計測関連用語集

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ソースミスマッチ誤差(そーすみすまっちごさ)

(Source mismatching error) 信号源(ソース)と伝送線路とのインピーダンス不整合による誤差をいう。ネットワークアナライザによる測定においても生じる測定誤差で、送信側ポートにおいてDUTからの反射信号が信号源部で反射してDUTに再入射することに起因する誤差である。事前に送信側ポートに標準器(ショート端やオープン端)を接続し、補正することができる。

帯域幅(たいいきはば)

(Band Width) 電気信号が回路要素(フィルタ等)を通過する時に、下図のようにその最大レベルから3 dB下がった点(電力レベルで半分)の下限周波数と上限周波数の間の周波数範囲(f1 〜f2 )をいう。単位としては周波数[Hz]が用いられる。スペクトラムアナライザ(スペアナ)などの周波数分析機器で使われる基本用語。信号の帯域幅は、そのパラメータ(振幅や位相)が時間と共に変化する速さの尺度である。従って、帯域幅が広いほど回路要素を通過する信号は速く応答する。スペアナの仕様では「BW」と略記されることが多い。 「帯域幅」はいわなくても周波数のことであるが、「周波数帯域幅」という表現もみられる。「馬から落馬する」の類の表記と言えなくもないが、オシロスコープの用語で周波数帯域がある。帯域と聞いて周波数のことだとイメージしにくい素人には周波数帯域幅や周波数帯域と表記されているほうがわかりやすい。

通信計測器(つうしんけいそくき)

有線(光通信など)と無線(ワイヤレス)がある。新しい通信方式が開発されるとそれを評価する測定器が現れる。その時代の通信方式に対応するため、計測器の寿命が短い専用器が多い(2年位で次モデルになる場合もある)。基本測定器は有線では光測定器の光パワーメータ(OPM)、光源、光スペクトラムアナライザなど、無線ではRFパワーメータ、信号発生器、スペクトラムアナライザである。 有線の通信測定器は 1. プロトコルアナライザ(略称:プロアナ):RS-232Cなどの低速のオンラインモニタ(ラインモニタなど)と、バスアナライザ、超高速のギガビットLAN(参考記事あり)などのモデルがある。無線LANのプロトコルアナライザもある。 2.ネットワーク測定器:ここでいうネットワークとは通信回線網のことで、交換、伝送、IPなどの伝送品質を評価したり、端末や通信装置の代わりになってエミュレーションしたりする測定器。SDH/SONETアナライザ、BERT(ビット誤り率試験器)や疑似呼(コールシミュレータ)、IP負荷試験装置など。 3.光測定器:光通信の測定器や光ディスクなどのDVD評価用測定器。電磁波としての光を扱う測定器で、照度計や輝度計のような人が感じる光(明るさ)の測定器ではない。光パワーメータ(OPM)、光源、光スペクトラムアナライザ、OTDRなど。 4.ケーブルテスタ:OSI参照モデルの物理層(レイヤ1)の測定器。LANのケーブルテスタやTDR(障害位置試験器)など。5.アナログの伝送線路の測定器:レベルメータ、選択レベル計など。以前はアンリツや安藤電気がつくっていたがほぼ撤退し、今は大井電気がラインアップしていて、ユーザは工事会社が多い。上記2の機種群は高速になると電気でなく光通信になるので、光測定器の機能を持つが、それらは光通信の基本測定器ではなく通信方式に対応した専用測定器なので、2に分類される。3の光測定器はOPMや光スペクトラムアナライザなどの光の基本測定器と、OTDRや光ロステスタなどの光ファイバ用の専用測定器がある。 デジタル伝送品質の評価の1つであるアイパターンの測定は、主にサンプリングオシロスコープで行われてきた。インタフェースは電気と光の両方がある。アプリケーションは通信であるが、製品はオシロスコープ(&光測定器)である。代表例がキーサイト・テクノロジーのDCA(デジタルコミュニケーションアナライザ)だったが、広帯域オシロスコープ(高速オシロスコープ)が普及した現在では、生産中止になっている。 無線の通信測定器は、別名RF測定器や高周波測定器と呼ばれる。 1.基本測定器:標準信号発生器(SG)、スペクトラムアナライザ(スペアナ)、高周波パワーメータ。 2.通信方式に対応した専用測定器:移動体通信用のワンボックステスタや無産機テスタ、送信機テスタなどの変調解析機能があるスペアナ、シグナリングテスタなど。「無線LANのアナライザ」というと、RF(無線)の項目を評価するモデルはこの項目に分類されるが、プロトコル解析のモデルは(扱っているのが無線であるが)有線の測定器であるプロトコルアナライザに分類される。 ネットワークアナライザ(ここでいうネットワークとは高周波部品の回路網のこと、略称:ネットアナ)は有線の測定器だが、高周波の測定器なので、RF(無線の測定器)と並べて説明されることが多い。高周波デバイスなどを評価する専用器である。インピーダンスアナライザやLCRメータなどの回路素子測定器や材料評価用の測定器と同じ分類にされることも多い。 無線を中心に通信計測器全般を手掛ける老舗のアンリツでは、有線通信のことを「ワイヤード(wired)」と呼称している。無線通信のワイヤレス(wireless)は「線でつながっていない(線が無い=無線)」という意味で、広く普及していることばである。それに倣えば有線は「ワイヤード(線でつながっている)」と呼称するのが自然である。この説明は正しいが、有線通信は一般には「有線(通信)」や「光通信」と呼称されることが圧倒的に多い。通信を熟知した代表的な通信計測器メーカが使う表現が、他の通信業者も使うことばとは限らない。計測の世界の表現は統一されていない用語(方言)も多い。 計測器情報: (有線)プロアナ、光測定器、ネットアナ (無線)信号発生器(通信)、スペアナ、 無線/移動体測定器

