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計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
計測・測定に関連する用語全般が収録されており、初めて計測器を扱う方でも分かりやすく解説しています。
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Tx(てぃーえっくす)

通信の用語で「送信データ、送信結果」(Transmission data)や「送信機、トランスミッタ」(transmitter)を示す略記。有線・無線通信で送信データのこと(小文字のxはデータの意味)だが、送信機自体をTxと表記していることも多い。データ通信や無線機器で「データを送る機能(送信機)や結果(送信データ)」のこと。Txと対になる受信データはRx(Received dataの略記)と記述される。Tx同様に受信機(レシーバ)をRxと表記することもある。 transmitterは日本語では「送信機」や「発信器」を意味する。送信機をトランスミッタと表現することが多く、トランスミッタはすでに日本語になっている。同様にレシーバもほぼ日本語である。trans-は技術用語に多く、トランス○○という日本語になっている。 TはTransmitterの頭文字。xは省略を示す文字でTransmit eXchangeの eXchangeの略という説もある。この略が正しいかは不確かだが、xが略記を示すことはよくある。 TxやTXのその他の例。 鉄道の路線、「つくばエクスプレス」(TSUKUBA EXPRESS)。ビジネス用語のTotal Experience(顧客や従業員の体験・経験の向上)。ネットの世界(チャットやSNS)で感謝を示す略記に、Thanks → thx、Thank you → tyが使われているらしい(筆者の専門外なので本用語集では、あくまで参考解説)。Tx(TX)は通信以外ではビジネス戦略や固有名詞などを意味する。計測用語でなければ、一般には後の方がメジャーであろう。 計測器情報:キーサイト・テクノロジーで名称にTxがある製品例

TDR(てぃーでぃーあーる)

(Time Domain Reflectometer、Time Domain Reflectometry) 測定対象(DUT)の片端からパルス信号を入力し、DUTの各場所(位置)からの微弱な反射信号を時間軸で測定する手法。手法として「TDR法」などの表現があるが、TDR手法を利用した一連の測定器を指すことばでもある。和訳:時間領域反射率測定、時間軸反射法。 横軸を時間、縦軸を反射信号のパワーにすると、横軸は距離となり、入射端からのDUTの位置の状態を波形(グラフ)で観測できる。 OTDR(光ファイバアナライザや光パルス試験器)が有名だが、アプリケーションによって以下の2種類がある。 応用1. ケーブルの破断点やコネクタなどの接合状態の確認をする。光ファイバの時はOTDR(Optical TDR)という。TDRは電気の場合の名称で、欠陥の位置(fault location)を特定するものという「フォールトロケータ(fault locator)」や「ロケータ」、 「ケーブル障害位置測定器」などの名称、品名の測定器がある。ロケータは1980年代には安藤電気やテクトロニクスがラインアップしていたが、現在は大手計測器メーカはつくっていない。海外製のハンドヘルドモデルを株式会社グッドマンが取り扱っている。現在、計測器でTDRといえばグッドマンが有名である(筆頭で思い浮かぶ)。 応用2. サンプリングオシロスコープの測定ユニット。伝送路の特性インピーダンスの測定・評価には主にネットワークアナライザが使われるが、オシロスコープとTDRユニットの組み合わせで、時間領域から測定する手法がある。 計測器ではなく、一般にはTDRとえば東京ディズニーランドの略記である。

ディスアグリゲーテッドコンピューティング(でぃすあぐりげーてっどこんぴゅーてぃんぐ)

