計測関連用語集

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Tx(てぃーえっくす)

有線・無線通信で送信データのこと。Transmission dataの略記。送信機はtransmitter(トランスミッタ)と呼ばれ、小文字のxはデータの意味。送信機自体をTxと表記している例もある。Txと対になる受信データはRx(Received dataの略記)と記載される。Tx同様に受信機をRxと表記することもある。

TDR(てぃーでぃーあーる)

(Time Domain Reflectometer、Time Domain Reflectometry) 測定対象(DUT)の片端からパルス信号を入力し、DUTの各場所(位置)からの微弱な反射信号を時間軸で測定する手法。手法として「TDR法」などの表現があるが、TDR手法を利用した一連の測定器を指すことばでもある。和訳:時間領域反射率測定、時間軸反射法。 横軸を時間、縦軸を反射信号のパワーにすると、横軸は距離となり、入射端からのDUTの位置の状態を波形(グラフ)で観測できる。 OTDR(光ファイバアナライザや光パルス試験器)が有名だが、アプリケーションによって以下の2種類がある。 応用1. ケーブルの破断点やコネクタなどの接合状態の確認をする。光ファイバの時はOTDR(Optical TDR)という。TDRは電気の場合の名称で、欠陥の位置(fault location)を特定するものという「フォールトロケータ(fault locator)」や「ロケータ」、 「ケーブル障害位置測定器」などの名称、品名の測定器がある。ロケータは1980年代には安藤電気やテクトロニクスがラインアップしていたが、現在は大手計測器メーカはつくっていない。海外製のハンドヘルドモデルを株式会社グッドマンが取り扱っている。現在、計測器でTDRといえばグッドマンが有名である(筆頭で思い浮かぶ)。 応用2. サンプリングオシロスコープの測定ユニット。伝送路の特性インピーダンスの測定・評価には主にネットワークアナライザが使われるが、オシロスコープとTDRユニットの組み合わせで、時間領域から測定する手法がある。 計測器ではなく、一般にはTDRとえば東京ディズニーランドの略記である。

デジタルリンクアナライザ(でーじたるりんくあならいざ)

安藤電気の低速のエラーレート(ビット誤り率)測定器AE-1421の品名。2Mb/sまで対応し、アンリツの同等品(MD6420Aデータトランスミッションアナライザ、10Mb/sまで対応)とほぼ同時期の2001年に発売されている。現在は製造中止。AE-1404モデムテスタの後継機種として高速モデムにも対応できる仕様で発売された、可搬型の1筐体の誤り率測定器。

データトランスミッションアナライザ(でーたとらんすみっしょんあならいざ)

(data transmission analyzer) アンリツの低速(~10Mbpsまで)のエラーレート(ビット誤り率)測定器。可搬型の1筐体の誤り率測定だが、測定ユニットを選んで装着する構成になっている(本体だけでは測定できない)。安藤電気のAE-1421デジタルリンクアナライザはやや通信速度が遅い(2Mb/sまで対応)が同等品といえる。こちらも可搬型のポータブルタイプで測定ユニットを選択する必要はなく、本体だけで使える。 data transmission analyzerを翻訳するとデータ伝送アナライザである。アンリツやキーサイト・テクノロジーはこの品名だが、安藤電気は高速のモデムテスタとしてAE-1421をつくった。 安藤電気にはPCM関連装置用の測定器としてデジタルトランスミッションアナライザ(AP-9850など)がある。品名は良く似ているが全く違う測定器である。計測器の名称(品名)からは他社の計測器との関係は全く推測できないことが良くある。計測器の品名はメーカの自由(勝手に命名できる)からである。計測器の素人にはわかりにくい。計測はニッチな業界である。

デジタルトランスミッションアナライザ(でじたるとらんすみっしょんあならいざ)

(digital transmission analyzer) 安藤電気 のAP-9850の品名。日本語にすると「デジタル伝送アナライザ」。NTTなどの特定の通信装置の性能評価をする測定器。エラーレート測定機能があるが、いわゆるBERT(バート)ではない。2000年12月27日に販売終了している。安藤電気とアンリツは、NTTが新しい通信装置をつくると、それを試験・検査する伝送/交換装置用測定器をつくった(電電ファミリー)。デジタルトランスミッションアナライザもその代表である。 アンリツに「データトランスミッションアナライザMD6420A」があり、似た品名だが全く違う測定器。こちらは「データ伝送アナライザ」。

テレホンユニットテスタ(てれほんゆにっとてすた)

安藤電気の電話機用測定器、形名AE-9302、AE-9303などの品名。電話機端末用のレイヤ1テスタで、DP/PB 信号測定から抵抗 、静電容量などを 1 台で測定でき、2000年頃まで、電話機端末のメーカに重宝された。従来の固定電話用で、携帯電話用ではない。現在は製造中止。

伝送(でんそう)