抵抗減衰器(ていこうげんすいき)

歪みを発生させることなく、電圧信号を減衰させる機器。(=減衰器、アッテネータ)

定在波(ていざいは)

(Standing wave) 伝送線路上において、波長(または周波数)・伝送速度が同じでその信号の進行方向が互いに逆向きの2つの信号が存在すると、相互の干渉によりその波形がその場に止まって振動しているようにみえる波動が生じる。この波動を定在波という。参考用語:電圧定在波比、VSWR、SWR

TELEC(てれっく)

一般財団法人テレコムエンジニアリングセンターの略称。一般には「テレック」と呼ばれている。日本を代表する無線設備の認証・試験機関。1978年に無線設備検査検定協会(MKK) が創設され、1998年にTELECに名称変更した。日本では無線局を開設するなど、無線を運用するには認可や、技術基準適合証明(技適)の取得が必要になる(電波法で規定されている)。TELECは日本の電波法に基づき、無線設備の技術基準適合証明などを業務にしている。

電圧定在波比(でんあつでいざいはひ)

(Voltage standing wave ratio) 定在波の最大電圧(Vmax)と最小電圧(Vmin)の比。Voltage Standing Wave Ratioの頭文字をとって VSWRと略表記されることが多い。また高周波では単に SWR と表記することもある。 VSWR(ρ)は、下式で表される。ここで、|Γ|は、反射係数である。ρの取り得る値の範囲は、ρ= 1 〜 ∞ である。

電子電圧計(でんしでんあつけい)

高周波の電圧を測定する機器。(=高周波電圧計)

電電ファミリー(でんでんふぁみりー)

NTTの前身である日本電信電話公社は製造部門を持っていなかった。研究開発を製品化するNTTの出入りメーカ(お抱え企業、下請けメーカ)をNTTのファミリー企業という意味でこう呼んだ。通信装置はNEC、富士通、沖電気、日立製作所がつくったのでNFOHと呼称された(一番はNとFで三番がOという、比率を表していると業界ではいわれた)。新しい規格に対応した通信装置(伝送交換)が導入されるときは、同じく電電ファミリーの大手通信計測器メーカ、アンリツと安藤電気が対応する計測器を開発した(たとえば1970年代から光ファイバによる光通信が導入されると、この2社が光通信測定器をつくり、R&Dから通信網の敷設・保守までほぼすべての測定器をラインアップした)。NTTは2社に仕様を示し製品を作らせる。性能が同じ2社の製品があることで、1社に依存しないというリスクヘッジになる。NTTが日本の基幹通信網を独占し、アメリカのベル研究所と肩を並べて研究開発をしていた時代のことである。 その後、通信の自由化によってNTTは分割され、ほかの通信事業者が参入して現在に至る。日本の通信料金は下がり安価になったが、研究開発や国際的な通信規格の策定の力は衰えたという指摘もある。NTTは2019年にIOWN (Innovative Optical and Wireless Network、アイオンと呼称)構想を公表した。光トランジスタの開発によって、従来の電子を使った半導体による通信網を完全なフォトニクスにすることで、世界的なゲームチェンジを狙う。NTTは2020年にNTTドコモの完全子会社化を終え、2021年にはNTTコミュニケーションズ(NTT com)とNTTコムウェアもグループ内へ編入する。過去の分社化から一転、強いNTTの復権がうかがえる。 JR東海は鉄道車両メーカの日本車輌製造(愛知県豊川市)を子会社にした。世界で競えるインフラを作り、輸出によって豊かな国になるためには、上流のR&Dから製造まで独占的な強い企業が必要という、冷徹な国際事情が存在する。たとえば原子力発電の世界有数メーカであるフランスのアレバ社はフランスの国有企業である。フランスは原子力発電を国策ととらえ、世界的なビジネスをしている。日本が世界に伍する技術分野に通信が復権するかはまだ不透明である。 参考用語:原子力発電所、重電メーカ、パワー半導体

