スコープコーダ
(scope coder)
横河計測のメモリレコーダ(現在のレコーダの主流の、メモリに蓄積して表示するデジタル式のレコーダ)の品名。愛称(現在は形名)は同メーカのオシロスコープ(オシロ)と同じDL。実体はレコーダだが、オシロと同じ愛称をつけたのにはメーカ内部の深い事情が推察される。横河には2系統のレコーダがある。
1つは工業計器のセンサとして主に温度を記録するもの。横河電機はIA(インダストリー・オートメーション)/FA(ファクトリー・オートメーション)の会社なので、プラントや工場の温度を記録する目的のレコーダをソリューション部門がラインアップしている。特長はペーパーレスで、通信でデータを送る。本体や表示画面は無く、入力信号の種類別のモジュールを電源モジュールなどにスタック(横に重ねて付けて伸ばしていく)ようなタイプもある。工場内のデータ集録を第一の主眼にしている。同業者の代表メーカはチノーなど。
2つめは計測器の主流であるレコーダ。日置電機のメモリハイコーダや、エー・アンド・デイ(旧NEC三栄)のオムニエースのような、レコーダの王道の機種群。ここに位置するのがスコープコーダで、横河電機の計測器事業部だった現横河計測がつくった。横河のレコーダというと工業計器の記録計が連想されるので、そうではなく計測器事業部が作った(計測器としての)レコーダである、と計測器事業部の看板商品のDLの名前を付けたと推定される。そのため、レコーダなのに、オシロです、という体をしていた。あるレンタル会社はDLという名前に配慮して、オシロのページにスコープコーダを掲載していた。現在のメーカHPではオシロ(波形測定器)ではなくデータロガー/データ収集(DAQ)の項目に「高速データロガー」の注釈で掲載されている。
スコープコーダの前身といえる機種にオシログラフィックレコーダ(OR1400など)というオシロのような品名のレコーダがあった。このように横河の計測器部門にはレコーダとオシロの混血のような品名が見受けられる。
2010年代にオシロの3大メーカ(テクトロニクス、キーサイト・テクノロジー、テレダイン)はADコンバータが8ビット以上の高分解能オシロスコープを発売したが、横河計測にはスコープコーダ(12ビット分解能)があるので、同社は前3社と同様な高分解能オシロスコープを発売していない。
参考用語:
アナライジングレコーダ、メモリレコーダ、オシログラフィック・レコーダ、
メモリハイコーダ、オムニエース、サーマルアレイレコーダ