(transmission) 2つの意味がある。 1.電気信号やデータを送る、伝えること。たとえば、伝送路(伝送線路):電波や光などの電磁波が伝わる経路のこと。高周波(RF)や光通信で使われる媒体(導波管や光ファイバ、プリント基板上のパターンなど)を指すこともある。遠隔に置かれた2つの装置の間で信号やデータのやり取りをすることを「通信」ではなく「伝送」という場合がある。 2.基幹通信網(コアネットワーク)で情報を伝達する装置のこと。NTTの設備である伝送装置やそれらに携わる部門のこと。伝送装置用の計測器は通信計測器の大きな1カテゴリーである。アンリツ、大井電気などの計測器メーカがラインアップしている(安藤電気とアドバンテストは過去につくっていたが現在はない)。 自動車関係者の「でんそう」は「電装:自動車に装備される電気関係の機器」のことで、ここでいう通信の「伝送」ではない。自動車産業も多くの計測器を使うため、「でんそう」から通信の伝送と自動車の電装のどちらを連想するかは人による。「光測定器」と聞くと、太陽光の光(や蛍光灯などの照明)の明るさの計測器(照度計、輝度計)を連想するか、光通信測定器(光パワーメータやOTDR)のことだと思うか分かれるのと似ている。計測器の販売額(ポテンシャル)としては通信計測器(伝送装置用や光通信)が大きいので、「でんそう」は伝送、「光測定器」は光通信を指している場合が多かったが、世界的に基幹通信網に新しい伝送装置の導入や、光通信網の拡大がされているわけではないので、現在(2022年1月)は電装や輝度計のほうがメジャーかもしれない。 工業計器の1種で、プラントに多く配備される伝送器(でんそうき)には圧力伝送器などがある。漢字が「伝送」だが、ここで説明している通信の伝送とは全く関係がない。計装の伝送器は「伝送」と略記されることはないので、(漢字が同じだが)通信の伝送と間違われることはない。通信の関係者はプラントに配備されている「伝送器」や「圧力伝送」ということばを聞くと、「物理量の圧力と通信の伝送がどういう関係なのか?」、と一瞬混乱して理解ができなくなる。つまり工業計器の伝送器は(計装の関係者には当たり前のことばだが)通信の関係者には耳慣れないことばなのである。「圧力伝送器とは公衆通信網のどの位置に配備される伝送装置なのか?」、「何bpsの速度で通信する機器なのか?」と想像してしまう。計測・通信・計装の世界では同じことばが違う意味で使われることは良くある(素人には理解しにくい世界である)。

伝送交換(でんそうこうかん)