電波技術協会(でんぱぎじゅつきょうかい)

通信技術、放送技術の円滑な普及、発展に貢献することを目的に1952年設立。1953年にはテレビ修理試験業務を開始し、テレビジョン技術者養成所を設置。 ホームページ(HP)に会社概要は無い。名称が「一般財団法人 電波技術協会」であること、略称がREEA(Radio Engineering Electronics Association)であることがHPより推測される。「通信技術、放送技術の調査、試験研究、普及啓発などの事業を行い、日本の電波利用の発展に微力ながら貢献してきた」旨が書かれている。理事長の氏名以外は不明(評議員や役員がいるもよう)。HPには「賛助会員入会案内」と「賛助会員専用ページ」がある。(2023年9月現在) 素人には電波産業会(ARIB、アライブ)と間違いやすいと筆者は思う。

電波産業会(でんぱさんぎょうかい)

正式名称:一般社団法人 電波産業会。通信・放送分野の電波利用について、調査・研究・コンサルティングを行っている団体。通称のARIB(アライブ)で呼称されることが多い。

電波法(でんぱほう)

無線通信の混信を防ぎ、電波の効率的な利用を確保するためにつくられた法律。電波法では無線通信に関して次の規制などが設けられている。無線局の免許・登録制、無線設備に関する規制、無線従事者に関する規制、無線局の運用に関する規制。無線設備の認証マークである技適や、違反時のペナルティ(罰則)も規定されている。電波は携帯電話、テレビ、ラジオ、警察、消防など多くの公共インフラで使われるので、「公平、能率的に電波を利用し、公共の福祉を増進する」ために電波法令がある。

電力計(でんりょくけい)

(watt meter) 広義には電力を測定する機器で、家庭の玄関に必ずあるスマートメータ(積算電力計)や電気使用量を監視しているデマンド機器などがある。計測器としては商用周波数(50Hz/60Hz)~低周波を対象にしたパワーメータ、デジタル電力計、デジタルパワーメータ、高周波を対象にした通信計測器の 高周波電力計 、RFパワーメータ、光パワーメータなどがある。指示計器である積算電力計(または積算電力量計、家の入口近くの屋外に設置され、使用電力を測定しているメータ、今でいうとスマートメータ)を指していることもある。 計測器としては狭義には、指針型(針が振れるアナログ式のメータ)の電力測定器を指す。外観は黒い箱型で、バインディングポストの入力端子がある、横河電機が作っていたモデルが有名。理工系の学校の電気実験では、同じように指針型の電圧計、電流計とともに現在も使用されている(用語のYEWを参照)。英語watt meterをカタカナにした「ワットメータ」というと、このアナログ式の指針型のメータで、単位[W](や[AV]アンペアボルト)を測定する計測器がイメージされる。「機械式電力計」という名称で説明している文献もある。 一般的に計測器で「パワーメータ」というと低周波の電力測定器を指し、高周波の場合は高周波電力計や光パワーメータ、というように品名で区別している。計測器としての低周波の電力計は「デジタルパワーメータ」という品名が多い(一部、パワーアナライザもある)。機種群の分類では「計測用電力計」という説明もされる(以下の記事を参照)。 低周波の電力計としては測定対象に非接触であるクランプ電力計も大変よく使われる。現在の(計測器としての)低周波の電力計はデジタルパワーメータとクランプ電力計である。前者は横河計測が国内でシェアが高く、海外にも輸出している。後者は、昔からクランプのラインナップが多い日置電機がシェアが高い。ただし日置電機は横河計測の牙城だった高確度のデジタルパワーメータを最近は多く発売し競合製品のシリーズ化に注力している。横河計測もクランプを他社から仕入れるなどしてクランプ入力のデジタルパワーメータも発売してきている。トルク計測で実績のあるHBK(旧HBM)のパワーアナライザは自動車市場に強く、3社は国内市場で競っている。

