(おーでぃおしゅうはすう)

(Audio Frequency) 人の耳が聴きとれる周波数範囲のこと。別名:可聴周波数(audible frequency) 。約20Hz~20kHz。音楽鑑賞のためのオーディオ機器はこの周波数帯域を主に扱う。そのため機種群(カテゴリー)「テレビ・オーディオ測定器」には20Hz~20kHzの信号源がある。 RC発振器はオーディオ周波数をカバーしているが、国産計測器メーカではほとんど生産終了になっている。オーディオ関連の計測器を多くラインアップしていた松下通信工業にはVP-72xxAというRC発振器のシリーズがあった(同社は解散し、計測器から撤退)。菊水電子工業はORC-11やORC-44などのRC発振器を1970年頃まで販売していた(現在は生産中止)。 無線通信に使われるRadio FrequencyをRFと略記するように、オーディオ周波数はAFと略記されることがある。

オーディオ・ビデオ測定器(おーでぃおびでおそくていき)

オーディオ用の測定器(オーディオ信号発生器、オーディオアナライザなど)と映像の測定器(映像信号発生器、波形モニタ、デジタル放送関連などのTV放送用の測定器、DATやDVDなどの音響映像機器用の測定器)を総称して、オーディオ・ビデオ測定器と呼称する。電気計測器の統計を作成しているJEMIMA(日本電気計測器工業会)は2002年までは「オーディオ・ビジュアル測定器」といっていたが、2003年から「オーディオ・ビデオ測定器」に名称変更している(2022年現在、「オーディオ・映像機器用測定器&システム」と表記している)。当サイトでは「テレビ・オーディオ測定器」というカテゴリー名(機種群名)にしている。テクトロニクスは2019年までは映像関連測定器をラインアップしていたが、その開発部門をビデオ事業部と呼称していた。映像はTVだけでなくDVDなどの音響映像もあるので、「オーディオ・映像測定器」という呼称が適切かもしれない。「オーディオ・映像機器用測定器」という呼称の書籍(電子計測器のガイドブック)もある。 映像の伝送にはMPEGなどの圧縮技術が使われるため、MPEG関連測定器も含まれる。音響(オーディオ)と映像(TVやDVDなど)の計測器の総称であるが、現在はオーディオより映像に関するモデルが多く、映像信号発生器(アストロデザインのプログラマブルビデオ信号発生器など)と波形モニタ(リーダー電子のラスタライザなど)の2種類が主流となっている。4Kや8Kに対応した計測器がリーダー電子その他から2018~2020年にかけて発売されている。 この機種群の主力は何といってもテレビ放送用の測定器なので、名称は「TV・オーディオ測定器」が適切といえる。2000年代にはオーディオ用測定器として、DVDのジッタを測定するジッタメータやタイムインターバルアナライザがあった(2004年秋に電波新聞社が刊行した電子計測器&システム[ガイドブック]には、菊水電子工業がDVDなどの光ディスクの評価用測定器を解説している)が、それらはほぼ生産中止である(2022年現在)。オーディオアナライザもメーカが整理された。 地上デジタル放送へのNHKと民放の設備投資は2001~2003年にほとんどが終わり、2011年7月までに各ユーザの受信機器(TVなど)の普及も完了した。アナログ時代にはNTSCやPALなど、世界中に多くの規格があったが、現在の日本の規格はISDB-Tになっている。

大松電気(おおまつでんき)