(disaggregated computing) コンピュータはCPU やGPU などのマイクロプロセッサ、ストレージやDRAM などのメモリなどで構成されている。複数のコンピュータ内のこれらの部位(CPUやメモリ)を機能単位に分解し、その機能ごとに一か所に集約して配置し、高速ネットワークで接続して柔軟に再構成・共用するアーキテクチャ。従来のサーバ単位の増設から部品単位の動的なリソース割り当てによって、高効率化と省電力化を実現する、次世代のコンピュータの形。 現在は1台のコンピュータにCPUやメモリがあるが、ディスアグリゲーテッドコンピューティングではそのようなコンピュータは存在せず、CPU装置やメモリ装置などが高速の光通信(光ファイバ)でつながる。負荷によって最適なリソースが使われるので、従来のコンピュータよりも無駄を省いた効率化ができるといわれている。たとえば各コンピュータ内のメモリの使用状況は様々で、1台のコンピュータ内では最適化されているが、複数台数全体では使われていないメモリが存在している。膨大なデータを扱うAIデータセンタでは、メモリの壁(GPUに対するメモリ不足)を解決する有効な手段と考えられている。 NTT技術ジャーナル(2021年5月号)には「IOWN を支えるディスアグリゲーテッドコンピューティング」なる記事がある。光電融合の技術によって部品間を光で直接つなぎ、超高速・低遅延の通信を行い、IOWNを実現する構想である。コンピュータ内部のCPUやメモリだけでなくマザーボードと周辺機器を接続するための高速な拡張バス規格として2002年にPCI Express (PCIe)が規格化され(Ver1.0)、現在はVer.7まで進んでいる(2026年3月現在)。ディスアグリゲーテッドコンピューティングの光通信は光PCIeが有力視されている。PCIe 7.0のリリースと同時にPCIeを光化する仕様OARECN(※)が発表され、この仕様はPCIe 6.4から適用される。 SSD を主力製品とするデバイスメーカのキオクシア(株)はSSDの光化を進めている。PCIe5.0対応の光SSD試作品を2025年の大阪万博やCEATEC に出品している。PCIe6.0で使用するSSD内部のO/E変換モジュールのアイパターンが良好である旨が報告されている(2026年2月4日、「PCI Express 6.0 / CXL3.0 最新規格動向」 テレダイン・レクロイ & アンリツ主催)。 disaggregatedは「aggregate(集計)されない」→「細分化した」、「分散の」。disaggregated computingを和訳すると「分散コンピューティング」である。 (※) (Optical Aware Retimer Engineering Change Notice) 直訳は「光認識リタイマのエンジニアリング変更通知」。Retimer(リタイマ)は「信号再生成チップ」と呼ばれるが、電気信号を光信号に変換するE/O変換器で、その仕様を策定することで、既存の設計を変更することなく光接続できるようにした。

デジタルリンクアナライザ(でーじたるりんくあならいざ)

(digital link analyzer) 安藤電気の低速のエラーレート(ビット誤り率)測定器 AE-1421の品名。2Mb/sまで対応し、アンリツの同等品(MD6420Aデータトランスミッションアナライザ、10Mb/sまで対応)とほぼ同時期に販売されている。現在は製造中止。AE-1404モデムテスタの後継機種として高速モデムにも対応できる仕様で発売された、可搬型の1筐体の誤り率測定器。

データトランスミッションアナライザ(でーたとらんすみっしょんあならいざ)

(data transmission analyzer) アンリツの低速(~10Mbpsまで)のエラーレート(ビット誤り率)測定器の名称。可搬型の1筐体の誤り率測定だが、測定ユニットを選んで装着する構成になっている(本体だけでは測定できない)。安藤電気のAE-1421デジタルリンクアナライザはやや通信速度が遅い(2Mb/sまで対応)が同等品といえる。こちらも可搬型のポータブルタイプだが、測定ユニットを選択する必要はなく、本体だけで測定ができる。 data transmission analyzerを翻訳するとデータ伝送アナライザである。アンリツやキーサイト・テクノロジーはこの品名だが、安藤電気は高速のモデムテスタとしてAE-1421をつくった。 安藤電気には通信回線の測定器としてデジタルトランスミッションアナライザ(AP-9850など)がある。品名は良く似ているが全く違う測定器である。計測器の名称(品名)からは他社の計測器との関係は全く推測できない場合は多い。計測器の品名はメーカの自由(勝手に命名できる)からである。計測器の素人にはわかりにくい。計測はニッチな業界である。 データトランスミッションアナライザ(データ伝送の解析器)なる名称は誰でも自由に使えるので、アンリツ以外の製品があるかもしれないが、通信計測器ではアンリツのMD6401AやMD6420Aの品名である。これらの製品は低速モデムから高速デジタルデータ回線の品質評価(BER測)に1990年代に活躍した。現在は生産終了し、後継はCMA 3000 オールインワン フィールドテスタになり、これも終了してMT1000A/1040A ネットワークマスタ プロ シリーズになっている(2026年現在)。MT1000AはイーサネットやOTDRに対応し、MT1040Aはより高速の400Gbpsイーサネットに対応している。OTN、SONET/SDH、100G/400G Ethernetという通信回線(ネットワーク)の評価測定器である。低速モデムではなく、ギガビットイーサネットが高速回線の主流の時代になった。2024年のInteropには1.6T(400Gの4倍の1600G、1.6テラ)の通信計測器が登場している。余談だが、MD6420Aの後から発売されたMD6430Aの品名は「ネットワークデータアナライザ」で、ISDNを含む13種類のインタフェースがあった。まったく計測器の名称は様々(メーカの好き放題)である。

