計測関連用語集

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ロケータ(ろけーた)

(locator) ケーブル障害位置測定器の内、銅線などの電気の信号ケーブルの測定器を指す。正式にはケーブルフォールトロケーター(cable fault locator )。「ケーブルの欠陥の位置(fault location)を特定するもの」という意味。略してフォールトロケータやロケータと呼ばれる。原理はTDR(Time Domain Reflectometry、時間領域の反射法)で、光ファイバケーブルのときはOTDRや光パルス試験器と呼ばれる。 ロケータは、有線通信計測器の大手、安藤電気が1980年代につくっていた。テクトロニクスも同時期にラインアップがあった(以下の計測器情報が詳しい。2024年現在、Tektronix 1503 Cable Fault Locatorが海外の中古計測器販売サイトに掲載されている)。現在では国内メーカを含む大手・中堅の計測器メーカはロケータをつくっていない。欧米や日本などの先進国では有線通信の主力は光ファイバで、銅線ケーブルの障害位置検出はほとんど需要がなくなり、大手計測器メーカがつくるカテゴリーではなくなった。小型の現場測定器や電気工具の海外メーカがロケータをつくっている。ケーブルの埋設位置や水漏れ箇所を検知する検査機器をつくる株式会社グッドマンはロケータも取り扱っている。計測器のTDR(ロケータ)といえば、現在はグッドマンである。 絶縁抵抗計をラインアップする英国のMEGGER社(※)は「ケーブル用故障点標定装置」として、ロケータを複数モデルつくっている。国内の販売はマルチ計測器で、同社ホームページにはMEGGERのメガーを中心に掲載されているが、ハンドヘルドのケーブル障害位置測定器(ロケータ)も3モデル取り扱っている(2024年現在)。MEGGER以外にも海外メーカがアタッシュケース型のロケータをつくっていて、輸入商社が取り扱っている(計測器のメジャーな商社は取り扱っていない)。主要な計測器メーカ(海外、国内)がほぼ撤退したので市場の需要は少なくとも国内にはないが、海外メーカで現役モデルがあるのは、発展途上国向けかもしれない。 ローデ・シュワルツには「RF干渉ロケーター」というモデルがあるが、本稿のロケータとは別の製品である。 (※) MEGGER社は2010年頃に保護リレー試験器がラインアップにあり、関西電力などに計測器を納入する株式会社近計システムが販売店をしていた時期がある。現在のMEGGER社には保護リレー試験器はないようである。 ADAS(エーダス)などの自動車用語として、「ロケータ:センシングした情報から位置を特定する機構やアルゴリズム」という解説がある。加速度センサやGPSセンサ、カメラとマーカなどを使って、走行している自動車の位置を検出する技術が盛んである。塗料の世界的なトップ企業である日本ペイント株式会社は、特殊な塗料で道路にマーカを塗布し、GPSを補完する自動運転の手法を実証実験している(2024年)。

YHP(わいえっちぴー)