1954年に東京都目黒区に設立した計測器メーカ。同年、テストオシレーターLSG-100を開発。翌年開発のオーディオ発振器LAG-55は名器で、ロングランを続けたといわれる。オーディオやアマチュア無線など、当時の流行りの電子機器を評価する計測器をつくった。1965年には放送・映像分野へ、パターンジェネレータLCG-388(家庭に普及が始まったテレビの試験をする信号発生器)を開発し参入、1966年に社名をリーダー電子株式会社に変更し、現在に至る。 1990年頃のオーディオ・ビデオ測定器(当サイトではカテゴリー名「テレビ・オーディオ測定器」)はTV放送向けの映像・ビデオ関連測定器が主流で、国産のシバソクとリーダー電子が競っていた。アストロデザインはデイスプレイを評価するプログラマブルビデオ信号発生器など放送向けの映像信号発生器があった(1980年に初号器をリリース)。世界的にはテクトロニクスの映像用測定器はラインアップが充実していた。TV放送は大きなインフラ投資である地上波のデジタルへの切替(地デジ)が導入され、NHKと民放の設備導入は2001~2003年にほとんどが終わり、2011年までに各ユーザの受信機器(TVなど)の普及も完了した(2011年7月に地上波のアナログ放送が完全修了)。 2015年にシバソクは計測器をアサカに移管し、ATE(半導体テスタ)に集中した(映像関連計測器から撤退)。2019年に(世界的な投資会社であるダナハーの傘下になっていた)テクトロニクスはビデオ事業部(映像関連計測器の開発部門)を売却し、同様に映像関連計測器から撤退した。現在では映像用の信号発生器は主にアストロデザインが、信号を測定する波形モニタは主にリーダー電子が担っている。リーダー電子は2018年には、2020年東京オリンピックを見据え、4K/ 8Kの製品群(ラスタライザなど)を発表している。また、フィールド用のシグナルレベルメータ(電磁界強度計)も2019年にはリニューアルして4K/8Kに対応している(モデルLF965)。 1964年9月創刊の月刊トランジスタ技術には、大松電気のディップメータの広告が表3(裏表紙の内側ページ)にある。「LEADER TEST INSTRUMENTS」(リーダーのテスト機器)や「リーダーの測定器」という表記がある(会社名は大松電気株式会社)。1966年に大松電気はリーダー電子に社名変更しているが、それ以前から「LEADER(リーダー)」と呼称していたことが伺える。大松電気とリーダー電子の社名の由来について、同社HPには何も記載されてはいない。

可聴周波数(かちょうしゅうはすう)

(audible frequency) 人間の耳で聴きとれる周波数領域(周波数範囲)のこと。聴くことが可能な(=可聴)周波数という意味。健康な若者で、約20Hzから(14kHz~)20kHzの音が聞こえるといわれる。20Hz~20kHzを可聴周波数と呼んでいる(別名:オーディオ周波数、AF:Audio Frequency)。普通の人の会話は100Hz~400Hz。20Hz以下の低周波音を人間は感知できないが、象は15Hzの音が聞こえるらしい。またコウモリは20kHz以上の高い周波数の超音波を発して話している。犬は15Hz~50kHz、猫は60Hz~65kHzと、人とは可聴周波数域が違っている。人の耳が最も敏感な音は2kHz~4kHzで、赤ちゃんの泣き声はこの帯域。加齢に伴って高音側から聴力が低下するため、高い音(モスキート音)を若者は聞きとるが、年配者には聞こえない。年齢とともに近くが見えなくなる(老眼)ように高い音も聞こえなくなるが、本人は聞こえていないことには無自覚なことが多い。 音響機器(オーディオ製品)は可聴周波数をカバーする性能を持っているが、可聴周波数に入らない外側(範囲外)の周波数も重要である。人は可聴周波数内の音を聞いているが、それより下の周波数の振動などを(音ではない感覚で)感じることが知られている。このことは映画などの音響信号の処理に応用されている。最近、音楽に超音波が含まれていると人の心を癒す作用があることや、可聴域より高い周波数の音があると聞こえている音が心地よく感じることがわかってきた。現在のCDはデジタルの規格を作る際に20kHz以上をカットしている(アナログのレコードには上限周波数はない)。

QoS(きゅーおーえす)

(Quality of Service) 一般的には利用者に提供される「サービス品質」のことだが、特に通信(ネットワーク)の世界で使われることば。ネットワーク(通信回線網)で提供されるサービス品質として出てくることが多い。ルータや伝送装置などのネットワーク機器にはQoSが実装されている。ある特定の通信を優先して伝送させたり、帯域幅を確保するなど、そのネットワークの中で重要度(優先度)が高いパケットが確実に伝達される(届く)ようにサービス品質が規定されている。 QoSの良否を定量的に判定する尺度をQoSパラメータと呼ぶ。QoSとQoSパラメータには一定の関係があるが、その関係は単純ではない。たとえば野球選手の質(良い選手か悪い選手か)はQoSで、QoSパラメータには「打力:打率3割以上」、や「走力:6秒以内/50m」などがある。QoSパラメータのことをQoSと呼んでいる場合もある。 QoSは提供者側(プロダクト目線)のサービス品質だが、似たことばにQoE(Quality of Experience、ユーザ体感品質)がある。 テクトロニクスは、放送事業者が番組のQoS監視に使う、PQM3000型プログラムQoSモニタという計測器を2000年頃に販売していた(同社のビデオ事業部は2019年にTelestream社に売却され、PQM3000を含むテレビ・オーディオ測定器から撤退している)。