デジタルトランスミッションアナライザ(でじたるとらんすみっしょんあならいざ)

(digital transmission analyzer) 安藤電気のAP-9850の品名。日本語にすると「デジタル伝送アナライザ」だが、エラー、ジッタ、伝送特性などの評価を行う有線通信のエラーレート(誤り率)測定器、いわゆるBERT(バート)。1980年代に発売され、2000年12月27日に販売終了している。当時のBERTはBERTS(バーツ)と呼ばれていた。 主な仕様は、AMI(Alternate Mark Inversion)、B8ZS(Binary 8-Zero Substitution)符号などの各種のパルス列を発生し、通信デバイスや伝送路、伝送システムのジッタやエラーを測定して数値表示する。エラー測定はカウントやレート(誤り率)を、ジッタ測定は0.000~10.10UIppでヒットカウント、ヒットインターバルなどを表示できる。測定時間は1秒~99日で10×6~10×12ビット。BERTSなので、TRANSMITTER(送信部)とRECEIVER(受信部)の2筐体があり、セットで使用した。受信部はプリンタを内蔵し、サイズは177x425x350mm(HxWxD)、質量16Kgのベンチトップ。通信速度はCMI(Code Mark Inversion)符号で139Mbps、NRZ/RZ(Non-Return-to-Zero / Return-to-Zero)符号で170Mbpsのため、G(ギガ)bpsには及ばない低速のBERTといえる(このモデルが発売されていた1990年代に同業のアンリツは10Gbpsの世界最速BERTを販売している)。 NTTが新しい通信方式を提案・開発すると、NECや富士通などの通信機メーカが設計・製品化し、アンリツと安藤電気は新しい装置を試験・検査する通信計測器をつくった(電電ファミリー)。1990年頃には両社はコアネットワークに導入された新同期網に対応するSDH/SONETアナライザをリリースしている。このような、NTTなどが導入する特定の通信装置の性能評価をする伝送/交換装置用測定器は2社で差が無いが、安藤電気はアンリツのような高速のBERTはつくれなかった。 アンリツに「データトランスミッションアナライザMD6420A」があり、似た品名だが全く違う測定器。こちらは「データ伝送アナライザ」。

テレコム(てれこむ)

(telecom) テレコミュニケーション(telecommunication)の略。接頭辞teleは「遠い、遠く」、communicationは「通信、共有、意思疎通」のため、「遠隔との通信」の意味。狭義にはインターネット、携帯電話などの遠距離通信システムや事業、関連企業を、広義には電子的な手段で情報を交換することを指す。音声、画像、データなどの様々な形式の情報を送受信する技術やインフラを意味する。有線通信や携帯電話、マイクロ波通信、光ファイバ通信、衛星通信、テレビ放送、インターネットなどを包含する概念がテレコミュニケーションで、略してテレコムといわれる。 狭義の例は日本テレコム(ソフトバンクの前身の一社)、ドイツテレコム(Deutsche Telekom)、SKテレコム(韓国)などのキャリア(通信事業者)がある。他にも、無線機器を扱う専門商社の(株)テレコム、映像制作のテレコムスタッフ(株)、無線設備の認証・試験を行う機関のテレコムエンジニアリングセンター(TELEC、テレック)など、多くの会社名や団体名に使われている。 1984年創刊で、情報通信業界のビジネスパーソン向けの専門情報誌「月刊テレコミュニケーション」(リックテレコム社発行)に「テレコムからデータセンターへと成長軸がシフトする光ファイバーケーブル市場(2025年6月11日)」という記事があり、古河電工の幹部をインタビューしている。ここでいうテレコムとは通信網、通信ネットワークを指している。 1990年代のキーサイト・テクノロジーはSDH/SONETアナライザやSS No.7のプロトコルアナライザなどをラインアップしていた。同社営業マンがこれら製品群を「テレコム」と発言したのを筆者は記憶している。「通信事業者や通信機器メーカ」向けの通信計測器という意味でテレコムと表現したと思われる。 テレコムと「ネットワーク」は使い方が違うが似たことばである。また「データ通信」も似ているが対象とする計測器の範疇が少し異なっている。通信計測器の分類で「テレコム」と「データ通信」の違いを説明するのは難しい。「データ通信」の代表機種はプロトコルアナライザで、通信網の様々な規格(通信方式)を評価する「OTN/SDH規格やギガビットイーサネット」の計測器は「伝送/交換装置用測定器(※)」である。「データ通信」と「伝送/交換装置用測定器」を合わせた機種群が「テレコム」のイメージである(あくまでイメージ)。 (※) インターネットの普及と共に公衆通信網の主力装置だった交換機はルータやサーバになり、「伝送/交換装置」という呼称は現在の計測器の分類名では古臭いものとなった。ただし伝送や交換は国家資格の電気通信主任技術者で今でも使われていることばである。 横河電機の計測器部門(現横河計測)が1990年頃に通信計測器に参入した際、従来の同社の汎用測定器(電力測定器やレコーダ、オシロスコープ、マルチメータなど)と区別して、COM(コム)と称していた。通信を意味するcommunicationの頭を略した呼称である。コムという呼称はあまり聞かないがテレコムは良く使われることばである。

