計測関連用語集

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垂直軸感度(すいちょくじくかんど)

オシロスコープの垂直増幅器が信号をどれだけ増幅するかを示し、1目盛あたりのミリボルト(mV)で表す。(テクトロニクス「オシロスコープのすべて」(2017年4月発行)より)

垂直軸分解能(すいちょくじくぶんかいのう)

(vertical resolution) 波形測定器(波形表示する計測器)には垂直軸の分解能が規定されているが、「垂直軸分解能」というと一般的にはデジタルオシロスコープ(オシロ)の電圧の分解能(測定精度)を指すことが多い。ただし通常は電圧値としてはカタログ仕様には記載されていない。記載されている数値はA/D変換器のビット数である。その理由は、デジタルオシロのA/D変換器は従来から8ビットであるため、電圧の分解能は決まっていて、モデルによる差はないのであまり重要な仕様として記載してこなかったという背景がある。ところが最近(特に2018年以降)、オシロで電圧も精度良く測定したいというパワエレ市場の需要などから、12ビットのA/D変換器を搭載して電圧の解析機能を向上させたモデルが登場している。そのようなモデルには有効ビット(ENOB)という仕様が規定されている。有効ビット数はダイナミックなA/D変換器の特性を示す指標のため、ノイズや歪の影響を判断する材料となる。垂直軸分解能の性能が向上した「高分解能オシロスコープ」が汎用オシロスコープの1機種群になりつつある。 テクトロニクスの冊子「オシロスコープのすべて」(2017年4月発行)では「垂直軸分解能:デジタル・オシロスコープのADコンバータが、どれだけ正確に入力電圧をデジタル値に変換できるかを示し、ビットで表す。ハイレゾ・アクイジション・モードなどの計算により、有効分解能を引上ることができる。」とある。8ビットのA/D変換器で得たデータを平均化処理することによって、分解能を高める機能を「ハイレゾ」と称している。

水平確度(すいへいかくど)

オシロスコープの横軸(時間軸)の確度のこと。テクトロニクスの冊子「オシロスコープのすべて」(2017年4月発行)には「水平確度(時間軸):水平システムが信号のタイミングをどれだけ正確に表示できるかを示し、通常、パーセント誤差で表す。」と説明されている。

水平軸掃引(すいへいじくそういん)

波形を描くための水平システムの動作のこと。(テクトロニクス「オシロスコープのすべて」(2017年4月発行)より)

スコープ(すこーぷ)

(scope)翻訳すると、「目で見える範囲、視野」のことだが、計測器では「見る機器」、「観察・観測するもの」という意味で使われる。計測器の代表であるオシロスコープ(oscilloscope)は「発振(oscillation)の観測器(scope)」の造語といわれる(発振器の信号波形、周波数の観測をすることが語源という説がある)。telescopeは遠く(tele)を見る機器(scope)なので望遠鏡、逆にマイクロスコープ(microscope)は小さい(micro)範囲を見る機器で、顕微鏡のことである。periscopeは(潜水艦の)潜望鏡や(塹壕で使う)展望鏡のこと(periは周辺の意味)。 計測器でスコープの代表はオシロスコープとマイクロスコープである。正確にはスコープはテスタやメータのような「数値を計測する」ものとは違い、「観察、観測」する機器である。オシロスコープは電圧の時間変化を波形表示する。横軸の時間は大変精度が良いが、A/Dコンバータの分解能はハンドヘルドのDMMよりも劣っていて、デジタル表示された電圧値は2桁までしか信用できない(最近の高分解能オシロスコープはこの点が改善された)。 そんなに精度が悪くて良いのかというと、波形を観測・観察するスコープであって、(数値を測定するものではないので)それで良い。高速AD変換器を使ったデジタルオシロスコープの誕生から約30年、分解能がずっと8ビットだったのは、ビット数を増やす必要(需要)が無かったからである。その意味では最近(2012年以降)の高分解能オシロスコープは精度よく電圧が測定できるので、オシロメータ(オシロテスタ)である。高分解能モデルの登場によって、やっとオシロスコープは電圧を正確に測定できる、正式な計測器の仲間入りをしたといえる。 microscopeを日本語にすると顕微鏡だが、日本語のマイクロスコープを英語にするとmicroscopeである。日本では「顕微鏡」というと通常は光学顕微鏡(optical microscope)を指し、接眼レンズと対物レンズで微小な物体を拡大して観察する機器のことである。光源としてレーザーを利用するレーザー顕微鏡もあるが、一般には可視光を利用しているものを指し、実体顕微鏡も含まれる。マイクロスコープは対物レンズのみで、接眼レンズに相当する部分がデジタルカメラになる(「デジタルマイクロスコープ」と呼称するメーカも多く、デジタルカメラを搭載した顕微鏡がデジタルマイクロスコープともいえる)。 またマイクロスコープは通常、観察対象をモニターに映す(顕微鏡のように筒を覗かない)。そのためマイクロスコープを「モニタースコープ」と呼称する場合もある(ハンドヘルドの工業用内視鏡をモニター付きスコープ、ということでモニタースコープと呼称している例もある)。試料に電子線を当てる電子顕微鏡(SEM、セムと呼称)は原子レベルまで拡大した観察ができる(水平分解能:約1nm)。その次に倍率が高いのがレーザー顕微鏡とデジタルマイクロスコープといわれる(数10nm~1mm)が、マイクロスコープはより光学顕微鏡に近い性能、という解説もある。これらの○○顕微鏡やマイクロスコープは用途によって使い分けられている。英語はmicroscopeだが、日本では顕微鏡とマイクロスコープは別の製品である。 テレメータ(telemeter)は遠隔地の測定データを測定する機器で、データロガーと同じデータ集録機器の1種である(遠くを見るテレスコープではなく、遠くを計測するのがテレメータ)。