ケーブルテレビ(けーぶるてれび)

TV放送は電波(無線)で送信されるが、有線のケーブルでTV放送を送信するのが「ケーブルテレビ」。本来、地上波や衛星放送などが映りにくい(電波の受信環境が悪い)地域で映像を受信できるようにする対策だった。現在のケーブルテレビ会社はTV放送だけでなく、インターネットやスマホの契約も行う、一般的な通信事業者の仲間入りをしている。別名:CATV、と表記されることも多い。計測器情報:「ケーブルテレビ」が品名につく製品の例

コーデック(こーでっく)

(CODEC) COder/DECorder(コーダー/デコーダー)の略語。データのエンコード(符号化)とデコード(複号・復元)をする部品・装置。音声・動画を圧縮して伝送するときに使われる。アンリツや安藤電気という通信計測器メーカにコーデックアナライザなどの名称のコーデック評価用の測定器があったが、現在は生産中止である。モデム(変復調器)がモジュレーション(変調)とデモジュレーション(復調)の合成語なのに似たネーミング。参考用語:モデムテスタ

コンスタレーション(こんすたれいしょん)

(constellation) 直訳は「星座」。デジタル変調の評価をIQ座標の点で表示する手法。表示が星座のように見えることに由来する。 携帯電話がアナログからデジタルに変わると(日本では2001年に第3世代方式、3GのW-CDMAサービスが開始された)、デジタル変調による通信方式が盛んになり、この分野の計測器(ワンボックステスタ、シグナルアナライザ、信号発生器など)はIQに対応して、コンスタレーション表示をするようになった。 参考用語:I/Q信号、I/Q変調、I/Q変調信号発生器、I/Qジェネレータ、QAM

雑音発生器(ざつおんはっせいき)

(noise generatot)幅広い周波数成分を持つノイズ波形を発生する信号源。雑音指数(Noise Figure)測定などに使われる。雑音には白色雑音(ホワイトノイズ)やピンクノイズなどがあり、それらを出力する雑音発生器が用途によって使い分けられている。参考用語:雑音指数測定器、白色雑音発生器、フリッカ雑音 参考記事:ファンクションジェネレータの基礎と概要 (第1回)・・・さまざまな信号発生器・発振器を列記して概説している。

CATV(しーえーてぃーびー)

「Communnity Antenna TeleVision(コミュニティ アンテナ テレビジョン)」の略語。日本語では「ケーブルテレビ」だが、CATVと略記されることも多い。通常、TV放送は電波を家のアンテナで受信するが、無線でなく有線のケーブルでTV放送を送信するので「ケーブルテレビ」という。従来は地上波や衛星放送などが映りにくい(電波の受信環境が悪い)地域で映像を受信するための方策だった。現在ではJCOM(ジェイコム)などのケーブルテレビ会社はオリジナル番組を制作したり、地方のローカル番組を放送したり、Wi-Fiなどのサービスメニューも揃えて、メジャーな通信事業者(キャリア)の仲間入りをしている。

C/N(しーえぬ)

S/N(Signal/Noise)は変調方式によって値が違うため、放送などではC/N比(Carrier to Noise Ratio)を指標にする。

シグナルレベルメータ(しぐなるれべるめーた)

電波の強さを測定する計測器。電界強度計、電測計などの名称もあり、計測器メーカによってさまざま。新しい無線通信方式が導入されるときには、それに対応した電界強度計が発売される。アンリツなどのRF測定器メーカやリーダー電子などの映像(TV放送)測定器メーカが計測器をつくっている。

ジッタメータ(じっためーた)