テレホンユニットテスタ(てれほんゆにっとてすた)

(telephone unit tester) 安藤電気の電話機用測定器、形名AE-9302、AE-9303などの品名。電話機端末用のレイヤ1テスタ(物理層の接続確認の試験器)で、DP/PB(※)(ダイヤルパルス/プッシュボタン)信号測定や、抵抗・静電容量などを1台で測定できる。2000年頃まで、電話機などの端末メーカに重宝されたが、現在は生産終了。従来の固定電話用で、携帯電話用ではない(無線、RFの機能はない)。 1987年6月発行の安藤技報に「端末機器製造ライン用自動計測器 テレホンユニットテスタ/ レベルテストセット AE-9302,AE-9310」という紹介記事があるので、1980年中頃の開発品と推測される。AE-9302はその後AE-9302Bになり、後継器AE-9303がつくられた。 安藤電気は有線通信計測器を長らく日本電電公社(現NTT)に納めた(電電ファミリー)。電話機やFAX(ファクシミリ)、モデムなどの通信回線につながる端末機器の試験器を多くラインアップした。岩崎通信機やアンリツのように電話機をつくることはなかったが、交換機エミュレータ(擬似交換機)なども得意だった(ただし擬似呼はつくっていない)。2000年頃に横河電機に吸収され、光測定器は横河計測に現役で残っているが、光以外の電気通信の測定器はすべて生産終了した。現在ではモデムテスタや、アナログ通信回線のレベル計などは、大井電気が継続している。 (※) プッシュボタン式電話機で0~9の数字を押すと、受話器から「ピ、ポ、パ」と音が聞こえる。これをPB信号と呼ぶ。PB信号を送るプッシュ回線は、0~9の10種類の数字に異なる周波数の音を付けている。交換機は音で番号を認識する。

伝送(でんそう)