(Yokogawa Hewlett Packard) hp(ヒューレット・パッカード)が日本につくった合弁会社(1963年~1998年)。YHP設立以前は、無線機器を取り扱う商社のセキテクノトロン株式会社(旧関商事株式会社)がhp製品を輸入販売していた。 1939年に、ウィリアム・ヒューレットとデビッド・パッカードは米国カリフォルニア州でhp(Hewlett-Packard Company、エイチピーと呼称)を創業し、世界No.1の電子計測器メーカとなった。日本のYEW(横河電機製作所)は1963年にhpと合弁でYHP(横河ヒューレット・パッカード)を設立した。YEWは国産初の電磁オシログラフをつくるなど、日本を代表する老舗計測器メーカだった。高周波(RF)測定器はYHPがつくり、YEWはDC~低周波の記録計などをつくるという棲み分けをした(競合しないように機種群の分担を決めた)。当時のYEWはブリッジをラインアップし、回路素子測定器の要素技術を持っていたが、それらはすべて技術者とともにYHPに移ったと推測される。YHPはhpの日本法人(販売会社)でhp製品を販売したが、国内に開発拠点を持ちYHPとして計測器の開発も行った。回路素子・材料の測定器(LCRメータやネットワークアナライザなど)の開発拠点が神戸にあったと筆者は記憶している。1980年代に筆者は国内大手計測器メーカの技術部門にいたが、各計測器メーカの特許出願情報が回覧された。そこには「横河HP」という会社名でインピーダンス測定の多くの特許が掲載されていた。YEWのブリッジは生産終了し、後継機種となるLCRメータなどはつくられていない。インピーダンス計測器は、YEWではなくYHPが開発を行った。 高周波計測器を手掛けるYHPと、「レコーダ、低周波の電力計(デジタルパワーメータ)、ミドルクラスのオシロスコープ」をつくる横河電機(1986年に社名変更)との差は30年間で大きく開いた(YHPは計測器のトップメーカになっていた)。1995年に横河電機はYHPへの出資比率を下げ、高周波測定器の開発に着手した。時は携帯電話の3Gが商用開始する前夜で、1998年にはYHPから完全に資本を引き揚げ、携帯電話評価用の信号発生器を中心に、次々と通信計測器を発表した。 YHPは会社名を日本HPに変更していたが、2000年にhpがIT機器以外の事業(計測器と科学分析機器、ライフサイエンス事業)を分社し、Agilent Technologiesを設立したので、日本HPもアジレント・テクノロジーとなる。さらに2014年にはAgilent Technologiesは科学分析機器のみとなり、計測器はKeysight Technologies(キーサイト・テクノロジー)となり、現在に至る。 世界No.1の総合計測器メーカhpは日本では、高度経済成長期に設立したYHPに始まり、1998年以降に日本ヒューレット・パッカード、アジレント・テクノロジー、キーサイト・テクノロジーと社名が変わった。横河電機は2002年に幸運にも通信計測器大手の安藤電気を吸収し、安藤電気がアジレント・テクノロジーとシェアを競った光通信測定器をラインアップに加え、高周波測定器を強化した。ただし、2000年代後半には光通信以外の通信計測器はすべて中止し、2010年には横河メータ&インスツルメンツ(現横河計測)に計測器部門を移管した。これによって横河電機は(計測器をつくらない)計装(工業計器)のメーカに名実ともになり、(メモリレコーダなどの計測器ではない)計装ユースのDAQ(データロガーなど)をラインアップしている(計測器の記録計か、計装の記録計かは素人には判断が難しい)。 マイクロウェーブ展2022(2022年11/30~12/2、パシフィコ横浜)に、キーサイト・テクノロジーはPXIネットワークアナライザM983xA(新製品)を出展した。「Keysight TechnologiesのR&D拠点の1つであるキーサイトの事業所(兵庫・神戸市)で開発した製品である」ことが、展示会を取材した日経誌で報じられている。

ワイヤード(わいやーど)

(wired)有線通信のこと。無線通信はwireless(ワイヤレス)。無線測定器の雄、アンリツで良く使われている用語。アンリツで無線以外の有線通信の機種群である「光測定器や、伝送・交換・IPなどのネットワーク関連測定器」をワイヤードと呼称している。「無線はワイヤレスだから、有線はワイヤードだ」というのは無線・有線の両方に精通し、海外の販売比率が高い、同社ならではの表現といえる。つまりはっきり言うと「アンリツの社内用語(方言)」とみなされる。日本の通信計測器メーカでは「光通信」や「有線(通信)」という表現が一般的で、ワイヤードというのはアンリツ以外には聞いたことが無い。

ワットメータ(わっとめーた)

(watt meter) アナログ式の電力計の別称。針が振れて測定値を示す指示計器の1種。アナログ式の電流計は文字盤に電流の単位であるA(アンペア)が表記されていて、電流計は英語ではampere meter(アンペア メータ、「アンペアの計測器」という意味)と呼ばれる。電力計の指示板にも電力の単位W(ワット)が表記されていて、「ワットを測定する」のがワットメータである(※)。 (※) 電力の単位にはVA(ボルトアンペア)もある。VA:皮相電力(有効電力+無効電力)、W:有効電力。 電力の英語はelectric power(またはpower)で、電力の測定器は「パワーメータ」と呼ばれる。計測器としては、商用周波数などの低周波の電力測定器はデジタルパワーメータやパワーアナライザ、クランプメータになる。高周波では、無線ならRFパワーメータ(高周波パワーメータ)、有線なら光パワーメータ(OPM:Optical Power Mete)がある。 このように電力を測定する計測器は日本語では一般にパワーメータと呼ばれ、電力計という総称はあるが、品名にはあまり使われない(クランプメータをクランプ電力計、RFパワーメータを高周波電力計、と呼ぶことはある)。そのため電力計(ワットメータ)とは、広義には「電力(パワー)の測定器(メータ)」だが、具体的な製品としては(狭義には)「アナログ式の箱型の電力計」を指している。電力測定器について説明するときは、総称である「電力計」という名称を使い、種類などを解説するが(たとえば「ベンチトップ電力計」など)、これは概念を説明している名称で、具体的な計測器には「○○電力計」というような品名はあまりない(以下の「電力計の基礎と概要」を参照)。 電力測定器を総称して「ワット」と呼称している場合がある。デジタルパワーメータを海外へ販売している計測器メーカである横河計測は、電力測定器(デジタルパワーメータなど)を「ワット」と呼称している(※※)。 (※※) 横河計測のデジタルパワーメータやパワーアナライザの形名(や通称)はWTが多い(WT300、WT1800、WT5000など)。WTはwattが語源(由来)かは定かではない。 計測器情報:ワットメータ(電力計)の製品例