スコープコーダ(すこーぷこーだ)

(scope coder) 横河計測のメモリレコーダ(現在のレコーダの主流の、メモリに蓄積して表示するデジタル式のレコーダ)の品名。通称(現在の同社では形名)は同社のオシロスコープ(オシロ)と同じDL。実体はレコーダだが、オシロと同じ名称をつけたのにはメーカ内部の深い事情が推察される。横河には2系統のレコーダがある。 まずは工業計器のセンサとして主に温度を記録するもの。横河電機はIA(インダストリー・オートメーション)/FA(ファクトリー・オートメーション)の会社なので、プラントや工場の温度を記録する目的のレコーダをソリューション部門がラインアップしている。特長はペーパーレスで、離れた場所の中央監視室(制御室)にデータを送る。本体や表示画面は無く、入力信号の種類別のモジュールを電源モジュールなどにスタック(横に重ねて付けて伸ばしていく)ようなタイプもある。工場内のデータ集録を第一の主眼にしている。同業者の代表メーカはチノーなどで、いわゆる電気計測器メーカではない。 次が計測器の主流であるレコーダ。日置電機のメモリハイコーダや、エー・アンド・デイ (旧三栄測器)のオムニエースのような、計測器としての記録計の王道の機種群。ここに位置するのがスコープコーダで、横河電機の計測器事業部だった現横河計測がつくった。横河のレコーダというと前述の工業計器のレコーダ(μRやDARWIN)が一番に連想されるので、そうではなく計測器事業部が作った(計測器としての)レコーダである、と計測器事業部の看板商品のDLの名前を付けたと筆者は推測している。そのため、レコーダなのに、オシロです、という体をしていた。 あるレンタル会社はDLという名前に配慮して、オシロのページにスコープコーダを掲載していた。ところが横河計測のホームページでは「オシロ/波形測定器」ではなく「データロガー/データ収集(DAQ)」の項目に「高速データロガー」の注釈で掲載されていた(2023年2月現在)。スコープコーダは「レコーダのようなオシロ」(つまりレコーダではなくオシロであるという主張)で登場したはずなのに、一体いつオシロからレコーダに豹変したのか!と筆者は驚いたが、2023年10月現在、オシロとデータロガーの両方のページに掲載されている。つまりオシロでもありレコーダでもある(両方のいいとこどりをした、中間の仕様の製品)という趣旨である。 スコープコーダの前身の1種にオシログラフィックレコーダ(OR1400など)というオシロのような品名のレコーダがあった。このように横河の計測器部門にはレコーダとオシロの混血のような品名が登場する。「スコープコーダはAR(アナライジングレコーダ)の後継である」とメーカはその出自を説明している(参考記事を参照)。 当サイトのカテゴリー(機種分類)では、オシロの中に「レコーダオシロ」という分類をつくり、スコープコーダを掲載している(DLという名称やメーカの趣旨に沿って、特別にこの分類を作成した)。 2010年代にオシロの3大メーカ(テクトロニクス、キーサイト・テクノロジー、レクロイ)はADコンバータが8ビット以上の高分解能オシロスコープを発売したが、横河計測には12ビット分解能のスコープコーダがあるので、同社は前3社と同様な高分解能オシロスコープをラインアップしていない(参考記事の8チャンネルオシロを参照)。ただし、2023年5月に初めての8ビット以上のモデルDLM5000HD(12ビット分解能)を発売した。高分解能モデルと同様に2017年~2020年にかけて多チャンネルオシロの発売が続いた(前述3メーカは横河計測がオンリーワンだった8chモデル市場に参入した)。横河計測は8chの最新モデルDLM5000を2020年8月に発売したが、アナログオシロ時代の老舗、岩崎通信機は同年11月に12ビットの8chモデル、DS-8000を発売した。前述3メーカの8chモデルも同様に10~12ビットの高分解能で、唯一横河計測だけが従来の8ビットだった。テクトロニクスはミドルクラスのオシロのラインアップは高分解能(8ビット以上)が標準である(2023年現在)。つまりオシロの主流は知らない間に高分解能になっていた。

Streamline(すとりーむらいん)

キーサイト・テクノロジーの「コンパクトUSB計測器」と称されるPCとUSB接続して使用する測定器群の通称(愛称)。2010年代後半に発売され、IQ信号任意波形発生器、オシロスコープ、ベクトル・ネットワーク・アナライザなどのラインアップがある(2021年4月現在)。特に2018年以降ネットワークアナライザの機種数が増えた。「Windows 7 または 10(64ビット)の PCとUSB3.0で接続するだけで、ベンチトップ型の計測器相当の高性能を省スペースで実現できる」ことが売りである(同社製品カタログ5992-2994JAJP 0000-08cSより) 。

スロープ(すろーぷ)

(slope) オシロスコープで観測する立ち上がりや立ち下がりの波形は傾斜(勾配)なので、スロープと表現されることが多い。スロープはエッジとも呼ばれ、スロープが一定の電圧(トリガレベル)になったときにトリガを発動するのがエッジトリガである。エッジトリガはオシロスコープの最も基本の機能なので、「立ち上がりスロープでトリガをかける」や「トリガスロープ」などの表現が頻繁にされる。 スロープ:グラフやオシロスコープの画面上の斜線で、垂直軸と水平軸の比を表す。正のスロープは左から右へ上り、負のスロープは左から右へ下る(2017年発行 テクトロニクスの冊子「オシロスコープのすべて」より)。 スロープ:グラフや画面上に表示される線で、垂直軸の距離と水平軸の距離の比率で表す(テクトロニクスの冊子「信号発生器のすべて」より)。

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