レコードプレーヤの回転ムラを検査するためのワウフラッタメータが原点で、その後、テープレコーダや光ディスクドライブの生産で時間の揺らぎ(ジッタ)を測る専用測定器(検査機器)となった。現在ではほかの方法で検査されるためジッタメータはあまり使われなくなってきている。横河電機(現横河計測)には光ディスクドライブ用ジッタメータのTA120Fというモデルがあった。計測器の分類としては、時間測定器の内のエレクトリック・カウンタ(略してカウンタ)の1種だが、用途は上記のようにオーディオ・映像機器である。ジッタメータはジッタ測定器の1種ともいえるが、「ジッタ測定器」というとより意味が広くなり、カテゴリー「カウンタ」の範疇には収まらない。たとえば「アイパターン測定の機能があるオシロスコープ」はジッタ測定器といえる。

12G-SDI(じゅうにじーえすでーあい)

4Kの映像機器間を伝送するのに現在は3G-SDI(3Gビット/秒)を4チャネル(4本の同軸ケーブル)使っている。これを1本で伝送できるようにした規格。 2019/10月、この規格はまだ十分普及はしていない。4Kの伝送方式の標準が12Gになるかはまだわからない。

首都圏パナソニックFA(しゅとけんぱなそにっくえふえー)

1980年代にあった、松下通信工業株式会社の計測器の販売会社。松下(パナソニック)は計測器から撤退してしまったので(日立電子と同じように)計測器のラインアップや組織(開発部門や販売会社)の概要は不明。松下通信工業(略称:松下通工、後のパナソニックモバイルコミュニケーションズ株式会社、2022年に解散)は松下電器(現パナソニック)の関連会社で、通信機器(携帯電話や無線基地局など)を主力事業にしていたが、計測器もつくっていた。オーディオ関連測定器、ラジオやTVなどの無線通信用測定器、低周波の測定器(RC発生器、カウンタ、デジタルマルチメータ、電圧計など)をラインアップしていた。松下電器は第二次世界大戦前に(現在のトリガ掃引式以前の)強制同期式オシロスコープを販売していた計測器の老舗である。アナログオシロスコープ(VP-5260A、VP-5610A、VP-5562A 20MHzなど)や指示計器タイプのモデルもつくっていた。老舗ではあるが、2000年頃にはすでに古い時代の機種群が多く、時代にマッチした新しい計測器ではなくなっていた。松下グループの事業再編の中で、計測器は生産中止になった。 オシロスコープと映像関連測定器のラインアップが豊富なTektronixs(テクトロニクス)は、ソニーと出資比率50対50の合弁で、ソニー・テクトロニクス株式会社を設立した(1965~2002年)。1990年代まではソニー、松下という日本を代表する家電メーカが電子計測器に関わっていたが、高度経済成長を支えた計測器も1990年代以降には成長が鈍化した。2000年代には、光海底ケーブルのバブルによる光通信測定器の売上激減や、国産携帯電話メーカの衰退、ICE(マイコン開発支援装置)のフルICEからJTAGへの推移による市場規模の激減など、計測器市場に大きな変化があった。 首都圏パナソニックFAはエリア別にあった販売会社の1社だが、詳細は不明。現在の松下の計測器(形名VP-〇〇〇〇)の保守会社は「パナソニックFSエンジニアリング株式会社」になる。同社はJCSS事業者で、計測器の校正事業を行っている(2020年1月現在)。 「RC発振器VP-7201A」の取扱説明書に、連絡先として「パナソニックモバイルコニュニケーションズ株式会社の横浜市都筑区佐江戸町」が記載された冊子がある(発行年月は不明だが2003年~2022年)。表紙には「電子計測販売会社」として「パナソニックFAシステム株式会社」の全国の営業拠点が記載されている。同社の本社(品川区西五反田)には首都圏支店があり、首都圏パナソニックFAは(2003年以降に)同社の首都圏支店として統合されたと推測される。 松下通工や日立電子の計測器は、それなりに歴史がある。松下、日立ともに老舗の計測器メーカといえる。だたし、撤退してしまったので、今ではどんな機種群がラインアップされていたのか全容がわからない。両社ともアナログオシロスコープのメーカとして、岩崎通信機と競争していた(今では直流電源の豊富なラインアップで有名な菊水電子工業も、1970年頃にはアナログオシロスコープが主力製品だった)。1980年頃の理工系の学校の実験機材として、panasonic(松下通工)やhitachi(日立電子)のロゴが付いたアナログオシロスコープはめずらしくなかった。iwatsu(岩崎通信機)よりもパナソニックや日立のほが圧倒的に知名度があるに決まっている。アナログ式のリレー試験器といえば京浜電測(現デンソクテクノ)だったが、デジタル式になってからはエヌエフ回路設計ブロックがトップメーカである。計測器がアナログからデジタルに変わったとき、計測器メーカも様変わりしている。 松下通工と同じようにテレビ・オーディオ測定器(映像の計測器)が得意だった目黒電波測器は、オーナーが2度変わり、自己破産もしたが、現在は株式会社計測技術研究所の目黒電波事業部として健在である。