導波管(どうはかん)

(waveguide) マイクロ波を伝送するための中空の金属管。マイクロ波の伝送線路。空気が誘電体で、中心導体がない(中空導波管という呼称もある)。同軸ケーブルに比べて低損失なため、大電力の伝送などに利用される。形状は、断面が方形や円筒形がある。管の形状、寸法、波長(周波数)に応じて、電波は電磁場を形成して管の中を伝播する(伝播モードと呼ぶ)。構造上、伝搬できるマイクロ波の波長には上限がある。近年、高性能誘電体(PTFEなど)を用いた同軸ケーブル(セミリジットケーブル)が開発され、導波管の代わりに使用されるようになったが、衛星通信、レーダなどの大電力伝送には今でも導波管が使用されている。 マイクロ波の製品群がある計測器メーカ(キーサイト・テクノロジー、ローデ・シュワルツ、アンリツなど)は導波管をラインアップしている。 毎年11月末に開催されるマイクロウェーブ展(主催:電子情報通信学会、後援:総務省)には多くに導波管が出展される。NTTに長年納品する国産メーカ(専業の零細企業)から、海外製品を陳列する輸入技術商社まであり、導波管は現在でもマイクロ波の主流の部材であることが実感される(2023年展示会より)。

導波管可変減衰器(どうはかんかへんげんすいき)

導波管 の可変抵抗減衰器 。マイクロ波で使われる機器。

導波管方向性結合器(どうはかんほうこうせいけつごうき)

導波管 の方向性結合器。マイクロ波で使われる機器。

特性インピーダンス(とくせいいんぴーだんす)

(Characteristic impedance) 電気信号を一様な伝送線路(伝送線路の媒体の種類や構造が一定)により伝送する場合に、ある伝送線路上において発生する電圧と電流の比として表現される。単位としてはオーム[Ω]が用いられ、通常50Ωや75Ωが用いられる。高周波回路で適用される分布定数回路においては、単位長さあたりのインダクタンスがLで、単位長さあたりの静電容量がCの場合で損失のない均一な伝送路の特性インピーダンスZ0は左式であらわされる。また、伝送路が同軸線路でその外導体の内径がD, 内導体の外径がd の場合の特性インピーダンスZ0は右式であらわされる。ここで、εr は同軸線路の絶縁物の比誘電率である。

トランシーバ(とらんしーば)

1. 有線・無線通信で送信機や送信部品のこと。 2. 無線で通信する携帯機器のこと。以前は片側通信の機器が多く、自分が話すときはボタンを押し、相手が話すときはボタンを離す、という操作をして会話した。携帯電話が普及する以前は離れた2つの場所で会話できる無線通信機器として活躍した。たとえば、工事現場や、遠足の引率で先頭と最後尾など。1980年頃はまだ携帯電話は無く、2台に分乗して高速道路を走るとき、どこのサービスエリアで待ち合わせるかを相談するなど、トランシーバがあると便利だった。現在も工事現場などで使われるが、携帯電話の小型化、普及により、工事現場での使用例は減っている。

入力雑音電力(にゅうりょくざつおんでんりょく)

(Input noise power) 雑音源から回路に入力される雑音電力。入力雑音電力Ni[W]は計算上、雑音電圧の2乗を入出力インピーダンスの4倍で割った値となり、下式で与えられる。電気通信分野における増幅器(アンプ)等の雑音計算や雑音評価には、この(等価)入力雑音電力が使用される。

熱雑音(ねつざつおん)

(Thermal noise) 抵抗体内の電子の不規則な熱振動によって生じる雑音をいう。抵抗体内で発生する雑音電圧Vn[V]は、下式で与えられる。ここで、 k: ボルツマン定数 1.38x10-23 [J/K], T: 抵抗体の絶対温度[K] , B: 受信機の帯域幅[Hz], R: 抵抗値[Ω] である。 熱雑音は機器自体が発する雑音のもとになり、たとえば測定器が観測できる最低信号レベルであるノイズフロアは熱雑音に拠るところが大きい。