シリコンフォトニクス(しりこんふぉとにくす)

(silicon photonics) 現在の半導体はシリコン(Si)を主な材料としている。シリコンのマイクロチップ上に光と電子の集積回路をつくる技術をシリコンフォトニクスと呼ぶ。2000年代から大手企業のR&D部門などで研究開発が進められてきた。最近ではデータセンターの通信量の増大(IoTの進展やビッグデータ)など、高速・高効率なデータ送受信への需要が高まり、シリコンフォトニクスが注目されている。2019年のNTTのIOWN(アイオン)構想もシリコンフォトニクスの進展を大前提にしている。2023年はいよいよ実用化フェーズに入ろうとしている(以下の参考記事「 Keysight World 」が詳しい)。 シリコンフォトニクスとは、シリコン基板上に、光導波路(optical waveguide)、光スイッチ、光変調器、受光器などの素子を集積する技術を指す。光集積回路や光半導体とも呼ばれる。シリコンCMOS集積回路の製造インフラを活用し、比較的安価に製造できるといわれている。従来のデバイスの小型化、低消費電力化により環境負荷の削減が期待される。端末からコアネットワーク(基幹通信網)まですべてが(電気を使わず)光だけで伝送するオールフォトニクスネットワークが実現すると、遅延がない超高速通信を超低電力で行える。従来の微細化技術による性能向上(ムーアの法則)が限界を迎えつつあるので、インテルやIBMなどの米国の大手企業を先頭にシリコンフォトニクスが研究されている。 全世界のシリコンフォトニクス関連の特許出願数は、インテルを筆頭に米国企業がトップ20社の大半を占め、アジアではNTT、Huawai(中国、ファーウェイ)、富士通などがランクイン(日経エレクトロニクス 2024年4月号)。日本では、AIST(産総研)のプラットフォームフォトニクス研究センターに「シリコンフォトニクス研究チーム」などがあるが(2024年4月現在の組織図より)、本来、材料に強い国産メーカの活動はまだ見えてこない。先頭を走るインテルに材料を提供する日本メーカがあるかは不明である。 2017年12月に開催された、半導体デバイス技術に関する国際会議「IEDM(IEEE International Electron Devices Meeting)」では、Silicon Photonics for Next-Generation Optical Interconnects(次世代の光インターコネクト・光接続に向けたシリコンフォトニクス)を、ベルギーの研究開発機関imec(※)が講演した。imecはシリコンフォトニクスの要素技術を研究している最先端機関で、「シリコン光導波路」と、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)で使われる「シリコン光波長フィルタ」について発表した。シリコン表面に光信号の伝送路である光導波路を、直線ではなく曲線でつくった。光信号を数μm(マイクロメートル)の半径で曲げるシリコン光導波路が紹介された。WDMは波長のわずかに異なる複数の光信号を1本の光ファイバに通して伝送する技術である。各波長の信号を取り出すのがシリコン光波長フィルタで、構造は共振器の両側(入射側と出射側)に光導波路があり、それぞれは近接しているが接触していない。8波長の光信号を入射光側の光導波路に入力すると8個の共振器の出射光導波路から、それぞれの共振波長に対応した光が出力される。 インテルは2020年12月の「Intel Labs Day 2020」で、従来のコンポーネントサイズから1000分の1にまで小型化した変調器を、シリコンフォトニクスの成果として発表した。NTTはシリコンフォトニクスを用いた光送受信モジュールの開発に成功したことを2020年に発表している。 (※) (Interuniversity Microelectronics Centre) ベルギーのルーベン市に1982年創設の国際研究機関。リソグラフィ技術や次世代エレクトロニクス技術を研究している。半導体研究開発機関としても世界最大で、「半導体製造装置の研究所」とも呼ばれる。回路幅(プロセスサイズ)3~5nm(ナノメータ)の最先端の露光装置であるEUVを研究し、オランダのASMLを技術支援して商品を完成させたといわれる。2022年に設立された国産の先端半導体デバイスメーカのRapidus(ラピダス)は、2023年3月に「imecとEUV露光技術の開発で連携」する契約を締結している。 計測器情報:シリコンフォトニクスで使われる偏波測定器(光測定器)の例

