オーディオアナライザ
(audio analyzer)
音声信号の評価に必要な機能を1台に集約した、「音声(オーディオ)信号の総合試験器」。無線機テスタが無線機の、保護リレー試験器が保護リレーの総合試験器のように、オーディオアナライザも発生器とFFTアナライザ、ひずみ率計などの信号を出す機能と測定する機能を1筐体の中に納めている。具体的にはS/N比、SINAD、IMD、DFD、THD比、THD+Nレベル、クロストークなどの特性評価を1台で測定できる。
別のいいかたをすると「オーディオ信号のひずみ率の測定器」。音声信号はひずみ率で評価されるので、オーディオ用の基本測定器である。ひずみ率の測定とは「波形の歪みを測定する」ことだが、測定する対象によって測定器が異なる。
ひずみ率の測定器である「ひずみ率計」は正弦波信号のひずみ率(全高調波歪み率)を測定できる。ひずみ率の定義(計算)は「波形に含まれる全高調波成分の実効値の総和と基本波の実効値との比」である。以前はひずみ率計というと指示計器(アナログ式の、針が表示する計器)だった。エヌエフ回路設計ブロックの自動同調ひずみ率計 DM-153Bなどがあった。耐圧試験器などの安全規格の測定器を豊富にラインアンプする菊水電子工業の、アース導通試験器 TOS6200Aのひずみ率は「10A以上の0.1Ω純抵抗負荷にて2%以下」と規定している。
ひずみ率計に対して、オーディオアナライザは、音のひずみ率、周波数特性、S/Nなどを測定し、音声信号の総合評価をするので、アナライザの名称があり、「オーディオひずみ率計」や「音声ひずみ率計」のような呼称をしない。オーディオアナライザには低歪み発振器や周波数カウンタなどの機能が内蔵されているモデルが多い。
オーディオアナライザのトップメーカに1985年創業のAudio Precision(オーディオプレシジョン、米国オレゴン州、略記:AP)社がある。SYS-2000シリーズは業界標準だったが2023年にサポート終了している。1990年頃には東陽テクニカがAPを取り扱っていたが、現在はコーンズ・テクノロジー(電子システム部 通信計測チーム)が販売している。現役モデルはAPx500シリーズ(2024年12月現在)。2000年代まではキーサイト・テクノロジーもオーディオアナライザをつくっていて8903は8903Aから8903Eまで更新されたが生産終了した。これでスタンドアロンのオーディオアナライザはなくなったが、「U8903B 高性能オーディオ・アナライザ」が現役モデルにあり(いつ発売されたか不明。筆者は2025年8月に同モデルを発見し同社にオーディオアナライザがまだあることを知った。)、「最も要求の厳しいオーディオデバイスを簡単に測定」とPRしている。目黒電波測器や松下通信工業、シバソク(現アサカ)などのテレビ・オーディオ測定器の国産メーカもラインアップしていた(現在は生産終了)。
2024年のInter BEE(国際放送機器展)ではAPの主要モデルや新製品が展示されている。音をマイクで収集するアコースティックの評価はリオンや小野測器が行っているが、電気で評価するオーディオアナライザはほとんどAPだけ(世界で1社)となっている。モデルによって価格は1.5M¥~10M\\\\の幅がある(ノイズフロアが低い測定器は、1千万円と高額)。顧客はデジタルI/Fで音声を通信するオーディオ機器と、オーディオ半導体メーカ。Bluetoothが携帯機器に普及し、スマホとイヤホンの通信に使われている。BluetoothチップをつくるQualcomm(クアルコム)はユーザである。Qualcommがつくるのはオーディオ半導体ではないが、音声をBluetoothで送るので、オーディオアナライザで評価する。国産では旭化成マイクロが音声デバイスをつくっている。
コーンズ・テクノロジーはAP社の製品を「ハイパフォーマンス&マルチインターフェース」(高機能、多くのインタフェースに対応)とPRしている。電子オーディオと電気音響テストの2つをカバーするので、オーディオ&アコースティックアナライザとも呼称している。
AP社と同じくBattery(投資会社、バッテリー)傘下のGRAS(グラス)のマイクロホンを販売する丸文(システム営業第1本部 営業第1部)は、2025年8月にコーンズ・丸文共同セミナを開催し、APとGRASを使った「スピーカの特性測定」のデモを行っている。つまりマイクなどの音のセンサからの信号を処理するフロントエンドの機能がAP社のオーディオアナライザにはある。その意味ではオーディオアナライザはFFTアナライザの機能を持っている。つまり音響テストもできるアコースティックアナライザでもある。
TechEyesOnlineは映像や音声などの放送関連計測器を「テレビ・オーディオ測定器」というカテゴリーにして、ここにオーディオアナライザを分類している。ただし、騒音計などの音の測定器がある「物理量測定器」とする解釈もある。キーサイト・テクノロジーはU8903BをFFTナライザと同列とみなして「スペクトラムアナライザ」のページに掲載している。放送関連なのか、音の測定器なのか、周波数測定器なのか、分類が悩ましい。
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