信号源(しんごうげん)

(signal source) 電源(power source / power supply)が電力を発生する電力発生器であるので、信号の発生器を信号源と呼称する。計測器では信号発生器や発振器などの製品名が多く使われるが、それらを総称して信号源やジェネレータと表現している。信号源やジェネレータは計測器の品名に使われることもあるが、製品の名称としては信号発生器が一番多い。RFなどの高周波の信号源の世界的なブランドであるキーサイト・テクノロジーのホームページでは、このカテゴリー(機種群)のタイトルは「信号発生器と信号源」である(2023年10月)。

ゼネレータ(ぜねれーた)

(generator) 信号発生器のことをテクトロニクスではジェネレータではなくゼネレータと表記していた。特にビデオ関連の測定器では映像信号発生器をゼネレータと呼称していた。同社はオシロスコープとビデオ(映像関連)測定器が有名だが、AWGなどの汎用的な信号発生器は積極的にゼネレータとは表現していなかったと筆者は記憶するが、2004年の同社エンジニアの技術記事に「波形発生ゼネレータ」や「エヌエフ回路設計ブロックのファンクション・ゼネレータ」という表記があるので、同社は信号発生器はすべてゼネレータだったのかもしれない(エヌエフ回路設計ブロックの品名はファンクションジェネレータなので、前述の記述は誤りである)。現在のテクトロニクスにはゼネレータという表現は無くなった(2022年)。同社以外の計測器メーカは圧倒的にジェネレータが多いので、「ゼネレータ:テクトロニクスの信号発生器の呼称。特にビデオ関連の映像信号発生器の品名に使用されていた。」という解説もできる(※)。 親会社のFortive(フォーティブ)の意向などにより、2019年にテクトロニクスはビデオ事業部をTelestream(テレストリーム)社に売却してしまった。競合である国産のシバソクもアサカに映像関連計測器を移管して撤退した(2015年)。リーダー電子は信号発生器より波形モニタ(映像信号の波形測定器、ラスタライザなど)にラインアップを集中させ、映像用の信号発生器(プログラマブルビデオ信号発生器など)はアストロデザインほぼ1社となっている(アストロデザインは波形モニタをラインアップしなくなった)。 2011年7月24日の地上波テレビ放送(地デジ、ISDB-T)のアナログからデジタルへの完全移行後は、国内のTV関連測定器の市場規模が縮小したと推測される。リーダー電子は競合のテクトロニクスが撤退したので、国内ではNo.1シェアになった。同社は海外市場でのシェアアップを推進している。世界市場の規模の推移は不明だが、テクトロニクスがオシロスコープと並ぶ2枚看板のビデオ関連測定器をやめてしまったのはもったいない、と筆者は思う。リーダー電子やアストロデザインと競合し、切磋琢磨してより良い製品をつくり続けていく意義はあったと思うが、M&Aが盛んな海外では、資本家の意向によって儲けが少ないビジネスは無くなるという、資本主義の基本原則が貫かれている。 (※)1960年頃の菊水電子工業の主力製品は電源ではなくオシロスコープだった。当時の製品カタログに「452型ファンクション・ゼネレータ」という表記がある。1964年創刊の月刊トランジスタ技術にはオシロを「オッシロ」と表記している記事がある。当時は信号発生器はジェネレータでなくゼネレータと表示することも多かったのかもしれないが、資料が少ないので推測の域をでない。 余談だが菊水電子工業は1970年代からDC電源のラインアップを増やし、現在は「菊水とえば計測用電源」であるが、1960年頃はオシロスコープやFGなどの基本測定器をラインアップしていたのである。これらの製品は現在のラインアップにはない。半世紀を経ると、計測器メーカの主力製品(ラインアップ)は変わり、不変ではないことを示唆している。