光導波路(ひかりどうはろ)

(optical waveguide) 光ビーム(デバイスなどの媒体だけでなく空間を進むことも多いので、光信号を光ビームと呼称することが多い)をある限定された経路に通すための光デバイス。光は直進性が高いが、曲線の経路をつくって光信号を導くことが研究されている。電子回路における配線に相当し、プリント基板上に光導波路を安価に形成することも視野にある。構造がコアとクラッドであることは光ファイバと同じだが、主に平面状・板状をしている。 広義には光導波路は「屈折率の大きな媒質(コア)をそれより屈折率の小さな媒質(クラッド)で挟み込み、光が全反射によって伝搬する光の通り道」のこと。光を局所的に閉じ込めて任意の方向に導くもの(部材、部品、デバイス)だが、「光デバイスや回路を構成するための比較的短尺のもの(高々,数ミリメートル程度)と、長尺の光ファイバとがある。ここでは前者を光導波路と呼ぶ(電子情報通信学会知識ベース 第1章 光導波路より)」。つまり、一般には光ファイバとは別の光デバイスを指している。 具合的には光学的な特性をもつ物質を使って伝送路をつくる。光導波路の構造は主にシート状で、単に光を伝送するだけではなく、通信に必要な電気素子や光路の分岐・結合構造が組み込まれたものもある。光導波路の材料(媒質)はガラスだけでなく半導体もある。コアをシリコン(Si)、クラッドを二酸化シリコン(SiO2)にした半導体の光導波路(光集積回路や光半導体と呼称)は、シリコンフォトニクスと呼ばれ、2010年代から活発な研究成果(試作品)が発表されている。遠距離通信のコアネットワーク(基幹通信網)に導入されている光の波長である約1.55μm(1550nm)では、Siの屈折率は約3.5(高屈折率)、SiO2の屈折率は約1.4~1.5(低屈折率)で、コア径は0.2μm~0.3μm。標準的なシングルモードファイバのコア径9μmに比べて、シリコンフォトニクスのよる光導波路は小型(サイズが1桁小さい)。2017年のIEDM(※1)を報道する大手メディアの記事には「シリコン光導波路」ということばが使われいるので、シリコンフォトニクスによる光導波路はホットな話題である。 (※1) (IEEE International Electron Devices Meeting) IEEE(アイトリプルイー)が開催する、半導体デバイス技術に関する国際会議。 Keysight World 2023の「高速デジタル・光電融合 トラック(8/30開催)」では「光電融合技術と今後の展望」として、インテルや産総研(AIST)が講演を行った。キーサイト・テクノロジーは偏波シンセサイザなどを使った光導波路の評価機材を展示したが(以下の参考記事が詳しい)、シリコンフォトニクス技術を用いて世界最小の高速光トランシーバ「光I/Oコア」を開発したアイオーコア(株)と共同で「Siフォトニクス技術とインターコネクション」について講演している。また、「光電融合による高速通信を実現するための材料開発」と題して、味の素(株)とも共同で講演している。味の素はAGF(※2)の愛称でインスタントコーヒー(ブレンデイ、マキシム)が有名だが、「高速通信とエネルギーの効率化」をテーマに新素材の研究をしていることが語られた。 (※2) 1909年創業の味の素(株)は、米国のゼネラルフーヅ・コーポレーション(GFC社:現モンデリーズ・インターナショナル)と出資比率50対50の合弁会社、味の素ゼネラルフーヅ社(AGF社)を1973年8月に設立。2017年7月より会社名は「味の素AGF(株)」になり、味の素(株)の子会社である。 光導波路は従来からあり、日本の材料メーカもつくっているが(たとえば住友ベークライト株式会社のホームページには製品として「ポリマー光導波路」が掲載されている)、シリコンフォトニクスによる光導波路がNTTのIOWN(アイオン)などの実現に必須で、インテルやIBMが研究を進めている。シリコンフォトニクス関連の全世界の特許出願数はインテルが他社を圧倒して1位、2位はNTT、3位はIBMである(日経エレクトロニクス 2024年4月号)。 計測器情報:光導波路の評価に使う偏波測定器の例