(transmission) 2つの意味がある。 1.電気信号やデータを送る、伝えること。たとえば、伝送路(伝送線路):電波や光などの電磁波が伝わる経路のこと。高周波(RF)や光通信で使われる媒体(導波管や光ファイバ、プリント基板上のパターンなど)を指すこともある。遠隔に置かれた2つの装置の間で信号やデータのやり取りをすることを「通信」ではなく「伝送」という場合がある。 2.基幹通信網(コアネットワーク)で情報を伝達する装置のこと。NTTの設備である伝送装置やそれらに携わる部門のこと。伝送装置用の計測器は通信計測器の大きな1カテゴリーである。アンリツ、大井電気などの計測器メーカがラインアップしている(安藤電気とアドバンテストは過去につくっていたが現在はない)。 自動車関係者の「でんそう」は「電装:自動車に装備される電気関係の機器」のことで、ここでいう通信の「伝送」ではない。自動車産業も多くの計測器を使うため、「でんそう」から通信の伝送と自動車の電装のどちらを連想するかは人による。「光測定器」と聞くと、太陽光の光(や蛍光灯などの照明)の明るさの計測器(照度計、輝度計)を連想するか、光通信測定器(光パワーメータやOTDR)のことだと思うか分かれるのと似ている。計測器の販売額(ポテンシャル)としては通信計測器(伝送装置用や光通信)が大きいので、「でんそう」は伝送、「光測定器」は光通信を指している場合が多かったが、世界的に基幹通信網に新しい伝送装置の導入や、光通信網の拡大がされているわけではないので、現在(2022年1月)は電装や輝度計のほうがメジャーかもしれない。 工業計器の1種で、プラントに多く配備される伝送器(でんそうき)には圧力伝送器などがある。漢字が「伝送」だが、ここで説明している通信の伝送とは全く関係がない。計装の伝送器は「伝送」と略記されることはないので、(漢字が同じだが)通信の伝送と間違われることはない。通信の関係者はプラントに配備されている「伝送器」や「圧力伝送」ということばを聞くと、「物理量の圧力と通信の伝送がどういう関係なのか?」、と一瞬混乱して理解ができなくなる。つまり工業計器の伝送器は(計装の関係者には当たり前のことばだが)通信の関係者には耳慣れないことばなのである。「圧力伝送器とは公衆通信網のどの位置に配備される伝送装置なのか?」、「何bpsの速度で通信する機器なのか?」と想像してしまう。計測・通信・計装の世界では同じことばが違う意味で使われることは良くある(素人には理解しにくい世界である)。

伝送交換(でんそうこうかん)

(transmission/exchange) 基幹通信網の設備には、情報を遠隔地に伝達する伝送装置(変調や多重によって信号の形式を変えて高速・大容量化する)と、端末同士をつないで通信線路(呼)を確立する交換装置がある。伝送と交換は2つの大きな仕組みのため、伝送交換と呼称される。インターネットなどのネットワークサービスを提供する電気通信事業者の設備を、工事/維持/運用を監督する国家資格である電気通信主任技術者には、「伝送交換」と「線路」の2種類がある(伝送交換設備には、伝送、交換、無線、データ通信、通信電力がある)。日本の基幹通信網を担っているNTTに通信装置を納入している通信機器メーカも、伝送と交換は別組織になっている会社が多い。たとえば日本電気の玉川事業場は伝送、我孫子事業場は交換を担当している。 伝送/交換装置用測定器は、通信計測器の大きな1カテゴリーで、世界の伝送(通信)方式が大きく変わった1990年代には新同期網の敷設のために、SDH/SONETアナライザなどの(1千万円/台、以上する)高額なモデルが発売されて活躍したが、最近はこの分野のインフラ投資が少ないため、伝送/交換装置用測定器の新製品は少なくなった。