(transmission/exchange) 基幹通信網の設備には、情報を遠隔地に伝達する伝送装置(変調や多重によって信号の形式を変えて高速・大容量化する)と、端末同士をつないで通信線路(呼)を確立する交換装置がある。伝送と交換は2つの大きな仕組みのため、伝送交換と呼称される。インターネットなどのネットワークサービスを提供する電気通信事業者の設備を、工事/維持/運用を監督する国家資格である電気通信主任技術者には、「伝送交換」と「線路」の2種類がある(伝送交換設備には、伝送、交換、無線、データ通信、通信電力がある)。日本の基幹通信網を担っているNTTに通信装置を納入している通信機器メーカも、伝送と交換は別組織になっている会社が多い。たとえば日本電気の玉川事業場は伝送、我孫子事業場は交換を担当している。 伝送/交換装置用測定器は、通信計測器の大きな1カテゴリーで、世界の伝送(通信)方式が大きく変わった1990年代には新同期網の敷設のために、SDH/SONETアナライザなどの(1千万円/台、以上する)高額なモデルが発売されて活躍したが、最近はこの分野のインフラ投資が少ないため、伝送/交換装置用測定器の新製品は少なくなった。1990年頃のメインプレーヤーだったHP(後のアジレント・テクノロジー、現キーサイト・テクノロジー)は2000年代初頭の光海底ケーブルバブル以降に光通信測定器を縮小し、伝送/交換装置用測定器(OmniBERなど)から撤退した。アンリツは「OTN/SDH/SONET関連測定器」というタイトルでラインアップしている(2023年現在)。アンリツの競合だった安藤電気は2000年代初頭に横河電機に吸収され、現在は伝送/交換装置用測定器から撤退したが、光通信測定器の光スペクトラムアナライザは世界No.1である。 海外ではM&Aが盛んで、通信計測器メーカであるViavi(ヴィアヴィ) Solutionsは、伝送/交換用測定器メーカのWandel&Goltermann(ワンデル・ゴルターマン)や光測定器のJDSファイテルを吸収した会社である(無線通信の計測器もラインアップしている)。高速の有線通信は電気でなく光になるため、キーサイト・テクノロジーが伝送/交換測定機器や光測定器からほぼ撤退した(※)現在、ViaviやEXFO (エクスフォ)は次世代の有線通信用の計測器を提供する代表的なメーカとなっている。現在は「伝送交換」という表現より「コアネットワークの評価測定器」という表現が適切かもしれない。 2000年以降のインターネットの普及によって、ネットワークはIP化され、ルータなどが交換機に取って代わった。通信の主体は電話機(音声)ではなくデータ端末になった(携帯電話もネット検索やLINEなどのネットワーク端末で、もはや実態は電話機ではない)。NTTに交換機を納入していた電電ファミリーのNFOH(日本電気、富士通、沖電気、日立製作所)は、すでに交換機をつくっていない。日立製作所とNECは2004年に基幹系ルータ・スイッチ事業で合弁しアラクサネットワークスを設立(日立60%、NEC40%)した(NECの我孫子事業場から交換機の技術者が日立の横浜事業所に異動)。沖電気(OKI)はルータの事業から撤退して、交換機の技術を活かしてATMなどの店舗機器を主力事業に、業態を転換している。ROADM(ろーだむ)など伝送ということばは残るが、交換機の消滅とともに「伝送/交換」という表現は過去のものとなった。 当サイトでは「伝送・交換装置用測定器」というカテゴリー名を使用しているが、より適切な名称が確立されれば変更することが望ましい。日本電気計測器工業会(JEMIMA)の電気計測器の機種分類では「有線通信測定器・光測定器」という名称で統計データを示している(2022年12月発行、電気計測器の中見通し)。ここでいう有線通信測定器とはプロトコルアナライザ、IP関連測定器(ネットワーク負荷試験機など)、伝送/交換装置用測定器(誤り率測定器やSDH/SONETアナライザなど)を含んだ名称である。この3カテゴリーの売上は2000年以前よりも減少して、光測定器と合わせた額でも、2023年~2026年の売上予想は、オシロスコープ(1カテゴリー)の約60%程度の見込みになっている。 キーサイト・テクノロジーが伝送/交換装置用測定器や光測定器のラインアップをいち早く激減したことは、先見の明があったかもしれない。アンリツは有線より無線の測定器が強いので(携帯電話などの無線通信システムの進歩・発展に伴い)大手の通信計測器メーカとして存続しているが、無線でなく有線に偏重していた安藤電気は会社がなくなってしまった(安藤電気の電気計測器No.1カテゴリーはプロトコルアナライザと光測定器だった)。 (※) キーサイト・テクノロジーはOTDRや光スペクトラムアナライザなどは生産中止したが、光の基本測定器である光パワーメータと光源は継続してラインアップしている。同社は光通信に使われる光計測器を幅広くラインアップするのではなく、光部品評価に特化している。そのため、偏波シンセサイザなどの光の偏波に関するモデルのシリーズ化を進めている。

電電ファミリー(でんでんふぁみりー)

NTTの前身である日本電信電話公社は製造部門を持っていなかった。研究開発を製品化するNTTの出入りメーカ(お抱え企業、下請けメーカ)をNTTのファミリー企業という意味でこう呼んだ。通信装置はNEC、富士通、沖電気、日立製作所がつくったのでNFOHと呼称された(一番はNとFで三番がOという、比率を表していると業界ではいわれた)。新しい規格に対応した通信装置(伝送交換)が導入されるときは、同じく電電ファミリーの大手通信計測器メーカ、アンリツと安藤電気が対応する計測器を開発した(たとえば1970年代から光ファイバによる光通信が導入されると、この2社が光通信測定器をつくり、R&Dから通信網の敷設・保守までほぼすべての測定器をラインアップした)。NTTは2社に仕様を示し製品を作らせる。性能が同じ2社の製品があることで、1社に依存しないというリスクヘッジになる。NTTが日本の基幹通信網を独占し、アメリカのベル研究所と肩を並べて研究開発をしていた時代のことである。 その後、通信の自由化によってNTTは分割され、ほかの通信事業者が参入して現在に至る。日本の通信料金は下がり安価になったが、研究開発や国際的な通信規格の策定の力は衰えたという指摘もある。NTTは2019年にIOWN (Innovative Optical and Wireless Network、アイオンと呼称)構想を公表した。光トランジスタの開発によって、従来の電子を使った半導体による通信網を完全なフォトニクスにすることで、世界的なゲームチェンジを狙う。NTTは2020年にNTTドコモの完全子会社化を終え、2021年にはNTTコミュニケーションズ(NTT com)とNTTコムウェアもグループ内へ編入する。過去の分社化から一転、強いNTTの復権がうかがえる。 JR東海は鉄道車両メーカの日本車輌製造(愛知県豊川市)を子会社にした。世界で競えるインフラを作り、輸出によって豊かな国になるためには、上流のR&Dから製造まで独占的な強い企業が必要という、冷徹な国際事情が存在する。たとえば原子力発電の世界有数メーカであるフランスのアレバ社はフランスの国有企業である。フランスは原子力発電を国策ととらえ、世界的なビジネスをしている。日本が世界に伍する技術分野に通信が復権するかはまだ不透明である。 参考用語:原子力発電所、重電メーカ、パワー半導体

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