ソニー・テクトロニクス(そにーてくとろにくす)

(Sony/Tektronix Corporation) テクトロニクス(Tektronix, Inc.)は米国オレゴン州に本社がある、1946年設立の老舗計測器メーカ。オシロスコープ(オシロ)では長らく世界No.1である。1965年にソニーと出資比率50対50の合弁で設立した日本法人がソニー・テクトロニクス株式会社(2002年に合弁解消したので、37年間の会社名)。hp(ヒューレット・パッカード、現キーサイト・テクノロジー)は1963年に横河電機と合弁でYHP(横河ヒューレットパッカード)をつくっている(1998年合弁解消)。高度経済成長の時代(1955年頃~1973年頃)、電子計測器は産業のマザーツールとして最先端のハイテク機器だった。そのため、松下電器は松下通信工業、日立製作所は日立電子、日本電気は安藤電気、など国内の大手電機・通信機器メーカは系列に計測器メーカがあった。電機メーカと計測器メーカは深い関係だった。Tektronixとソニーは同様に戦後すぐの 1946年に設立し、技術優先の思想や商品の独自性という共通する風土があったといわれる。 Tektronixは1946年に世界初のトリガ式オシロスコープ(オシロ)を発明したといわれる(※)。オシロとビデオ関連測定器(TVなどの映像用の信号発生器や波形モニタなど)を多くラインアップした。ソニー・テクトロニクスは1975年に御殿場工場を竣工し、国内で開発・製造を行った。つまり単なる販売店ではなく、AFGなどの信号発生器の事業部(開発部門)が日本にあった時期もある。 2002年に(ソニーとの合弁を解消し)日本テクトロニクスに社名変更。2007年にTektronixが米国の投資会社ダナハー(danaher)の傘下になり、2011年に日本テクトロニクスは(同じくダナハー傘下の)株式会社フルークと合併し、株式会社TFFのテクトロニクス社になる(2016年にダナハーからフォーティブが独立し、現在のTektronixはフォーティブ傘下)。 2012年にはケースレーインスツルメンツ株式会社(データロガーや半導体パラメータアナライザで有名なKEITHLEYの日本法人)と合弁し、会社名は「テクトロニクス社/ケースレーインスツルメンツ社」になる。2019年にTektronixはビデオ事業部をTelestream社に売却して、テレビ・オーディオ測定器から撤退。 2021年には会社名を「株式会社テクトロニクス&フルーク」に変更。Flukeはハンドヘルドのオシロをつくっているが、Tektronixはハンドヘルドの絶縁型オシロのモデルチェンジ(新製品の発売)をしていない。このことは、重複するモデルの調整を2社は行っていることを意味するか否かは不明。日本のケースレーはすでにテクトロニクスと組織が一体になっているが(以下の展示会レポートを参照)、フルークとの融合も今後進むと思われる(2023年4月現在)。 1980年代後半に、オシロをつくっていない大手計測器メーカ(hp、レクロイ、横河電機など)が、“高機能なデジタル化”を切り口にオシロ市場に新規参入しTektronixと競合しているが、いまでもTektronixは世界的なNo.1オシロメーカとして、時代にマッチする新製品を発売し続けている。当サイトが2023年1月に行った読者アンケートでは「使ったことがあるオシロのメーカ」、「好きなオシロメーカ」ともにTektronixがトップである。みんなの投票 第2弾 結果発表 (※)1931年に米国のGeneral Radio社が強制同期式オシロスコープを開発した、など諸説あるので、Tektronix以外に歴史に埋もれた世界初のメーカがあるかもしれない。詳しくは以下記事の「オシロスコープの歴史」を参照されたい。 デジタルオシロスコープの基礎と概要 (第1回)