1990年頃のメインプレーヤーだったHP(後のアジレント・テクノロジー、現キーサイト・テクノロジー)は2000年代初頭の光海底ケーブルバブル以降に光通信測定器を縮小し、伝送/交換装置用測定器(OmniBERなど)から撤退した。アンリツは「OTN/SDH/SONET関連測定器」というタイトルでラインアップしている(2023年現在)。アンリツの競合だった安藤電気は2000年代初頭に横河電機に吸収され、現在は伝送/交換装置用測定器から撤退したが、光通信測定器の光スペクトラムアナライザは世界No.1である。 海外ではM&Aが盛んで、通信計測器メーカであるViavi(ヴィアヴィ) Solutionsは、伝送/交換用測定器メーカのWandel&Goltermann(ワンデル・ゴルターマン)や光測定器のJDSファイテルを吸収した会社である(無線通信の計測器もラインアップしている)。高速の有線通信は電気でなく光になるため、キーサイト・テクノロジーが伝送/交換測定機器や光測定器からほぼ撤退した(※)現在、ViaviやEXFO (エクスフォ)は次世代の有線通信用の計測器を提供する代表的なメーカとなっている。現在は「伝送交換」という表現より「コアネットワークの評価測定器」という表現が適切かもしれない。 2000年以降のインターネットの普及によって、ネットワークはIP化され、ルータなどが交換機に取って代わった。通信の主体は電話機(音声)ではなくデータ端末になった(携帯電話もネット検索やLINEなどのネットワーク端末で、もはや実態は電話機ではない)。NTTに交換機を納入していた電電ファミリーのNFOH(日本電気、富士通、沖電気、日立製作所)は、すでに交換機をつくっていない。日立製作所とNECは2004年に基幹系ルータ・スイッチ事業で合弁しアラクサネットワークスを設立(日立60%、NEC40%)した(NECの我孫子事業場から交換機の技術者が日立の横浜事業所に異動)。沖電気(OKI)はルータの事業から撤退して、交換機の技術を活かしてATMなどの店舗機器を主力事業に、業態を転換している。ROADM(ろーだむ)など伝送ということばは残るが、交換機の消滅とともに「伝送/交換」という表現は過去のものとなった。 TechEyesOnlineの計測器ページでは「伝送・交換装置用測定器」というカテゴリー名を使用しているが、より適切な名称が確立されれば変更することが望ましい。日本電気計測器工業会(JEMIMA)の電気計測器の機種分類では「有線通信測定器・光測定器」という名称で統計データを示している(2022年12月発行、電気計測器の中期見通し)。ここでいう有線通信測定器とはプロトコルアナライザ、IP関連測定器(ネットワーク負荷試験機など)、伝送/交換装置用測定器(誤り率測定器やSDH/SONETアナライザなど)を含んだ名称である。この3カテゴリーの売上は2000年以前よりも減少して、光測定器と合わせた額でも、2023年~2026年の売上予想は、オシロスコープ(1カテゴリー)の約60%程度の見込みになっている。 キーサイト・テクノロジーが伝送/交換装置用測定器や光測定器のラインアップをいち早く激減したことは、先見の明があったかもしれない。アンリツは有線より無線の測定器が強いので(携帯電話などの無線通信システムの進歩・発展に伴い)大手の通信計測器メーカとして存続しているが、無線でなく有線に偏重していた安藤電気は会社がなくなってしまった(安藤電気の電気計測器No.1カテゴリーはプロトコルアナライザと光測定器だった)。 (※) キーサイト・テクノロジーはOTDRや光スペクトラムアナライザなどは生産中止したが、光の基本測定器である光パワーメータと光源は継続してラインアップしている。同社は光通信に使われる光計測器を幅広くラインアップするのではなく、光部品評価に特化している。そのため、偏波シンセサイザなどの光の偏波に関するモデルのシリーズ化を進めている。

