帯域幅
(band width)
大きく2つの意味がある。無線通信などで使われる信号の周波数範囲や、ネットワークの伝送能力(bps:ビット/秒)。元来は前者の意味だったが、インターネットなどのデジタル通信の普及によって後者の意味が加わった。
1. 周波数の場合
電気機器で使われている電気信号は、「○○Hz(ヘルツ)の正弦波」などの単一の周波数ではなく、複数の周波数成分で構成されていることが多い。単一の周波数の場合でも○○Hzのパワーが一番大きく、それより高い周波数と低い周波数を含んでいる(下図は理想的な信号のイメージ)。その信号の周波数範囲を帯域幅という。
電気信号が回路要素(フィルタなど)を通過する時に、下図のように最大レベルから3 dB(デシベル)下がった点(電力レベルで半分)の下限周波数と上限周波数の間の周波数範囲(f1 〜f2 )を帯域幅という(略して「帯域」と呼ばれることも多い)。単位は周波数[Hz]である。スペクトラムアナライザ(スペアナ)などの周波数分析機器で使われる基本用語である。信号の帯域幅は、そのパラメータ(振幅や位相)が時間と共に変化する速さの尺度である。従って、帯域幅が広い(※1)ほど回路要素を通過する信号は速く応答する。スペアナの仕様では「BW」と略記されることが多い。
一般的な電気回路や高周波(RF)の技術者にとって、「帯域幅」といえば周波数のことであるが、「周波数帯域幅」という表現もされる。「馬から落馬する」の類の表記といえなくもないが、オシロスコープの用語(1番目の仕様)に周波数帯域がある。帯域と聞いて周波数だとイメージしにくい素人には周波数帯域幅や周波数帯域と表記されているほうがわかりやすい。
(※1) 帯域幅や帯域は「大小」ではなく「広い」、「狭い」という形容詞で表現される。例:広帯域、狭帯域。余談だが、電圧は「高低」(高電圧、低電圧)、電流は「大小」(大電流など)で、周波数は「高低」(高周波など)。科学(電気)で使われる、(難しいことばではなく)基本用語であるのに、使い方(形容詞)が難しい。
2. デジタル通信の伝送容量(速度)の場合
一定時間内に通信路を通過できるデータ量はbps(bit per second、ビット毎秒)を指標にしていることが多い。1秒あたりに送れるデジタルのデータ量は通信速度である。ネットワークが「速い」ことは回線が太い(=「広い」)と解釈して、前述のNo.1項に倣って「帯域幅」と呼ばれる。「広帯域」は「高速通信」と同義である。回線が太いと「送る能力が高い」ので、「(伝送)容量が大きい」という表現もある。「大容量」も「広帯域」とほぼ同義である。
帯域幅とは本来、信号が占める周波数の範囲(上限周波数と下限周波数の差)を意味したが、通信網がデジタル化されると情報伝送能力(一定の通信チャンネルが対応できるデータ総量や最大通信速度)を示すことばに使われるようになった。ネットワークのデジタル化は基幹通信網(コアネットワーク)から始まり、アクセス網のPONなど、ネットワーク全体のデジタル化と高速化が進んだ。インターネットが普及し(日本での商用開始は1994年)、2010年に100Gbpsのギガビット・イーサネットが規格化され、2020年代には速度は400Gbps、800Gbpsになり、2025年には1.6Tbps(800Gの2倍の1.6テラ)を評価する計測器が発売されている。
ネットワーク(デジタル通信)では通信速度(容量)と帯域(帯域幅)は同義で、同じ意味で使われる。ビットは無次元なのでbpsと周波数は共に「時間の逆数」で、同じ次元である。自動車が単位時間あたりに移動する距離が速さだが、ネットワーク(デジタル通信)では単位時間当たりに送れるデータ量が速さである。デジタル通信では速さの単位(1/秒)は周波数なので帯域といっても齟齬がない。



.png)