電電ファミリー(でんでんふぁみりー)

NTTの前身である日本電信電話公社(電電公社)の研究開発を製品化する下請け企業(出入りメーカ、お抱え企業)を「電電公社のファミリー企業」という意味でこう呼んだ。電電公社がNTTになっても、同社には商品の製造部門がほぼない(ファブレス)ことは同じで、NTT製品を長らく製造している企業群は、いまでも「電電ファミリー」と呼ばれる。1980年代までは国内の基幹通信は公衆電話回線(いわゆる黒電話や公衆電話などの固定電話網)で、NTT 1社の独占事業だった。電話機や交換機、通信装置などが電電ファミリーに発注された。重要インフラである通信網(通信ネットワーク)を維持するために、国産の通信機器メーカがNTTと一体となって研究・開発から製造、保守までを行った。 交換機を筆頭とした通信装置(伝送交換)はNEC、富士通、沖電気、日立製作所がつくったのでNFOHと呼称された(一番はNとFで三番がOという、比率を表していると業界ではいわれた)。新しい規格に対応した通信装置が導入されるときは、同じく電電ファミリーの大手通信計測器メーカ、アンリツと安藤電気が対応する計測器を開発した(※)。たとえば1980年代から光ファイバによる通信方式が検討されると、この2社が光通信測定器をつくり、R&Dから通信網の敷設・保守までほぼすべての測定器をラインアップした。1980年代に、光通信が商用化され敷設範囲が拡大する際は、2社のOTDRを電気工事会社は使って光ファイバを敷設し、その後の保守でもOTDRを使用している。NTTは2社に仕様を示し製品を作らせる。性能が同じ2社の製品があることで、1社に依存しないというリスクヘッジになる。NTTが日本の基幹通信網を独占し、アメリカのベル研究所と肩を並べて研究開発をしていた時代のことである。 (※) 三菱電機が約32%の株を保有する大井電気は通信機器と計測器の中堅メーカである。電電ファミリーとしてアナログの電話網の時代から伝送路の電気測定器をつくり、光測定器もラインアップした。現在でもモデムテスタや回線試験器、選択レベル計 などを工事会社向けに販売している。2000年代に横河電機に吸収されて光以外の通信計測器から撤退した安藤電気は、同社の電子計測器機器のコンペチタである。両社はほとんど同じラインアップの有線通信測定器をつくっている。つまり、ある仕様の機種をどの計測器メーカに発注するかはNTTが選択している。 その後、通信の自由化によってNTTは分割され、ほかの通信事業者が参入して現在に至る。日本の通信料金は下がり安価になったが、研究開発や国際的な通信規格の策定の力は衰えたという指摘もある。NTTは2019年にIOWN (Innovative Optical and Wireless Network、アイオンと呼称)構想を公表した。光トランジスタの開発によって、従来の電子を使った半導体による通信網を完全なフォトニクスにすることで、世界的なゲームチェンジを狙う。NTTは2020年にNTTドコモの完全子会社化を終え、2021年にはNTTコミュニケーションズ(NTT com)とNTTコムウェアもグループ内へ編入する。過去の分社化から一転、強いNTTの復権がうかがえる。 JR東海は鉄道車両メーカの日本車輌製造(愛知県豊川市)を子会社にした。世界で競えるインフラを作り、輸出によって豊かな国になるためには、上流のR&Dから製造まで独占的な強い企業が必要という、冷徹な国際事情が存在する。たとえば原子力発電の世界有数メーカであるフランスのアレバ社はフランスの国有企業である。フランスは原子力発電を国策ととらえ、世界的なビジネスをしている。日本が世界に伍する技術分野に通信が復権するかはまだ不透明である。 2024年10月10日に「NTTドコモ、基地局の国産優先を転換」というニュースが流れた。記事は「携帯電話基地局の調達戦略を見直し、富士通製品から5Gで先行する海外製に置き換えを増やす(2年間で約1000億円)」と報じた。2019年のIOWN(オールフォトニクスを目指す次世代通信)発表以降、世界中の企業とオープンな仲間つくりを進めているNTTは、調達先についても国産優先からオープンな調達先開拓に転換する。これは通信品質の改善という課題解決にも合致する(オープンRAN)。翌10月11日には「富士通、ドコモの変心で次の手 電電ファミリー転換点」なるニュースが報じられた。ニュースは「富士通やNECなどの電電ファミリーはNTTグループが求める仕様に合わせた通信機器を開発してきた。富士通は基地局事業の戦略を練り直し、経営資源シフトを加速する可能性がある。NTT前身の日本電信電話公社時代から続く電電ファミリーが転換点を迎える。」と書いている。このように通信業界ではいまでも電電ファミリーは現役の用語である。

データ通信(でーたつうしん)

(data communication) コンピュータと遠隔地の通信端末を通信回線でむすんで、ネットワーク経由で情報の送受信をすること。遠隔地のコンピュータ同士のデジタルデータの通信(送受信)の総称。1970年代にまだ通信手段がアナログの固定電話網(銅線を使った黒電話や公衆電話)だけだった時代に、コンピュータのデジタル情報を遠隔地の端末と送受信する技術を、有線の電話機を使ったアナログ信号の音声通信と区別して「データ通信」と呼んだ。現在は個人や企業に無線通信機器が普及したため、携帯電話回線(4G/5G)やWi-Fiを使い、スマホやPCでインターネット上の情報を送受信する技術を指している。携帯電話のキャリア(通信事業者)は「データ通信量○○ギガ」などのPRをしている。 1980年代から2000年頃まで、通信測定器メーカの製品総合カタログの大きなカテゴリーの1つに「データ通信」があったと筆者は記憶している。安藤電気やアンリツ、大井電気などがプロトコルアナライザを筆頭にモデムテスタなどを掲載していた。データ通信の測定器と伝送交換装置用測定器の違いを簡便に説明するのは難しい。あえていえば、基幹通信網(コアネットワーク)の通信装置やネットワークの評価をするのが伝送交換装置用測定器(レイヤ1のBERTや選択レベル計、上位層のプロトコルを確認するOTN・SDH/SONETアナライザ)で、データ通信は端末の評価をする測定器、というイメージである。

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